とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第57話 オルソラ=アクィナス

 『神の教えを信じる者を殺めてはならない』という決まりがある。それによって、オルソラ=アクィナスはすぐには(・・・・)殺される心配はない。

 

 しかし、教会から追い出されたものなどが『神の敵』というレッテルを張り付けられれば話は別だ。

 

 そのために、オルソラは宗教裁判にかけられようとしている。

 

 しかし、ステイルたちは簡単に助けに行けはしない。下手に手を出せば、『ローマ正教内部の問題にイギリス清教が手を出した』ということになり、戦争が起こりかねないからだ。

 

「まあ少年たち、そこまでへこむなって。イギリス清教に戦う理由がなくとも、俺たちには大ありなのよな。ちょっくら連中のアジトにお邪魔して、うちのバカどもを救出するついでにオルソラ嬢も助けてやるのよ」

 

 建宮はそう言うと、俺たちに背を向ける。

 

「まさか、1人で行く気かい」

「なあに。こちとら、でかい組織とぶつかり合うことにはなれてるのよ」

 

 建宮は歩いて行った。

 

「そう言えば、君に預けた十字架はどうしたんだい」

 

 建宮が見えなくなったあたりで、ステイルが当麻に聞く。

 

「あ、悪ぃ。オルソラに預けちまったままだった。あれって重要なものだったのか?」

「いや、君が持っていることに価値があったんだが……もういい。どうせ、もう君が持っている必要はないだろうからね」

 

 ステイルはそう言うと去ってしまったが、俺は最後の台詞が気になっていた。

 

 『君が持っていることに価値があった』とはなんだ?

 

 十字架というものが、十字教の象徴のようなものであることくらいは俺でも分かる。

 

 それを持つ意味とは? 俺には分からない。

 

 ちょっと待て。

 

 十字架が十字教の象徴だとすると……。

 

 

 

 当麻はオルソラ教会の扉に右手を叩き付ける。それだけで、結界はあっさりと消えた。

 

 俺たちはためらうことなく扉を開ける。と、そこにはオルソラを囲い込んでいるローマ正教、アニェーゼ部隊の姿があった。

 

「ただの素人がなんで連れてこられたのかと思いきや……結界に対して絶対の力を持つ『何か』があるという訳ですか」

「結界はあまり良くないアイディアだったんじゃないか。ただでさえ、オルソラ教会って場所は分かりやすいんだから。魔力張り巡らせて、いかにもやばいことしてますってアピールしなくてもな」

 

 俺は重力操作(グラビティ)でオルソラを引き寄せると、前に進む。

 

「一応聞くけどよ。もう何か言い訳をするつもりはねえんだな?」

 

 当麻は言葉の端々に怒りを見せながら言う。

 

「誤魔化す? 何を? ……この状況を見て分かんないんですか?」

 

 200人以上の味方に囲まれているという優越感からか、アニェーゼは平然と言った。

 

「さあ、この人数相手にあなたがどういう選択を取るべきか、こっちが最後のチャンスを与えてやりますよ。まあ、どういう選択を取るべきかは分かっちまっていますよね」

「ああ。分かり安すぎて困るくらいにはな」

 

 俺は言い返す。と、当麻がアニェーゼに一気に近づくと拳を叩きこんだ。

 

「何を……」

「「オルソラを守るに決まってんだろ!」」

 

 俺たちが言うと、周りのシスターたちが武器を構えた。

 

「面白いですよあなたたちは……この状況で2人の人間に何ができるのか。見せてもらうとしましょうか!」

 

 すると、教会の壁の一部が爆発した。そこから出てきたのは。

 

「全く。勝手に始めないでほしいものだ」

「「ステイル!」」

 

 炎をまとったステイルがその穴から出てきた。

 

「ばかな、イギリス清教!? これはローマ正教内の問題なんですよ。内政不干渉は……」

「ああ。それは残念ながら適用されないよ? オルソラ=アクィナスの胸にイギリス清教の十字架がかかっているだろう。それはうちの最大主教(アークビショップ)が直々に用意した一品でね。それを誰かの手にかけてもらうことは、そのままイギリス清教の庇護を得ることを示している。……つまり、今彼女はローマ正教ではなく、僕たちイギリス清教の一員であるということさ」

 

 アニェーゼは絶句する。

 

「そ、そんな詭弁が通じるとでも」

「想っちゃいないね。だけど、彼女をローマ正教の一存だけで審問にかけるということであれば、イギリス清教は黙って見過ごすわけにはいかないんだよ……それに何より、君たちはあの子に刃を向けてくれたんだからね」

 

 ステイルは言った。さらに、ドガン! と外から壁に穴があけられる。

 

「俺たちが戦わなければならない理由は言うまでもないよなあ?」

「建宮!」

「せっかくこっちで決着をつける手はずを整えていたってのに、お前さんたち予想以上のバカなのよな。ま、見ていて楽しいバカは嫌いじゃあねえが」

「そうだよ」

 

 さらにそこに、聞きなれた声が割り込んできた。

 

「インデックス……」

「でも、こうなっちゃったら仕方がないよね」

 

 白い修道女は言う。

 

「助けよう、オルソラ=アクィナスを、わたしたちの手で」

「「ああ!」」

 

 その様子にしばし唖然としていたアニェーゼはただ一言、命令を出した。

 

「コロセ」

 

 

 

 当麻にオルソラを任せた俺は、それからしばらくしてから、その行先を塞ぐように立ちはだかった。

 

「さてと……こんな大乱闘はさっきのと合わせても二回しかないんだけどな」

 

 俺はつぶやくと、万象再現(リプロダクション)を始めた。

 

 今回『再現』するのは、神の力(ガブリエル)天使の力(テレズマ)

 

「さすがに、あそこまでバカげた量は扱えないけれど」

 

 俺は『複製水翼』を相手に叩き付けていく。

 

「さてと……これではオリジナルの5、6割しか使えてないんだ。できれば幻想創造(イマジンクリエイト)の名に恥じないよう、同じ量を扱いたいものだな」

 

 あくまでも、直接相手にぶつけないようにはしてある。ただ、余波だけで並大抵の魔術師はひっくり返ってしまうのだ。

 

「お前らがオルソラを殺すつもりだっていうんだったら……まずはその幻想をぶち殺す!」

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