戦の香気に誘われて   作:幻想のtidus

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Wahrheit

 ────極光が天を穿つ。

 

 空気が変わる。気配が変わる。存在が変わる。嶺二の変革が、その熱量の増大が、世界そのものに震えを齎す。

 

 獣の総身と手にした《太白星》に灯る劫火は属性をただひたすらに強く大きく。

 これこそは殺戮と鏖殺の極光、死と闘争の篝火。ありとあらゆる者を絶望、恐怖の底へと突き落とす大凶星に他ならない。

 相手の輝きを理解しながら、相手の輝きを否定する獣は垂涎しながら、奈落の様な暗い瞳に圧倒的なまでの殺意を滾らせる。

 

 その身体には一切の傷が存在しない。

 勿論、東堂刀華が漸く刻んだ傷も、跡形もなく存在していない。

 

 

「う、そ……」

 

 

 有り得ない──これは何の冗談だ?

 確かに手応えはあったし、傷も、出血も確認した。

 心の臓府を貫いた筈なのに、彼の身体には一切の傷がない。

 確かに、自力で傷を治す方法は存在する。

 概念を操作するか、はたまた因果を手繰るか。また、魔力制御が巧みであれば自然干渉系でも、異能属性が水であるならば、治癒魔術を行使する事が出来る。

 

 だが、目の前の獣は自然干渉系であり、異能属性は火だ。到底、治癒する為の技術を持っているとは思えない。

 ならば、目の前の現象は何なのだ?

 そんな刀華の姿に獣は悪辣に笑みを浮かべて口を開く。

 

 

 

「お前の疑問の解答は簡単だ。そも、俺は魔術など使用していない。

 

 俺はただ、()()()()()()()()に過ぎん」

 

 

 魔力を廻しただけ、それはあまりにも的を射ない解答。

 しかし、刀華は理解してしまった。彼が言う魔力を廻すという事が、どれだけ馬鹿げているのかを。

 

 

 

「そんな、有り得ない……!

 まさか、魔力放出で自己治癒させたとでも言いたいんですか……!」

 

 

 刀華が思い当たったメカニズム。

 彼は魔力を廻し、細胞一つ一つに魔力放出を使用したのだ。

 それによって具現するのは自己治癒力の超活性。

 成る程、確かに可能かも知れない。

 ────だが、解せない。

 

 

「貴方の、魔力制御でそんな事、出来る筈がない……!」

 

 

 そう、細胞一つ一つに魔力放出を行使するなど魔力制御の技能なくして出来る筈もない。

 まず、彼が言う様に、魔力放出を行ったとしても、それで傷が治癒するとは限らない。

 その後に待っている最大の壁こそ、魔力制御による精密操作に他ならない。

 

 それこそ魔力制御に長けた《伐刀者》でなければ成功し得ない。

 それに《落第騎士》と彼の魔力制御は同レベルと壊滅的。

 だというのにその理屈を嶺二は詰まらん考えだと一蹴する。

 

「ハッ! 魔力制御? そんなモノ、最初(はな)から不要だ。言っているだろう? 俺がしたのはただ全力で魔力を廻しただけだと」

 

 そう、彼は最初から魔力を制御などしていない。ならばこの現象は何なのか。

 それこそ単純明快、アレは只の出力だ。

 常人の10倍の総魔力量。その膨大な魔力を何の躊躇いもなく、ぶち撒けたのだ。

 

 炉心(エンジン)燃料(ニトロ)を際限なく、次々と注ぎ込む所業は結果、常軌を逸した魔力放出により、細胞の活性化を招いている。

 

 

 突如、彼の胸部が爆散する。

 肉が爆ぜ、血が飛び散るが、刹那の内に完治し、傷は嘘の様に消えている。

 それはそうだ。彼の身体は活性化され過ぎている。これはただの治癒ではなく過回復。

 

 それに拍車をかける様に、彼が身に纏う劫火は彼自身さえ焼き焦がしている。

 その傷を治そうと彼の身体は反射的に魔力放出を行使し治癒、そして自壊。

 彼の身体は、今も破壊と再生を繰り返している。

 だというのに今も尚、想像を絶する激痛が奔っているというのに獣は悪辣に嗤うのだ。

 

