とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第65話 とある幼馴染の窒素少女

 常盤台中学校。

 

 学園都市の中でも5本の指に入る名門校であり、同時に世界有数のお嬢様学校である。共用地帯『学舎の園』を形成する学校の一つだ。

 

 義務教育終了までに世界に通じる人材を育成する、が基本方針であり、総生徒数200人弱の内、超能力者(レベル5)2名、大能力者(レベル4)四十九名、それ以外は全員強能力者(レベル3)。在学条件の一つに強能力者以上である事が含まれているという、生徒の大半が無能力者(レベル0)の学校に通っている駿斗や当麻からすれば、とんでもない学校である。

 

 寮は学舎の園の外と中に1つずつあり、神谷駿斗の幼馴染、絹旗最愛と黒夜海鳥は常盤台のエースである御坂美琴や同級生の白井黒子と同じく、外の学生寮に入寮していた。

 

「おい朝だぞ、絹旗」

 

 ある休日の朝、長い黒髪をしている少女、黒夜海鳥が、まだベットで寝ているルームメイトに声をかける。

 

「黒夜……、もう朝ですか」

「就寝時刻無視してポータブルDVDプレーヤーで映画なんか見ているから、朝起きられなくなるだよ」

 

 ボブカットの少女、絹旗最愛は眠たそうにその眼をこする。

 

「それよりいいのか? 今日は久しぶりに駿斗兄ちゃんと3人で出かける約束しているんだぞ?」

「は、そうですよ! 急いで超準備しましょう!」

 

 彼女たちはバタバタと準備を始めた。

 

 

 

 俺は待ち合わせ場所の喫茶店の前で、2人の幼馴染と合流した。

 

「おう、2人とも。3人で出かけるのも久しぶりか?」

「いや、全然だ。そもそも、まだ再会してから1か月も経っていねえよ」

 

 海鳥に速攻で言い返された。はい、確かにその通りです。

 

 俺たちは始めに映画館へと移動する。今日は幼馴染3人で遊ぶ予定なのだ。

 

「で、今日は何を見るんだ、最愛?」

「これですよ!」

 

 俺たちは最愛に勧められるままにその映画を見ることにした。

 

 チケットを買ってシアター内で3人並んで座る。

 

『おい、どうする? あの怪物野郎が出てきやがったじゃねえか! あの人造人間、そこらへんのやつを片っ端からぶっ飛ばしながらこっちにくるぞ!』

『お前は落ち着けって。安心しろ。こんな時にとっておきの策が用意してあるんだ』

『な、なんだと……。まさか、お前はここまで予想を立てて……』

『さあ、驚け。俺の作戦はな! 戦場の隅っこで死んだふりをしていればいい! 簡単だろ!』

『お前があの人造人間の餌食になっちまえ!』

 

 俺と海鳥はポップコーンの箱を持つ手を、プルプルと震わせた。

 

 チョイスを間違えた。

 

 最愛がB級映画好きだというのは知っていたが、まさかここまでだとは思わなかったな……と俺は、海鳥と共に俺を挟むように座っている、最愛の顔をちらりと見る。

 

 少女は瞳を輝かせていた。

 

 さて、どうするか。

 

 次の瞬間には、俺は『黒夜と話をして時間をつぶす』という選択肢を選ぶことにした。波動干渉(ウェーブインターフェア)で2人だけが互いの声を聞こえるように、俺は調整をする。

 

「(なあ、これどう思う?)」

「(時間的には一番見せ場のはずだよな。なのに、さっきから何が面白いのか分からないんだが)」

「(だよなあ……)」

 

 困った。

 

 しかし、純粋に超B級映画を楽しんでいる最愛に水を差すわけにもいかず、「暇つぶしだ」と、とりあえず見続けることになった。

 

 そして、映画も終わった後。俺たち3人が劇場を出ると、最愛がぽつりと言った。

 

「……正直、超微妙でしたね」

「「お前までそうだったのかよ!?」」

 

 次回見に来るときは、しっかりとした事前のチェックが必要そうだった。

 

 

 

 そして、次に来たのが。

 

「水族館?」

「ああ! ここの水族館は今日、イルカのショーをやっているみたいだからな」

 

 あのイルカのビニール人形を見た時も思ったが、海鳥は昔のころから変わることなくイルカが大好きなようだ。

 

「相変わらずだな、海鳥」

「だって、可愛いだろ?」

 

 黒夜は即答で肯定する。

 

 きゃっきゃと年相応にはしゃぐ12歳の少女2人に、俺はついていった。

 

 ショー会場に着くと、そこには結構人がいた。

 

「結構人が集まるんだな。今日は祝日でも何でもないのに」

 

 俺は呟くように言う。すると、最愛がそれに答えるように言った。

 

「それは最近、ここのイルカが新しく出産をしたからですよ。それも2匹が1日違いで出産しましたから、超ニュースにもなっていたじゃないですか。えっと……確か、8月の終わりごろですよ。駿斗兄ちゃんが神奈川の超海辺に行っていた頃です」

 

 いや、知らなかった。そもそも、その時は御使堕し(エンゼルフォール)の1件があって忙しかったし。

 

 せっかくなので、できるだけ前の席に座る。

 

 ショーが始まり……俺は襲い掛かる水しぶきを(2人も含めて)危機誘導(ハームガイド)で防ぎつつ、自由に躍動するイルカを見る。

 

 イルカは自在に泳ぎ、跳躍し、存分に観客を楽しませてくれた。

 

「超楽しかったですね!」

「可愛かったなぁ……イルカ」

 

 ショーが終わった後、少女たちはそんな感想を漏らす。

 

 その後は一通り水族館の中を見て回り、空が赤く染まってきたころに俺たちは水族館を出た。

 

「ふう。今日は、久しぶりに楽しめたよ」

 

 夕焼けと同じ色に染まる帰り道を歩きながら、俺は感謝の意味も込めて2人に言った。

 

 本当に最近は、魔術がらみの事件があったりして十分に遊べていないのだ。高校生なのになあ……。

 

「私こそ、今日は楽しかったですよ。駿斗兄ちゃん」

「ああ。私もだ」

 

 少女たちは笑顔でそう返してくれた。

 

 こんな楽しい日々が続けばいいな、と思う。

 

 この笑顔は、絶対に幻想にはしたくないから。




デートとか書くのって難しいな……
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