とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第68話 守りたい

 白井は夜の学園都市を再び、空間移動(テレポート)で移動した。すると、一か所で爆発が起きていることを確認する。

 

 近づくと、その建設途中の鉄骨だけが組まれた建設現場では、3人の少女たちが男たちと対面していた。

 

「出てきなさい卑怯者……いつまで隠れてるつもり?」

「出てこないならこっちから超行かせてもらいますよ」

「っつうことで、構わねェよなァ!」

 

 御坂、絹旗、黒夜の3人であった。

 

 白井はその3人を確認すると同時に、黒夜の口調の変化に驚いていた。日頃から男らしい口調はしているものの、今の彼女は明らかにいつものそれとは異なっている。

 

 それはまるで……別の人格であるかのようだった。

 

 雷撃と超電磁砲(レールガン)、窒素の槍が辺りの男を鉄骨ごとまとめて薙ぎ払い、相手の銃弾は窒素の鎧に全て無効化される。それを白井は、陰から見ていた。

 

 すると、上から声がした。

 

「今日はずいぶんと焦っているのね。そんなに残骸(レムナント)を組みなおされるのが怖いのかしら?」

 

 結標淡希だ。

 

「黙りなさい!」

「あんなの放っておけばいいのに。実験のために造られたモノ(・・)は実験通りに壊してあげればいいのよ」

「アンタ、本気で言ってやがるンですか?」

 

 絹旗の口調まで、同じように変化する。

 

「結局、あなたたちは自分のために戦っているんでしょ? 後悔だとか。結局は自己満足のためなんじゃない?」

「そうね。わたしはムカついてるわ……。完璧すぎてばかばかしい後輩と、目の前の屑と、何よりこの状況を生み出した、自分自身にね!」

 

 その言葉に呼応するように、御坂の周りにまとわれている電撃が激しくなった。

 

「優しいのね? 自分自身も被害者だと嘆くこともなくて……。特に、そこの2人はたまたま巻き込まれただけなんでしょ?」

 

 結標は絹旗と黒夜を見てそう言うと、

 

「とにかく、私にも目的があるの。どんな手を使ってでも逃げ延びさせていただくわ」

 

 結標は周囲の人間を目の前に転移させて壁を作り3人を牽制すると、その隙をついて消えた。

 

「どうやら、ここから先は私の出番のようですわね……。さあ、戦場の一番奥へ行きますわよ、白井黒子。必ず帰ってくるために」

 

 白井もまた、消えた。

 

 

 

 とあるホテルの一室。そこにいた結標淡希の右肩にコルク抜きが貫通した。

 

 その見覚えのあるコルク抜きはほんの数時間前に、自分が彼女に突き刺したものだ。

 

「慌てる必要はありませんわよ。急所は外してますの。……分かりやすいですわよね。自分がやられた場所をそのまま貫けばいいんですもの。ああ、そうでしたわね」

 

 黒子はわざとらしくスカートのポケットの中に手を入れると止血剤を取り出した。彼女は指で弾いて、止血剤を結標の足元の床にポトリと落とす。

 

「どうぞ、ご自由にお使いになさって? 服を脱いで、下着も取って、みっともなく這いつくばって傷の手当てをしてくださいな。“そこまでやって初めておあいこですのよ”」

 

 そう言った白井に、結標は痛みに表情を歪ませながらも言い返す。

 

「あら、素直に彼女を連れてくれば良かったものを。そこまでして、自分の命を危険にさらす価値があるのというの? そんなに大事? 超電磁砲が、身勝手に思い描く世界を守る事が」

 

 その問いに白井は即答した。

 

「……守りたいですわよ」

 

 その瞳に強い意志を宿らせて、相手をにらみつけるように。

 

「守りたいに、決まっていますの。当たり前でしょう? どれだけ身勝手でも、私達の事情なんてこれっぽっちも考えていなくても、お姉様は望んでいるんですのよ。わたくしも、貴女も、こんな事をしなくても良い状況を。その気になればコインひとつで終わらせることができるにもかかわらず。争って欲しくないと、殺し合いなんかやめて欲しいと、どんな絶望の中でも真顔で言えるような人間なんですよ、お姉様は」

 

 白井ははっきりと言いきった。

 

「その思いを、私が蹴るとでもお思いですの? ……これから貴女を日常へ帰して差し上げますわ。どこかで誰かが願い、このわたくしが賛同した通りに」

 

 そう言う白井に対し結標淡希は笑みを浮かべながら答える。

 

「ならば、その思いを踏みにじれば私の勝ちかしらね」

 

 十一次元を操る者同士の戦闘が始まる。

 

 

 

 結標がその手の懐中電灯を振る。白井が転移の前に回避すると、近くにあったトレーが先ほど白井が立っていた場所に現れた。

 

 ほっとしたのもつかの間、次には周囲にあったテーブルが白井の真上から降り注ぐ。それを白井は、前方へと転移することで回避する。そして、キャリーケースをそのまま武器として叩き付けようとしていた結標に対して割れた皿の破片を投げつけた。ケースは床へと落ちる。

 

「っ!」

 

 結標がそのケースに気を取られた一瞬を突き、白井は死角から一撃を喰らわせようと転移する。だが懐中電灯が振られると、キャリーケースが白井の頬を打つ。

 

 しかし、白井はそれに怯まずに背後へ転移し蹴りを入れた。

 

 2人はそのまま、ほぼ対等に戦いを繰り広げる。だが、ケガを負っていた白井に、ついに限界が来た。

 

「(空間移動が、できない……)」

 

 傷跡から感じられる痛みにより、繊細な十一次元ベクトルの演算が失敗した。

 

 そう気づいた次の瞬間には、白井は複数のテーブルに押し潰された。

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