とある神谷の幻想創造(イマジンクリエイト)   作:nozomu7

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女王艦隊編
第101話 異国での再会


 俺の親友、上条当麻は非常に不幸な人間だ。

 

 学校に行こうとすれば、途中で犬のしっぽを踏みつけて追いかけられた挙げ句、武装無能力集団(スキルアウト)がたむろしている場所に駆け込んで、そこで男達に追いかけ回される羽目になったり。

 

 昨日も御坂美琴に、キャンプファイアーのダンスに無理矢理つきあわされた挙げ句、その最中に彼女を慕う後輩、白井黒子にドロップキックを食らわされていた。

 

 何かアクションを起こすたびに、何かの不幸に見舞われる。それが上条当麻という男であった。

 

 最も、当麻はそれに打ち勝っていくだけの強い精神を持っているし、人脈だけは広いので(女性的な意味で)今までその『不幸』に対しても何とか対処してきた。つまり、あらゆる『不幸』が発生しても、その対処には慣れているのだ。

 

 だが。

 

「来場者数ナンバーズの結果、あなたの指定数字は見事1等賞です! 賞品は北イタリア5泊7日のペア旅行、おめでとうございます!」

 

 ――『幸運』が与えられたときはどのような反応をすれば良いのか分からないのだ。

 

「「イタリア、旅行……?」」

 

 周囲が当麻に拍手を送る中、俺たち2人は霧が丘女学院の制服を着た少女が店番をしているその屋台の前に、呆然した表情で立っていた。

 

 来場者数ナンバーズ。

 

 専用カードを購入し、大覇星祭の総来場者数を予想するイベントで、そのカードは期間中であれば何時でも購入可能である。

 

 来場者は日程が進むたびに分かってくるために期間後半であるほど当てやすいが、早く提出した方が優先されるため、そこが難しく、またおもしろいイベントにしている特徴でもある。

 

 そのイベントにおいて、当麻よりも先にカードの確認をした俺は3等賞のお食事券2万円分を獲得して、2人で「インデックスの食事代が浮く!」と盛り上がっていた。

 

 その矢先のことだ。

 

 当麻が見事ドンピシャで数字を当て、1等賞の北イタリア5泊7日のペア旅行をゲットしたのだ。

 

「駿斗、1等賞ってあれだよな。1番幸運な人が取るというあれだよな」

「ああ。ちなみに、1%よりも低い確率で当たるあれだな」

 

 当麻の言葉に、俺はそう返す。

 

「駿斗が3等賞なんだよな。1等賞じゃなくて」

「ああ、そうだ。1等賞を取ったのは当麻だからな」

 

 再び静かになる俺たち。

 

 そして2人は呆然としたままその賞品をしっかりと握りしめると、

 

「「とりあえず……俺たちの寮の部屋が爆発してないか確認するぞ!」」

 

 ――この旅行が楽しめるよう、妨害となる要素を徹底的に排除するために走り出した。

 

 大覇星祭最終日、9月25日のことだった。

 

 

 

 

 

「荷物は全て持ったよな。必要書類、パスポート、財布にチケット、着替え一式に、あとは……」

「簡単なイタリア語のメモ、パンフレット、他には、懐中電灯に……」

 

 ここは第23学区にある国際空港のロビー。

 

 これからの北イタリア旅行は、先の空港で旅行者が集合して、そこからツアープランが始まる。

 

 今日は9月26日。現地集合予定日は、翌日の9月27日。

 

 『大覇星祭』の後に与えられる、業者による設備撤収や、警備状態の平常移行などのための長期休暇を利用するプランだ。

 

「……2人とも、心配のしすぎなんだよ」

 

 俺たちの様子を見ていたインデックスが呟く。

 

 昨日は大変だった。

 

 当麻とインデックスだけでは何が起こるか分からないため、俺も何とかしてついて行けないか、と奔走。最終的には今までに助けてもらったお礼にと、たまたま何かプレゼントしようと考えてくれていた最愛と海鳥、食蜂が俺にチケットをプレゼントしてくれた。3人には本当に感謝である。

 

 代わりに彼女たちには「これでスイーツでも食べて」と、お食事券をあげた。

 

