とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト) 作:nozomu7
「あなたはそのために
「ええ。いくら価値ある
だから、技術をもった仲間が必要だったの、と結標は白井の問いに答える。
「言っておくけれど、この考えを裏づけるものはまだあるのよ? 例えば、『暗闇の五月計画』。本来、ただの
結標がさらりと言った内容に、白井は驚愕する。
(絹旗さんと黒夜さんにそんなことがありましたの!?)
「無理矢理に自分だけの現実を歪めてしまったせいで、彼女たちの性格に多少影響を及ぼしてしまったようだけれど……でも、そんな強引な方法で自分だけの現実を獲得させても能力は得られるの。だとしたら、人間以外の個体にだって自分だけの現実を、能力を持たせることも可能ではないかしら? どう、白井さん。あなたにだって、その力で人を傷つけてしまったことがあるでしょう? 私にはそれが分かる。私と仲間にならない? そうすれば――」
「お断りですわ」
白井は迷うことなく即答した。
「分かってないの? もしもヒト以外のものに超能力を宿せるとしたら、私達だって空間移動能力者なんて怪物にならずに済んだじゃない。そもそも私達は、こんな危険な能力を持たなくても良かったはずなのに―――」
「馬鹿馬鹿しい。どんな可能性を示された所で、わたくし達の能力が消えてなくなる訳じゃありませんの」
白井の言葉に、結標は黙った。
「すでに能力者になってしまったわたくし達に、他の可能性を提示した所で何になりますの? そもそも、能力が人を傷つける、何て言い草がすでに負け犬してますわよ。……力が怖い? 傷をつけるから欲しくない……? 口ではそう言いながら! 人にこんな怪我を負わせたのはどこの馬鹿ですのよ! 自分達の行いが正しいか否か知りたければわたくしの傷を見なさい! これがその答えですわ!!」
能力に意思はない。人を救う道具にもなれば、他者を傷つける武器にもなる。
それは力を扱う能力者自身によって決まるのだ。
白井は、自分を床に押しつけているテーブルを押し上げ、立ち上がる。
「結局あなたの言っていることは、”周りは平凡、自分は特別”などという見下し精神まるだしの汚い逃げでしかありませんわ! いまからその腐った根性を、たたきのめして差し上げますの!」
今の白井黒子を支えるのは確固たる信念。開いた傷口から溢れる血で服も身体も汚れていても、泥臭く立ち上がる。そばにあった電気スタンドを握りしめる。
白井は一歩ずつ、近づいていった。
「ひっ!?」
結標は後ずさる。
その白井の姿は、まるで彼女の言っていることこそが正しいと証明しているように思えた。
「(こ、こないで……)」
結標はその時、震える手で隠し持っていた拳銃を取り出し、構えた。
白井が床を蹴り飛び出したとき、銃声が鳴り響いた。白井は床に倒れる。彼女のポケットから、御坂のコインが飛び出し、手放した電気スタンドが割った窓から転がり落ちていった。
一方で、結標はただ無言の沈黙のままに結論を出す。
全ての元凶。自分の周りで、今まで誰かが傷ついたのは。
目の前の彼女を、拳銃で撃とうとしたのは、紛れもなく自分自身だ。
自分こそが……怪物だ。
「は、ァ……ァ、がっ。ガァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
床に座り込み、両手で頭を抱え、結標は仰け反って絶叫する。
周囲の空間が歪み、彼女の
「殺す! 貴女だけは、貴女だけはッ! よくも、“この私を壊してくれたわね”!」
彼女にはすでに、数分前まで白井に語りかけていたときの冷静さはなかった。
「……1000kg以上は体に障ると止められているけど、私の座標移動は最大重量は4520kg。逃げながらでもここへ叩きこめるわ。貴女はもちろん、この建物だって巻き込んで倒壊させられるでしょうね。貴女が私を壊したのだから、私もしっかりお返ししてあげるわ!」
最後に、結標は白井を感情のまま蹴り飛ばすと虚空へ消えた。
(無惨、ですわね)
白井にはもう体を動かす力も、転移をする余裕もない。
しかし、今すぐここから逃げなければ終わりだ。
「お姉さま……」
白井は呟いた。彼女が最も慕っていた者の名を。
(絹旗さんのことも、黒夜さんのことも、そして何よりお姉様のことを黒子は何も知らずに……、首を突っ込んだ結果がこの様ですわ……)
その時、空間が歪み始める。
「4520kg……」
白井が呟いたその時、オレンジ色の閃光が床から貫いて現れた。
「この光は……」
間違いなく、
「黒子!」
崩れて落ちていく瓦礫の中に、確かに彼女はそこにいた。
「来てはいけません、お姉様!」
白井は叫んだ。御坂の能力では、十一次元に干渉することはできないから。自分が道連れにするわけにはいかないから。
すると、落ちていく中誰かに抱きしめられた。
「白井!」
黒夜だ。彼女は
彼女は2人の男の腕をつかんでいた。そして、その2人を窒素で強化された腕力で投げ飛ばす。
2人の男が落ちていく瓦礫の1つに着地すると、その瓦礫は上昇する。そう、結標の指定した、十一次元ベクトルの終点となる座標へと。
上条当麻の右拳が叩きつけられると、乾いた音とともに消えた。
そして、白井は気を失い……彼女の戦いを終えた。