とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第37話 御使堕し

 神谷駿斗と上条当麻は知っている。経験則で知っている。

 

 たとえ会ったことがなくても分かる。こんな、拘束具というようなふざけた格好をして現れるやつは『奴ら』の1人であるということを。

 

 つまり、魔術師。

 

「おい、お前は――」

 

 と、当麻が何かを言いかけたところで止めた。理由は単純だ。

 

 金髪少女がのこぎりの刃を当麻の首筋に当てたからだ。

 

 当麻が驚きの表情をしたまま、少女が口を開く。

 

「問一。術士はあなたか」

 

 少女は静かに言った。機械的な口調だ。

 

「なんだてめえ!」

 

 俺は構成変換(コンスチチュートチェンジ)でのこぎりを鉄屑にする。

 

「問一をもう一度。術士はあなたか」

 

 しかし、それでも少女は動じることなくその手を下げて続けて言う。

 

 なんだこいつは? 術士ってつまり、この世界規模で起きている魔術を発動した人間のことだよな?

 

「待ってください。その少年だと決めつけるのは早計です」

 

 そこに、聞いたことのある声が割り込んできた。俺たちは振り返る。

 

 そこにいたのは長い日本刀、七天七刀を腰に構えている神裂。そしてもう一人。

 

「はー、間に合って良かったにゃー」

「「土御門!?」」

「しかもちゃんとこの俺が、土御門元春に見えてるぜよ」

「ええ、しかし正しくあなたと認識していると言うことは……」

「いやいや、ねーちん。あいつらのどこにそんな痕跡があるにゃー?」

 

 土御門は平然とした顔で、神裂と話している。

 

「お前やっぱり魔術師だったのか!」

「さすがはやとん、やはり分かっていたかにゃー。さすが幻想創造(イマジンクリエイト)の名は伊達じゃないぜよ」

「おい、どういうことだよ!」

「おそらくは土御門もイギリス清教、さらにいうと必要悪の教会(ネセサリウス)の一員なんだろうな」

 

 俺の言葉に当麻は唖然とする。土御門は笑って言う。

 

「まったく、はやとんには敵う気がしないにゃー」

「話の途中ですみませんが、そこまでにしてください土御門」

 

 神裂は土御門を止めると、拘束具の少女に向かって言う。

 

「我々同様、難を逃れたものとして見受けられます。私はイギリス清教『必要悪の教会』の魔術師、神裂火織。ここに来た理由は」

 

 神裂達は勝手に話し始めた。まあ、俺たちを擁護するような発言をしてくれたことには感謝しよう。

 

「ロシア成教『殲滅白書』の魔術師、ミーシャ=クロイツェフ」

 

 拘束具の少女はそう名乗った。

 

「殲滅白書のメンバーと、こんなところでお目にかかれるとはにゃー!」

「問一。この男達を術士ではないとする根拠は。問二。この男達を術士でないとすれば、誰が」

「とりあえず俺たちも無関係でいるわけにはいかないみたいだし、この状況を説明してくれないか?」

 

 

 

「目下、とある魔術が世界規模で進行中です」

 

 神裂が話し始める。

 

 御使堕し(エンゼルフォール)。これがこの魔術の、便宜上付けられた名前らしい。

 

 神や天使から、人間までを含めた身分階級表とでも言うべき『生命(セフィロト)の樹』。それをひっくり返し、天使が人間界に落ちてきた。

 

 人間の外見と中身が入れ替わっているのもその作用だという。簡単に言えば、椅子取りゲームのようなもの。

 

 そして、それを起こした第一容疑者が、

 

「上やんとはやとんだってことだにゃー」

「俺たちが入れ替わらないのって思いっきり幻想殺し(イマジンブレイカー)幻想創造(イマジンクリエイト)のおかげじゃねーか!」

「数価、四十・九・三十・七、合わせて八十六―――」

 

 彼女がそう唱えると、後方にある海から水が猛り狂い、蛇の様に動いた。

 

「照応。水よ、蛇となりて剣の様に突き刺せ(メム=テト=ラメド=ザイン)

 

 当麻がその右手で迎え撃つ。

 

「回答一、これを容疑撤回の証明手段として認める。少年、謝った疑惑と刃を向けた事を此処に謝罪する」

「あ、ああ……」

 

 当麻は言った。俺も少し頭にきたが、容疑撤回のためだ、と気を落ち着かせる。

 

「さてと、容疑が晴れても御使堕しがかみやんたちを中心に起きていることは事実。術士がかみやんの近くにいる可能性は高いにゃー」

「これほどの魔術です。おそらく、儀式場のようなものがあるはず」

 

 つまり、

 

「儀式場を破壊するか、術者を直接倒すか……御使堕しを止める手段は2つに1つぜよ」

「とにかく、御使堕しを発動させている術士はあなた達の近くにいる可能性が高いのです」

「つまり、なんだ」

 

 俺は口を挟んだ。

 

「要するに、この魔術の元凶を探せってことだろ?」

「簡単に言えばな」

 

 

 

 それから夜になって、当麻は父、刀夜と話していた。

 

「その顔、母さんにそっくりだな」

 

 その言葉から、刀夜の昔の詩菜との話が始まった。

 

 当麻にとっては、こんなに長時間父親と話したのは初めての気がした。

 

「そうか。まあ、駿斗君と会うのは少し引けたんだけれど、会えて良かったかな」

「会うのが引けた?」

「そうだよ。だって、彼には両親がいないだろう」

 

 刀夜は駿斗が置き去り(チャイルドエラー)であることに触れた。

 

「まあ、あいつがそうだと言ったときにはショックだったかな」

「わたしも、母さんだってそうだ。彼の前にいるのが少し億劫になってしまった」

 

 当麻はその時駿斗が言った言葉を思い出した。

 

『気にするなよ。そもそも俺は、親というものがどういうものなのかさえ知らない。いる人の気持ちが分からないんだ。だから、いないってことが(・・・・・・・・)どんなに悲しいことなのかも(・・・・・・・・・・・・・)分かっていない(・・・・・・・)

 

 当麻はその言葉を思い出して、考え込んでしまった。

 

 神谷駿斗が置き去りであるのは、もしかしたら幻想創造の力に関係があるのではないか、と。

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