SKETDANCE BOSSUN the IF STORY   作:ぐぎゅる

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…語り部設定がいるのかと、つい思ってしまう俺…


helper of a school

 

 

 ーー開盟学園高等学校。

 

 私立の自由な校風がウリの高等学校である。

 制服はブレザーと決まっているが多くの生徒は自由に制服を身に付け、多くの着回しを生み出している。

 カバンも指定されたものがあるが、基本的に自由である。

 

 ああ、遅ればせながら……この小説の語り部を務めさせてもらうスイッチこと笛吹和義だ。

 何故俺が語り部に選ばれたかのかといえばーー作者が一番語り部っぽいと判断したから、ということになっている。

 一部のシリアス回では三人称になったり、特定回で俺以外の語り部が登場したりするがその点は了承してもらいたい。

 了承出来ない場合は、おとなしく別の小説を探してくれ。

 

 さて、ここで開盟学園に登校する一人の少年に焦点を合わせてみよう。

 

「…………」

 

 藤崎佑助。1992年11月11日生まれの17歳。所属クラスは2-C。愛称はボッスン。赤いツノ付きの帽子とゴーグルがトレードマーク。好きな食べ物は唐揚げ、ハンバーグ、カレー。好きなガンダムはガンダムキュリオス。嫌いな食べ物はペロリポップ☆キャンディ。

 そして学園生活支援部、通称「スケット団」の部長である。

 口調はやや乱暴な感があるが、真面目で責任感が強い。そしてポップマンというヒーロー物のアニメを見ていた為、仲間や友達に対しては深い思いやりを見せる。

 

「ボッスンおはよー」

『チッス、ボッスン』

「おはよう、ヒメコ、スイッチ」

 

 そんな訳あり満々なボッスンと合流した二人の少年少女。

 少女の名前は鬼塚一愛。愛称はヒメコ。ボッスンのクラスメイトでスケット団の副部長にして数少ない武闘派メンバーである。

 奇特な事にペロリポップ☆キャンディ、通称ペロキャンが大好きで、それを咥えながら愛用のフィールドホッケー用のスティック、ブラスト社製「サイクロン」を振り回す姿は、ヤンキー界では酷く恐れられている。好きなアニメキャラは綾崎ハヤテ。

 そして少年は、我らが笛吹和義。愛称はスイッチ。同じくボッスンのクラスメイトでスケット団の書記にして、スケット団きっての情報通である。科学とオタク文化をこよなく愛する才子だ。

 常に肩からノートパソコンを提げ、合成音声ソフトを通してしか喋らないため、周囲からは遺憾だが個性的な男子として見られている。好きなガンダムはケルディムガンダム。

 

 彼ら三人が所属するスケット団は、生徒が抱える学園生活上の悩みやトラブルを解決し、円滑な学園生活が送れるよう手助けすることを目的として結成された部活動である。

 部長であるボッスンが一年の頃にヒメコと立ち上げ、後にスイッチが加入し現在の体制が出来上がった。学園活動支援部として認められたのは二年に進級して間もなくの事だ。

 愛称のスケットは英語でSKETと表記されるのだがーー

 

 Support (支援)

 Kindness (親切)

 Encouragement (激励)

 Troubleshoot (問題解決)

 

 この英単語の頭文字を取って表記されているのだ。

 スケット団の活動内容は落し物の捜索や他部活の助っ人、裏庭の清掃など多岐に渡るがざっくりまとめれば人助けだ。

 だが、学園活動支援部としては趣旨に沿った活動が出来ているので全く問題は無いのだ。

 

「でな、昨日のアレ。むっちゃオモロかったわー。ボッスンは見た?」

「ああ。確かにあのドラマは面白かったな」

『俺は魔法のペテン師 リアリティーー』

「オタクは黙れ。でなでな、ウチが一番良かったのがーー」

 

 とはいえ依頼が無ければスケット団も動けず、登校中にダベり授業を受けて放課後は部室でダベったり遊んだりして一日が終わったりすることもある。

 この日も転校生が来た事以外は、大した事件も頼まれ事も無く。その転校生をスケット団に誘い、断られ、放課後に部室に集まっていた。

 

『そういえばボッスン。あの「葉鶏頭事件」に関する情報が目撃者から寄せられたぞ。ボッスンの読み通りだ』

「やっぱり城ヶ崎と三浦かよ。先生には?」

『既に伝えてある』

 