「ねぇ……早く行こうよとうま。はやとも」

 

 そう言うインデックスに、荷物のチェックを終えた俺たちは自信満々に言った。

 

「ああ。安心しろインデックス。念のため、飛行機が墜落した場合に備えて15通りの対応パターンを用意しておいたから」

「それに荷物も準備万端。少しばかり無人島生活をしても、大丈夫なくらいだ」

 

 即席のパラシュート代わりになりそうなものから、無人島に漂着したときのための簡易サバイバルセットまで。他にも事件に巻き込まれたときのために応急措置のセットも用意し、さらに着ていく服は学園都市自慢の技術力で作られた防弾・防刃繊維のものを選んだ。

 

 さらに財布を紛失した場合に備え、トラベラーズチェックも数種類のものを用意するなど万全を期した。

 

「……2人とも、心配し過ぎかも」

 

 呆れたような表情になるインデックス。

 

「甘いぞインデックス。いつ飛行機が墜落しても大丈夫なように、常に警戒を怠るべきではない」

「そうだぞインデックス。テロリストに遭遇する可能性も考えなくてはならない」

 

 俺たちは警戒心が薄すぎるインデックスに言う。俺たちは真剣なのだ。

 

「じゃ、荷物の準備も終わったことだし……北イタリア5泊7日の旅、思う存分楽しみますか!」

「「おー!」」

 

 

 

 

 

 ここはヴェネツィア。

 

 中世にはヴェネツィア共和国の首都として栄えた都市で、『アドリア海の女王』『水の都』『アドリア海の真珠』などの別名をもつ。

 

 街中に縦横に張り巡らされた運河が美しい。

 

「しかしまた、海が近いなー」

 

 当麻は周囲の景色を見てそんな感想を漏らす。

 

「海に近いと言うよりは、囲まれているって感じかも。ここキオッジアの中心部は、アドリア海に浮かぶ島の町なんだよ」

 

 インデックスも言った。

 

「街並みも歴史ある感じだし。科学的なもので統一された学園都市と違って、趣があるって感じだな」

 

 小さな頃から学園都市の中だけで生活していた俺たちにとって、こういった場所は本当に新鮮なのだ。

 

「不幸にも現地ガイドに置いてけぼりを食らわせられたけど、それでもたどり着いたなー」

「今時の国際社会では、2人もせめて3か国語は話せた方が良いかも」

 

 そう言ったインデックスが、周囲にあるものに目を輝かせ始める。

 

「いやインデックス。食べ物も良いんだけど、ホテルに着いたらベネチア行ってみようぜ、ベネチア!」

「お、いいな。1回行ってみたかったんだよなー」

 

 そこまで話したとき、俺たちは気がついた。

 

 あのシスターが忽然と消えていることに。

 

「おーい、インデックスー!」

 

 周囲を見渡してみても、あの銀髪に金の刺繍が入った白い修道服を着たシスターはいない。

 

 やばいやばい。

 

 俺たちはインデックスと違ってイタリア語など話せはしない。英語もせいぜいが高校1年生程度のものしか分からない。というか、本場の英語を聞き取れるかどうか怪しい。

 

 つまり、俺たちの方が迷子だ。

 

 その時、1人の女性が話しかけてきた。

 

「Ciao! Il qual c'e(`) problema?」

「「はい?」」

 

 未知の言語に思わず固まる俺たち。彼女はそのまま何かを聞いてくる。

 

「Non si parla italiano?」

「え、えっと……?」

 

 実は『あなたはイタリア語を話さないの?』という意味だったらしいのだが、その時の俺たちにはそれが分からず。持っていた『旅の手帳』をめくるが、どうしたらよいのか分からない。

 

La(`) si trova un ristorante, c'e(`) une villetto un giapponese」

 

 焦る俺たちだったが、その時1人の女性が現れ、代わりに受け答えをしてくれた。

 

「Scusi」

 

 彼女は修道服を着ていた。それはインデックスのようなイギリス清教のものではなく、ローマ正教のものだった。

 

「Lui e(`) mio amico. La ringrazia per la sua gentilezza」

 

