とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第4話 量子加速

 一行はセブンスミストに着いた。

 

「でも超能力者(レベル5)かあ……スッゴイなあ……。あー、幻想御手(レベルアッパー)があったらなー」

「え? 何なんですかそれ」

「いやあくまで噂だし……詳しいことはあたしも知らないんだけど。あたしたちの能力の無能力者(レベル0)低能力者(レベル1)を簡単に異能力者(レベル2)強能力者(レベル3)に引き上げてくれる道具があるんだって。それが幻想御手……ま、ネット上の都市伝説みたいなもんなんだけどさ」

 

 佐天の趣味はこのような都市伝説や噂話の追求であり、その手の話には詳しい。

 

 『幻想御手』以外にも、どこでも誰がいようとも服を脱ぐ脱ぎ女や、ありとあらゆる能力を打ち消す無能力者、逆にあらゆる能力を創り出してしまう無能力者など、色々と知っている。

 

「……、」

 

 『幻想御手』、その言葉を聴いた美琴は顎に手を添え、難しい表情になる。考え事をしているようだ。

 

「わたしはないと思いますよ。そんなのがあったら苦労しません」

「でもさ…本当にあるならあたしでも…」

「? 佐天さん?」

 

 初春の言葉に佐天はそう呟き顔を俯けた。

 

 その後も騒ぎながら、ショッピングを楽しんでいたのだが。

 

「そういえば初春。なんで、ジャジメントのワッペン付けてるわけ? 」

「最近、ちょっと事件があって警戒してるからですよ。『虚空爆破(グラビトン)事件』って呼んでいますけれど。量子加速(シンクロトロン)といってアルミを基点に重力子(グラビトン)を加速、周囲に放出することでアルミを爆弾に変える能力だそうで。その能力を使った事件が多発しているんです。おまけに警戒心を持たれないように、アルミを可愛らしい人形なんかに入れたりしていることが多いんです」

「ふーん……仕事熱心だねえ。でもせめてここに来た時ぐらいゆったりしなさいよ!」

「ああ!佐天さん、何するんですか、ワッペン返してください!」

 

 その時初春の携帯の着信音が鳴った。

 

 初春は携帯に出ると明るい声で話し始めたが、すぐに表情を真剣なものにして相手の話を聞いている。

 

「はい、はい。……分かりました」

 

 初春は通話を終えると、真剣な表情になって2人に話しかける。

 

「落ち付いて聞いてください。さっき話した爆破事件なんですが、今このアパート内に犯人がいる可能性があります。だからお客さんたちを外に避難誘導しなきゃなりません。佐天さんは外に避難を、御坂さんは誘導を手伝っていただけませんか?」

 

 そういうことで、手分けしてお客さんの避難誘導を行い、20分ほどで大体の客は外に避難が完了した。

 

 しかし、初春がまだ残っている女の子を見つけた。初春が声をかけると

 

「おにいちゃんがこれをお姉ちゃんにこれを渡してって。」

 

 そう言って渡したのは―――人形。

 

『警戒心を持たれないように、アルミを可愛らしい人形なんかに入れたりしていることが多いんです。』

 

 御坂の頭に初春の言葉がよみがえった。

 

「初春さん!それを受け取っちゃいけない!爆弾!」

 

 御坂の叫びに驚き、人形をあわてて子供から取り上げ、放り投げる初春。その人形がゆがみ、爆発が起きようとする。御坂はコインを取り出し、超電磁砲(レールガン)で破壊しようとするが、コインを落としてしまう。

 

「間に合わない!」

 

 しかし、爆発したのとほぼ同時に御坂達の後ろから二人の少年が出てきた。

 

 すると爆風はそれ以上広がることなく球形の状態でとどまり、一人の少年の右手がその球に触れるとそれは消えていく。

 

「えっ、何が起こって」

 

 その少年二人は少女たちへ振り返ることなく、走って消えた。

 

 

 

 セブンスミストの外では。

 

「キャーー!!」

「何だ今の音!? 爆発?」

「逃げ遅れた人がまだ中にいるみたいだぞ」

「風紀委員の子を見たって…」

「コレ、マジでヤバいんじゃね?」

「シャレになんねーよなぁ」

「危険です! 危ないからさがって!!」

 