 葉鶏頭事件とは、カツラを使用している2-D担任の伊藤先生のハゲを城ヶ崎と三浦が体育館の壁に「ハゲ伊藤」と落書きし伊藤先生のハゲをバラした事件である。

 落書きをした城ヶ崎は弱者を暴力で支配する一方、自らの悪事が露見すると知らん振りをする典型的な小物であり、対極の位置にいるスケット団を嫌っている。

 因みに伊藤先生はとても優しい先生で、2-Dの生徒からは慕われている。

 

「流石やなボッスン。相変わらず切れた頭しとんで」

「そうか? 目撃者の証言に当てはまったのがあの二人だったっつーだけの事だろ」

『確かに熟考すればそこらの生徒でも分かる。たが、ボッスンは証言を聞いて直ぐに名前を挙げたからな』

「…そういうもんか?」

 

 因みに、ボッスンはいざという時に動けるように体を鍛え更に剣道を嗜んでいる。

 その為剣道部から勧誘があったが、スケット団を立ち上げる気満々だったので、ボッスンは断っている。代わりに、ボッスンはたまに剣道部の助っ人をしていたりする。

 仲間を守る為の戦いでは、類稀なる戦闘力を発揮する。

 

「にしても、今日も依頼ゼロやなぁ」

「葉鶏頭事件のような事件が起きないだけマシだろ」

『だが、依頼が無く部室で遊んでいると流石に生徒会執行部に目を付けられるぞ』

 

 元々開盟学園は校則の厳しい学校だったが、現在の生徒会執行部会長が庶務の頃からこれに反発し現在の自由な校風に変えた。

 しかし、自由な校風といえどもあまり度が過ぎるとやはり生徒会執行部に目を付けられてしまう。現在の生徒会執行部会長が安易に認可した部活動の整理に会長の部下たちが奔走しているのも、意味不明な部活動が存在しているせいである。

 学園生活支援部、通称スケット団もその安易な認可にあやかった部活動なのだ。

 それでもスケット団の方針に則り部活の助っ人や生徒のお悩み相談など精力的に活動してきた。

 

『確か、今期の副会長が不必要な部活動を整理していると聞く』

「なるほどなぁ…」

「た、助けてください‼︎」

 

 そんな時、部室の扉が開き頭から赤い液体を被った男子生徒が入ってきた。

 ぱっと見、まるで血塗れの人間だ。

 

「うわっ⁈」

『っ⁈』

「…確か、転校生の杉原哲平だよな。ペンキ塗れでどうした?」

 

 ペンキ塗れの彼ーー杉原哲平は部室のベンチに座って事のあらましを話し始めた。

 杉原は校内を見て回る途中で体育館の裏庭で池の鯉を眺めていたと言う。

 その時いきなり上から何者かにペンキを浴びせられた。その犯人は仮面を着け体育館の窓から杉原にペンキ浴びせ、直ぐに逃げた。

 犯人を追う事も考えたが、杉原は今日知り合ったスケット団に事情を話すことにした。

 あらましを聞いたボッスンは腕を組み考えるように顔を伏せる。

 因みに、杉原の好きなアニメキャラはウッソ・エヴィン。

 

「まるで夢を見てるみたいで、何か怪談めいてるっていうか…」

「んなワケあるかい。どこの世界にペンキブチまける幽霊とかおんのや」

「で、ですよね…」

『だが、転校してきたばかりの彼が人の恨みを買うとも思えん。もし無差別なら、第二の犠牲者が出る恐れも』

「僕もそう思ってここに。これはまさしくスケット団の出番かと」

「どないする? ボッスン」

 

 しばらく瞑目していたボッスン。その眼を開きヒメコ、スイッチ、杉原を見て立ち上がった。

 

「もちろん、目の前に困っている奴がいるなら助ける。それがスケット団だ」

「よっしゃ、決まりやな‼︎」

「ああ、でもあまり大事にはしないで貰えると…。転校早々こんな目に遭ったなんてバレたら…」

『問題無い。極秘捜査ならお手の物だ』

「よし、なら明日から捜査開始だ」

 

 こうして、ペンキ仮面事件(仮称)の捜査がスタートした。

 

  ▼

 

 捜査の基本は、足からーーと刑事ドラマなんかで言うが全く正しい。

 まずは杉原がペンキを浴びせられた体育館の裏庭周辺で聞き込みをすることにした。とはいえ裏庭周辺にはあまり人は来ない。たが、人が来ないという事は人目を忍んで何かをしたりする事が出来るのだ。