 

 ……考えるだけで頭が痛くなる。あまりにも力任せで、あまりにも常識外れだ。

 常人が持つ様な歯止めの類を嬉々として外した獣。

 それを前に、刀華はボロボロの身体を奮い立たせ、《鳴神》を構える。

 

 対して、獣は不動。四足獣の様な低姿勢を保ち、四肢に力を込める。

 

 先に動いたのは刀華。

 鞘に《鳴神》を収め、三度抜刀。放たれる紫電の砲撃。試合開始時に披露した《雷鴎》が大気を切り裂いて飛来する。

 最早、小手先の技は通用しないと知る刀華が放つ全身全霊。一太刀、一太刀が渾身の一撃だ。

 

 

 だが、獣の爪牙は鴎を喰い散らかす。

 

 

 突如として大気を裂く爆音が響く。

 それは獣の咆哮。凶星の暴威。空間を焼く大熱波が空間を支配する。

 獣が振るうは熱波纏う凄烈な三連閃。《雷鴎》を迎え撃つべく放たれた斬撃は、劫火に魔力放出を使用し、力技で凝縮した極光。それを狙撃銃(ライフル)の様な精度で、《雷鴎》を撃ち落とす。

 

 宙を舞う雷撃と劫火の釣瓶打ちは際限なく、無数の火花を散らし、穿たれた鴎は、地に堕ちるが如く、稲光を放って搔き消える。

 

 

 ……………一つ、《雷切》東堂刀華の輝きが消える。

 

 

 無駄撃ちは愚策と判断した刀華は、接近戦を敢行する。今や、彼に接近するだけで、嶺二がその身に灯す劫火と熱波で彼女の身体が焼き焦げ、激痛が奔るがそんな事など気にしてられない。

 

 勝つのだ、絶対に。

 獣としてではなく、騎士として。

 

 身を焦がす痛みは気合いと根性で我慢する。

 負傷した左手は魔術で無理矢理動かす。

 そして、刀華は嶺二の覚醒の無意識に滑り込む。

 古武術の呼吸法と歩法の合わせ技──《抜き足》。試合開幕と同時に使用した絶技が最大効率で駆動する。

 

 無意識に滑り込み、一太刀、弾かれる。

 認識された瞬間に無意識へ、そして一太刀、弾かれる。

 何度も何度も何度も繰り返す。

 

 獣は無意識を往き来する少女を未だ捉えられない。

 当然だ。この技は刀華に集中すればする程に嵌るのだ。

 彼は他者を否定する。他者の輝きを知り、その上で喰い散らす獣。

 目の前の敵手が誰であろうと、極上の獲物の事で頭が一杯でも、彼は他者から目を離さない、いや離せない。

 それが、櫻井嶺二という獣の性だった。

 

 

 故に彼と《抜き足》の相性は最悪だ。

 今もまた、彼の鷹の眼光は東堂刀華を貫いている。

 そして、またも滑り込み、一太刀………

 

 

 

 

 

「まだ、まだァァァァッ!!!!」

 

 

 

「なっ……!? ぎ、がぁ!」

 

 

 その無意識下の攻撃を前に、獣は更に高みへ駆け上がる。

 覚醒の無意識に滑り込む彼女の斬撃を、事もあろうに掴み取り、反撃の蹴りを彼女の首へと放ったのだ。

 

 

 彼女の胸中にあるのは、驚愕だった。

 彼ならば何を仕出かしても可笑しくはないと知ってはいるが、流石に今のは理解出来ない。

 先の《抜き足》は成功した筈、なのに何故彼は、反応したのか。

 この答えもまた簡単だ。そもそも彼は反応などしていない。彼がしたのは反射だ。

 

 反射と反応では大きな差が存在している。

 反応とは、脳が介入してリアクションが出来る動作。即ち認識し考え、実行する動作の事だ。

 しかし、反射は脳が介入せずにリアクションが出来る動作だ。

 故に、彼は《抜き足》からの斬撃に反応などしていない。認識し考え、実行などしようとさえ思わない。

 

