とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト) 作:nozomu7
「結局、ローマ正教以外の教えなんて、教えじゃないんですよ!」
アニェーゼはそう言い放った。
「さて、邪魔ですからさっさと流れ作業で死んじまってくださいってば!」
アニェーゼは
当麻は迷うことなく前に走る。その直後、当麻が先ほどまで立っていた場所に衝撃が走った。自分の攻撃を外されたアニェーゼは再び杖を振るう。
だが、
「その攻撃を待ってたんだよ!」
当麻はその右手、
あらゆる異能の力に対して絶対の効力を持つ右手が、蓮の杖の座標攻撃を打ち消す。
「なっ!」
驚きに大きく目を見開くアニェーゼだが、次の瞬間にはその愚直なまでにまっすぐな拳が顔面に突き刺さった。
(戻るのか……もう一度、あそこへ……)
教会に拾われるまでの日々を思い出したアニェーゼは絶望する。
「負けられる……ものか……! 絶対に!」
彼女は死力を尽くして、蓮の杖を支えに立ち上がる。
「どうした。顔色が悪いぞ!」
次々と迫りくる光に対し、俺は必要最低限の動き、防御でもって身を守っていた。
このままでは俺が体力切れを起こして負けるのは明白である。
だが
その時その時の相手に対して最適の技を創造することにこそ、その名前の本質、その力の真骨頂がある。
だから俺は。
魔力を読み取り、
術式を把握し、
逆転の一手を創造する。
「これで終わりだ!」
俺の目の前に5つの光が迫りくる。その光を、俺は避けようとはしなかった。
新たな力を行使すると同時、迫ってきた光が俺の周囲を包む。
「ふむ。つまらん結果だな。極東の少年よ」
煙で互いの姿が見えないまま、勝利を確信したルーがそう呟く。
それに対して、立ち込める煙の中で俺も言い返した。
「ああ。本当につまらん」
平然とした顔の俺に対し、ルーの顔が驚愕の表情に変わる。
「ばかな……! 確かにわが
「確かに、まともに食らっていたらやばかったな」
俺ははあ、と息をつく。
「だったら当たらなければいい。力が足りないならば、防ぐのではなく
魔術には、大地から発せられる地脈・龍脈というものがある。土地に起因する、個人の魔力以外で魔術に利用できるエネルギーの一種だ。
それらは動物の血流のように、惑星の中を流れ循環している。その力を感じ取ることなど、俺にとって対して難しいことではない。
その力に干渉し、貫通の槍の攻撃に横方向から力を加え、流した。
あらゆる物体の軌道を逸らすバリアを自分の周囲に張ることができる。もっとも、長時間の使用ができないが。
「さて、逆転させてもらうぞ」
俺は一気に近づく。光での攻撃ができないくらいに。
「くっ!」
ルーはそれに対し、槍の穂先をそのまま突き出してきた。中距離攻撃を封じられているとはいえ、
だが、俺は
次の瞬間には拳が騎士の顔面を直撃した。
外が静かになっていた。
立ち上がったアニェーゼは笑みを浮かべて言う。
「ここまで追い詰めたのに残念でしたね、もう終わっちまったみたいですよ」
音がない。中だけでなく、外の音も。
戦闘が終わっているということだ。少人数の天草式と大人数のローマ正教の。
俺たちは無言になる。
「どうも、彼らが囮となって粘っている間に司令塔である私達を倒そうとしてたみたいですけど……あなた方の描いた
「「ああ」」
俺たちは絶対的な自信と信頼とともに、相手の幻想を打ち砕く。
「「その通りだ。お前達の幻想は終わっちまったよ、ローマ正教」」
そして俺は
『婚姻聖堂』の入り口から入ってくる人影があった。
インデックス。ステイル。天草式十字凄教の建宮達。
そして――オルソラ=アクィナス。
その背後にはオレンジ色の炎が見える。
人の形をした炎の化物、
「使用枚数は4300枚」
赤髪の神父は告げる。
「数は大した事はないが………いや、天草式というのは馬鹿に出来ないね。ルーンのカードの配置を使ってさらに大きな図形を描き、その図形をもって敷地全景の魔術的意味を変質させて、このオルソラ教会そのものを一個の巨大な魔法陣に組み替えるなんて。そこにある物を全てを利用した多重構成魔法陣――こういった小細工は僕には学びきれなさそうだ」
外では、その炎によってシスターや騎士たちが薙ぎ払われていく。
その手に持っていた武器を落とす者も多い。
ほとんどの者が、何もできなくなっていた。数の上では圧倒的に有利なはずの、アニェーゼ部隊とローマ正教の騎士たちが。
「言ったろ。作戦があるって」
当麻は笑って言う。
「何をやっちまってんですか! 数の上ならまだ私達の方が断然多いんです! 奴らも疲れ切っている。まとめて潰しにかかりゃあこんなヤツら取るに足らねえ相手なんですよ!!」
アニェーゼは『婚姻聖堂』の外にいるシスター達に向かって叫ぶ。
確かにそうかもしれない。
だが、1つの考えが彼女たちには広まっていた。
不審。
シスター達はそれが正しい事だと理解してながら、心の奥でそれを信じられないのだ。
「……、面白い、じゃないですか」
ここまでになっても、アニェーゼはまだ戦意を失っていなかった。
「我は騎士だ。その程度で戦う理由は揺らぐものか」
ルーも再び貫通の槍を構える。
俺たちは同時に駆け出した。2人で並ぶように走る。
俺は当麻の右手首をつかむと、それを誘導する。
2つの攻撃が打ち消され――2つの拳が2人の顔に突き刺さった。