とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第60話 貫通の槍、蓮の杖

 霊装貫通の槍(ブリューナク)

 

 太陽神が所持するとされている、穂が5本に分かれた槍。5つの切っ先から放たれた光は一度に5人の敵を倒したと言われている。

 

 それを、ルーは構えた。

 

「いくぞ」

 

 槍が突き出されると、伝説通りその5つの切っ先から5つの光が放たれる。俺は結晶に防御術式の魔方陣を描いて身を守ろうとするが、3つの光がそれを破壊し、2つの光が襲い掛かってくる。俺はとっさに真横に飛び込むようにして回避した。

 

 なんて馬鹿げた威力だ……。扱う天使の力(テレズマ)の量が多いだけではなく、槍の形状に収束することで威力を強化している……!

 

「ふむ。5つのうち3つまで防ぐとはなかなかやるな。霊装といえど、結局、扱うのは人間だからか」

 

 ルーはそう言う。その表情には、余裕が見て取れた。

 

 このままでは俺が一方的に消耗して終わりだ。万象再現(リプロダクション)であれを上回る防御をするための魔力や天使の力を生み出す余裕もなく、神の力(ガブリエル)がもう使えない以上、俺はあれに対抗できるだけの強力な技を繰り出すことができない。

 

 手札の数ならこちらが多い。

 

 だが、それらは力技で解決されてしまう。

 

 俺は対抗策を必死で練る。

 

 

 

 その一方で、当麻はローマ正教、250人余のシスター部隊を率いるアニューゼ=サンクティスと対峙していた。

 

 当麻とアニェーゼの距離はおよそ15m。

 

 アニェーゼの手には銀の杖が握られている。

 

 杖の上には6枚の翼に包み込まれている天使がつけられていた。

 

 アニェーゼが、かん、かんと両足の踵で地面を叩くと、30cm以上あった厚底のパーツが両足とも外されて後方に飛んだ。

 

万物照応(Tutto il paragone)五大の素の第五(Il quinto dei cinque elementi)平和と秩序の象徴『司教杖』を展開(Ordina lacanna che mostra pace ed ordine)

 

 彼女が両手で杖を抱き、小さな唇から言葉が紡がれると杖の先端にあるうずくまった天使像の翼が花のように開いていく。

 

偶像の一(Prima)神の子と十字架の法則に従い(Segua la legge di Dio ed una croce)異なる物と異なる者を(Due cose diverse sono)――接続せよ(connesse)

 

 詠唱が終わると同時に、アニェーゼはその杖の端を地面に叩き付けた。

 

 次の瞬間、ゴン!! と当麻の額に衝撃が走る。

 

「が…っ! だっ!?」

 

 何が起きたかもよく分からないまま、当麻は硬い大理石の床に倒れ込んだ。

 

 倒れたまま顔を上げると、アニェーゼはくるくる回した杖の端で、トン、と建物の柱を突いていた。

 

 同時に先程と同じ悪寒と共に、当麻が床を転がった瞬間、直前まで彼の頭があった所に衝撃が発生し、バンッ!! という鋭い音と共に床が窪んで亀裂が生じた。

 

(座標攻撃――!? 空間移動(テレポート)を応用したようなタイプの技か?)

「その杖……ッ!」

 

 当麻の言葉にアニェーゼは言った。

 

「はは、そりゃ流石に気づいちまいますか。天草式のヤツらが使っていた地図の術式に似てるってのが気に喰いませんけどね」

 

 アニューゼはニタリと笑って、

 

「近代西洋魔術では火、風、水、土、エーテルの五大元素(エレメンタル)にそれぞれ象徴(シンボル)たる武器が用意しているのはご存知ですかね。火は『杖』、風は『短剣』、水は『杯』、土は『円盤』といった具合にね。そして私が持つのがエーテルの象徴武器(シンボリックウェポン)蓮の杖(ロータスワンド)』です」

 

 彼女は『蓮の杖』を握り直した。 

 

「こいつには面白い特性がありましてね。エーテルを扱うと同時に、他の四大元素全ての武器としても使用できる、という特色があんですと。……だからコイツを傷つけると連動して他の物に傷がつく。こんな風にね、っと!」

 

 アニェーゼは懐からナイフを取り出し、杖の側面を切り刻む。

 

 ガキガキ! という異音が響くと、走り出す当麻を追って空気が見えない刃に切り裂かれていく。

 

(攻撃には若干のタイムラグがある。だったら走っていれば……っ!)

 

 すると、腹に衝撃が走った。

 

「いつまでも単調に避けられるとは思わねぇ事です。命令と発動までにタイムラグがあんなら、先読みして相手の動く先に機雷(こうげき)を“設置”しちまえば、そっちが勝手に攻撃範囲内に飛び込んできてくれる。大したタネもねぇですよ」

「テメエは……」

 

 当麻が言った。

 

「つまらない暴力が嫌いだとか言ってたくせに、テメエはバンバン使うんだな」

 

 その言葉にアニェーゼは一瞬キョトン、とした表情になる。

 

「あら、知ってますか? もともと司教杖っていうのは鎧を叩き割るための棍棒(メイス)が変化したものなんですよ。人を殴るための道具を人を殴るために使って何が悪いんですかねえ」

 

 再びアニェーゼは蓮の杖を振り回す。

 

「そもそも、近代西洋魔術なんて十字教の裏技『知られざる信実』の一部だったんですよ。それを天草式だの十字教徒と呼ぶのもおこがましい連中が使ってること自体がおかしいんですよ……。結局、ローマ正教以外の教えなんて、教えじゃないんですよ!」

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