 そして、獣と絶対の相性差を誇っていた《抜き足》は破られる。

 

 

 …………また一つ、東堂刀華の輝きは否定される。

 

 

 そして、剣戟に移行するも、彼の回転率は止まらない。

 《稲妻》による変則攻撃、変則防御は、只の力に飲み込まれる。

 

 

 他にも、他にも、他にも……

 東堂刀華の研鑽を、努力の全てを、何もかもを踏み躙り、蹂躙する。

 

 

 故に、刀華は最期の策に打って出る

 後退し、距離を取り、《鳴神》を納刀。

 彼女の伝家の宝刀──《雷切》に自らの命運を賭ける。

 

 一撃だ。この一瞬で決める。

 彼の首を取る。彼の過剰回復はおそらく()()に弱い。何故なら、既に死んでる者を回復させる術などない。

 アレは回復させる事は出来ても、蘇生させるモノではない。

 大惜しみなど、している場合などではない。

 全魔力、自身の持ち得る全てをフル稼働し、目の前の獣を両断する以外に勝利はない。

 

 

 獣は超音速を凌駕した埒外の速度で迫り来る。

 

 

 ────刀身に、紫電が灯る。

 

 彼女の剣の間合いは絶対領域、剣の結界。

 クロスレンジは誰にも譲らない。

 今、万感の思いと共に、過去最高の《雷切》が解き放たれる───!

 

 

 

 

 

 

 

 

「《雷切》ィィィッ───!!!!」

 

 

 

 刹那の一刀、空を断つ。

 

 

 音を追い抜き、光と化した一刀は獣の首を刈り取るべく、振り抜かれた。

 何者より速く、敵を殺す刃は魔力防御を斬り裂いた。

 その先には生身の獣、ただ一人。

 最早、彼女の一閃を破る術など存在しない。

 待つのは、獣の首が飛ぶ結末のみ。

 

 

 

 

 

「まだだ……!」

 

 

 

 

 

 否、断じて否だと獣は吼える。

 光速と化した一閃だと?

 小賢しい。

 そんな一撃を、真っ向から迎撃したくなる。

 

 

 

 腕に力が籠り、魔力が廻る。

 それと共に胎動し、殺意に猛る劫火は勢いを増す。

 小手先の技など不要。現在必要なのは、技などではなく、純然たる力。

 故に、さあ──我が《伐刀絶技(つるぎ)》を見るが良い。

 

 

 

 大気を震わす大熱波。溢れ出る光輝の波濤。

 皆が理解する。これが彼が隠していた伝家の宝刀。

 凶星の名を冠する其は────

 

「────《天津甕星(アマツミカボシ)》」

 

 

 天津甕星──金星を司る星神。

 日本神話に於いて、数少ない邪神と謳われる神の名を冠する覇の一撃。

 劫火を纏う、光の剣の一刀。

 自傷を齎す究極の一は、迫り来る《雷切》を喰い散らし、破滅の劫火と共に遍く全てを焼き尽くす。

 そして、容赦なく、躊躇いなく、東堂刀華の五体を燦然と輝く光輝が飲み込んだ。

 

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 会場は、地獄と化していた。

 

 嶺二の放った《伐刀絶技》──《天津甕星》。

 自然干渉し、出現させた炎を魔力放出で無理矢理凝縮。そしてそれをまた魔力放出で撃ち放つという馬鹿げた力技。

 故に、その威力はあまりにも凄烈だった。

 会場は余波で所々融解し、天地を鳴動させたのだ。

 何よりも────

 

 

『酷い……!』

 

『ここまでやる必要ないだろ!?』

 

 

 東堂刀華が受けたダメージが深刻であった。

 全身は焼け爛れ、右腕は物の見事に斬り飛ばされ、倒れ伏してしまっている。

 だが、これでも軽微な方なのだ。もし彼女が並の学生騎士なら、今の一撃で灰燼と化している所だ。

 

 しかし、最早、誰の目から見ても試合続行は不可能。

 学園最強の騎士は、最も醜い獣に喰い殺された。

 勝利を手にしたのは、櫻井嶺二。

 

 

 だというのに────

 

 

 

『おい、アイツ、会長に何するつもりだ!?』

 

『止めて! 会長はもう……!』

 

 

 ────獣は、止まらない。

 倒れ伏す刀華に向かって歩を進め、戦闘を続行する。

 非難、絶叫、何方も聞くに能わず。

 お前らは戦場(ここ)には居ないだろ?

