とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト) 作:nozomu7
「今日は“あの日”か……。最愛と海鳥には昨日電話しておいたし、大丈夫だよな」
朝起きて朝食を作りながら、俺はつぶやく。
「今日はインデックスの飯当番は当麻に任せる日だから気が楽だな」
そして朝食を食べ終え出かける用意を終えると、俺は待ち合わせ場所へと移動する。
「最愛。海鳥」
俺は2人が先に待ち合わせ場所に来ているのを確認すると声をかけた。
「「駿斗兄ちゃん」」
「じゃあ、行こうか」
俺たちはそれだけ言うと、目的地に向かって動き出す。
いつもは一緒にいると話が途絶えない俺たち3人だが、今日はそういった雰囲気ではなかった。
……あたり前だろうな。“あの日”なのだから。
あの時はまだ実感がなかった。だけど時が経った今、“あの日”に起こったことの意味も少しなら分かることはできるようになった。
“あの日”からすでに何年も経っている。だけど、決して忘れられない出来事でもある。
俺たちは第十三学区へと移動する。
第十三学区。
幼稚園や小学校が多い学区であり、そのため子供達を犯罪から守る為治安に多くの予算がつぎ込まれていて、警備員以外にも多数の教職員が街を警戒している。また不慮の事態に備え大学付属の大型病院もいくつも設置されている、まさに子供のための学区とも言える。
学園都市のイメージ戦略として、パンフレット作成時にもよく利用されているような場所だ。
特徴としては……俺たち
「お久しぶりです、園長先生。こちらの2人はほら、俺とよく一緒にいた絹旗最愛と黒夜海鳥です」
「「お久しぶりです」」
俺たちは園長先生に挨拶をした。
「駿斗君、久しぶりだね。そちらの2人は最愛さんと海鳥さんでいいのかな?」
園長先生は昔と変わらない、穏やかな声で話す。
「「はい」」
「はは。あいかわらず双子みたいに息がぴったりだね」
園長先生はそう言うと、立ち上がった。
「今日駿斗君が来たってことは、用事はあの事でいいんだね?」
「ええ」
俺たちは園長先生と建物を出ると、施設内の中でも植物が、特に木が多い場所に移動する。ここには石碑があるのだ。
俺がこの施設を出る直前に突然この世からいなくなってしまった12名の子供たちの名前が、そこには刻まれている。
あの日、俺たちは施設のみんなで出かけていた。みんな久しぶりに施設の外で遊べるのではしゃいでいた。あのような事故が起こるとも知らずに。
突然空から降ってきた正体不明の物によって、園長先生たちと離れた場所にいた子たち、そして俺のすぐそばにいた最愛と海鳥を除いた12人の幼い子供たちが消えて行った。
詳しいことは結局分からなかったが、恐らく無意識のうちに
いつも悔やまれる。あの時、すでに幻想創造の存在に気が付いていればよかったのに、と。
結局空から降ってきたのは、公式には小さな(といってもその学区の6分の1を吹き飛ばしたほどの)隕石だった、ということになっている。
「さすがに『88の奇蹟』のようにはいきませんよね……」
最愛が呟く。
『88の奇蹟』。
3年前、オービット・ポータル社のスペースプレーン「オリオン号」が、試験飛行中に墜落したにも関わらず、奇蹟的に不時着に成功し、乗員乗客88名が無事生還したという出来事だ。
「まあ、あんなのは例外中の例外だよ。まあ、こんな目に合うのもかなりの例外だろうがな……」
突然いなくなった、友達。いや、友達と言うよりはむしろ家族と言った方が正しかった。
大切なものたちが消えてしまった。まるで幻想であったかのように。
俺たちには……つらい過去が多すぎる。それも、真相や原因がよく分かっていないことばかりだ。
置き去りにされたこと。
『暗闇の五月計画』。
12人の置き去りの命を奪った、正体不明の事故。
俺が知らない、覚えていないだけで、他にも様々なことがあったはずだ。
それが『置き去り』。
下手すれば最愛と海鳥のように非人道的な実験の『被検体』にされかねない子供たち。
そのためにできることは、ないのか。
その後はしばらく子供たちの相手をした後、俺たちは学校や学生寮が並ぶ、俺たちの生活の場である第七学区に戻ってきた。
「いやー、やっぱりいつもの場所のほうがいいかな。なんか、歩いていても落ち着くような気がするな」
まあ、最近としては魔術師の襲撃がある可能性もあるので、全く安心、という訳にもいかないのだけれど。
「そうだな。前みたいにやたらと警戒する必要もなくなると、余計にな」
まだ闇の感覚が残っているのだろうか、この少女は。
それほどまでに、その闇は深かったのか。
「駿斗兄ちゃん。今の生活はどう思っているか、超聞いても良いですか?
そんなことを考えていた俺は、最愛が投げかけたその質問にこう答えた。
「施設にいたころは、みんなとただ遊んでいただけだからそれも楽しかったと思うよ」
だけど、
「ここの生活もやっぱり退屈しねえよ。お前らが再び一緒になってからは、余計にな」