魔弾の射手の英雄譚   作:鍬形丸

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伶愛の霊装の名前が気に入らなかったので変えました。


6話

七星剣武祭代表選抜戦初日_

アリーナでは1人の少年が逃げ惑っていた。

 

「ほらほら、キミの固有霊装(デバイス)は魔力を蓄積するんでしょ。早くしなよ」

「くっ、1分もしないで容量超過(キャパオーバー)とかどんな魔力してんだよ⁈」

 

苦い顔をする少年の名は盛谷誠二。去年の七星剣武祭の代表の1人だ。能力は魔力を蓄積することでロングレンジ型には滅法強い。先日のテロの主犯のビショウとは似て非なるもので魔力を奪うのに触れる必要などないのだ。

紅刃の魔弾を片っ端から蓄積してアドバンテージを得ていたのは序盤の序盤の話で容量超過(キャパオーバー)した後は一方的で避けるしか無い。蓄積した魔力を放てはいいのだが紅刃はそんな隙を与えない。

誠二は善戦しているが敗北は目に見えている。そう観客の誰もが思っている。なにせ紅刃は開始位置から一歩も動かずこの蹂躙劇を起こしているのだから。

そしてついに魔弾が誠二を捉え試合は終了する。

 

『試合終了ォォォ!今年の代表選抜戦のダークホースの1人と目されるAランク騎士の零仙紅刃選手!前年度の代表の1人の『魔力殺し(アンチマジック)』盛谷誠二選手を相手に傷一つ負わないどころか一歩も動かず勝利するという完全試合(パーフェクトゲーム)中の完全試合(パーフェクトゲーム)だぁぁぁ!』

 

紅刃はアリーナから観客席をぐるりと見渡し伶愛の姿を見つけるとVサインをする。

紅刃はアリーナを出て同じく勝利を決めた蒼刃と合流する。

 

「よう。試合の相手は誠二だろ、どうだった」

「面白い能力だったけどつまらなかったね。あれじゃBランクにすら力押しで負けるんじゃないの」

「そうだな。次は伶愛の試合だろ観に行かなくてもいいのか?」

「当然観に行くよ。それに録画機器の準備もバッチリだよ。そっちはどうなの?他の会場で伶奈が試合でしょ」

 

そう言って控え室に置いてあったプロが使うようなカメラを見せ無数の応援旗と横断幕の入った紙袋を見せる。それに蒼刃は同じくプロが使うようなカメラを見せ無数の応援旗と横断幕の入った紙袋を見せることで質問に応じる。

 

「準備はバッチリみたいだね」

「そっちもな」

「健闘を祈るよ」

「ああ、良い絵を撮るぜ」

 

謎の共感を得た2人は拳と拳を合わせそれぞれの撮影場所(戦場)に向かう。下手したら紅刃は今日の試合よりも真剣かもしれない。そんな足取りで会場に向かう。

 

 

『さあついに始まりました!選抜戦初日の注目カードのひとつ!粒揃いの一年生の中でも上位の実力を持つBランクの天城伶奈選手の第1戦です!』

 

放送部の生徒の場を盛り上げる実況に会場から歓声があがる。

 

『対するは!同じく一年生の中でも上位の実力を持つCランクの牙城愛里!果たしてどちらの騎士に勝利の女神が微笑むのか!運命の第1戦開始です!』

 

『照らせ《朱雀凰》』

 

伶奈を青い炎が包んだかと思えば炎が手に収束し日本刀になる。

対する愛里の固有霊装(デバイス)も日本刀型だ。

 

「はぁっ」

「やぁっ」

 

2人は距離を詰め剣戟を結ぶ。身体能力は伶愛の方が高いようだが剣の技量は愛里の方が高い。5秒にも満たない僅かな時間で自らのアドバンテージを悟り武器にする。

伶愛の疾い一閃を愛里は受け流し斬り返すが身体をひねって避けられる。

一歩互いに退いた2人は伐刀者(ブレイザー)伐刀者(ブレイザー)たる所以すなわち魔力を発動する。

伶愛は青い炎を弾丸にして飛ばす。飛来してくるそれらを愛里は跳んで避ける。落下運動を始める時にアリーナの地面を剥がし飛ばして追撃させないようにする。

仕切り直し互いに出方を伺う。

 

「これはどうだ!『炎刃 扇』!」

 

しびれを切らした伶愛が溜めていた炎を放つ。今後は跳んで避けれるような規模のものではない。

アリーナの地面で壁を造り防ぐが一撃で粉砕される。詰めの二撃目を防ぐことは間に合わず炎にのまれる。

 

『決まったぁぁぁ!一年生同士とは思えない激闘を制したのはBランク 天城伶愛選手だぁぁぁ!』

 

伶愛は勝利した喜びで緩む表情を見られないように早々とアリーナを出ようとするが観客席の一角に伶愛の応援団がいる事に気が付きピシリと固まる。その中央の最前列に大型カメラを構える紅刃がいたのを見てなんとなく自体を察した。

呆れ我に返った伶愛は止めようと走る。

 

 

伶愛が控え室を抜けて観客席に向かうと応援旗や横断幕を片付ける紅刃とそれを手伝う生徒の姿があった。

一部を除いた生徒は伶愛を見るとどうにかしてくれよアイツみたいな目で訴えられた。

 

「何をしているんだお前は」

「伶愛の応援だよ。あっ試合はちゃんと撮ってあるよ」

「そういうことを聞いてるいるんじゃない。というかそれいつ作ったんだ。見たことないぞ」

「伶愛が寝てるのを確認して寝顔を4時間くらい眺めてから作ったからね。寝不足で大変だったよ。まぁやる気は上限突破したけどね」

 

