B アルシェ
私が貸してもらっている
「………誰?」
「これは女神様、おはようございます。」
汚れたエプロンと三角巾を外すと現れたのはどっちが女神だよって聞きたくなるような美女。
そんな美女が掃除済みとはいえ、床に膝をついて私に頭を下げてくる。
「えっと…………。」
昨日えらい騎士様がくるって事で歌わずに酒を飲んでいて…。途中から状態異常無効のアイテムを外したまでは覚えているんだけど……。
「お水でございます。」
恭しく水を差しだしてくる。
「あ、こりゃ、どうも…。」
見覚えあるんだよねー。
こんなハリウッドスター超えの美人、見たら忘れないと思うんだけど……。
「ふふ。覚えておられないようですね。」
「…あう。」
痛いとこつかれた。失礼だよね、向こうは知ってるのにこっちは知らないって…。
「改めて、自己紹介いたします。私、レイナース・ロックブルズ。帝国の騎士を生業としておりました。」
「………おりました?」
「はい。今日からは貴女様にお仕え致します。」
「え?!てか、え゛?!」
何?何の冗談?
「ちょ、ちょっと待って。」
とにかくおっちゃんかおばちゃんに何とか事態を説明してもらわないと。
私はレイナース女史の手を握るとバタバタ階段を下りていく。
「ねえ、おっちゃん、おばちゃん、これってどういうこと?」
「よう、おはようさん。」
階段を降りると、おっちゃんとおばちゃんは苦笑して手を上げる。
「どういう事って、………ねえ。」
私は酔って記憶の飛んだ辺りを説明すると、それからあとの事を二人が説明してくれた。
「…でよ、嬢ちゃんが変な鈴を取り出してなんかシャンシャンやったら突然ロックブルズ閣下が鏡出せとかタオル貸せとか言って……。」
「あの時舞い歌うカ・ラ・ビンカ様を見て、私はもう魅了されてしまっていたのですわ。」
あー、たぶん神楽舞だね。ユグドラシルじゃ簡単な呪文での除霊や解呪に比べると、長ったらしいし、効力も中途半端だしで、ネタに近かったんだけど。
たぶん私、宴会芸的なノリでやっちゃったんだ。
うわー罪悪感ハンパねーー。
「そして長年私をむしばんで来、誰も解呪の糸口さえつかめなかった呪いを貴女様はいとも簡単に、きれいさっぱり、祓ってしまわれた。」
私の手を両の手で仰々しく掴み、膝まづいて涙を流すレイナース女史。
「これが女神の御業でなくて何と仰るのですか?」
「いや、私のいた国、いや、世界、ってか、ゲーム?じゃ回復担当ならだれでもできることだから……。」
「げぇむ?神代の世界でございますね。」
いや、違うし。そんな高尚なものじゃないし。むしろ対極の位置だし。
まあいいや、私はおっちゃんに先を促す。
「ああ、で、その後、ロックブルズ閣下が何故その呪いを受けたか説明して………。」
あー、何か覚えがある。
「その私の半生を憐れみ、流して頂いた涙、私、家宝として代々語り継ぎたいと思います。」
言って髪をかき上げ、真珠のピアスを私に見せる。
あー、あれか、ユグドラシルの設定で人魚姫は真珠の涙を流すってアレか。
「お願い、ネタを語り継がないで……。」
「そして、最後にこれを頂いたのです。失った時を取り戻しなさいと……。」
「ん?何それ?」
指に光るマジックアイテム。
「
ああ。
「老化む………。」
レイナース女史は私の唇を指で押さえる。
「失礼しました。しかし神様、それ以上はあまり口にされない方が良いかと。どこで誰が聞いているかもしれません。」
私はうんうんうなづく。美人の鋭い目は怖いね。
「うん、結構思い出してきたよ。ごめんね、酔っぱらった勢いで色々変な事しちゃって。」
「何を、何をお謝りなされる?私、これ以上感謝できない位、感謝しておりますのに……。」
本当に理解不能、的な視線で私を見るレイナース女史。
「だって私、ただ酒に酔って痴態をさらしてただけじゃない?」
「昔からお神酒あがらぬ神は無し、と申します。お酒に飲まれてハメを外されるくらい、女神様としてはむしろ愛嬌があってよろしいかと。」
どこの世界の神だそりゃ?
