とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト) 作:nozomu7
第85話 祭りの始まり
大覇星祭。
学園都市に所属する全学校が合同で行う超大規模な体育祭で、9/19~25の7日間に渡って開催される。
要は能力者たちが繰り広げる大運動会であり、その為に燃える魔球や凍る魔球、消える魔球はザラであり、外部からの注目度も高い。
種目にしても、学校単位のものから個人単位まで多岐に渡る。
また、他にも学園都市ならではの特徴はある。それは、多くの父兄が普段は入れない学園都市に入ることができるということだ。
上条当麻の両親もまた、自分たちの息子を見るために学園都市にやってきていた。
「あらあら、学園都市って色々な学校があるのね」
そう言うのは上条詩菜。当麻の母親だ。
「ああ。世界中のあらゆる教育機関を凝縮させたような場所だからね」
彼女の言葉にそう答えるのは上条刀夜。当麻の父親である。
彼らは1か月ほど前に滅多に会えない息子たちに学園都市外で会っているのだが、その時は
そんな時、刀夜に1人の女性がぶつかってきた。
「あっ、すみません」
「こちらこそ、ごめんなさい」
20代に見えるその女性は、立ち止まって刀夜に謝罪する。そして、彼女は自分の目的地が分からなかったのか、刀夜に質問した。
「あの……常盤台中学って、どこにあるかご存知でしょうか?」
「常盤台中学、ですか。ちょっと待ってください。えっと……」
手に持ったパンフレットから探す当夜。
「ないなあ。もしかして、一般公開はされてないのでは?」
「ええ!? じゃあ、美琴の奴はどこにいるのか……」
そう言って刀夜の持っているパンフレットを覗き込んでくる彼女――御坂美鈴だが、その様子を詩菜は黒いオーラを纏って見ていた。
「あらあら、刀夜さん。
「か、母さん!? これは、その……」
「本当に載ってない!? どうしよう」などと美鈴が言っている横で、詩菜のオーラに冷や汗を浮かべる刀夜。すると、詩菜は2人の少年少女が少し離れた場所で並んで歩いていることに気が付いた。
「ねえねえ、結局アンタって赤組と白組のどっちなの?」
「あん? 赤だけど。お前らと同じか」
御坂の問いにそう答える当麻。
自分と同じチームであることに御坂は少しテンションが上がったのか、
「そ、そうよ。じゃ、じゃあ、赤組のメンバーで合同の競技とかあったら――」
などと言いかける。しかし、
「なんつってな! 実は白組でしたーっ!!」
当麻はそこでドッキリをバラし、自分の持つ真っ白な鉢巻を見せつけた。
「見ろこの純白の鉢巻きを! 貴様ら怨敵を1人残さず葬りさってやるという覚悟の証ですよ!! っつか共闘なんてありえないね。チューガクセーだろうがコーコーセーだろうが知った事か! ボッコボコに点を奪ってやっから覚悟せよ!」
そのドッキリに御坂は少し頭にきたのか、
「こ、この野郎!! ふん、人を年下だと思って軽く見やがって。白組の雑魚共なんか軽く吹っ飛ばしてやるんだから!!」
「吹っ飛びませーん! もしお前に負けるような事があったら罰ゲームを喰らっても良いし! 何でも言う事を聞いてやるよ!」
「い、言ったわね。ようし乗ったわ。……何でも、ね」
御坂は『何でも』の部分を強調して確かめる。
「あら、どうせ勝てもしないくせに希望ばかりが大きい事! その代わり、お前も負けたらちゃんと罰ゲームだからな」
「なっ。そ、それって、つまり、な、何でも言う事を……」
「あれあれー? たった今ここで放った大口にはそれぐらいの自信しかなかったのかなー?」
「……良いわよ。やってやろうじゃない。後で泣きを見るんじゃないわよアンタ!」
そんな様子を見ていた刀夜たちは楽しそうに微笑んだ。
そんな訳で、学生の街で7日間の祭りが始まる。
――その裏で、何の計画が進行しているのかも知らずに。
「「で、どうしてこうなってるんだよ!」」
競技前の集合場所にて、俺と当麻の叫びが虚しく響く。
「うだぁー。やる気なぁーい……」
青髪ピアスが地面に大の字に寝転がって呟く。他のクラスメイトも似たり寄ったりの様子だ。
「ちょ、ちょっと待ってください皆さん。何故に一番最初の競技が始まる前からすでに最終日に訪れるであろうぐったりテンションに移行してますか?」
まだ、競技が始まってすらいないのに、もう最終日みたいな超ローテンションで俺たちは迎えられた。
当麻の問いに対して、クラス委員の青髪ピアスが地面に寝転がりながら、
「どんな戦術で攻め込みゃ他の学校に勝てるかいうてクラス全員でモメまくって、残り少ない体力をゼロまで磨り減らしてしまいましたがな」
「「本末転倒じゃねーか!」」
俺たちが叫ぶ。
「学生の競技なんて。所詮そんなもの」
俺たちの叫びに、姫神はその胸にかけられたケルト十字――『
「当麻……ご愁傷様」
「俺が賭けに負けることは確定事項!?」
「安心しろ。俺は別に最愛達とは何も賭けてない」
「お前はな!」
俺と当麻がそんなやり取りをしていると、吹寄が現れた。
「な、何なの。この無気力感は! まさか、上条。また貴様が無闇にだらけるから、それが皆に伝染して……」
