とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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第76話 穏やかな非日常

「ええか! アイドルを応援する醍醐味っちゅーのは青田買いにあるんや」

 

 当麻と駿斗のクラスメイトにして友人、通称青髪ピアスは教室で熱弁をふるっていた。

 

「特に今にこのご時世、この『ARISA』ちゃんみたいに突然火がついて、ちょーっと目を離したスキに、あっという間にメジャーになってしまうんや! ほんま一瞬たりとも気ィ抜けん世界なんやで」

 

 彼が言っている事は割と当たっていて、その時教室にいた生徒の大部分が携帯サイトや雑誌でアリサの特集を見ていた。かなり人気が出ているようである。

 

「どうした、はやとん。なんだか今日はお疲れモードだにゃー」

 

 駿斗の顔を覗き込んで土御門が言った。その言葉に、駿斗は「(原因は分かっているくせに)」と心の中で呟く。

 

「少し寝不足なんだよ。まったく、当麻の苦労がよく分かったぜ」

 

 もちろん、寝不足なのはベッドをアリサに使わせたからである。駿斗は当麻とは異なり、ベッドが使えなかったことは今までに1度くらいしかないので、風呂場で寝ることに慣れていないのであった。

 

「はいはーい。みんな席に着くのですよ」

 

 教室に思春期に入る前の子供のような、高い声が響く。担任である小萌先生が来たのだ。

 

 教室の中にいた生徒たちは、一斉に席に着く。

 

 

 

 

 

「だからね、とうまとはやとはい~っつも私のこと子供扱いするんだよ」

 

 2人の少女は駿斗の部屋の浴室で話をしていた。

 

 インデックスは滑らかな素肌に瑞々しい銀髪をしており、暖色系の照明が当たり、水が滴るこのバスルームでは一層綺麗に見える。

 

 その頬を膨らませる顔が可愛いなー、とアリサは思いつつ言う。

 

「だけどそれって、インデックスちゃんが可愛いからじゃないの?」

「えっなんか言った?」

 

 シャワーを流していて聴こえなかった模様で、インデックスはキョトン、とした表情をアリサに向ける。

 

「この際だから聞いちゃうけどさ。……インデックスちゃんと駿斗君達って、どういう関係?」

 

 シスターであるとはいえ、年頃の少女が少年たちの下に居候をしているのだ。

 

 何か、色恋沙汰の1つや2つ、3人の中であったとしても不思議ではない。そう思ったのだが。

 

「2人がご飯を作ってくれて、私が食べる人?」

「へ、へぇ……」

 

 髪の水気を出してから整えるインデックスは当たり前のように、そのど真ん中ストライクの直球を打ち返した。

 

 アリサが求めてたのとは大きく異なっている答えである。

 

 最近、恋に関する曲を作ろうかと思っているアリサだったが、恋愛経験のない彼女は歌詞がなかなか思いつかなかったのだ。だからこそ、インデックスに聞いたのだが。

 

「不思議な3人だよね、あなたたちって。でも、そういう関係って、ちょっと素敵かな」

「あと、私が困った時には必ず助けてくれるかな! はやとは何にしても呑み込みがはやくてすごいけど、とうまも意外と頼りになるんだよ!」

 

 うんうん、と腕を組んで頷くインデックス。その一方で、アリサは2人の少年のことを考える。

 

 ツンツン頭がトレードマークの、上条当麻。

 

 天才、という訳ではない。でも無能力者(レベル0)であっても、どこまでもまっすぐな少年だ。

 

 そしてこの部屋の家主でもある、神谷駿斗。

 

 見た感じには爽やかで、でも、熱い一面も持ち合わせた少年だ。

 

 そしてアリサと同じように、無能力者であるのにも関わらず正体不明の力を有している。

 

 だけど、その力を揮うことに本人は悩んでいないようだった。そこがアリサとの決定的な違いでもあった。

 

 彼はその力の使い方を間違わない。周りの人を守るために使っている。この1日だけで、それが見て取れた。

 

 不思議な関係を持つ、この3人。

 

 彼らのことを表すとしたら、そう……。

 

「アリサ?」

 

 アリサは突然湯船から上がると、体が濡れていることも気に留めずに、インデックスを置いてリビングへ急ぐ。それに驚いたインデックスも、体を洗ったばっかりであったが彼女を追った。

 

 リビングのテーブルの上で、一心にアリサは白い紙にペンを走らせる。

 

「アリサ? どうしたの?」

「待ってて。歌詞、思いついたから!」

 

 アリサは頭に浮かんだ新曲の歌詞を、忘れぬ内にメモをとる。インデックスのおかげで、なんだかとても良い歌詞ができそうな気がするのだ。

 

 体にバスタオルを巻くことすらも忘れて、ひたすらに書く。

 

 インデックスはアリサのその様子をとても興味深そうに見つめる。

 

「そっか~! そうやって歌作るんだね! 見せて見せて!」

「だ~め! 恥ずかしいから!」

「え~っ! ずるいよ~アリサ~!」

「じゃ、じゃあできたらちゃんと見せるから! そしたら一緒に歌お! ね?」

「分かった、約束だからね!」

 

 アリサとインデックスは約束を交わす。彼女らの口元には、笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 アリサとインデックスがそんな風に話しているころ、駿斗は学校の図書館に閉館時間ギリギリまでいた。

