とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト) 作:nozomu7
「まずは2人、か……悪りぃな。お前らを残しちまって」
インデックスと御坂が行ってしまうと、当麻はそう言った。
「……う、ううん。私は別に…最後でも良い、です。それより…あなたたちの方こそ……」
「ああ、俺たちは元から出るつもりはねぇんだ」
風斬の言葉に当麻はそう返した。魔術師の狙いは俺たちなのだ。
「な、なんでですか?」
「あいつの目的は俺たちだから、下手に移動したら被害が拡大するばかりだろ。じゃあ、とりあえず佐天さんと最愛、海鳥に風斬を外に出す方法を――」
佐天さんの言葉に、俺がそう答え終わらないうちに、ゴガン!! と再び地下全体が大きく揺る。今のは、確実にさらに近い場所だった。
魔術師は、確実に俺たちを追い詰めようとしてきている。
「行くか」
「ああ。悪い、みんな。お前らはここで白井が来るのを待っててくれ」
俺たちはそう言うと、音がした方に向かって進みだす。
「え…あなたは……」
風斬が言いかけた時、さらに破壊音とともに地下街が大きく振動した。
魔術師は、確実に近づいて来ている。
「俺たちは……あれを止めてくる」
「悪いな、4人とも」
俺たちは4人の言葉を待たずに闇に向かって走り出した。
地下街に
俺たちはその前に出る。
「
その魔術師、シェリーがオイルパステルで指揮を振るう動きに連動するように、ゴーレム、エリスは拳を当麻へ叩き落とす。その拳があたる前に、俺は
「ふん。じゃあこうするか」
魔術師はそう言うと、ゴーレムの腕が床に叩き付けられて衝撃波が生じ、足場が不安定になる。
「クソッ!」
そこに迫りくる石の拳に対して、俺は当麻を突き飛ばすと自分自身もその隣に飛び込むようにして床を転がり、回避した。
さらに、強烈な振動が地面を揺らす。
「地は我の力。そもそもエリスを前にしたら、誰も地に立つ事などはできはしない。ほらほら、無様に這いつくばれよ。その状態で私に噛みつけるかぁ、負け犬」
「くそ!」
勝ち誇るシェリーを俺は倒れたまま睨みつける。
ただシェリーに勝つだけなら簡単とも言える。あのゴーレムだって、
しかし、ここは地下街だ。攻撃によって生じる余波がどんな被害をもたらすかが分からない。表に出ているであろう他の人たちがどのくらいここから離れているのかも分からない。
戦っているフィールドが、俺の手段を封じていた。
「お、前……っ!」
「お前でなくて、シェリー=クロムウェルよ。イギリス清教、
なに? と俺は眉をひそめた。
イギリス清教と言えばインデックスと同じ組織の人間である。
なら何故こんな事を……
シェリーは薄く笑いかけて、
「戦争を起こすんだよ。その火種が欲しいの。だからできるだけ多くの人間に、私がイギリス清教の手駒だって事を知ってもらわないと、ね? ――――エリス」
答えと共に最後の、止めの指揮を振るった。
その時。
「な……」
風斬氷華がそこに立っていた。
俺の反応が遅れた。術式が発動できなかった。そこに、瓦礫が降りかかり――風斬の頭を壊した。
そう、壊した。砕いたのではなく。
まるで、陶器の一部が壊れるように。
「何……これ?」
風斬が店のウィンドウに映った自分の姿に、震える声で言葉を漏らす。
「い、いやぁぁぁ」
風斬はそう言うと、どこかへと駆け出してしまう。
「風斬!」
俺は追いかけようとするが、その前にゴーレムが天井を崩して瓦礫の山を作り上げたので出遅れてしまう。
煙が晴れた時には、風斬もシェリーもいなくなっていた。
「やっぱり……そういうことだったのか」
「駿斗! どういうことなんだ!?」
俺が呟くと、当麻がその言葉に反応して尋ねてくる。
「恐らく風斬氷華はAIM拡散力場の集合体なんだろうな」
人間の存在が認知されるということは、そもそもどういうことなのか。
人間なら誰もが持っている情報を与えれば、それは恐らく人間と言えるかもしれない。
それが恐らく風斬氷華。
この学園都市にあふれているAIM拡散力場の集合体。
見た目は光学操作系のAIM拡散力場が、重さは重力操作系の、体温は発火能力系の、触れたり、移動する力は念動力系の……といった具合に、人間であるために必要な情報がAIM拡散力場によって揃えられたことにより、生まれた存在。
「だから、俺にはあまり近づこうとしなかった……?」
本能的になのか、当麻には近づこうとしなかった。
少し疑っていた俺はともかく、当麻はあまりの衝撃に呆然としていた。
「さあ、どうする。当麻」
それでも俺が聞くと、力強い顔を見せてくれた。
「決まってんだろ。助けに行く」
俺たちが風斬を探しに動こうとすると、当麻の携帯電話が鳴る。
小萌先生からだ。
『上条ちゃんですか?』
小萌先生が言うには、学校の防犯カメラに風斬氷華は映っていなかった、とのことだ。
そして、やはり俺と同じように風斬氷華をAIM拡散力場の集まりだと言った。
「そういえば、だったらなぜあいつはそのことに気が付いてないんですか!?」
『簡単な話ですよ。自分が人間ではないということに気が付かなければ、本人は何の疑問も持たないはずなのですよ』
「そんなのって……」
当麻の表情が歪む。
『ひどい、ですか?』
しかし、そんな当麻に小萌先生は言った。
『風斬氷華ちゃんは、あなたにとっては大切でない、幻想のような存在だったのですか?』
「「そんなわけねーだろ」」
俺たちの声が重なる。
「例え俺の右手であっさり消えてしまうような幻想だったとしても……」
「俺たちはその幻想を守り抜く!」
小萌先生の嬉しそうな声が、携帯電話ごしに聞こえた。