 これは俺と彼女の語り合い(殺し合い)だ、邪魔するな。

 

 そう、彼はまだ……東堂刀華が立ち上がると信じている。

 また騎士道などという建前(がわ)を被ってしまったが、一度は人間()へ回帰した彼女ならば立ち上がる。もう一度、人間()に至ると信じているのだ。

 

 さあ、立ち上がれ(覚醒せよ)立ち上がれ(進化せよ)立ち上がれ(超越せよ)

 さあ、さあ、さあさあ、時間はやるぞ?

 

 しかし、いくら経っても刀華は立ち上がらない。

 

 時間をかけても駄目か?

 ならば命の危機ならばどうか?

 

 そして、獣は刀華へ近づき、莫大な熱量を纏った《太白星》を上段に構える。

 その様はまるで斬首刃(ギロチン)だ。人間()ならば、躱すか防ぐかするだろう?

 これなら立ち上がってくれるだろ?

 しかし、人擬きならば問答無用。立ち上がる気概が無ければ死ぬが良い、期待外れだ。

 気概が有るなら立ち上がれ、俺はそれに付き合おう。

 

 

 そして、斬首刃は振り下ろされる。

 最早、音などない。彼の世界は無音だ。

 止めるものなど────

 

 

 

「──はい、そこまで」

 

 

 西京寧音しかいないだろう。

 超重力の網が、獣の身体を雁字搦めにする。先日と同じように。

 

「《時間凍結(クロックロック)》」

 

 次瞬、響く発砲音。

 白銀の拳銃が火を吹いた。

 放たれた弾丸は刀華へと吸い込まれ、そして刀華の時が停まる。

 

「担架急げッ! 私の魔術が効いている内にカプセルに運ぶんだ!」

 

 時間操作──それは正しく超常の御業。

 それにより、風前の灯火であった刀華の命を繋ぎ止める。

 そして、黒乃の怒号に続く様に医療スタッフが会場に飛び込む。

 迅速な対応。このままなら、一分と掛からずに運ばれる。おそらくは黒乃はこうなる事を見越していたのだろう。

 

 

 だが────

 

 

 

「させると思うか?」

 

 

 ────獣はその様な事を許さない。

 東堂刀華はまだ闘え(やれ)る。彼女が真に獣に目覚めるかもしれないというのに邪魔など許しはしない。

 

 

 魔力を廻し、獣は全力で超重力の網に抗う。しかし、相手はKOKの現三位。その様な暇など与えてはくれない。

 増強される重力の奔流は、獣に跪け、頭を垂れろと命じる。

 

 

 されど、獣は膝を曲げない。

 嶺二と西京の実力差は歴然。本来であるならば、彼が全力で魔力を廻そうが、地に伏せるのが道理。

 だが────折れない。魔力で駄目なら気合いと根性、胆力で彼は地球法則である重力に抗っていた。

 

 

「嶺二ちゃん、マジでその辺にしておきな。

 勝負は着いてんだ。お前さん、トーカを殺すつもりかい?」

 

「何を言い出すかと思えば、そんな事か西京。そんなものは些事だ。人間()同士、語り(殺し)合っていれば何方が死ぬ事など多々あるだろうよ」

 

「まあ、そりゃあ実像形態で戦えばそうなる事もあるけどよ。だからって嶺二ちゃんのは明らかにやり過ぎだ。

 此処はお前さんの言う戦場じゃないんだし」

 

 

 此処は戦場ではなく、騎士を養成する騎士学校で、コレは闘争ではあるが、死合ではなく試合。

 その違いを認識しろ、西京はそう告げるが、

 

 

「いいや、此処は戦場で、コレは闘争で死合だ。人間()同士が向かい合えば絶対にこうなるんだよ。謂わば必然だ」

 

 

 当たり前の事だろう、と嶺二は返し、言葉を紡ぐ。

 

