とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第39話 神の力

「私は、お前の不幸を完全に取り除きたかった。『不幸』とは無縁の、人並みの『幸運』がある生活を送って欲しかった」

 

 それは息子を想う父親の気持ちがあふれる言葉だった。

 

「だから私は、オカルトに頼る事にしたんだ」

 

 科学じゃどうしようも無かった当麻の不幸。科学では解決できなかったそれを、魔術での解決を望んだ。

 

「……馬鹿野郎」

 

 そんな上条刀夜(ちちおや)の言葉を、当麻は否定した。その幻想を、はっきりと否定する。

 

「あぁそうだ。確かに俺は『不幸』だったよ、この夏休みだけで何度も死に掛けたし、おまけに右腕まで一度は切断されたよ!」

 

 だけどよ、と当麻は続けた。

 

「それで俺が、一度でも『後悔』してるなんて言ったかよ!」

 

 それが上条当麻だった。

 

「……当麻?」

「確かに俺は『不幸』だよ。だけど、そのおかげで、この『不幸』のおかげ(・・・・・・)で出会うことができた人だっている。どれだけ俺が『不幸』だとしても、その人たちと出会うことができたことは間違いなく『幸運』なんだ!!」

 

 それこそが、上条当麻という人物の芯であった。

 

 たとえ自分がどんな『不幸』に出会おうとも。新たな出会いをして、そこで会った人たちの幻想を守り抜くことができる。その事は当麻にとって、間違いなく『幸運』なのだ。

 

 だから、みんなの幻想を守り抜くためなら当麻は先へと進める。自分にどんな災難が降りかかろうとも、その決断をした過去の自分に後悔なんて絶対にしない。

 

 その当麻の言葉に、刀夜さんは一瞬呆気に取られた様に放心したが、すぐに我に戻ると疲れ切ったような顔に笑顔を浮かべた。

 

「……お前、幸せだったのか、最初から……はは、馬鹿だな私は……あんな意味も無い『お土産』ばかり集めて」

「なっ!? 『意味のないお土産』だと!?」

 

 それってつまり、刀夜さんが御使落し(エンゼルフォール)を発動させたわけではないのか?

 

「ああ。全く、馬鹿な父親だろ。あんな何の効果も無いオカルトグッズで息子の不幸を取り除けると、確かに心から信じてた訳じゃなかったが、それでも買い集めていたのだから」

 

 刀夜さんは平然とそう言う。とても嘘を言っているようには見えなかった。

 

 しかし現に上条刀夜は入れ替わっていない。

 

「おい、これって――」

 

 その直後、後ろから莫大な力と殺気を感じる。

 

 ゆっくりと首を動かしてみると、そこにいたのは。

 

 ミーシャ=クロイツェフ。

 

「ッ……ま、待てミーシャ! 何かがおかしい。父さんは犯人じゃっ!?」

 

 当麻は慌ててミーシャに声をかける。が、またも言葉が途切れる。

 

 感じられるのは、莫大な力。通常、天使の力(テレズマ)などとよばれるもの。

 

 後ろから声がした。1人の女性が、近づいてくる。

 

「忘れたのですか。なぜこの術式が御使落し(エンゼルフォール)と呼ばれているのかを」

「神裂!」

「刀夜氏をつれて、一刻も早くこの場を離れてください」

 

 神裂がそう言った。

 

「神裂。確認はすんだのか?」

「ええ。ロシア正教に問い合わせたところ、確認できたのはサーシャ=クロイツェフ。ミーシャ=クロイツェフという魔術師はいないそうです。そもそも名前とは、彼らにとっては神によってつくられた目的そのもの。簡単に交換できるはずがありません」

 

 俺は当麻のほうへ視線を移した。 

 

「当麻、刀夜さんを早く連れて行け」

 

 そう言い終わらないうちに、夕焼け空が暗くなり、月が青く光った。

 

 天体制御(アストロインハンド)

 

 これが天使の扱う魔術。

 

「自身の属性強化のためですか……!」

 

 ミーシャの背中から水翼が生える。

 

「なんだあれは……」

「水の象徴にして青を司り、月の守護者にして後方を加護する者。その名は……」

 

 神の力(ガブリエル)

 

 大天使はその手に持ったバールを頭上へと持ち上げた。するとその直後、頭上で青く輝く月を中心に、魔方陣を形成していく。

 

 まだまだ魔術に関しては素人から脱しきれない俺でも分かる。あれはマズイ、と。

 

「っな……ただ一人を消す為だけに旧約に記された神話上の術式を持ち出すなど……神の力、あなたはこの世界を一掃するつもりですか!?」

「お、おい神裂、なんだよそれ、一体あいつは何を……」

「あれはかつて堕落した文明を滅ぼした火雨(ひう)の豪雨です。もしもあんなものが発動されれば、人類の歴史はここで終わってしまう!」

「なんだと!」

 

 別名、神戮。もしくは、一掃。

 

 その名前だけでも十分に危険さが分かる。

 

「神裂! 御使落し(エンゼルフォール)を止めれば何とかなるんだよな!」

「……えぇ、おおよそ三十分程度であの術式が発動するでしょうが……まさか貴方!?」

「それだけあれば十分! 急いでくれよ当麻!」

 

 当麻が駆け出した。

 

 その姿を見送っていると、大天使の背後にあった海水が背に集まり、水翼となった。膨大な量の天使の力がこめられているのが分かる。

 

 神裂は僅かに重心を落とすと、その腰にある刀をつかむ。

 

「共闘はインデックスの『首輪』の件以来か」

「ええ。それでは<唯閃>の使用と共に、一つの名を」

 

 神裂火織は告げる。

 

 己の身と心と魂に刻みつけた、もう1つの名、魔法名を。

 

「―――『Salvare000(救われぬものに救いの手を)』」




こんなものをつくってみました


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