 スイッチがチョチョイと調べれば、裏庭周辺でここ最近人目を忍んでいる奴は直ぐに見つかった。

 

「な、何だい一体…」

 

 小坂正利。ここ最近、狙っている女子を裏庭周辺にあるベンチに連れてきては話をしている。ここ最近では頭の悪い女ばかりを狙うと公言している、まさにスケット団の格好の餌食ーーならぬ貴重な証言者である。

 

「マ、マー君怖〜い」

「怖ないわ。肉天使は黙っとれ」

「に、肉…⁈」

 

 小坂の彼女が多少肉付いているのは、趣味なのであろうか。天使は小坂が彼女をそう呼んでいたからだ。

 

「ともかく、昨日この辺りで怪しい奴とか見てねーか?」

「うーん…。あ、そういえば昨日城ヶ崎たちが体育館の落書きを消してたなぁ」

 

 スイッチ曰く、ボッスンに報告する前に伊藤先生に報告していた。つまり、葉鶏頭事件の後始末だった。

 ならば、犯人はやはり城ヶ崎たちかとヒメコは疑うがボッスンは首を横に振る。決めつけるには証拠が無いのだ。それに、城ヶ崎と三浦が持っていたペンキは体育館の壁と同じ色のペンキ。つまり犯人ではない可能性がある。

 あくまで可能性の話であり、人にペンキを浴びせるような事をするのは城ヶ崎ぐらいしかいないのだが。

 

「他にねーか?」

「いや、城ヶ崎以外は見ていないよ」

「ホンマか? 嘘ついとったらシバきあげるぞ‼︎」

「ひいっ⁈ う、嘘なんかついてないよ‼︎」

『ヒメコ、あまり威嚇をするな』

「せやかて…なぁ、ボッスン」

「これ以上知らねーんなら、他の場所を当たるしかねーだろ」

「んー…しゃーないか」

「小坂、何か思い出したら知らせてくれ。後、あまり遊んでいるとロクな目にあわねーぞ」

「そや。どうせ別れるんやしあんまテンション上げんなや、見てるこっちが恥ずかしいわ」

「ちょ、何で捨台詞吐いてくの⁈」

『小坂正利。巧みな話術でかつては三股を掛けたことがある。最近は釣りやすい頭の悪い女ばかりを狙っていると、友人に公言している』

「ちょっ、何でその事をーー」

 

 走り去るスケット団と杉原の後ろから、男の悲鳴が響いたが、四人は足を止める事無くその場を離れた。

 

  ▼

 

 一旦部室に戻った四人。情報を整理しこれからどう動くかを話し合う事にした。

 

「なぁ、ボッスン。やっぱめんどいから城ヶ崎たち締め上げて話聞こうや」

「いや、出来れば確実な証拠か証言が得てから行った方が良いだろう」

「締め上げる事自体は止めへんのやね」

「口で言っても解んねーなら、仕方ねーだろ。とりあえずスイッチは城ヶ崎たちの身辺調査を頼む」

『合点承知』

「俺とヒメコは城ヶ崎たちの尾行だ。…杉原はどうする? 今日はもう帰るか?」

「…家にいると返って気になっちゃうし、部室で待ってるよ」

「分かった」

 

 杉原を部室に残し、ボッスンとヒメコはスイッチと別れ城ヶ崎たちを探そうとしたところで運良く校舎を出たところで城ヶ崎たちを見つけ、尾行を開始した。

 

「…なぁ、ボッスン」

「んー?」

「普通にバレとんで、尾行」

 

 尾行、と言っても二人はただ城ヶ崎たちの後ろを歩いているだけ。そして、隣で話す三浦をよそに城ヶ崎はチラチラとこちらを伺い、かといって文句を言う事無く体育館の裏庭へと三浦と共に歩いていく。

 

「ええんか、これで?」

「構わねーよ。それでも気になるっつーなら、コレでも被るか?」

 

 ボッスンが持って来たカバンから取り出したのはーーアフロのカツラだった。

 

「なんでやねん‼︎」

「いや、隠れて尾行するならこれだろう」

「いやいやいや、ありえへんやろ‼︎ 何考えとんねん⁈」

「んだよ、んな怒るこたぁねーだろ」

「ったく…って、ああっ⁈ 城ヶ崎おらへん‼︎」

 

