とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第64話 とある少女の心理掌握

 佐天さんと会った日の午後、俺は洒落た喫茶店で一人の少女と向かい合っていた。

 

 常盤台中学の制服に身を包んだ金髪の少女の名は食蜂操祈(しょくほうみさき)と言う。

 

「それで、いつ会ったんだっけ? 悪いけど、いつだったかは……。会ったこと自体は、覚えているんだけれど」

 

 突然会った人物に自己紹介とお礼をされた俺は、食蜂に尋ねる。

 

「えっとぉ……8月の終わりごろですぅ。あの時はありがとうございましたぁ」

 

 ああ。最愛と海鳥が常盤台に見学に行った日だったっけ? 確かにその時に会った少女だ。

 

「まあ、気をつけなよ……。あの辺りは学園都市の中では結構さびれた場所だからさ」

「はい」

 

 一見普通に話をしているが、食蜂は先ほどから時々バッグの中を漁り何かじれったいようにしている。

 

「(頭の中が読めない!? この間は本人の名前と高校の名前まで読めたというのに……。まさか、私の自分だけの現実(パーソナルリアリティ)に何かあった? いや、私の読心力に問題はないはず……)」

 

 何かぶつぶつと言っているが、大丈夫だろうか。

 

「どうかした?」

「い、いえ! 何でもありません……」

 

 明らかに挙動不審だ。本当、大丈夫か?

 

 ……いや。よく感覚を研ぎ澄ましてAIM拡散力場を感じ取れば、彼女のそれに先ほどから頻繁に乱れが発生していることが分かる。これは恐らく、さっきから何度も能力を使用して幻想創造(イマジンクリエイト)に弾かれているのだろう。

 

 さて、どうするべきかな。これ以上『許可』は出したくはないし。

 

「食蜂さんは常盤台中学なんだ。すごいよな。俺の高校じゃあ大半が無能力者(レベル0)だからさあ。かくいう俺もそうだしな」

 

 俺がそう言うと、食蜂は大きく動揺した。

 

「!? あのぉ、あの時は確か鉄骨を浮かせて助けてもらったと思うんですけどぉ」

「ああ。あれか……」

 

 うん。少し踏み込むためには必要かな?

 

「別に俺が鉄骨を止めたとは一言も言わなかったと思うんだれど?」

 

 俺は真っ赤な嘘をつく。

 

「そのぉ……それはそうですけれどぉ……」

 

 彼女は言いよどむ。やべえ。ちょっといたずら心がわくな。

 

「しかし常盤台の中学2年生、ね。御坂と同級生ってことか」

 

 そう考えると、俺はこの1か月半で超能力者(レベル5)7人のうち第一位、第三位、第四位、第五位と4人も会ったことになるのか。我ながら、すごいと思う。

 

 そんな話をしていた時。

 

「女王!」

 

 髪形を縦ロールにした、やはり常盤台の制服を着ている少女が現れた。……って、『女王』?

 

「常盤台の女王であるあなたがこのように下等な高校生と遊んでいるのですか?」

 

 おいおい、言いたい放題だな。少しむかつくけど、まあ、スルーすればいいか。

 

「そだよ☆」

 

 ……できれば『下等な』は否定してほしかったんだがなあ……。

 

「いいですか! あなたは……」

 

 ガミガミといつものことなのか説教を始める縦ロールさん(仮)。

 

「……卑しい男子高校生が何をするのかもわからないというのに……」

 

 うん、ちょっとムカっときた。

 

「おい。そこまでにしとけよ、三流(・・)

「っ!」

 

 俺の言葉に対し、縦ロールは敵意丸出しの顔で俺を睨む。

 

「何を――」

「第一に、テメエは何を根拠に『下等』などと言うんだ? テメエは俺の素性を何も知らねえだろうが」

 

 俺の言葉に縦ロールはぐっ、と言葉を詰まらせる。

 

「第二に、これは食蜂自らが誘ってくれたことだ。途中からしゃしゃり出た人間が引っ掻き回していい場面ではない」

「そうよぉ。だ・か・ら☆ 少し向こうに行ってなさい」

 

 食蜂は縦ロールに向けて手に持ったリモコンのボタンをピッ、と押す。だが、

 

「はいはい、能力で無理矢理追い払うのは禁止な」

 

 俺は、御坂のAIM拡散力場である電磁波を縦ロールを含めた周囲で『再現』することで、食蜂の能力を封じた。

 

「っ?(今のは……御坂さんと同じ? だけど、超能力者(レベル5)でないと私の能力は防げないはず……?)」

 

 再び彼女は動揺し始めた。

 

「ま、そんな訳だから。あまり見知らぬ人間に対して大口をたたかないようにしてくれよ」

「そ、そうよぉ。私を助けてくれた人に対してあまりにも失礼な態度じゃなぁい?」

 

 食蜂にまで言われたのが効いたのか、縦ロールは大人しく去って行った。

 

 再び2人だけになったところで、そういえば、と食蜂が言う。

 

「神谷さんはどうして私の能力を知っていたんですかぁ?」

 

 あ。そう言えば、まだ彼女は自身が心理掌握(メンタルアウト)だとは名乗っていなかったんだった。まあ、AIM拡散力場を事象解析(アナリーオール)で調べれば一発で分かるんだけれど。

 

「いや、それはさ。ほら、表に公表されている超能力者の1人だし、常盤台に知り合いも何人かいるからさ」

 

 危うく俺の非無能力者疑惑に拍車がかかるところだった。

 

 それからも俺たちは様々な雑談を続けて行く。

 

「へえ。派閥、ねえ」

「そうですよぉ」

 

 常盤台には部活動以外に『派閥』と呼ばれるものがあることは最愛と海鳥の2人から聞いていた。具体的には、同系統の能力者が集まって能力の研究をしたりするケースと、能力系統に関係なく1人の能力者を中心に集まるケースなどがあるらしい。

 

 先ほどの縦ロールは常盤台内で最大級の食蜂の派閥の一員だということだ。

 

「すごいんだな、常盤台の中でも最大級だなんて」

 

 俺は話す。

 

「いえ、そんなことありませんよぉ」

「だって、1人のためにそれだけの人数が集まるってことは、それだけ信頼される、慕われるような人柄だってことだろ?」

 

 俺がそう言うと、食蜂はビク、と再び挙動不審になった。

 

「それはさ。誇るべきことだと思うぞ?」

 

 

 

 俺と別れた後食蜂がこう呟いていたことを、俺は知る由もなかった。

 

「信頼なんて……されてないわよぉ、私は。同じ超能力者のはずの、御坂さんとは違って……」

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