とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第59話 真実と衝突

「インデックスでも法の書は解読できなかった、と言っていたよな」

「それは逆に言えば、インデックスは一度、『法の書』に目を通したことがあるということだ。そうだよな?」

 

 俺たちの言葉にインデックスは頷く。

 

「うん。暗号文のままだけど」

「だめだ!」

 

 ステイルが叫ぶ。

 

「それをやれば、この子が解読した『法の書』を記憶してしまう! そうなれば、今まで以上にこの子が狙われることになる……!」

「心配してくれるの?」

 

 インデックスの言葉に、ステイルは顔を背けた。

 

「貴様ら2人! 今以上に強くなれ、この件が原因で彼女が倒れたら灰も残らず君たちの体を焼き尽くす!」

 

 ステイルはそれだけ言うと、俺たちの背を向けて離れた。

 

 そして、オルソラがインデックスに解読法を教え始める。

 

「すぐに『法の書』の力を使うということではございません。要するに、いつでも使えるという意思表示ができればいいのでございましょう」

 

 オルソラは柔和な表情から一転して真剣な顔になった。

 

「基本はテムラー、つまりは文字置換法なのでございますが、変則ルールとして行数が深く関わっているのでございます」

 

 インデックスは彼女の言葉を黙って聞いている。解読に集中しているのであろう。

 

「……もういいよ。大体全部わかったから」

 

 インデックスはオルソラの言葉を遮ってそう言った。

 

「あの、何が分かったと言うのでございましょう」

 

 オルソラの質問に、インデックスはこう答えた。

 

「――これ、正しい解読法じゃないの。トラップとして用意されたダミー回答だよ」

 

 『法の書』の一番の特徴は『誰にも内容が解読できない』という点にあるが、正確に言えばそれは違う。この魔道書の記述は恐ろしく複雑な暗号で記されており、暗号文を解読したところで、『それらしい文章』になる解読法が100通り以上存在するのだ。

 

 インデックスさえも、「既存の言語学で解明できるようなものではない」と言う。

 

「『法の書』は読めるように見えるけれど誰にも正解にはたどり着けない……そういう、恐ろしい魔導書なんだよ」

「そんな……」

 

 インデックスの言葉にオルソラはショックを受けてるようだった。

 

「まあ、考えようによっちゃ、そのほうが都合がいいのかもしれんのよ。実は解読法が間違っていたことが伝われば、あいつらがオルソラを狙う理由はなくなるのよ」

 

 建宮がそう言った時、ドアが壊され始めた。

 

「……簡単にそうはいかないんじゃないかな?」

「そのようで……」

 

 ステイルの言葉に建宮が返す。

 

「全く、せめてルーンを配置するくらいの余裕は欲しかったんだけどね」

「まあ、そうもいかんだろ……。ってことで第2ラウンド開始ですか」

 

 俺は結晶を作り、魔方陣を構成しておく。

 

 ドアから侵入されると同時に俺は、風と水を発生させて物騒な修道女たちを吹き飛ばした。

 

 

 

 ドバン! と音を立てて教会の扉が俺と当麻によって開かれる。

 

 そこにいたアニェーゼともう一人いた男は、顔色一つ変える事無く侵入者を睨みつけていた。

 

「……誰だ?」

「ルー、と名乗っておこう。ローマ正教の騎士の一人として、オルソラ=アクィナスの確実な捕獲のために来た、と言えば分かってもらえるだろうか」

 

 そう言えばなんか人数が増えていたな、と俺は考える。

 

「本当は要らないんですけどね。なんか、お偉いさんたちは相当心配性の奴がいつの間にか多くなっちまったようです」

「まあ、そう言うな。そもそも、我々も極東に用事があったついで(・・・)なのだからな」

 

 ルーという男は話す。

 

「優越感に浸っているところ悪いんだが、お前ら増援組の3割ほどは俺らが倒しちまったぞ?」

「問題ない。そもそも、騎士は実力があってこその物。ないならばただ、使えないとみなされるだけだ」

 

 彼は坦々と話す。

 

「へぇ、どう考えたってあれだけの人数を相手にしちまいながら、自由に敷地内を移動出来るとは思えないんですけどね」

 

 大理石の柱に悠々と背を預けるアニェーゼに、当麻は荒い息を吐きながらも笑って言った。

 

「ま、ちょっとばっかり、作戦があるからな」

「作戦? ああ」

 

 彼女は片目を閉じて、

 

「なるほどなるほど、そういう訳なんですか。なぁんだ。あれだけ格好付けて登場しておきながら、あんたら、“仲間を囮にしちまったんですか”。確かにウチの戦力がまんべんなくあなた達を襲っちまったら、誰もここまでたどり着けなかったでしょうけど、でも、ねえ?」

「「……、」」

 

 意味ありげな語尾上がりの声に、しかし俺と当麻は無言を貫く。

 

 その沈黙が意味いすることを勝手に解釈したアニェーゼはますます愉快そうに笑って、

 

「くっくっ。オルソラ=アクィナスは言ってましたよ。彼らは騙すのではなく信じる事で行動する、とか何とか。あはは! 全く笑っちまいますよね、結局あなた達は今こうして誰かを騙して囮に使って息を吸ってるんですから」

「何を勘違いしているのかは知りませんが、俺達は信じてるよ」

 

 俺ははっきりと言った。

 

「あいつらにはあいつらの役目があって、俺達は他の役をやっているだけだ」

 

 当麻は右の拳を握りしめる。

 

「………司令塔たる私達を潰せば全攻撃を停止できると?」

 

 アニェーゼは床に転がっていた銀の杖を蹴り上げ、宙を舞う武器を片手で掴み取る。騎士、ルーもその手に槍を構えた。

 

「まぁ、良いでしょう。こっちも暇を持て余しちまった所です。ここは一つあなたの希望(げんそう)を打ち砕いて手慰みといきましょうか!」

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