とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第71話 決意と告白

 残骸(レムナント)を巡る騒動が終わったその翌日。

 

「不幸だ……」

 

 俺の親友は白井の入院している病院で、いつもの口癖を呟いていた。

 

「どうしたんだ、当麻」

 

 最愛と海鳥と合流してからここに来たため、何があったのか知らなかったのだが。

 

「どうしたもこうしたもあるか! 白井の見舞いに来てみれば運悪く着換えの最中。御坂妹の方を訪ねてみれば調整の最中で……」

「ノックを忘れた上条が超悪いと思いますけれど」

 

 当麻は最愛の言葉に返事をせず、再び「不幸だ……」と呟いた。

 

「で、結局残骸ってなんだったの?」

 

 インデックスが当麻に尋ねているが、俺たちはとりあえず2人を置いて白井の病室に向かうことにした。

 

 

 

 ノックの返事を確認してから、俺たち3人は病室へと入った。

 

「あら、絹旗さんに黒夜さん。それと……」

「神谷駿斗だ。そろそろ類人猿はやめてくれよ。あと、当麻にもな」

 

 俺は軽く笑って言う。

 

 だが、この部屋には気まずい空気が流れていた。理由はおそらく……。

 

 結標淡希、だったか……あいつ、『暗闇の五月計画』のことについて、何か白井に話しやがったな……。

 

 俺は白井の視線と態度から推測する。

 

「(なあ、2人はどうしたいと思う? 自分たちの過去について話すかどうか)」

 

 波動干渉(ウェーブインターフェア)を使って2人にだけ声が聞こえるようにして、聞く。

 

「私は全て伝えても良いと思います。白井だけではありません、佐天や初春にも知らせよう、知ってもらいたいと思います」

 

 最愛は迷いなくそう答えた。

 

「いつまでも隠しているわけにはいきませんから」

「知られてしまった以上は、な。アタシも賛成だ。むしろ知っておいてもらいたいと思うよ。特に『攻撃性』を植え付けられたアタシの場合、いつかはあの口調のことが知られてしまうだろうからな。佐天と初春にも知っておいてもらいたい」

 

 前に幻想御手(レベルアッパー)事件でこの街の『闇』にも軽く触れているみたいだから、湾内や泡浮とか何も知らない人よりはマシだろ、と海鳥も続けて言う。

 

 怪訝そうな顔をする白井に対し、俺は言った。

 

「白井。お前が退院したら重要な話をする……佐天さんと初春さんの2人も交えてな。内容は他言無用で頼む」

 

 

 

 そして、その当日。

 

 誰もいない公園に集まったのは、俺、最愛、海鳥、当麻、御坂。この5人が説明側だ。

 

 そして聴衆となるのは白井、佐天さん、初春さんの3人である。

 

「3人が、置き去り(チャイルドエラー)……?」

 

 車いすに乗った白井が、思わず言葉を漏らしたというように呟く。

 

「はい。私たちは同じ施設で超育ちました……。所謂、幼馴染というやつです」

 

 最愛が答える。

 

「まあ、同じ施設だった奴は他にもいるんだけどさ。この3人でよく一緒に遊んでいたんだよ。特に、俺と同い年の奴はほとんどいなかったからな」

 

 俺が続けて言った。

 

「それで、中学生になると俺は施設を出て奨学金で暮らすようになった。それでも1年に何度かは施設を訪れているし、下級生の世話をしたりもしている」

「その途中、駿斗兄ちゃんが小学校5年生で私たちが2年生だった年の冬だったでしょうか。都市内の施設の交流が目的とかなんとかで、駿斗兄ちゃんが他の施設に移ったんです」

 

 今でもその理由は分からない。だが。

 

「それで俺はしばらく最愛と海鳥の2人と会えなくなった。小学生がそんな勝手に学区間を動くことなんてできないからな。だが、中学生になって俺が施設を訪ねて2人に会いに行くと、そこにはいなかった」

 

 そう。1度は会いに行ったのだ。だが、会えなかった。

 

「園長先生の説明では、施設に補助金を出している組合との協定があった。能力開発の研究に協力する人として、数年に一度、小学生のうちに研究所に預けられる子供たちがいる。その中に2人が選ばれた、という説明だった。だが、それでも2人とは連絡がつかないどころか、行先さえ分からなくなっていた」

 

 これはおかしいとは思っていた。しかし、日進月歩の勢いで研究が進む学園都市内では研究に関する情報はかなりのレベルで隠されてしまうことが多いので、しょうがないことかとも思っていた。

 

「だが、実際はそんな甘い理由ではなかったんだ」

「ああ。例えば、木山春生の能力開発における実験によって、置き去りたちが意識不明になってしまっていたことは知っているだろ?」

 

 幻想御手はそれをきっかけにして、妹達(シスターズ)のミサカネットワークを参考にして生み出された。

 

 海鳥の言葉に対して、初春さんが答えた。

 

「はい。それで、この学園都市の研究者も表向きの物ばかりではないということを突きつけられましたけれど……」

「私たちも、そのような研究……『計画』に関わらせられたんです」

 

 初春さんの言葉に対して、最愛が言った。3人はその言葉に驚きを隠せないようだ。

 

「『計画』? その内容がまずいものだったんですか?」

「そうだったんだ、佐天さん。具体的には、高位能力者の精神性・演算方法の一部を他の人間に無理矢理植え付けるというものだった。具体的には、学園都市最強の能力者、超能力者(レベル5)の第一位、一方通行(アクセラレータ)の攻撃性を海鳥に、防御性を最愛にね」

 

 その言葉に白井の表情が一変する。その反面、佐天さんと初春さんはその言葉の意味がよく分かっていないようだった。

 

「2人は超よく分かっていないようですから説明しますと、要するに……勝手に他人に人格を超踏みにじるようなもの……と言えばいいのでしょうかね」

自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を無理矢理捻じ曲げられたくらいだからな。人格蹂躙もいいとこだ」

 

 最愛と海鳥の説明でその重大さが理解できたのだろう。佐天さんと初春さんもその表情を暗くした。

 

「だから、私たちの性格……人となりは、純粋な私たち自身のものではありません。私のそれは一方通行の防御性が超混じったものであり、黒夜のそれは一方通行の攻撃性が混じったそれなんです」

「だから、アタシ達は興奮したりすると一方通行の性格が強くなる。例えば、口調が変わったり、とかな」

 

 立て続けに説明をし終え、再び場が静かとなる。

 

 その静寂を打ち破ったのは、佐天さんだった。

 

「私は……2か月前まで無能力者(レベル0)だったから、自分だけの現実を捻じ曲げられたとか、本当に、なんとなくしか分からないんだけれど」

 

 彼女は話す。

 

「それでも、2人は……2人のことは私の友達だと思っている。例え、性格が少し変わってしまっているのだとしても。それだけは、分かるから!」

 

 佐天さんに続いて、初春さんも――

 

「私もそうですよ! 性格がどうだとかよく分かりませんけれど……それでも友達がいてくれれば、みんながいれば、何かができますから!」

 

 白井も――

 

「それでも、絹旗さんは絹旗さんですし、黒夜さんは黒夜さんですの。ですから、これまで通り、胸を張って堂々としててくださいな」

 

 その言葉を聞き終えた俺は、2人の表情を見る。彼女たちの表情は、今までに見たことがないほどに晴れ晴れとしていた。

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