とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第40話 万象再現

 神裂火織は十字教徒である。そのため、本来は十字教の天使に刃向うなどできない。

 

 しかし、神裂の所属は『天草式十字清教』。江戸時代に弾圧されていた信徒たちが独自に作り上げたもの。

 

 そのため、幕府の迫害から逃れつつも十字教を信仰するため、仏教や神道でカモフラージュに偽装を重ねた『多角宗教融合型十字教』。十字術式でできないことは神道術式、仏教術式で対応する。さらに、多神教である日本神道には対神格用の術式すら存在するのだ。

 

 だから、神裂は水翼を切り裂くことができる。

 

 さらに。

 

「こっちも忘れないでほしいものだな!」

 

 相対変換(レラティブ)によって放たれた光の塊が、その水翼を複数まとめて破壊する。

 

「hsfk敵oidj認pkuji識zxcda」

 

 すると、さらに多くの水翼が放たれる。

 

 それに対し、俺は新たな切り札を使う。

 

万象再現(リプロダクション)からの……竜王の吐息(ドラゴンブレス)!」

 

 迫りくる水翼が粉々となる。

 

 あらゆる現象、状態を『再現』する『万象再現』。それは、魔力だけでなくその流れや構成される術式さえも『再現』する。

 

 魔力そのものを直接に操ることに等しいため、呪文すらも必要がない。

 

「まだまだいくぞ!」

 

 さらに空中に、水上に、砂浜に、光る魔方陣が次々と生み出され、火球が、風が、土の槍が、水翼を破壊していく。

 

 これが幻想創造(イマジンクリエイト)

 

 あらゆる異能の力を創造する者。

 

「予想以上だな。あらかじめ魔術の勉強をしておいて良かった」

 

 インデックスからいくらでも魔術の知識を得られるため、特に滞りもなく進んだ。

 

 ふう、と息をつく俺に、再び怒涛の如く水翼が放たれる。俺は圧縮した空気を手から放ち、そのすべてを回避する。と、水翼が神裂によって切断された。

 

「案外に順調だな。といっても、これ以上の調子で来られたらまずいけど」

「ええまあ。大天使を相手して会話する程の余裕が生まれるとは、思いもしませんでした」

 

 じゃあ、そろそろ始めるか。と、俺はさらに次の切り札を出す。

 

 砂浜に突き刺さった水翼に近づき、天使の攻撃を迎撃しながらも意識を集中させる。

 

 その力を、感じ取る。そして事象解析(アナリーオール)で、不完全であろうが解析をする。

 

「……準備完了」

 

 万象再現、開始。

 

 神の力(ガブリエル)と同質の力を『再現』する。

 

「よし、神裂。ちょっとハッキングしてみる」

「ハッキングですか? 確かに魔術でも、強制詠唱(スペルインターセプト)や魔方陣に介入したりなどはありますが、大天使相手にそのようなことは……」

「お前も少しは気づいているんだろう? 俺から感じられる力があいつと同じようになったことにな!」

 

 その言葉の直後、迫りくる水翼がその軌道を不自然に曲げられる。

 

「まだまだいけるな」

 

 さらに天使の力(テレズマ)を再現し、放たれる水翼に干渉していく。

 

「bwzxd妨utg害jn確fsjqj認hsjw」

 

 相手の水翼にこめられる天使の力の濃度がさらに上がっていく。そこで、俺は複製(コピー)の水翼をつくり出して相殺した。

 

「あなた、それは……!」

「忘れたのか? 俺はあらゆる異能の力の扱いに長けているんだよ」

 

 次々と迫りくる水翼を相殺するように複製水翼を衝突させる。

 

(いくらさまざまな力を創り出せるからと言って、神の力と同等のものを振るうなんて……!)

 

 神裂は驚いているようだな。しかし、これにも限界がある。なぜならいくら天使の力を再現しても、結局その力を振るっているのは人間でしかないのだ。

 

 次々と生み出され、次第に増えていく水翼を相殺していくうちに、元からの物量の差がはっきりと露呈してくる。

 

 限界が来る。

 

「bfzng愚劣kwgty」

「ぐはっ!!」

 

 ドッ!! という音とともに、俺はその体を後ろへ吹き飛ばされる。

 

「大丈夫ですか!」

「相殺しきれなかった余波を喰らっただけだ! 問題ねえ!」

 

 最低限の治療だけを済ませると、再び起き上がり相対変換で迫ってくる水翼の一本を破壊。さらに軌道を捻じ曲げることでできた空間に体をすべり込ませて、他の水翼を回避する。

 

「くそがっ!」

 

 俺はさらに天使の力を再現しようとする。が、その結果。

 

 ついに神の力と同等の量に届くかというところまで来て、意識が遠のいた。

 

 

 

「神谷駿斗!」

 

 神裂は倒れた駿斗に向かって叫ぶが、その声に対する反応はおろか迫りくる水翼に対しても反応しなかった。しかし、

 

 バシッ! という音とともに、水翼が完全に停止した。

 

「haorhn力kognh不明gjsjg?esw」

 

 神の力はさらに攻撃を加えようとする。しかし、その時。

 

 パリパリパリパリ、と水翼が次々に割れていく。

 

 次に現れたのは、駿斗の背中から生えた2対・4枚の赤・青・黄・緑の翼。

 

 それは火のようにも、水のようにも、風のようにも、土のようにも見えた。

 

「まさか……天使の力を完全に掌握し、神の力を含め、四大天使全ての力さえも生み出したというのですか……!」

 

 神裂は珍しく震える声でつぶやく。と、次の瞬間。

 

 バッ! とその翼が消える。

 

「お前が何者なのか知らねえが言っておく」

 

 駿斗は誰にも向かわず、本人しか知らない、いや、本人でさえもはっきりと分かっていない相手に向かって話す。

 

「ここは俺が親友のために頑張るところだ! お前は引っ込んでろ!」

 

 神裂が駿斗に対し先ほどから感じていた、莫大な力が消えた。

 

 次の瞬間。空を赤い砲弾が走る。その術式の名は『赤ノ式』。

 

 土御門が放ったその砲弾は、はるか彼方にたどり着くと着弾、爆発する。

 

 そして神の力の水翼が消えていき、空は元に戻り、神の力自身も消えた。

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