 爆発の騒ぎに避難した学生と野次馬達が色めき立つ。

 

 何が起きたのかを知る人間はいない。しかし中から音が響いていたため、人々の中に悪い予想が立っていた。さらに一人の言葉で中にいた風紀委員の心配をし始める。おそらく野次馬も周囲の状況から察したのだろう。

 

 そんな群衆の中、

 

「ククク…」

 

 一人、ほくそ笑むものがいた。

 

(いいぞ、今度こそ逝っただろう)

 

 路地裏に潜り込み、周りの喧騒から離れ、1人になった彼は自分の能力に歓喜する。

 

「スゴイッ! スバラシイぞ僕の力!! 徐々に強い力を使いこなせるようになってきたッ!! もうすぐだ! あと少し数をこなせば、無能な風紀委員もアイツラもみんなまとめて吹き飛ば――――!!?」

 

 彼がこれからの復讐について考えて気分が高潮したとき、いきなり何かの力に引っ張られるように体が宙を舞い、置いてあったごみ箱に突っ込んだ。

 

「な!? 一体何が…?」

 

 思いも着かなかった不意打ちに混乱していると、

 

「ああ? 用件は言わなくても分かるよな? 爆弾魔さんよお」

 

 声がした方を振り向く。すると、そこには一人の男が立っていた。見た目からして高校生だろうか。

 

(何故ここに……いや、それにどうして自分が爆弾魔だと分かった!?)

 

「な、何の事だが僕にはさっぱり……」

「嘘つくじゃねえ。さっきの独り言からてめえが爆弾魔であることはまるわかりだろうが」

 

 どうやら今の言葉を聞かれたようだ。相手は自分が爆弾犯である事に気付いている。そう彼は考えた。

 

 男が口を開く。

 

「能力は強能力者(レベル3)相当の量子変速(シンクロトロン)ってところか。アルミを基点に重力子を加速させ、周囲に放出することで、アルミを爆弾に変えることができる。まあ実戦向きではないけど確かにたいしたもんだ。……でも残念。死傷者どころか誰一人、カスリ傷一つ負ってないからな」

 

 その言葉に驚いた彼は思わず口走る。

 

「なっ!? そんなバカなっ!! 僕の最大出力だぞ!!」

「ほう……やっぱりか」

「はっ」

 

(くそっ!今のでぼろが出たか。……仕方がない、コイツらを吹っ飛ばして口止めをするか。幸い、まだアルミのスプーンは山ほどあるんだ)

 

 そうしてカバンにあるスプーンを手にし投げようとした瞬間、

 

「消え散れ」

 

 その言葉とともに手に持ったスプーンが砂になったように手から粉となって消えた。

 

「なっ……」

構成変換(コンスチチュートチャンジ)……原子レベルで粉にさせてもらったよ」

「くっ……」

 

 男は悔しげに歯ぎしりをする。

 

「いつもこうだ。何をやっても僕は地面に……ねじ伏せられる。殺してやるッ! お前みたいのが悪いんだよ! 風紀委員だってッ……力があるヤツなんてのはみんなそうなんだろうが!!」

 

 すると、ドン! という音とともに結晶で作られた剣が男の前に叩き付けられ、男は思わず後ろに倒れしりもちをつく。

 

「俺の親友はなあ、無能力者(レベル0)の上に極度の不幸体質でな。理不尽なんて言葉じゃあ踏まされないような不幸なことに巻き込まれてきた」

 

 駿斗は言葉を続ける。

 

「……それでもそいつは他人の助けを借りながら、毎日を送っている。お前のように他人に責任を押し付けるようなことはせず、むしろ他人を救いながら暮らしている」

 

 駿斗は拳を握りしめる。

 

「てめえがその腐った考えで他の人を傷つけようとするんだったら――まずはその幻想をぶち殺す!」




構成変換(コンスチチュートチェンジ)

物体を分子レベルで分解、結合する。
結合の時には、周辺にある物体を集めることもできる。


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