そうかと一応納得した伶愛はふと紅刃がなんと言ったか思い返す。

『寝てるのを確認して』ここは特におかしいところは無いなこっそり作るなら当然だ。『寝顔を4時間くらい眺めてから』ん?おい。

 

「ちょっと待て紅刃。どういう事だ⁈」

「え?」

「寝顔がどうとか、ちゃんと説明しろ!」

「普段も可愛いけど寝顔はホント天使だね。あと寝言も可愛いね」

「なななにを⁉︎って違う!そういう事ではなく__」

「あ、伶愛。今日勝つと思ってお祝いに良いやつ取り寄せてあるよ」

「話をそらすな!」

 

2人の騒ぎを聞いて独り身の男子は胸を抑え苦しみもがく。女子は黄色い悲鳴をあげ両手で顔を覆うが指の隙間からバッチリ見ている。

騒ぎを聞きつけた生徒会役員の御禊泡沫と兎丸恋々はその混沌とした光景を見て見なかった事にして踵を返した。

 

 

伶愛は寮の備え付けのキッチンで包丁を握る紅刃を眺めていた。

 

「紅刃は料理も出来るのか…」

 

プロ顔負けな料理を次々に仕上げていく紅刃をみてポツリと呟く。

裁縫も例の横断幕などで出来ることが分かっており料理もこのレベルで出来るのであれば女子力はそこいらの女子とは格が違う。

 

「ふふ〜ん、ボクは大抵のことならなんでも出来るんだよ」

 

完成したのか料理をテーブルに並べる。

テーブルマナーに則りナイフで肉料理を切りフォークで口に運ぶ。料理はどれも美味しいが見た目も芸術品のようにきらびやかだった。

最後のデザートを食べ終わったら紅刃が冷蔵庫から赤ワインとグラスを取り出して来た。

 

「お、おい」

「大丈夫だって。度数も低いからジュースみたいなものだよ」

「そういう問題では__」

「はい、グラス持って」

「仕方ない」

 

紅刃が伶愛のグラスに注ぎ伶愛が紅刃のグラスに注ぐ。

 

「それじゃ、互いの選抜戦初戦勝利とこれからを祝って。乾杯」

「乾杯」

 

グラスとグラスがぶつかりキンッと耳当たりの良い音を立てる。

くいっと飲み干した伶愛はグラスを置いて一言。

 

「ところで紅刃」

「なに?伶愛」

「なんでお前は2人に増えてるんだ」

「え゛⁈」

 

紅刃は伶愛に酔ったかと聞くが伶愛は酔ってないと隣を向いて答える。ちなみに2人はテーブルを挟んで向き合っている。

聞くまでもなく酔っていた。

 

「なんだか暑いな」

「流石にダメだよ⁉︎」

 

服に手を掛けのを見て紅刃は隣にいってやめさせたが今度は紅刃の身体が冷たくて気持ち良いと抱き着いて頬擦りしてきた。

 

「紅刃は冷たくて気持ち良いな」

「うわっ、ちょ、やめっ」

 

悪いことは続くものでノックが聞こえた。鍵はしてないが出迎えるのは無理なので帰るだろうと無視する。というか無視するしか無い。まぁ勝手に入って来るような非常識なことはしないだろう。

 

「邪魔するぜ」

「お邪魔するよ」

 

そんなことは無かった。普通に我が物顔で入ってきた。

普段とは打って変わって紅刃にピッタリ引っ付いてデレデレの伶愛を見た伶奈はテーブルの上のワインに気付きニヤリと嗤う。

 

「ところで紅刃君」

「はい」

 

嫌な予感しかしなかったが活路はここしか無い。

 

「君は伶愛を泥酔させたね。そして私たちはそれを言いふらすことが出来る。そしてここにワインがある。後は分かるね」

「どうぞ持っていって下さい」

「あるのはこれだけ?」

「冷蔵庫のやつもどうぞ」

 

眼ざとく冷蔵庫からもワインを奪い取った伶奈は満足したのか去って行った。

蒼刃は扉を閉める直前に冗談を残す。

 

「避妊はしろよ」

「死ねっ!」

 

手の届く範囲にあったフォークを掴み扉に向かって投げる。扉を容易く貫通し外の手摺に刺さる。悲鳴が聞こえたが当たらなかったようだ。残念。

フォークを回収し扉の鍵を閉めチェーンを掛ける。

さてどうするかと振り返り伶愛を見ると半裸になってトロンとした目で見てくる。

下半身に熱が集まるのを感じ手が無意識に残りの服に向かう。

『そのままヤッちゃえよ』とデフォルメされた悪魔が囁く。伶愛の服に手を掛ける。不思議そうに伶愛が首をかしげる。なんだかそれで良い気がしてきた。

とそこにデフォルメされた天使が『ダメだよ』と待ったをかける。悪魔と天使がいがみ合う。

『良いんだよ。コイツだってこんな形してても男なんだから』と畳み掛ける。続いて天使が止める。『このまま意識があると抵抗されるかもしれないから昏倒させなきゃ』違った止めてない。天使の方が黒かった。悪魔がドン引きしてる。『いやぁ、それは無いわ。ダメだ』なんか立場が逆転してる。

そうこうしているうちに伶愛は寝息を立てて寝てしまった。その普段は見れない無防備な表情を見て紅刃は理性とかが色々陥落寸前だった。

頭を壁にぶつけ思考をクリアにした紅刃は欲望を鋼鉄の意思で抑え伶愛に服を着せてベットに寝かせて布団を被せる。

 

余談だが次の日の朝顔を合わせた2人は顔を真っ赤にし、紅刃は土下座し伶愛はそれを見て慌ててやめさせる。

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