 

「あの、そろそろ閉館時間になりますので……本を借りるのなら、お早目に」

「あ、すみません。貸し出しは、しなくても大丈夫です」

 

 駿斗は机の上に散らかしていた因果律や自分だけの現実(パーソナルリアリティ)、確率論などに関する本を急いでまとめると、片づけてから図書館を出た。

 

(数時間だがある程度情報は得られたか……)

 

 駿斗は考えながら、今日の買い物を済ませて寮に戻る。

 

「明日?」

 

 2人は夕食も終え、洗い物を片づけながら次の日の予定を話していた。

 

「うん。オービット・ポータルの人と、契約の話とか」

「ああ、俺は大丈夫だぞ。当麻は補習があるって言っていたけどな」

 

 アリサの予定を聞いて、自分の予定が特にないことを伝える駿斗。

 

「でも、明日は他の子たちを連れていくって約束もしちゃっているんだけれど、いいかな?」

 

 

 

 

 

「やっほー。お待たせ……って、なんであんたまでいるの?」

「「「「駿斗兄ちゃん(神谷さん)!?」」」」

 

 駿斗がアリサと待ち合わせ場所でその友達を待っていると、現れたのは超電磁砲(レールガン)組一行だった。

 

「いや、むしろ俺の方が驚きなんだけど!? 約束している他の奴って、お前らだったのかよ?」

 

 その後、アリサに海鳥たちが自己紹介をするが、彼らは互いにどのようにしてアリサと出会ったのか、どのような関係かを詮索しあう。だがとにかく、オービット・ポータルの人たちとの待ち合わせ場所に行くことになった。

 

「え? オービット・ポータルって、3年前にオリオン号の事故を起こした会社なの?」

「はい。社をかけたスペースプレーンが落ちたことで、倒産状態になっていたんです」

 

 会場へと向かうエレベーターの中。御坂の質問に初春が答えた。

 

「でも、その後に買収されて奇跡の復活、エンデュミオンを実現に導いたんですよ! ちなみに、今度の社長は女の子なんです!」

「確か、10歳の天才ゴスロリ美少女社長とか言う触れ込みだったよな。まあ、実際どうなのかは知らないが」

 

 初春の言葉に頷いて、駿斗が付け足すように言う。

 

「そんなの、ただの超お飾りだと思いますけどね」

「そうですわよ。盛りすぎでもはや胡散臭いですわ」

 

 最愛と白井は目を細めて言う。

 

「そんな、包帯ツインテール車いすほどじゃないですよ」

「初春……!」

「初春、やめておけよ。白井もファミレスの時みたいに暴れるなよ?」

 

 初春の言葉に低い声で言葉を返す白井だったが、海鳥に制される。

 

 そんな話をしていると、エレベーターが止まったので駿斗たちは降りる。

 

「で、これは都市伝説なんですけど、彼女は実は宣伝用のホログラフィーとか、ロボットじゃないかって噂もあるんですよ。神谷さんはどう思います?」

「俺は……そうだな」

 

 話を振られた駿斗は自分のクラス担任の顔を思い出すと、

 

「いや、実際に彼女がやっているという可能性は考えられるぞ。年齢を詐称しているのなら、の話だが」

 

 そう答えた。

 

「あの姿で年齢を詐称するのは無理があると思いますけど……」

「いや、実際俺の周りにいるんだよ……。ランドセルが似合いそうな容姿をしているくせに、立派に高校教師を務めている人間がな……」

 

 初春の言葉に意味深げに言葉を返す駿斗。 

 

「でも思いません? なんか、あの人すごくお人形さんぽいって言うか――」

 

 と佐天が言った時、「わっ!?」とその場にいた全員が驚いた。

 

 なぜなら、彼らが通り過ぎた場所に置かれている椅子に座っていた人形……のように見えた少女が立ち上がったからだ。

 

 彼女はその場にいる全員の顔を順に確かめるように眺めると、最後にアリサに向かって言った。

 

「はじめまして、アリサ」

 

 透き通る白い肌に色素の薄い金髪碧眼の少女こそが、レディリー=タングルロードだった。

 

 『オリオン号事件』によって破綻しかけた会社を持ち直させた天才的な経営手腕を持ち、今話題の『エンデュミオン』を建設した『オーピッド・ポータル』の社長。そして、そのエンデュミオンのキャンペーンに使われるイメージソングを歌うことになった歌手の『ARISA』、鳴護アリサの雇い主でもある。

 

 彼女は驚いている面々を気にせず、アリサに言った。

 

「あなたの歌、好きよ。こんなに気に入ったのはジェニー=リンド以来かしら」

 

 そして、「頑張ってね」という言葉だけをアリサに残して、立ち去って行った。

 

「……今の」

「「「「「ええっー!?」」」」」

 

 ぽつり、と初春が呟いた言葉に、駿斗を除く(・・・・・)全員が驚愕した。

 

 駿斗が驚かなかったのは、考え事をしていたからである。

 

(あの人、不自然なくらいに生命力が感じられなかった……)

 

 通常、人間は生命力を消費しており、それは常に体外へと放出される。だからこそ、魔術師は生命力を練ってつくった魔力を体外に放出でき、魔術の行使が可能となるのだ。

 

 彼女は魔術師ではないのか、それともあるいは……。

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