 二人が少し目を離した間に、城ヶ崎たちがその姿を消した。

 ヒメコが慌てて城ヶ崎たちがいた場所に向かうが、もちろん城ヶ崎たちはいない。

 

「ああもう、ボッスンのせいやで‼︎」

「…とりあえず、二人を探そう。ヒメコは向こうを探してくれ」

「わかった‼︎」

 

 ボッスンがヒメコから離れ、ボッスンは辺りを見渡し誰も「いない」事を確認した。

 ふと、振り向いたヒメコはその場を動かないボッスンを怪訝そうに眺めていたが、そのボッスンの上に仮面を着けた生徒、ペンキ仮面が立っていた。

 その生徒の手にはペンキの缶がありーー

 

「ボッスン‼︎ 後ろや‼︎」

「っ⁈」

 

 ボッスンに向かってペンキが浴びせられたが、ヒメコの声掛けによって間一髪のところでペンキを避ける事が出来た。

 ボッスンがペンキ仮面を見るが、既に後ろ姿で走り去っていた。ペンキ仮面がいる場所は二人がいる場所よりも人一人分高く、追いかけるには少々手間だ。

 

「ボッスン、追い掛けるで‼︎」

 

 ヒメコの言葉に頷き、ヒメコの後に続いて駆け出す。

 しかし、勢い良く駆け出したヒメコが道を曲がったところで誰かにぶつかってしまう。

 

「痛ったぁ…」

「あいたたた…って、君たちは」

 

 ヒメコにぶつかったのは、三股の小坂正利だった。

 

  ▼

 

「お前、あれからずっとあそこにいたのかよ?」

「うん。君たちのせいであの後ユミちゃんにフラれちゃってね…」

「あはは…。あれはもう殆どスイッチのせいやしな」

「…で、それからずっと池に映る自分の姿を眺めていたんだよ。かつてのこの池のように僕は恋(鯉)を失ったんだとね」

「一々上手い事言おうとせんでええねん」

 

 ボッスンは小さく息を吐き、笑みを浮かべる。ボッスンが笑みを浮かべる時、それは事件の真相を解明した時なのだ。

 

「ボッスン?」

「この事件の真相が大体見えた」

「ホンマか⁈」

「ああ。ただ話すのはスイッチの報告を聞いてからーー」

 

 その時、ポケットからボッスンの言葉を遮るように携帯のメール着信音が流れる。

 メールの相手はスイッチだった。

 

 

 〝オツカレ〜(*•▽•)ノ♪

  城ヶ崎の調査オワタ!\(^▽^)/

  色々情報仕入れたよーーーー!

  あとで報告しマー( *´ ∀ ` )bース‼︎

  "b((((≧▽≦))))q"

  シェイク♪シェイク♪〟

 

 

「コイツなんでメールやとテンション高いねん」

「知るかよ」

「めんどくさいわー。ってまたメール来おった」

 

 

 〝マァマァ(*^o^)ノ"(ーー;)

  そんなに怒らないで

  (キラクニイコウ)

  (。ゝ∀・)ゞ〟

 

 

「何で会話になっとんねん‼︎」

「また来たぞ」

 

 

 〝実は近くにいたりして☆

  |・ω・*)チラ〟

 

 

『チラ』

「「おったんかい‼︎」」

 

 なんやかんやでスイッチと合流した二人は部室で待っている杉原とスイッチの報告を受ける事にした。

 

『で、城ヶ崎が小学校の頃、標的に悪戯を仕掛けて逃げるという遊びが問題になった事があるらしい』

「…なるほどな。これで黒幕が判った」

「ホンマか⁈」

「黒幕を捕まえる作戦は明日決行。今日は各自解散だ」

『了解した』

「ボッスンは?」

「ちょっと用事があるから、それを済ませたら帰るわ」

「分かった。じゃ、また明日な」

 

 スイッチ、ヒメコ、杉原が部室を出て行ったのを確認したボッスンは、おもむろに携帯を開いた。

 

  ▼

 

 先程よりも陽が落ち辺り一面が夕焼けに染まる頃、ボッスンは体育館の裏庭へと足を運んでいた。

 携帯のキーを弄りながら体育館の側で待っているとボッスンの背後へと迫る一人の影。

 仮面を着け、その手にはペンキが入った缶。一度失敗している為、もう失敗は出来ない。ゆっくりとしかし足早に近付き、缶を振り上げーー

 

