とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第49話 ともだち

 風斬氷華は地下街の床に座っていた。頭の中は、あのときガラスに映っていた自分の姿のことでいっぱいだった。

 

 自分は……人間ではない。あの姿は、化物のそれだ。

 

 そのことを考えてから、2人の少年と1人の少女のことが思い浮かぶ。

 

 “初めて”給食を食べた。

 

 “初めて”ゲームで遊んだ。

 

 “初めて”体操服を着た。

 

 本当は、そこで気が付いていなければならなかったのだろう。少なくとも、自分自身に疑問を抱くくらいはしておくべきだった。

 

 だけど、自分が気づく前に、あの少年たちに知られてしまった。

 

 あの人たちと友達になれるなど、ただの幻想に過ぎなかったのだろうか。

 

 そんなとき、震動が起こってその思考を中断させられる。

 

 原因はあの石像だった。

 

「『虚数学区の鍵』だからどんなものかと見てみれば……こんなものを大事に抱え込むなんざ、科学ってのは狂ってるよな」

「なぜ……? なぜ、こんなひどいことを」

 

 辺りを壊しながら平然とする相手に向かって、風斬は声を震わせながらも言う。

 

「なに? ひょっとしてあんた、自分が死ぬのが怖いとでも思ってるのかしら? 化物のくせに。あんな瓦礫を喰らっても大丈夫なてめえが、人間であるはずがねえだろうが」

 

 人間ではない。その言葉に、風斬りは涙が止まらなくなる。

 

「あなたみたいな化け物を受け入れてくれる場所なんて、テメェの居場所なんて、どこにもないんだよ――――死ね。化け物」

 

 その言葉と共に、岩石の塊が動く。風斬には、目をつぶることしかできなかった。

 

 音が消えた。

 

 だが、痛みは来なかった。

 

 風斬は恐る恐る目を開ける。と、そこには。

 

 2人の少年が、その体で石像を止めていた。

 

 

 

「くっ、はは。あはははは!とんだ笑い話なおい。喜べよ『化け物』! お前のあんな醜い姿を見ても守ってくれるような悪趣味な人間もいるみたいだからな!」

 

 俺たちの目の前の魔術師、シェリーはそう言って壊れたように笑う。

 

「……どう、して……?」

 

 痛々しい声で、風斬から問いかけられる。

 

 どうしてだって? そんなのは決まっている。 

 

「ばかばかしい。そんなの決まってんだろ」

 

 当麻はその問いに悩むことなく答える。

 

「お前が俺を、俺らの事を本当はどう思ってるかはわからない。けど俺は、俺らは、お前の事を『ともだち』だと思ってる。それに、インデックスだってそうだ。お前を守る理由は、それさえあれば十分だよ」

 

 インデックスは、「ひょうかは『ともだち』だよ」と言った。もちろん、俺たちにとってもそれは変わりない。

 

「お前は、俺たちやインデックスと『ともだち』でありたいと言ってくれるか?」

 

 俺のその言葉に、風斬は何も言わずに頷いてくれた。

 

「そうこなくっちゃな……。まずは、お前のその幻想を現実(ここ)に創造する!」

「エリス――1人残らずぶち殺すぞ」

 

 無表情のまま、シェリーはオイルパステルを振り下ろしていた。術者のその動きに連動し、ゴーレムがその巨大な腕を床目がけて振り下ろす。地面に足をつけて立っている人間を全て一度に無力化する、あの攻撃だ。

 

「その手を喰らうのはもう飽きたんだよ!」

 

 俺は念動鎧(フォースアーマー)を展開すると、その動きを抑えにかかる。足りない分を、魔術で補強し始める。

 

「ちっ! やっかいだなその幻想創造(イマジンクリエイト)はよ!」

「まだまだいけるぜ!」

 

 俺はさらに念動鎧の形状を変化させ、手から爪の形状に伸ばす。さらに、呪文を唱えて動きを封じる拘束術式を発動する。

 

「くそ!」

 

 シェリーは吐き捨てるようにそう言うと、一度ゴーレムを構成する岩を切り離し、バラバラにしてしまう。煙が巻き起こり、俺たちの視界を遮った。

 

「あいつ……一旦体制を立て直すつもりか!」

 

 当麻が叫ぶ。

 

「分が悪いなら、こっちに都合がいいように立て直すだけだ!」

 

 声が聞こえてくる。なら、

 

「煙ごとあいつを吹き飛ばす! 当麻は飛び込め!」

「おう!」

 

 当麻は迷いなく立ち込める煙の中に飛び込んでくれる。

 

 俺は御使落し(エンゼルフォール)のときに創った能力で、掌から風のブースターを発射してその煙を薙ぎ払うと、それを細く、集中させて発射する。

 

 煙が払われると俺はそのまま掌をシェリーに向けるが、シェリーはすでに術式の発動のために地面に座り込んでいたため、そのまま耐えられてしまう。

 

 しかし、それでいい。当麻がそのままシェリーに迫る。

 

「くっ!」

 

 間一髪で、ゴーレムが出来上がり、当麻に向かう。しかし、そこで動いたのはなんと風斬だった。

 

 風斬がその細い腕で、ゴーレムの拳を受け止めていた。

 

「おおおおお!」

 

 ゴーレムの発生に伴って崩れ始めた足場であるにもかかわらず、当麻は思い切り跳んだ。

 

 シェリーの懐に入り込む。

 

「俺の『ともだち』を狙って、戦争さえ起こそうと思ってんだったら……まずは、その幻想をぶち殺す!」

 

 決着がついた。

 

 

 

 シェリー=クロムウェルは逮捕され、この事件は決着がついた。

 

 まあ、魔術のことが一般人にばれると問題があるから、イギリス清教が学園都市と適当に交渉を着けて回収するのではないのかな、というのが妥当なところであろう。

 

 しかし、今は問題があった。

 

「とうま、はやと。言いたいことは分かってる?」

「あんたたち、何があったのか説明してもらうわよ?」

風紀委員(ジャッジメント)としてお話を聞かせてもらいますの。よろしいですわよね?(ついでにツンツン頭の類人猿から、お姉さまとの関係を事細かに聞き出さなければ……)」

 

 と、当麻にインデックス、御坂、白井の三人が迫り、

 

「神谷さん。何があったのかくらい説明してください」

「駿斗兄ちゃん。私たちを置いてけぼりにしたのですから、超説明してもらいますよ」

「ってことで、構わないな?」

 

 俺は佐天さん、最愛、海鳥の三人にしっかりと説教を受けた……。

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