「え、いや、別にこれ俺のせいじゃないし! むしろ俺たちだって今やって来たトコなんだって!」
「つまり貴様が遅刻したから皆のやる気がなくなったのね?」
「何があっても俺のせいにしたいのか!?」
当麻が叫ぶ。
「っつか、吹寄だって俺たちより遅れて来ただろうが」
俺が言うと、彼女はその腕にある腕章を見せつけるようにして言った。
「あたしは運営委員の仕事よ!」
そう言って詰め寄って来る吹寄に対し、俺たち2人が後ずさりする。
すると、その時。
「だから! ウチの設備や授業内容に不備があるのは認めるのです!」
聞きなれた声が耳に入ってきた。体育館のほうからだ。
俺たちはそこに近づく。
「でもそれは私達の所為であって、生徒さん達には何の非も無いのですよーっ!」
「生徒たちの質が低いから、統括理事会から追加資金が下りないのでしょう? ハッ、
……体育館の陰にいたのは(チアリーダーみたいな衣装を着た)俺達のクラスの担任の月読小萌と、何処かの学校の男子教師。大覇星祭期間中は普通は教員も市販のジャージに着替えているのだが、男は何故かこの暑い中でもスーツ姿だった。
その2人が言い争っていた。
「それに生徒さん達に成功も失敗も無いのですーっ! あるのはそれぞれの個性だけなのですよ!」
「なかなか夢のある意見ですが、これから行う『棒倒し』。お宅の“落ちこぼれ”たちを完膚なきまでに撃破して差し上げますよ」
男はそれだけ言い残し、はっはっはー、と高笑いしながら余裕を見せつけるかのようにゆっくりと去って行った。
俺たちの学校はそのほとんどが
そう、
だが、
「……違いますよね」
ポツリ、と呟くように言った小萌先生の声を俺たちは確かに聞いていた。
「みんなは、落ちこぼれなんかじゃありませんよね……?」
小さな肩を振るわせながら、彼女は俯く。そして、その目尻に光るものを、俺たちは確かに見た。
俺たちがゆっくりと振り返ると、そこには無言で立つクラスメイト達の姿がいた。
雰囲気は一変していた。
先程までの倦怠感ではなく、誰もが静かな怒りに震えていた。
「お前らにもう一度聞く――本当にやる気がない、というやつは出てこい」
俺に問われるまでもなく、彼らの答えは決まっていた。
『第一種目「棒倒し」。各校の入場です』
アナウンスが鳴り響く。
そんな中、観客にはインデックス、御坂、佐天、初春、最愛、海鳥が当麻と駿斗の学校の様子を見に来ていた。
「ねえ、とうまたちは勝てそうなの?」
インデックスは、御坂にもらって空になったスポーツドリンクの容器を握りながら尋ねる。その質問に、最愛が答えた。
「正直超厳しいと思いますよ。相手の高校はいわゆる“エリート校”ですからね。駿斗兄ちゃんたちの高校は
こんなこと言って駿斗兄ちゃん達には悪いですけれど、と言いながら説明する最愛。彼女の表情が不満げに見えるのは、やはり彼女が想い慕うその少年には勝ってほしいからだろう。
「そうね。まあ、あいつらにはお気の毒様ってところね」
御坂も最愛の言葉に同意した。彼女は当麻との賭けの内容もあるので、むしろ実力差通り負けてもらった方が嬉しいのかもしれない。
「でも、同じ無名校としては私は勝ってほしいですけどね!」
「うん。そうだよね、初春! エリートを鼻にかけるような高校くらい、神谷さんたちならなんとかしてくれますって!」
無名校である柵川中学に所属する2人が言う。彼女たちは期待しているのだ。
「そういえば、短髪はどうしてここにいるの? とうまの応援?」
インデックスに思いがけない質問をされ、顔を赤くしてうろたえる御坂。
「べ、別にそんな訳じゃないわよ。大体、どうして私があんな奴の応援なんかしなくちゃならない訳?」
顔を逸らしてそう答える彼女であったが、その反応が逆に他の少女たちの好奇心を呼び起こすことになった。
「でも御坂さんはあの人を見に来たんですよね?」
「な、何言ってるの佐天さん!? べ、別にあいつのことなんか――」
佐天に問い詰められて顔を赤くして首を横に振る御坂。するとその時、海鳥が声を上げた。
「お、駿斗兄ちゃんの相手の高校の選手たちが出てきたぞ」
その言葉に、彼女たちはおしゃべりをやめて競技者たちに注目する。
彼らは自信満々、余裕を見せつけるかのようにゆっくりとストレッチなどの準備運動を行ってこれからの試合に備えている。
「うーん。やっぱりそれなりの実力校である以上、結構場馴れしているように超見えますね」
彼らの様子を見た最愛がそんな感想を漏らす。
そして、その次には駿斗たちも入場してきた。
「あ、とうまだ!」
インデックスの叫びに全員が一斉にその姿に注目し……思わず息をのんだ。
そこにいたのは『猛者』という言葉がふさわしかった。
全員が一糸乱れず綺麗に整列し、腕を組んで相手を睨みつけている。それだけなのに、威圧感が感じられた。
あの中にいるのは
特にスポーツに特化した訳でもない、平凡な高校であるということも知っている。
だが、そこから感じ取れる気迫が尋常ではない。
(ちょっと、あいつマジで勝ちに行く気なの!? 私に勝って何を要求する気なのよ?)
彼らの事情を何も知らない御坂は、1人勝手に妄想して勝手に顔を赤く染めていた。