とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第56話 信実

 俺が当麻たちと合流したころには、すでに戦いは終わっていたようだった。

 

「はあ、案外と簡単に終わった気がするな。今までと規模が違ったのに比べると」

 

 俺はそんな感想を抱きながら、当麻たちの下へと向かう。

 

「静かだね。あれだけ多くの人が暴れていたとは思えないかも」

 

 インデックスは夜空を見上げながらそう言った。

 

「そうだな……」

「おい。悪いが、こいつを解いちゃくれんかな。このまま彼女を放っておけるはずもないのよ」

 

 そこに、一つの声が割り込んできた。

 

 ステイルが拘束した天草式十字凄教教皇代理、建宮斎字だった。

 

「なあ、お前さん……彼女がこの後どういう扱いを受けるか分かってるんだろうな」

「は? どういう……」

「殺されんのよ、彼女はな。他ならぬ、ローマ正教の手によって!」

 

 

 

 法の書が解読されれば、その日のうちに十字教の時代は終わりを告げる。

 

 天草式は隠密に特化した宗派だ。『隠れる』ことを第一とする彼らはそんな大きすぎる力を求めたりはしない。

 

「天草式は女教皇(プリエステス)が去ってから弱体してるって話だよ。だから、法の書の絶大な力を利用しようとしたってことも……」

「いや、ローマ正教だってそうだ。十字教最大宗派である彼らが、『十字教の終わり』なんてものを望んでるとは思えないのよな!」

 

 インデックスの言葉に、建宮はそう返した。

 

 ローマ正教から狙われたオルソラ。そこで、日本まで来てそこを拠点とする天草式に助けを求めた。

 

 しかし、結局は最後まで信頼することができずにローマ正教から一人で逃げることにした……。

 

「じゃあ、なんでオルソラを助けたんだ?」

「理由なんてねえのよ。女教皇……あの方を追いかけることだけを考えてきた我らには」

 

 神裂火織。かつての天草式のトップ。

 

 しかし、彼女は神の加護ゆえ幸運に恵まれてきたが、それは周囲の人間に不運を押し付けてしまうと言うことでもあり、それに苦悩した末に天草教を出奔してしまった。

 

「我らはあの方に居場所を返して差し上げなければならない」

 

 と、そこまで話した時。

 

 悲鳴が聞こえた。

 

 

 

 オルソラ教会。

 

 オルソラ=アクィナスが世界3ヶ国の異教の地で神の教えを広めた功績により、特別に自身の名前を冠する事を許され、現在、建造中の教会である。

 

 そこには今、200人を超すローマ正教のシスター達が彼女を取り囲んでいた。

 

「ったく、手間ぁかけさせちゃあ駄目でしょう? 私も含めて皆さんお忙しいんですよ。残念ながら、あなたのお遊びになんざ付き合っている暇なんてないんです。分かってんなら大人しく処刑を待っていてくださいね」

 

 アニェーゼ=サンクティスはそう言った。

 

 当麻と、駿斗と、インデックスと、ステイルと。オルソラ=アクィナスを助け出すために彼らたちと協力してはずの彼女が。

 

「それにしても、随分と頼れるお友達が少なかったみたいじゃないですか。まさか、偶々、現地で出会った天草式なんぞに協力を求めちまうとはね。駄目ですよぉ、あんなのが十字教を名乗るのもおこがましいってなもんですよ」

 

 縛られて床に横たわるオルソラにアニェーゼが蹴りを入れる。

 

 何故、こうなってしまったのだろう。

 

 どうしてあの少年たちは、最後に自分を見捨ててしまったのだろうか?

 

「ったく、獣を騙すのって簡単ですよね。ちょっと手なずければ後は向こうが獲物を口に咥えて持ってきてくれんですから!」

 

 その言葉にオルソラの目が見開かれた。彼女は震える唇を動かす。

 

「あの方、たちは……騙されたので、ございますか……? そうで、ございますか」

 

 彼女はシスターにふさわしい、希望を見つけたような柔和な笑みをつくった。その表情に、アニェーゼは怪訝そうな様子になる。

 

「ナニ笑ってんですか、あなた」

 

 オルソラはアニェーゼを見つめながら、ゆっくり優しい声で言った。

 

「何となく……思い知らされたのでございますよ。私達、ローマ正教の本質がどういうものかを」

 

 その言葉に、周りのシスターが警戒するような表情になった。

 

「彼らは信じる事によって行動するのでございますよ。人を信じ、想いを信じ、その気持を信じて、どこまでも駆けつけてくれるのでございましょう。それに対して、私達は騙す事でしか、行動できない。それのなんと醜い事か」

 

 そこまで言った彼女は視線を落とし、

 

「もっとも、私にしても……私が最初から天草式の皆さんを信じていればこんな大事には発展しなかったでしょう。結局、私達のこの無様な姿こそが、ローマ正教の、本質、なのでございましょう」

 

 その言葉に再び怒りを覚えたアニェーゼは、再びオルソラを蹴りつける。

 

「そんなに死にたいならお好きなようにしちまってください! せいぜい、自分をこんな目に遭わせちまったあの馬鹿どもをうらみながら死に逝けばいいんですよ」

 

 ただ黙って蹴り続けられていた彼女は、再び口を開いた。

 

「一体何を恨めば良いのでございましょうか?」

「な……に?」

「彼らには、元々、戦う理由などなかったのでございますよ。それでも彼らは、見ず知らずの私のために駆けつけてきてくれたのでございます……ほら、これ以上に、魅力的な贈り物が、この世界のどこにあるというのでございましょう」

 

 彼女は両手を胸の前で組み、ひたすら、自分を助けようと駆けつけてくれた彼らたちに感謝の意を示すように、目を閉じ、祈るような姿勢になった。

 

 その時、扉が開け放たれた。

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