とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第67話 知らないこと

「あら、知らなかったの? まあ、常盤台の超電磁砲(レールガン)は何も知らせずに後輩を利用するような性格ではなさそうだし」

 

 その女は話す。

 

「都合がいいとは思わなかった? うちの連中が渋滞に巻き込まれた事……彼女が何を司る能力者なのかは理解しているでしょう?」

 

 『幸運にも』渋滞に巻き込まれ、足止めを食らってくれた男たち。しかし、それは本当にただの『幸運』だったのか。

 

 超電磁砲の能力をもってすれば、信号機にハッキングを仕掛けるくらい訳はない。

 

「さっきから何を言ってますの……?」

残骸(レムナント)、と言っても分からないわよね。演算中枢(シリコランダム)、でも難しいかしら?」

 

 金属矢を手で弄びながら、その女は話す。

 

「そうね。樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の残骸っていえば分かるかしら?」

「ばかな……あれは衛星軌道上にあるはずですのよ!?」

 

 白井は反論する。しかし、女は一枚の写真を見せた。

 

「撃墜に関する添付資料。レアでしょう? 樹形図の設計者はとっくに破壊されているの。だから世界中がその残骸を求めているんだけれど……御坂美琴も大変ね。悪夢はとっくに終わった(・・・・・・・・・・・)はずだったのに。あれが復元されればまた『実験』が繰り返されてしまう。だから悪あがきをしているのでしょうけれど」

「『実験』……?」

 

 何も分からない白井が呟くと、女は笑って言う。

 

「まあ、あなた本当に何も知らないのね? 8月21日に何があったのか。あなたがここまでたどり着けていれば、教えてあげないこともなかったのだけれど……ということはやっぱり、窒素装甲(オフェンスアーマー)窒素爆槍(ボンバーランス)のことも、何も知らないのかしら?」

「絹旗さんに、黒夜さん……? どうして、その2人の名前が出てきますの……?」

 

 白井の言葉に、女はさらに愉快そうな顔をして続ける。

 

こっち(・・・)の世界では『計画』のことは有名なのよ。いくらなんでも珍しすぎるとは思わなかった? 窒素爆槍はともかく、窒素装甲のような大能力者(レベル4)なのに常時展開ができる能力者なんて普通はいないわよねえ?」

 

 女はそれだけ言うと、消えた。

 

 

 

『白井さんが戦った能力者は結標淡希。霧ケ丘女学院の大能力者(レベル4)です。能力は座標移動(ムーブポイント)……通常の空間移動(テレポート)とは違って座標AからBへ、物体を触れることなく空間転移ができるそうです』

 

 携帯電話から流れる初春の言葉に耳を傾けつつ、白井は寮のバスルームで傷の手当てをしていた。

 

『あ、えっと……自分自身の転移をためらう傾向が。2年前に大けがを負ってからだそうです。あと、これは未確認情報なのですけれど、彼女は「窓のないビル」への「案内人」だと』

「学園都市統括理事長の本拠地……? ですが、それはただの都市伝説……っ!」

 

 白井は傷の痛みに顔を歪ませた。

 

『白井さん!? 大丈夫ですか?』

「いいですから、早く報告の続きを」

 

 初春の心配する声にも関わらず、白井は更なる情報を求めていた。今までになく一方的に相手にやられたことで、白井は焦っているのかもしれなかった。

 

警備員(アンチスキル)の情報では、黒服の男は確保。その正体は、第二十三学区が雇った運び屋だそうです。読心能力者(サイコメトラー)が記憶を読み取ったのですが、ケースの中身については何も……』

「つまり黒服の男たちは、ケースの中身を第二十三学区に運ぶ途中で結標たちのグループに横取りされた、と」

 

 白井は考え込む。

 

(残骸……樹形図の設計者……8月21日……お姉さまが関わっていたらしい『実験』……絹旗さんと黒夜さんが関わっていたらしい『計画』……)

「白井さん?」

 

 初春の声で、白井は思考を中断させられる。

 

「あの……この件はもう警備員に引き継ぎませんか」

 

 確かに初春の言葉は正しい。これはもう、初春や白井の手に負える事態ではなくなってしまっている。

 

 その時、部屋のドアが開く音がした。御坂が返ってきたようだ。白井は一方的に電話を切る。

 

「黒子? どうしたの、部屋を薄暗くして」

「省エネというやつですのよ。黒子は地球にやさしい女ですの」

 

 バスルームの中で、扉を開けられないように抑えながら白井は御坂と話す。

 

「別に学園都市は風力発電なんだから、そんなこと必要ないと思うんだけど」

「そ、それで……お姉さまは今どちらに?」

 

 御坂が本当に関わってはないと、白井は信じたかった。だから、こんな質問をしたのだろう。

 

 だが。

 

「買いそびれたアクセサリー(・・・・・・)を集めにってところかしら。絹旗さんと黒夜さんにも手伝ってもらったんだけれど、なかなか集まらなくてね」

 

 その言葉で白井は確信する。

 

「今は忘れ物を取りに来たってとこ。またちょっと出かけてくるわね」

 

 離れていく足音がした。

 

「雨、降らないといいですわね。近頃は天気予報も当てになりませんから(・・・・・・・・・・・・・・・)

「そうね。心配してくれてありがと。なるべく早く帰れるように努力するわ(・・・・・)

 

 扉が閉まる音がした。白井は一人、考える。

 

(8月21日……第十七学区で謎の暴風が吹き荒れ、操車場が壊滅……そして後日の捜査の時、その現場でお姉さまのコインを発見しましたわ……)

 

 白井は初春に連絡を取ることにした。

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