とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト) 作:nozomu7
第41話 偽物
八月三十一日、夏休みの最終日。無計画な学生共が総じて宿題の片づけに精を出している日である。俺達は
「あいつらの入寮も終わったことだし、早く当麻が宿題を終わらせることができるように手伝いでもするか」
午前中に最愛と海鳥の常盤台への入寮の手伝いを終わらせた俺は、その帰り道にそんなことを考えながら街を歩いていた。言うまでもなく、俺は宿題をきちんと終わらせてある。
「さてと、当麻を探しに行きますかね。面倒事に巻き込まれていないか確認が必要だし」
まあ、予想通りだろうが。
上条当麻は走っていた。
御坂から突如告げられた『疑似恋愛』。……というか、『恋人のふり』を当麻がするだけなのだが、その理由が、常盤台理事長の孫、海原光貴が御坂に言い寄るのを防ぐため、だった。(建前は)
しかし「悪かった。そろそろいいから」と言われ別れてから、突然海原光貴に襲われた。しかしそれは、明らかに能力者のものではない。
魔術。
「多分、トラウィスカルパンテクウトリの槍じゃないかと思う」
「トラ……なんだって?」
当麻は携帯電話越しにインデックスに情報を与え、知識を求める。
「トラウィスカルパンテクウトリはアステカの破壊神の名前だね。金星と災厄を司る神で、それが投げる燃える槍(光線)は“金星の光を浴びた者全てを殺す”と言われているの。魔術としては、『槍』のレプリカである黒曜石のナイフを『鏡』として、空から降ってくる金星の光を反射させ、その光を浴びせることで攻撃するんだと思う。神様が扱うような本物の『槍』を使えば世界中の人が死ぬようなものだけれど、この黒曜石のナイフを用いた人間の使う『槍』は術式も含めてレプリカだから、1つの物体にしか効果は適用されないんじゃあないかな。やろうと思えば、とうまの右手でも防げると思うんだけれど」
「あいつが変装しているのも、それに関係しているのか!?」
当麻は長ったらしい説明をざっくりとだけ理解すると、さらに聞く。
「ナイフで皮膚をはがして着るの」
当麻はギョとする。
「変装ってだけなら、ある程度の面積があればいいと思うけれど」
そうインデックスは付け足す。
そうやって走っているうちに、セメントの廃工場の中に追い詰められた。
そのため、相性は非常に悪いと言える。
当麻にとっての唯一の救いは、今いる場所か。
バシッ! と廃工場に音が響く。ついに当麻の拳が魔術師に届いたのだ。
そして、落ちてきた鉄骨を回避する。砂埃が舞い上がる。
それが晴れると、魔術師の変装は既にはがれていた。
「残念だぜ……お前とは友達になれると思ってたのに」
「自分はたった一度でもそんなこと思ったことはありませんよ……!」
「じゃあ、お前が御坂のことを話していた時も、偽物だった「偽物じゃあだめなんですか」のか?」
倒れていた魔術師は立ち上がる。
「自分だってこんな真似はしたくなかった! しかし、私たちの組織は『上条・神谷勢力』を危険なものとみなしました。あなたが穏便でいてくれたら素直に引き下がれたのに!」
「『上条・神谷勢力』……?」
「あなた達は2人揃うだけでも限りない力を持っています。ましてや、科学側では第三位とつながりを持ち、さらに魔術側では魔導図書館及び聖人など
そしてさらに言った。
「あなたたちが穏便でさえいてくれたら、御坂さんを騙したりなんてせずに済んだのに!」
「お前たちが俺たちを狙う魔術師でいいな?」
俺は近くから感じられた魔力を元に、そいつらの居場所を突き止めた。
「
「あいつは1人でも相手を倒せるさ」
「ふん。エツァリ相手にいつまで持ちこたられるものかな」
そう言って俺は周囲に結晶をいくつか出現させた。そして、その構成を少し変えることで色を付け、そこに魔方陣を生み出す。
「魔術だと……ばかな!」
「魔術っていろいろ制限もあるけど、一度に複数併用できるってのは大きなメリットだよな」
俺は身体強化術式を使用、結晶の硬鞭を振るう。周囲の魔術を防ぎながら、敵に向かって飛び込む。
「てめえらが俺たちを、その周りの人間をも敵とみなしたっていうのなら……まずはその幻想をぶち殺す!」
上条当麻は、上から降ってくる鉄骨に対して、その腕で顔をかばうことくらいしかできなかった。
次の瞬間、目の前がその鉄骨で覆いつくされる。大量の砂煙が舞い上がり、全ての視界を覆う。
しかし、
「はは……信じらんねぇ」
当麻は生きていた。かすりもしなかった。
「御坂か?」
そう呟く。どこか、陰で立っている少女に向かって。
「……自分の、負けですね」
「さあな」
当麻はそう言ったが、魔術師は首を横に振った。
「ですが、攻撃は今回限りでは終わりません。あなた達と御坂さんはこれからも狙われ続ける」
当麻は黙って彼の言葉を聞いていた。
「……守ってもらえますか、彼女をいつでもどこでもまるで都合のいいヒーローのように駆けつけて、彼女を守ると――約束してくれますか」
魔術師エツァリはそう言った。勝者に託したいと、敗者は言った。
それに対し、当麻は言った。
「 」
魔術師は苦笑して呟いた。
「―――全く……最低の返事だ……」
その会話を聞いた1人の少女は、その顔を赤く染めた。