とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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閑話
第63話 とある少女の空力使い


 十字教旧教三大宗派のひとつで、魔術サイド最大勢力。世界113ヶ国に教会を持ち、実に20億を数える教徒を従えているローマ正教。そのシスター達、アニェーゼ部隊に喧嘩を売って勝利をおさめたその週末。

 

 俺は一人の少女と歩いていた。

 

「すみません、神谷さん」

「いや、気にしなくていいよ。俺も買い物に来ていたんだし」

 

 今日はスーパーで朝にタイムサービスをやっていたので、無能力者(レベル0)の俺にとっては重要なタイミングだったのである。

 

 ちなみに、当麻はいつの通りの不幸でそれに来られなくなってしまったらしく、インデックスの分も含めて俺が多めに買って、後から当麻の分を請求することにした。

 

 佐天さんは俺の買い物袋を見ながら言う。

 

「結構買うんですね……やっぱり、男の人は食べる量が違うのかなあ」

「はは。これは事情があって友人の分も一緒に買ったんだ」

 

 明らかに各種類の品物がそれぞれ4、5人分の量はある。あのシスターのおかげでな!

 

 俺たちは雑談を続けて行く。

 

「最近、空力使い(エアロハンド)のイメージがつかめてきたんですよ。初めはコントロールとかうまくできませんでしたけれど、今はある程度の重さまでならスムーズに動かせるようになりました」

 

 彼女はそう言うと、その手に持っていた買い物袋を手放した。しかし、買い物袋は重力に従うことなくその場でふわふわと浮いている。

 

「そっか。まあ、前よりも自分だけの現実(パーソナルリアリティ)が安定してきたってことじゃないかな」

「はい! あと、常盤台に大能力者(レベル4)の空力使いの人が御坂さんと同じ学年に転校してきたので、その人にも少し教わることができました」

 

 大能力者。さすがは常盤台、といったところか。

 

「そう言えば、最愛は風力使い(エアロシューター)の、海鳥も風力使いと空力使いの亜種みたいな能力なんだよな。そう考えると海鳥の演算も――いや、あまり参考にはならないか」

 

 恐らく、普通の(・・・)能力開発を受けていれば一般的な風力使い、空力使いになっていたのだろう。そう思うと、少し気が沈む。

 

「珍しいですよね、あの能力。……って、そう言えば神谷さんは絹旗さん、黒夜さんの2人と仲が良かったんですね」

「ああ。言ってなかったっけ? 幼馴染なんだよ」

「え? 初めて聞きました」

 

 あ、当麻と御坂以外には言ってなかったのか。俺は置き去り(チャイルドエラー)のことだけは特に隠す必要ないと思うんだけれど。まあ、下手に気を使わせたくはない、か。

 

 

 

 その後、久しぶりに佐天さんの能力の様子を詳しく見ることにした。彼女に能力標識(AIMサイン)を使用して能力を開発してから1か月半ほど経つ。彼女がどれだけの自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を築きあげたのかを見るのだ。

 

「では、いきます」

 

 近所の公園に着くと、佐天さんは自分の周囲に複数の木の葉や石を浮かべた。

 

 それらが少しずつ動き始め、次第に動く速度が速くなっていく。

 

 いくつかの空き缶がゴミ箱の中に入れられ、木の葉が木々の根元へと集まっていく。

 

「はい、そこまで」

 

 しばらくして、俺は能力標識で少しだけ割り込み、能力の使用を中断させた。

 

「えっ? もう終わりですか?」

 

 佐天さんはキョトン、とした表情で言う。異能力者(レベル2)としては十分に長い時間だったと思うのだが。集中していて気が付かなかったのだろう。

 

「もうって……結構長い時間能力を使っていたよ? 少し休憩すれば大丈夫だろうけどさ、でもぶっ続けでやるのはお勧めしないな。脳だって演算に疲れるだろうし」

 

 学園都市で開発されている能力でものを言うのは結局、演算能力だ。もともとが急激な強度(レベル)の上昇だったのだから、長時間使うのは良くないだろう。

 

 買物袋を横に置き、2人でベンチに腰掛けて休憩する。

 

「そう言えば、結局神谷さんの能力を教えてもらっていません! 隠す理由が何かあるんですか?」

 

 佐天さんが聞いてきた。

 

 俺が『原石』の能力である幻想創造(イマジンクリエイト)を隠しているのには、いくつか理由がある。前にも言ったように、ばれたら研究者がめちゃくちゃに寄ってくるだろう、というのが嫌だったからだ。

 

 だが、最近は余計に隠す必要が出てきてしまった。それは学園都市の『闇』を知ってしまったからでもあるし、魔術に関わるようになったからでもある。

 

「まあ、あるんだよそれが。いろいろ厄介なものでね……ちなみに書庫(バンク)にも登録はされてないよ? 俺はあくまでも無能力者(レベル0)だから」

 

 学園都市で幻想創造のことを知っているのは、当麻、最愛、海鳥、あとは魔術サイドの人間でもあるが土御門。その四人だけだ。

 

 必要以上に話す必要はないだろう、と俺は考えている。まあ、相手がその正体に気付いたら認めればいいか、くらいの認識だ。とはいっても、さすがに幻想創造の正体に気付く人間はいないだろうが。当麻の幻想殺し(イマジンブレイカー)よりも分かりにくい能力だからな。

 

「って、結構時間経っているな。そろそろ帰って昼飯の準備をしないと」

 

 俺はケータイの画面を見て立ち上がる。

 

「あ、もうそんな時間ですか。今日はありがとうございました」

 

 ペコリ、と律儀に頭を下げる佐天さん。三つの歳の差を意識しているのだろうか、佐天さんは礼儀正しい。最愛と海鳥は幼馴染だからお兄ちゃんと呼ばれるのはいいとして、御坂は二つの歳の差があるのに平気でタメ口&アンタ呼ばわりだしな。

 

「ああ。またな」

 

 俺はインデックスの昼飯のことも考えて、速足で自分の寮へと向かった。




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