「ようやく会えたな、ペンキ仮面」

 

 ボッスンの言葉で、缶を振り上げた手が止まった。

 何故気付いた、足音を立て過ぎたかとペンキ仮面が思考を巡らせるがその間にボッスンが振り向きペンキ仮面を視界に入れる。

 失敗か…いやまだいける。ペンキ仮面の缶を持つ手に力が入る。

 

「別にペンキブチまけてもいいぞ。ま、もう逃げ道は無いだろーけどな」

 

 ボッスンの言葉と共に草むらに隠れていたヒメコとスイッチが現れ、ペンキ仮面の背後を押さえる。

 ボッスンは三人が部室を出た後で、ヒメコとスイッチに囮作戦と事件の真相、体育館の裏庭近くの草むらに待機のメールを送っていたのだ。

 

「ペンキ仮面。実は無差別のように見えてちゃんとした標的があった。昔、小学校の頃に流行った悪戯のようにな」

「標的はボッスン。ボッスンが襲われた時間に近くの体育館の裏庭で小坂が池を眺めていても襲われんかったんが、その証拠や」

『そして、ボッスンの行動を把握し尚且つボッスンを襲う事が出来た人物はただ一人。それはーー』

「転校生の杉原哲平、お前だけだ」

 

 背後にいたヒメコがペンキ仮面の仮面を剥ぐ。露になった素顔は、杉原の驚きの表情だった。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ‼︎ 僕はただ様子を見にーー」

「そんな仮面被って、ペンキ持って様子を見に来たんか?」

「っ…」

「最初に違和感覚えたのは、お前が池の鯉を眺めてたっつーこの言葉だ。実はな、あの池に鯉はいねーんだ」

「えっ⁈」

『あの池に鯉がいたのは去年までだ。鯉がいないくせに立て札は立ったままだから勘違いしたのだろう』

「つまり、アンタの言うた事件は狂言。せやのにわざわざスケット団に依頼を持ってきた。目的はウチらをおびき寄せる為」

「つまり、実行犯は杉原。そして黒幕は城ヶ崎、違うか?」

「…ま、待ってください。城ヶ崎って誰ですか? 僕は転校してきたばっかでーー」

『杉原哲平。君は小学生の頃この辺りの土地に住んでいた。城ヶ崎は当時の同級生だ。…既に調べはついている』

 

 杉原はスイッチの言葉で観念したのか、深く肩を落としペンキの缶を地面に置き事件の動機を話し始めた。

 杉原は小学生の頃、城ヶ崎にイジメを受けていた。小学生の間ずっと行われた城ヶ崎のイジメは小学生を卒業して引っ越しをした事で終わりを迎えた。そして中学生を卒業してこの街に戻りーー城ヶ崎と再会した。

 城ヶ崎は小学生の頃に行っていた度胸試しーーつまりは悪戯をやろうと杉原に持ちかけた。

 標的は城ヶ崎が報復を考えていたスケット団の誰か。杉原に拒否をする勇気は無かった。

 

「…そして僕は自らペンキを被り、スケット団の部室に…」

「自らペンキを被り被害者を装えば、疑われる事はまず無いからな」

「でも何でアンタが城ヶ崎の言うこと聞かなあかんねん…」

「…あなたたちにとってはくだらない事かもしれませんが、僕にとっては大問題なんですよ。笑っちゃうでしょ」

「笑う気なんてねーよ。面白くもねーし。そんだけ城ヶ崎が怖かったんだろ。ま、もう心配はいらねーよ。俺たちがいるからな」

「あんな、ボッスンがスケット団立ち上げんはアンタみたいな奴を助ける為なんやで?」

「ダメなんです…逆らっちゃダメなんですよ‼︎ 僕みたいな人間が平穏に生きるには立ち向かっちゃダメなんです‼︎ エスカレートさせないように下手に逆らわず、なるべく人に関わらず静かにやり過ごすしか…」

「確かに生きてりゃ怖い奴はいる。暴力を盾にイジメてくる奴もいる。逆らえねぇ気持ちも解る。もし立ち向かえないなら一言言え。俺たちが一緒に立ち向かってやるよ」

「な、何でそこまで…」

「それが俺たちスケット団だ。そして、お前は俺たちの友達だ」

「えっ…?」

「友達助けるのに、理由がいんのか?」

 

