とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第35話 第5位との接触

「うーん。建物の中に入られちゃったら、あの子の追跡力じゃあ少し厳しいわねぇ」

 

 学舎の園の外に出て、しばらくバスに乗った後。公園のベンチに腰掛けている食蜂操祈はつぶやく。

 

(あの子達を新しく『派閥』に入れたらおもしろそうなんだけれどぉ)

 

 あの子達、というのはもちろん最愛と海鳥のことである。彼女たちと接触したとき、はるか過去に経験した『闇』の匂いがしたのだ。

 

 食蜂が思い出すのは白い部屋。無機的な対応を取る、洗脳防止用の器具を頭に取り付けた研究者達。

 

「はあ……」

 

 食蜂は久しぶりに――本当に久しぶりに、ため息をついた。

 

 彼女がわざわざ学舎の園の外に出ているのは、それほどまでに憂鬱になった気分を晴らすためだ。

 

 どんなに『超能力者(レベル5)は人格が破綻している』などと言われようとも、彼女も1人の女子中学生なのだった。

 

(まさか『闇』の匂いに気を取られて、心を読んでおくのを忘れるとはねぇ)

 

 ベンチから立ち上がって歩き出した食蜂は、自覚した。自分がまだ、過去とは完全に吹っ切れてはいないことを。

 

 そんな風に考え事をしていたからだろうか。彼女は気がつかなかった。自分が取り壊し中の廃ビルのそばを歩いていることに。自分に危険が迫っていることに。真上から迫ってきていた、鉄骨に。

 

 声を上げる暇すらもなかった。

 

 自分に降りかかってくる鉄骨が、手を伸ばせば届きそうなくらいまでに迫っている鉄骨の動きが、ゆっくりになっていく。

 

 その走馬灯の中、食蜂の目に過去の映像が一気に流れる。

 

 学園都市に来る前のこと。

 

 学園都市で能力開発を受けたこと。

 

 超能力者(レベル5)になる前、研究で様々な実験を受けさせられていたこと。

 

 常盤台中学に入り、その能力で最大の派閥を作ったこと。

 

 ことあるたびに、御坂美琴といがみあってたこと。

 

 今までは自分がいつのまにか御坂に絡んでいる理由が分からなかったが、今なら分かる。あの2人の少女を見て、分かったのだ。

 

 あこがれから来る、嫉妬だと。

 

 超能力者なのにも関わらず、「人格破綻者の集まり」などと呼ばれているいるのにも関わらず、『闇』にのみ込まれる様子もなく、他の人達に囲まれている。人の輪の中心で、笑っている。

 

 それがうらやましかった。

 

 自分には得られないものを持っていることが。

 

(わたしがやるべきだったのは……)

 

 ようやく理解した。自分がするべきだった選択を。

 

 そして後悔した。自分がその選択を取らなかったことを。

 

 食蜂には、目をつぶってその瞬間を待つことしかできなかった。

 

 目の前が暗くなる。全ての感覚がなくなる。

 

 ……いや? なくなってはなかった。

 

 人々の声が聞こえる。

 

 食蜂は恐る恐る目を開ける。と、そこには。

 

 先ほどまで自分に降りかかっていた鉄骨が、空中に止まっていた。

 

 食蜂は訳の分からないままに周りを見渡す。こちらを見つめていた少年と目が合った。

 

「大丈夫?」

 

 少年から声をかけられる。まだ動揺している食蜂は何とか返事をした。

 

「は、はい……」

「そうか、ならよかった」

 

 鉄骨が食蜂から離れ、ゆっくりと地面に落ちる。

 

「それで1つ聞きたいことがあるんだけれど、いいかな?」

 

 さわやかな笑顔を浮かべているその少年は言う。

 

「今日常盤台中学の中にさ、私服の子が2人見学に来たと思うんだけれど知ってる? 今学舎の園からもう出てきているか、知っていたら教えてもらいたいんだけれど」

 

 ちょっと待ってくださぁい。と言って、食蜂は派閥の中にいる念話能力(テレパス)の人に連絡をした。彼女を中心に派閥の人達の間で情報交換をすることで、最愛と海鳥の場所を調べ上げる。

 

「少し前に学舎の園を出たみたいですぅ」

「そっか、ありがとな。いやー、携帯の電池切らしちゃってさ。連絡が付かなくなってたんだ。助かった」

 

 そう言って少年は歩き出した。食蜂は慌てて声をかける。

 

「あ、ありがとうございましたぁ」

「おう」

 

 少年が離れていくのを確認してから、食蜂はつぶやく。

 

「神谷さん、かぁ」




最後に食蜂が頭を読んで名前を知ったことには、駿斗は気づいています
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