 彼女は俺たちの知っている人物だった。というか、半月ほど前に彼女をきっかけにして大きな戦闘に巻き込まれたことがあったばかりだった。

 

「Prego, Caio!」

 

 そう、彼女は。

 

「「お、オルソラ!」」

「はい」

 

 オルソラ=アクィナス。魔導書の暗号解読のエキスパートにして、『法の書』事件の中心となった元ローマ正教徒であり、今はイギリス清教の一員であるシスターであった。

 

 この間も『使徒十字(クローチェディピエトロ)』の一件で霊装の発動条件を探しだし、事件の解決に大きく尽力してくれた人物でもある。

 

「って、なんでオルソラがここに? 確かイギリス清教の一員になったから、ロンドンにいるんじゃあ」

「つい先日まで、こちらに居を構えていたのでございますよ」

 

 そのために引っ越しをするために戻ってきていたらしい。また、天草式の人達も引っ越しの手伝いをするために来ているのだとか。

 

 そしてオルソラの家についた。この街並みにふさわしい、洒落た印象を受ける家だ。

 

 俺たちは招かれるままにその家に入る。すると、

 

「あっ! とうま、はやとー!」

 

 部屋の奥から聞き慣れた声と共にインデックスが飛んできた。

 

「はやと、こっちのジェラートってとっても美味しいんだよっ!!」

 

 業務用サイズの容器に入ったアイスクリームを抱えながら、片手に業務用のスプーンを握りしめた彼女が無邪気に駆け寄って来て……俺はその頭に手刀を振り下ろした。

 

 彼女が抱えていたアイスクリームの容器の縁が、彼女のあごにぶつかる。

 

「ごほっ! はやと、ひどいんだよ!?」

「それはこっちの台詞だ! イタリア語を話せない俺たちを置き去りにしやがって!」

 

 アイスクリームに夢中になっていたところに横やりを入れられてむすっ、とする彼女だったが、俺はかまわずに説教を始める。

 

 一通り説教を終えたとき、視線(および魔力)を感じた。

 

 天草式の人達が俺を向いて何か話している。

 

「あの2人が教皇代理が一目置いていた少年。しかし、実力はいかほどのものか……」

「それに疑問を感じるのは、あなたがオルソラ様救出に参加していなかったからでしょう?」

「かの武人は、ローマ正教の戦闘シスター相手に、武器も持たず宣戦布告をした殿方なのですよ」

「他にも、鳴護アリサの一件においては、あの女教皇(プリエステス)と対等に打ち合ったとか」

 

 そんなことを囁き合い、彼らが俺たちに下した評価と言えば、

 

「「「「怪物……」」」」

「「なんなんだ、その曲がりに曲がった評価は」」

 

 確かに俺も最近音速を超える戦闘をしたりして、普通の人間の領域から外れている自覚はあるが。霊装を用意してようやくその領域に片足を突っ込んだ人間と、素で音速を超えることができる人間を同じにしないでほしい。

 

 そんなふうにしていると、昼食の用意ができたことが伝えられた。

 

 メニューはパスタとスープだった。両方とも、地元でとれた海の幸がたくさん使われている。とてもおいしそうだ。

 

「でも、いいのか? 俺たち引っ越しの手伝いも、まだ何もやっていないんだけれど」

 

 当麻が遠慮がちに言うが、オルソラはにこやかな表情のまま、

 

「まずはあなたがたをもてなすのが先でございますよ」

 

と言った。

 

 じゃあ、遠慮無く、と食べようとしたとき、1人の少女がやってきた。その手にはおしぼりを2つ持っている。

 

「使います?」

「あ、どうも」

 

 俺たちがおしぼりを受け取ると、彼女はそそくさと部屋から出て行った。

 

 控えめで、大人しい印象を受ける少女だった。

 

「五和、おしぼり作戦の手応えはどうでしたか?」

「いや、まだ結果を求めるにはまだ早い」

「これは少々遠回り過ぎるのでは?」

 

 ……先ほどから、天草式の人達は何をしようとしているのだろうが? はじめにあれだけボコボコにした俺たちに親切にしてくれることはうれしいのだが。

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