 友達。この言葉に杉原は静かに涙した。

 溢れ出す罪悪感と安心感。こんな自分に無償の友情を向けてくれるボッスン。

 そんな友達を、騙していた。この事実に胸が張り裂けそうになる。しかし、今なら…自分が持つ恐怖に立ち向かえる気がした。

 自分は、一人じゃないのだから、と。

 

「…ヒメコ、ワリィけどサイクロンを貸してくんねーか?」

「ええけど…何するん?」

「ちょっと、な」

 

 ヒメコからサイクロンを受け取り、ボッスンは一直線に体育倉庫へと歩き出す。

 

「黒幕が実行犯に何かをさせる時、多くはその現場を見たがるもんだ」

『特に悪戯をけしかける黒幕は、その確率が顕著だ』

「つまり、俺がペンキ塗れになる姿を楽しみに待っていた奴ーー城ヶ崎が近くで見てるっつーわけだ」

 

 開かれた体育倉庫の扉。そして、そこには城ヶ崎と三浦がいた。

 

「まま、待ってくれよ。哲平の事なら冗談だって。だからそう熱くなるなよ…」

「フザケんな‼︎ イジメる方は冗談だろうが、イジメられる方は本気なんだよ‼︎」

「しかも自分の手ぇ汚さへんとか、コッスい真似すんなや‼︎ 文句があるんやったら直接ウチらに言えや‼︎」

「…くそっ、こうなりゃ‼︎」

 

 城ヶ崎が苦し紛れに鉄パイプを取り、ボッスンに襲い掛かるがボッスンは迫る鉄パイプをサイクロンで弾き飛ばす。

 城ヶ崎が体勢をを立て直す中、ボッスンはサイクロンを大上段に振り上げる。

 

「ちったぁ、反省しやがれ‼︎」

 

 ボッスンの持つサイクロンが城ヶ崎の脳天に叩き込まれ、城ヶ崎の意識は刈り取られた。

 

  ▼

 

「…杉原がバスケ部に?」

『新しい事にチャレンジする、という事で兼ねてから興味があったバスケ部に入部したようだ』

「あーあ、せっかく新入部員ゲットのチャンスやったのにー」

 

 事件の翌日、杉原はバスケ部に入部した。

 結局ペンキ仮面事件(仮称)は表沙汰になる事なく、解決。城ヶ崎も杉原に絡む事は無くなった。因みに、城ヶ崎は未だにスケット団の事が嫌いらしい。

 

『まぁ、良いじゃないかヒメコ』

「そうだな。スケット団は三人でも何とかなるしな」

「…うん、せやね」

 

 この日は依頼も無く、部室で解散した。

 ボッスンの家は開盟学園から二十分ほどの所にあるマンションだ。

 建物は団地よりも少し高い程度。賃貸マンションにしては安い賃料もあり、人気のマンション。ボッスンの自宅はそのマンションの最上階にある。

 

「ただいまー」

「お帰り佑助。ご飯出来てるけど食べるわよね?」

「ん、頼むわ」

 

 リビングから顔を覗かせるのは藤崎茜。ボッスンの母親である。好きな物はゲーム、嫌いな物は虫。少々デリカシーが無い一面があるが、ボッスンにとっては唯一無二の母親である。

 自分の部屋で部屋着に着替え、リビングに入ると既に夕飯の支度が出来ていた。

 椅子に座り夕飯を食べようとしたところで、ボッスンが見知った女の子が対面の席に座った。

 

「お兄ちゃん、早くご飯食べちゃってよ。デザートが食べられないじゃん」

「んだよ、先に食えばいいだろーが」

「私、そこまで恥知らずじゃないもん」

 

 藤崎瑠海。中学三年のボッスンの妹である。大のデザート好きで、特にジャンボシュークリームが好物。嫌いな物は母親と同じ虫。

 ボッスンが夕飯を食べる姿を、瑠海はジッと見ていた。そして、見られると気になってしまうのが人間だ。

 

「何だよ、瑠海」

「夕ご飯、美味しい?」

「ん、ああ。美味いぞ」

「そっか」

 

 不思議がるボッスンだったが、今日初めての事でもないのでそのまま流した。

 夕飯後はジャンボシュークリーム(ボッスン作)を妹と母親で食べたボッスン。

 部屋に戻り、軽く勉強をして寝床に着いた。

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