とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト) 作:nozomu7
結局インデックスはその後、小萌先生にタクシー代としてなぜか二千円札を渡されてから追放された。
「では、あらためて転校生を紹介しますよー」
小萌先生のやや疲れ気味な声を合図に長い黒髪の少女が入ってくる。あれ、あいつは……
「霧ヶ丘女学院から来た姫神秋沙さんでーす! 仲良くしてあげてくださいねー」
一瞬教室内が静まり帰った後に、クラスメイト、特に男子が声を上げた。
「霧ヶ丘って、あの……」
「能力開発部門トップクラスの名門校じゃん」
「なんでウチなんかに?」
「ほうほうほう! ええなー、正統派黒髪ロングときましたか!!」
よし、あとで青髪ピアスの変態野郎はその頭の中身を書き換える必要がありそうだ。
俺がそんなことを考えていると、当麻は見知った顔を確認したからか、安堵のあまり思わず机に突っ伏していた。
「よ、良かった。地味に姫神で本当に良かった。しかも巫女装束じゃなくてツッコミどころの無い地味な制服に身を包んでくれて心底本当に良かった……」
「いや、いくら姫神でも巫女装束で学校に来ることはないと思うぞ?」
当麻の台詞に俺はつっこむ。
「まあ、これからよろしくな。姫神」
俺の台詞にクラス全体が「はやとん、知り合いなのか!?」「ということは、もしかして上条も!?」「どっちだ! どっちがフラグを立てたんだ?」と騒ぎ始めたのは、小萌先生が体育館に行くように大声で指示するまで続いた。
始業式は体育館で行う。そのため、廊下は生徒たちでちょっとした休日の駅前ぐらいに混みあっていた。
「なあ、姫神。お前から
その喧騒の中、俺と当麻は姫神に話しかける。
「あの人の結界がなくなったから。この魔法の十字架で。力を抑えている」
そう言って姫神は首にかけられた十字架を見せる。
「そうなのか(ってことは俺が右手でそれに触ったらまた吸血殺しの力は発生するってことだよな)」
当麻がそんなこと言うので俺は言ってやった。
「お前がラッキースケベを発動させなければ大丈夫だよ。じゃあ、姫神。悪いけど俺たちはインデックスを探しにいかなければならないから」
「うん。また後で」
「何がラッキースケベだよ……」
俺たちはインデックスを探しにクラスメイトから離脱することに成功した。
「インデックスが大人しく家に帰っていてくれるといいけれど」
当麻はそう言っているが、
「不幸な予感がする」
俺はそう返した。
俺たちは、体育館で始業式が始まり廊下に溢れていた生徒達がいなくなっても、未だにインデックスを探していた。
すると、
「すごいすごい!! それって、とうまが言ってた『はいてく』って奴だよね!」
と、どこからか聞き慣れた声が聞こえてきた。
「今、どこから声がした?」
「いや、ちょっと待て。分からん」
俺たちは立ち止まって耳を澄ませる。
「ひょうかもいっしょに着ようよ!」
「え、でも」
すると、隣の保健室からはしゃぎ声が聞こえた。
「あんにゃろー、やっぱり校内で油を売ってやがったな!」
「おい、ちょっと待て――」
当麻は俺の声を聞くより先に保健室の入り口の引き戸に手をかけると、その手に力を入れて開け放つ。
「おいっ、インデックス! お前がなんで保健室に――」
もはやお約束のように、2人の着換え中の少女たちがいたそうだ。まあ、当麻にとってはいつものことなので、「ひょうかもいっしょに着ようよ!」の時点で俺は後ろを向いておいたが。
で、俺たちは食堂で、霧ケ丘女学院のセーラー服を着た眼鏡の少女と向かい合っていた。
名前は風斬氷華というらしい。
「ひょうかは『ともだち』だよ」
インデックスはそう言った。
しかし、俺としては彼女から発生する
なあ、と俺が言いかけたところで小萌先生が乱入してきた。
「上条ちゃんに神谷ちゃん! 始業式はどうしたのですか? そもそもどうしてシスターちゃんが……」
説教が始まった。
「いや、先生それは……なあ、風斬も何か言ってやって――」
当麻が言い訳を始め、俺も加勢しようかとした時、ふと風斬のほうを見ると
「あれ……?」
少女は忽然と消えていた。
その後鞄を回収し、帰宅するために昇降口に差し掛かった時、当麻が自分の服を何者かにチョイチョイと引っ張られた。
何だ? と振り返ると、そこに姫神が立っていた。
「ありゃ? 何やってんだ姫神。お前まだ帰ってなかったのか?」
「……人が転校してきたというのに、その淡白な反応は何?」
あー……、などと言う当麻の様子を見て、完全に忘れていやがったなこいつ、と俺は頭を抱える。
「そう、私はやっぱり。影が薄い女なのね」
「いや、あの、そんなに落ち込むなって。何かお前の周りだけ太陽の恵みが希薄だぞ……」
落ち込んでいる姫神だったが、やがて顔をあげると、
「そんな事より」
と話を切り出した。
「(そんな事って……やっぱ、こいつも掴み所がねーよな……)」
当麻が呟いている。
「あの、メガネの女を風斬って、呼んでいるのを聞いたんだけど」
「あん?」
視線を移すと、少し離れた校門の辺りでインデックスと風斬が楽しそうに会話していた。
「ああ……そうそう、お前と同じ転校生だってさ。学校も同じだったんだし、もしかして知り合いなのか?」
俺は聞くが、姫神は風斬の顔を睨むと言うべきか、観察と言うべきか……友人ではないどころか、あまり好意的でない、警戒したような視線で見ている。
「風斬、氷華。私の通っていた霧ヶ丘女学院でも彼女の名前は見た事がある」
霧ヶ丘女学院。
姫神によると、単純に能力開発分野だけなら常盤台に肩を並べる名門学校であり、常盤台が汎用性に優れたレギュラー的な能力者の育成に特化していることに対し、霧ヶ丘は奇妙で、異常。でも再現するのが難しい、イレギュラー的な能力者の開発のエキスパートであるらしい。
「いつもテストの上位ランクとして学校の掲示板に張り出されていたから」
霧ヶ丘は能力の有能性ではなく、その希少性でランク分けされているとのことだ。つまり、風斬の能力はとても希少だという事になる。
「へぇ、じゃあ、アイツの能力ってかなり珍しいんだな。どんなのか知ってるか?」
「わからない」
姫神秋沙はそう言った。