「人が人である以上、闘争は死合で、戦場が生き場だ。

 どんな些細な事でも、互いの主張にズレが生じれば、それは闘争と化す。

 今も同じさ。彼奴は俺が気に食わない。俺は彼奴が気に食わない。

 ほら、闘争じゃねえか」

 

 例えば、フランスの王位継承を巡る百年戦争。

 例えば、未開の地に生きる先住民族の虐殺。

 歴史は語る。二つの異なる主張が生まれれば、必ず戦いは起こる。

 今もまた同じ。規模が違うだけで中身は全く変わらない。違うのは体裁だけだ。

 

人間()は敵対者を認めない。そうとも、それが脈々と受け継がれてきた俺達の性質(さが)だ。

 だからこそ、それから眼を逸らす事など許されない。

 だというのに────」

 

 ぞくり、と。聞く者の背筋を震わせる様な悪寒が走る。

 矛先が、西京からズレ、観客全員へと移る。

 これが櫻井嶺二という狂人が抱いていた赫怒。

 紡がれる言葉はその一言ごとに殺意の圧力は言葉の刃。抑えようもなく溢れる獣の怒気に魔力が感応し、大気を震わせる。

 

 

「────なのにお前らが口にするのは曰く騎士道、曰く正道。

 他者の為に尽くす力は強い、善意なき者に負けはしない?

 巫山戯るなよ人擬き共がァッ!!」

 

 

 大義名分、滅私奉公、人倫?

 全てが陳腐だ。何故、お前らは偽り、あまつさえ我欲に溺れる事を恥じるのだ?

 

 怒れる獣は縛鎖を千切り、これこそ真理だと告げるが如く、声高々に吼える。

 

 

「何故、偽る必要がある?

 お前も、お前もお前も、お前もお前も。

 すぐ隣に座る奴らに悪感情の一つや二つ、抱いてる筈だ。

 妬ましい、許せない、認めたくない。

 それで良いんだ、それをまず認めろ、お前らは正しい。

 面と向かって、お前が気に食わねえと向き合えよ。それでこその人間()だろうがッ!!」

 

 人の根幹に刻まれた悪性。それは最早、どうしようもない物だ。確かに理性でその悪性を封じる事は出来るだろう。

 しかし、それは飽くまで律しただけで変わった訳ではない。

 人は鳥にはなれない。泥が黄金になる事などまず有り得ない。

 だからこそ、偽る事を止めろと彼は衆生に吼えるのだ。

 お前はお前だ。それを理解し、忘れるな。

 その悪性こそが、我らの美徳であり、愛しいのだ。

 これこそ、彼が奉じる人間賛歌。

 

 相容れぬ者との殺し合い、大いに結構。それでこそお前らだ、惚れ惚れする。

 そしてその語り合いの場所こそ戦場だ。

 

 

 獣は法や規律に縛られない。心に秘めた真理が揺るがないのであれば、他者の言葉など聞くに値しない。

 故にこそ、彼は牙を剥く。

 世に蔓延る正義も醜悪にさえ嵐の如く、雷雨の如く、一切の差異なく牙を剥く。

 衝動のままに赴く者、故にこれこそが獣だと彼はその総身、足跡で示すのだ。

 その生き様、確かに矛盾もあるだろう。間違いもあるだろう。しかし、そんな事などどうでも良い。

 

 

 故に────

 

 

 獣の瞳が鋭利に光る。

 総身に灯る劫火が、勢いを増し、人々を照らし始める。

 人間()としての本能を偽らぬ獣が、告げた。

 

 

「さあ、お前らの輝き(殺意)を魅せてくれ!!

 そして続くが良い……我が足跡こそ、人の真理である……!!!」

 

 

 哀れで空虚な人擬き。そんなに人成れぬと嘯くならば良いだろう。俺が人間()にしてやろう。

 他者に、世界に、運命に牙剥く獣にな。

 

 

 

 

 

「さあ、戦の香気に誘われよう」

 

 

 

 

 

 




なんかもう……言ってる事が滅茶苦茶になってそうで怖いな……!

感想、アドバイス、お待ちしております!
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