とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第69話 能力とは

「昔々、ある所に強大な能力者と組織があったの」

 

 結標は白井に何だか訳の分からない冗長な話をし始めた。

 

 その組織は、莫大な利益を得るために、その強大な能力者のクローンを作ろうとした。同じように、クローンもまた強力な能力を有していると信じて。

 

 しかし、実際にはクローンの性能はオリジナルの性能の1%にも満たない、とんだ『出来損ない』であった。

 

「ねえ白井さん。クローニング技術で生まれた子供は、遺伝子レベルで同じ骨格を持つのよ。脳の構造だって、オリジナルと全く同じはず。にも拘らず得られた能力に差が出たのは何故かしら」

 

 結標は問いかける。

 

「く、だらない、仮説ですわね。学園都市の学校が、どんな風にランク付けされているのかも、ご存知ありませんの……?」

 

 同じ人材でも育て方や環境の違いで開花の仕方は変わってくる。だからこそ、様々な能力開発理論が生まれ、学校にも名門校や優良校などのランク付けも生まれてくるのだ。

 

 しかし、

 

「いいえ。“作られた個体達は、人工的にオリジナルと全く同じ才能開花を迫られた。”それでもやはり結果は追い着かなかった。同じ脳を使って、同じ結果が出ないのなら、“単純な脳構造以外の項目”が能力開発に関わっているとは思わない? そして、その項目を見つけ出す事ができれば、人間の脳以外の演算装置だって、能力を扱えてしまう事になってしまわないかしら」

 

 つまり、とそこで結標はその話の核心を口にした。

 

「能力の発現に、人の脳を使う必要なんてあるのかしらね?」

 

 

 

 超能力とは、量子論的な考えを飛躍させたものだと言われている。

 

 『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』という、意図的に『枠』を歪めた演算機能と判断能力を使って現実の観測を行う。そして、その結果に応じて極めてミクロな世界の確率を不自然に変動させる事で何らかの現象を生み出すのが超能力である。

 

 ミクロな世界の「観測者」は人間の頭であり、 故に人間の頭を適切に操作し、ミクロな世界を観測させれば、ミクロな世界を歪めることができるとされている。例えば、「常識的現象」が「99%存在」し、「超常現象」が「1%存在」する時には、普通の人間が観測すると99%の確率で「常識的現象」が現れ、「超常現象」が現れる確率はわずか1%でしかない。

 

 しかし、能力開発などで頭を操作された人間は、「1%存在」でしかないはずの超常現象を本来の確率を無視して無理やり現われさせることができるのである。そしてミクロな世界の歪みが「バタフライ効果」のようにマクロな世界にも影響をおよぼし、マクロスケールでの超常現象、本来ありえないはずの歪んだ現象を引き起こす。

 

 この、操作された人間の頭の中にある「超能力を発生させる何か」を『自分だけの現実』と呼ぶのであるが……。

 

「ねえ白井黒子さん。貴女は私が失望してしまうような人間至上主義じゃないわよね。『頭脳』なんて呼ばれるものは人間以外にだってくっついてるでしょう? ―――ほら、例えば『樹形図の設計者』、とか」

「ま、さか。演算機器が、わたくし達と同じような能力が発現すると? 貴女、本気でそんな事を考えてますの? それは機械に心があるというのと同じレベルの寝言ですわよ」

 

 白井の言葉に対して、結標はムキにもならず、

 

「ええ。機械は所詮、機械。そもそも情報処理の方向性そのものが現象の観測とは大きく外れているもの。だけど、予測することはできる。あらゆる現実を完全に再現する究極のシュミレートマシンを使えばね。ねぇ、白井さん、皆。貴女達は初めてその能力を手に入れた時、どんな気分がしたかしら?」

 

 結標は語る。

 

「私は正直恐ろしかったわ。この能力で何ができるか考え、怯えて。実際にその通りの結果が出てしまい、さらに脅えて。私はね、白井さん。この手に力がある事がこの世の何よりも怖かったの。他愛のない想像通りに人すら殺せてしまうだろうこの力が。だから、私は問いかける。人間以外に超能力を扱える個体は存在するか否かを」

 

 結標はそのキャリーケースを大事そうにそっと触れた。

 

「例えば、イルカは海のヒューマンと呼ばれ、蟻の社会には厳格な規律と秩序がある。超能力は人間の特権なんかではないはず。ではなぜ、人間でなくてはならないの? 私はそれが知りたい」

 

 そのために、『残骸(レムナント)』から新しい樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)を作り上げる。

 

 それが彼女達の計画であった。

 

 

 

 その頃、1人のクローンがとある高校の学生寮に赴いていた。

 

「お願いがあります。と、ミサカは相手の目をまっすぐに見て、心中を吐露します。ミサカと、その妹たちの命を助けてください」

 

 その言葉を聞いた俺と当麻は、すぐに学生寮を飛び出す。

 

 そうして暗闇の街並みの中を駆けていると、俺は今までに何度も感じた事のあるAIM拡散力場を感じ取った。

 

「当麻、こっちだ!」

 

 俺が道を曲がると、当麻も後ろから追いかけてくる。

 

 しばらくすると、公衆電話の扉を開けっ放しにしたまま、その端末を囲んでいる3人の少女を発見した。その少女達が振り向く。

 

「追いついたぞ」

 

 俺が言うと、彼女たちは驚いたように目を見開いた。

 

「なんで……あんた達が……」

 

 御坂が言葉を漏らす。

 

「行くぞ、ビリビリ」

「最愛、海鳥。……行くぞ」

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