とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第58話 魔滅の声

 戦いが始まっていた。

 

 アニェーゼ部隊の人たちは、数で勝る自分たちの勝利を信じて疑っていなかっただろう。……俺のこれ(・・)を見るまでは。

 

 神の力(ガブリエル)

 

 8月28日には、地上を滅ぼす威力を持つ『火雨の豪雨』の準備をしながら、その片手間で俺と『聖人』神裂の相手をした。四大天使の一角だ。

 

 俺はその力を、万象再現(リプロダクション)で『再現』した。

 

 もちろんこれは不完全な模倣であるから、オリジナルの5、6割が限界である。だが、それでも十分なのだ。

 

 ドバッ! と、『複製水翼』がローマ正教のシスターたちをまとめて薙ぎ払っていく。

 

 大きな力を扱うのは、優れた制御技術がいる。

 

 しかし俺は『力』を感じ取り解析し、制御の手段を新たに構築――創造した。

 

 だから厳密には、これは神の力の『水翼』とイコールではない。

 

 しかし、重要なのはそこではないのだ。新たな力として使えるかどうかなのだから。

 

「さて、俺の周りにいるやつは倒せたな。重傷も負っていないはずだ。……はあ、負担がでかいな。一回の戦闘で使えるのは一回ってところか」

 

 俺は移動する。

 

 

 

 建宮は複数のシスターをまとめて相手にしながらも、有利に戦いを進めていた。すると、彼の耳にパタパタという足音が聞こえてくる。

 

「新手!?」

 

 建宮はギョッとしたが、それは彼を狙う足音ではなかった。

 

 中庭の奥にいる白い修道服を着た少女、インデックスがかなりの人数に取り囲まれ、壁に追い詰められている。

 

「くそ。この俺につまらん場面を見せつけてんじゃねぇのよ!」

 

 建宮は慌てて加勢に入ろうとする。しかし、そこに声が響いた。

 

「よせ! 今のあの子の元へは不用意に近づくんじゃない!!」

 

 声がした頭上を建宮が仰ぎ見た瞬間、『洗礼聖堂』の屋根が炎の爆発によって内側から散る。

 

 炎を纏ったステイル=マグネスが、そこには立っていた。

 

「今のあの子は一人の方が強い。僕達が近づいてはその強さを奪ってしまうんだ。君だってあんなものに巻き込まれたくはないだろう?」

 

 ゴオッ!! とインデックスの周りのシスターが弾き飛ばされた。

 

「……何なのよ、こりゃあ」

 

 建宮は足元に転がったシスターを見る。

 

 その顔は悪魔でも見たかのように、何かにおびえたように身体を丸め、両手で頭を押さえカタカタと震えている。

 

 見れば、シスターの足の筋肉が断絶していた。彼女たちは吹き飛ばされたのではなく、自分の足で一斉に跳躍したのだ。

 

「あそこに流れるのは、頭の中にある10万3000冊の叡智を使ってその信仰する教義の矛盾点を徹底的に糾弾する魔滅の声(シェオールフィア)さ。十字教という名のOSに従って動く者が、その教義の矛盾点、つまりセキュリティホールを的確に貫くこの囁きを聞けば、一時的にではあるが自我・人格をパズルのように崩されるぞ」

 

 しかし、これには集団の思想の純度というものが深く関わってくる。

 

「………ちなみに君らとの戦闘では僕やあいつら(・・・・)が障害となって一集団の純度が下がり魔滅の声は上手く起動しなかったって訳だ。そういう例外があるから、僕のような護衛がいるという事さ」

 

 つまり、今僕や君があそこに突っ込むと魔滅の声の使用条件が満たされなくなってしまうという訳だ、とステイルはつまらなさそうに言った所で、無駄話が不意に途切れる。

 

 中庭を挟む聖堂の屋根にそれぞれ何十人というシスターが立っていたのだ。

 

 

 

 突然、車輪を片手に持ったルチアが屋根から叫ぶ。

 

攻撃を重視(Dia priorita di)防御を軽視(cima ad un attacco)! 玉砕覚悟で我らが主の敵を殲滅せよ(Il nemico di Dioe ucciso comunque)!!」

 

 シスター達の動きが不自然に止まる。すると、全員が無表情で衣服の中から万年筆を取り出した。

 

 彼女たちはそれを、ためらうことなく己の両耳に突き刺した。正確には鼓膜を突き破ったのだ。

 

 地面に転がる万年筆の先端に人間の鼓膜がこびりついているのを見たインデックスは、体の奥から猛烈に吐き気を堪えながら震えた。

 

「ま、まさか……魔滅の声を回避するために……?」

 

 彼女の周りを取り囲んでいたシスター達が一気に襲いかかろうとする。

 

「こっちだ!!」

 

 そこへ、手近な建物の両開きの扉を開け放って、当麻と駿斗が叫んだ。彼の後ろにはオルソラもいる。

 

 インデックスとステイル、建宮は迷わずそこに逃げ込んだ。

 

 

 

「とりあえず全員無事みたいだけど……歩けるか、オルソラ」

「心配性でございますね……そこまでひどいケガは負ってないのでございます」

 

 オルソラはそう言うが、念のために事象解析(アナリーオール)で調べるとかなり傷があるようだった。俺は何も言わずに万象再現で当麻以外の全員に簡単な治療を施す。

 

「私の魔滅の声(シェオールフィア)も、あ、あんな風に耳を潰されちゃ効果が、でな、出ないと思うし」

 

 耳を潰す光景を思い出したのか、インデックスは青い顔をしている。

 

強制詠唱(スペルインターセプト)だって一度に一人しか相手にできないよ。流石に何百人もの相手が出す何百通りもの術式へ同時に割り込むのは無理かも……どうしよう」

 

 すると、オルソラがこんな言葉をもらした。

 

「もしここに『法の書』があれば……私の解読法と照らし合わせて、何か突破呼応が見つかるかもしれないのでございますが……」

 

 ん? それって……

 

「「「ある!」」」

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