とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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お待たせしました。投稿を再開します。

アンケート、ありがとうございました。
ちなみに回答者は21人でした。

あと閑話の題を募集します。やってほしいこととか読みたい話とかあったらどんどん言ってください。今のところ、0930事件の前には当麻と駿斗の出会いを書くことは決まっています。

では、お待たせしました。

『とある神谷の幻想創造 エンデュミオンの奇蹟編』

3日に1話投稿のペースで進めるつもりです。
それではどうぞ!


エンデュミオンの奇蹟編
第72話 歌姫との出会い


『スペースプレーン・オリオン号』。

 

 本来、打ち上げ施設なしで地球と宇宙を往復するには、高度によって変化する大気層の性質やそこでの速度、空力効果の無い大気圏外、それぞれに合わせた推進装置が必要とされる。だが、『オービット・ポータル社』はその推進装置を、学園都市の優れた最新技術によって集約化と実用レベルへの技術開発を実現させた。

 

 そう、人類の発展は海から空、そして、宇宙にまで届くようになったのだ。

 

 夢の宇宙旅行を実現させるこの『オリオン号』は、華々しく(そら)へと開業記念試験飛行した。

 

 だが、地球への帰還直前にスペースデブリと接触。その結果……

 

「左翼エンジンブロック脱落! も……もう駄目です!」

「諦めるな! まだやれる事はある」

 

 艦内に警報が鳴り響き、副長のパニックに叫ぶ声に艦長の声が応える。

 

 左舷エンジンブロックに深刻な損傷を受けてしまう大事故。

 

「おお……!?」

「大丈夫か……なあ、このまま!」

「神よ、どうか。私達を……」

 

 88人は恐れ震え、叫び、祈った。

 

「い、いやだ……うわぁあああ!」

 

 空気摩擦による熱で赤く変わる、艦の先頭にある操縦室。共に舵を取っていた副長は、この重圧に耐えきれず、席を離れてしまった。

 

 だが、1人諦めずに残る男がいた。

 

 まだ時間はある。男は最後まで操縦桿を握りしめ――『奇蹟』は起きた。

 

 学園都市23学区の空港に、試験飛行中だった『スペースプレーン・オリオン号』は不時着し、炎上。

 

 帰還直前にスペースデブリと接触し、エンジン故障などのトラブルが発生したが、着陸のショックで、損傷した左舷と中央客席部が分断されたことで、乗員乗客“88”名全員の生存が確認された。

 

 この『オリオン号事件』はその規模の大きさに対して犠牲者が出なかったことから、『88の奇蹟』として後世に語り継がれることとなる。

 

 

 

 

 

 3年後。ある9月中旬の日の学園都市で、2人の少年が1人の少女と歩いていた。

 

「なあ、インデックス。ハンバーガーで手を打たないか?」

 

 そう話す少年は、そのツンツンした黒髪の頭を片方の手で掻きながら歩く。

 

「だめだよ、とうま! ゆうべは私とーってもひもじい思いをしたんだよ!? 隣の部屋のはやとが気が付いて来てくれなかったらどうなっていたか分からないかも!」

 

 白に金の刺繍がされている修道服を着た銀髪の少女、インデックスはその少年、上条当麻にそう言った。

 

 その頭の中には自身の完全記憶能力をもってして10万3000冊の魔導書が記憶されているこの少女だが、彼女は日頃から朝、昼、晩の三食において一般的な人の3、4倍を軽く超える食事をとる。そのため、現在彼女が居候をしている学生寮の部屋の家主である当麻と、その親友である神谷駿斗は莫大な『食費』という負担を1日交替で背負っているのだ。

 

 しかし、昨日銀髪シスターの食事担当だった当麻は夕食を与えるのを忘れてしまっていたらしい。

 

「まあ、罰として今日の食事担当は当麻にするとしても……人の財布の中身には限度があるんだから、あまり無理を言うなよ」

 

 そうインデックスに言うのは神谷駿斗だ。この少年も当麻と同じように黒髪ではあるが、その髪型は当麻のようにワックスでツンツンにしているわけではなく、少し短めにされているだけである。

 

「2人にはわかんないんだよ! 晩ごはんを忘れられるとね、存在そのものを忘れられたような気分になるんだよ!?」

 

 インデックスは怒りながらそう話す。

 

 すると、当麻がついにため息とともにこう言った。

 

「わかったわかった、今回は好きなだけ食え」

 

 その言葉にインデックスの顔がパアァ、と輝く。

 

「ほんとに!?」

「ああ、上条さんに二言はねーよ。ったく、不幸だ……」

 

 当麻はいつもの口癖を呟くと、自分の財布に残っている金額を確かめる。すると駿斗も念を入れて、当麻と同じように自身の懐具合を確かめ始めた。

 

 その一方で、インデックスは別のものに興味を惹かれたらしい。

 

『宇宙エレベーター完成間近』

 

 彼女は学園都市がその空に飛ばしている気球船の横に付けられているディスプレイをじっと見つめていた。

 

「宇宙、エレベーター……?」

『いよいよ完成間近に迫った宇宙エレベーター「エンデュミオン」! 記念式典は9月に開催される予定です! 今回は、エンデュミオンが完成されるまでの軌跡を……』

 

 彼女のつぶやきに答えるように、側に立っているビルのディスプレイではその特集が映し出されている。

 

 するとインデックスがこう言った。

 

「ねーね、宇宙エレベーターって何?」

 

 その言葉に、2人の少年は「「はあ!?」」と息ピッタリに反応した。

 

「インデックスさん? あんた完全記憶能力あるのに何言ってんの?」

 

 当麻がそう言うと、駿斗が彼女の頭をつかみ、ぐるり、と彼女の目の前に天高くそびえる塔がくるまでその頭を回す。

 

「ほら、あれ(・・)だよ。あれが宇宙エレベーター。ロケットやシャトルを使わずとも宇宙まで上がれるようにするためのものだ」

 

 駿斗は説明するが、その説明を受けているインデックスはキョトン、とした表情で、

 

「あれ? あんなの今までにあった?」

「ありましたよっ! シェリーと戦っていたときも、アニェーゼたちと戦っていた時も……堂々とあったでしょーが!」

 

 当麻は言うが、彼女は今までに見た覚えが本当にないらしい。

 

「まあ、発表は最近なんだけどな。何でも、学園都市の技術力でしか実現不可能と言われるほどのスピードで建造が進められたとかなんとか」

「おおーっ。科学サイドはついにバベルの塔まで実現しようとしているんだね……」

 

 インデックスは感心したようにエンデュミオンを見つめる。

 

「まあ、バベルの塔と言えるのかどうかというと、違うと思うが……」

 

 世界中に言語の違いをもたらすきっかけになったと言われるあの塔とはずいぶんと異なるだろう。

 

『ペガサス 遠い空』

 

 その時、どこからか流れてきた歌が3人に聞こえた。彼らは一斉にその方向に振り向く。

 

 すると、そこには人だかりができていた。

 

(路上ライブか?)

 

 駿斗は考えると、2人とともにそこに向かっていく。

 

「はいはい、すみませんっと……」

 

 3人は声の主を見るためにその人ごみをかき分けて前へと出た。

 

『グローリア 届くように』

 

 彼らはその透き通るような声に心を奪われる。

 

 ――そこにはキーボードを叩きながらその歌であらゆる人を惹きつける、1人の少女がいた。

 

 

 

 

 

「……『88の奇蹟』? ああ、あったねそんなの」

 

 学園都市内のファミレスで、友人の初春飾利が言ったその単語を御坂美琴は聞き返すように言った。

 

「3年前です! オリオン号の事故でスペースプレーン計画は凍結されて、宇宙エレベーターの建設が始まったんですよ」

 

 初春は説明を続ける。

 

「世界初の宇宙エレベーターですよ! なんでも、この学園都市に建造するのは赤道直下よりも何十倍も困難だとか。そもそも、この学園都市に建造するってこと自体……」

 

 興奮して話す初春の説明を聞き流しつつ、ドリンクバーからコップを片手に自分たちが座っていたテーブルへと戻る御坂。すると、彼女は一緒にこのファミレスに来ている友人の佐天涙子がイヤホンを耳につけて何かを聴いていることに気が付いた。

 

「あれ、佐天さ――」

「そう言えば、佐天はさっきから何を超聴いているんですか?」

 

 御坂が口を開きかけた瞬間、彼女が聞こうとしていたことを、C級映画のパンフレットを見ていた絹旗最愛が聞いた。狙ったのではないかと思えるほどのタイミングに思わず御坂は最愛を見るが、彼女は特に狙ったとか、そういうわけではない。

 

「ああ、これは『ARISA』っていうネットや路上ライブで今すごく人気が出ている人の音楽なんですよ!」

 

 聴きます? と佐天に差し出された片方のイヤホンを自分の耳に着ける御坂。すると、初春がパソコンを操作して検索を始めた。

 

「へえ、こんな人なのか」

 

 佐天の隣に並んで座っていた黒夜海鳥が映し出された画面を覗き込んで呟く。すると、画面に映るその姿を見た御坂がイヤホンを耳に着けたまま声を上げた。

 

「あれ? この子……やっぱりあの子だ。ほら、絹旗。この子、あの時に会った子じゃない?」

「え? ああ、確かにあの時に会った人ですね」

 

 御坂が最愛に話を振ると、彼女は御坂と同じような反応をした。

 

「『あの子』って2人は知っているんですか?」

 

 御坂が言った言葉に思わず彼女に詰め寄る佐天。しかし、その様子を見ていた初春と海鳥が窓の外にあるものを見て、青ざめた。

 

「おい、佐天。後ろ……」

「えっ? ひい!?」

 

 佐天が軽く悲鳴を上げると、白井黒子がその車いすごとパッ、と消えた。

 

「何をなさっておいでですの、お姉さま!」

 

 大能力者(レベル4)空間移動能力者(テレポーター)である彼女は友人たちが囲んでいたテーブルの上に移動、そのまま着地する。驚いた最愛はその衝撃に備えるように窒素装甲(オフェンスアーマー)を身にまとった。

 

「白井さん……入院しているはずじゃ……」

 

 つい最近に起こった残骸(レムナント)をめぐる騒動で白井は入院していたのである。

 

「このようなことがあるからおちおち入院もしておられませんのよ! 半日早く退院の許可がおりたので皆さんを驚かせようと思ったら……かくなるうえは、私もお姉さまと急・接・近! その甘い吐息を堪能させていただきますわ~っ!」

 

 その騒動に巻き込まれまいと席から離れたり、空力使い(エアロハンド)で盾となりそうなものを浮かばしたりしてその身を守らんとする少女たち。そして、

 

「く、来るなー!」

 

 そのファミレスの中に、超能力者(レベル5)の叫びとともに雷撃が走った。

 

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