「あー、えっと今更かもだけどさ、ロックブルズさ、閣下……。」
「レイナース。と、呼び捨ててくださいまし。」
「ああ、うん、じゃあレイナース、さん、…その、私の事、神様とか止めない?私、本当に普通に普通の
「何を仰る、いいえいいえ、分かっております、貴女様がご謙遜なされてそんなことを仰るのを。」
おっちゃんとおばちゃんに助けを求めるが、二人は明後日の方を向いてしまった。
おつきの兵士たちは何だか戦力になりそうにない。
反論をかまそうと思っていたところ、外に居た兵士達が大声で怒鳴りあう声が聞こえてきた。
「何事かっ!!?」
怖っ!レイナース怖っ!!思わずびくついちゃったよ。
「は、先日陳情してきた居酒屋の店主共が経過報告をと参っている次第です。」
「それは棄却すると伝えたではないか!」
「何故でございますか!?我々は……。」
店主だろう一人が窓から顔を突き出して言う。
「お前たちはただここの親父が稼いでるのが妬ましかっただけではないか。自助努力をせず他人を蹴落とそうなど言語道断だ!」
「ま、まあ、レイナースさん、とりあえず話を聞かせてもらおうよ。兵士さん達、彼らを通してやって。」
「女神様が仰るのであれば……。しかしお前ら勘違いするな、カ・ラ・ビンカ様の温情を無下にするような言動は許さんぞ!」
店主さんたちの私を見る目、やっぱり魔女を見る目なんだよなぁ……。
そりゃそうか、昨日まで非友好的だった女騎士が乗り込んで一夜明けたら女神様“♡”になってたら誰もが
話し合いは平行線だった。
追放という言葉はレイナースの目が怖くてさすがに出てこなかったみたいだが………、深夜まで歌い通すのは近所迷惑だから歌わせるなとか、金が払われない魔法を一般人に行使するのは帝国法に違反しているだとかそんな感じ。
向こうは口の達者な味方―今でいう弁護士か―を呼んでいたのか、レイナースも痛いとこをつかれて渋い顔をしている。
しかし美人って本当に得だよね。渋い顔も様になってる。
「分かった。ならばこうしよう。」
レイナースは腕を組んで立ち上がる。
「私はこの街の中心に屋敷を持っている。古いレンガ造りの屋敷だがかなりの大きさだ。ここをコンサートホールに改装する。」
ぴくっ!
コンサートホール!!??
「カ・ラ・ビンカ様にはここで歌を披露してもらい、お前達はここで店を商うもよし、酒を売るもよし、油を売ってもよい。」
おお。なんか昔見たラスベガスの写真が彷彿される。
やばい!良いな!!
「この屋敷にお前たちの家店舗を移築するもよし、通い詰めて稼ぐもよし、何なら一室をお前達の家として賃貸借しても良い。お前達は売り上げの、そうだな、15%を出演料としてビンカ様に支払う。それでどうだ。」
店主達は首を突き合わせると、打ち合わせを行う。
「その、15%というのがどの程度になるかわかりませんので、毎年店主会を開き、そこで調整を行いたいのですが。」
レイナースは私に向くとよろしいですか、と尋ねてくる。
1も2もなく私は首肯した。お金なんてそんなことはどうでもいい!!
夢にまで見たコンサート!!!
「レイナース!大好き!!」
私は感極まってレイナースに抱き着いていた。
「みゃはぁぁぁぁぁぁ……………。」
私の方からは見えなかったレイナースの顔。
しかし………
「やっぱりロックブルズ閣下は骨抜きにされてしまってたようだな。」
だそうだ。
「まあ、お前らも嬢ちゃんの歌を聞けば間違いなく骨抜きになるだろうけどよ。」
「とにかくお前ら、これからはよろしく頼むぜ。」
「おうよ。」
「しかし、勘違いすんなよ。場所はバーデンが一番いい所をもらうからな。」
「ふざけんな!くじだ!」
「どアホウ!早いもん勝ちだよ!!」
それから一週間でコンサートホールが完成した。
その一週間はほとんどの居酒屋が移築のために閉店したのだが、ロックブルズホールができるという話を聞くと、皆待ちきれないと浮足立っていた。
ロックブルズホールは私が色々注文を付けてオペラだけでなくロック、合唱団、歌劇等、多種多様に対応できるよう増改築した。
もちろん私のわがままなので、私はブロンズゴーレムや召喚獣を使って改築の手伝いを20時間体制で行った。
「こけら落とし!いっくよーーー!」
「うおおおおぉぉぉぉぉーーー。」
今までネレイダスカルテットバンドしか呼び出せなかったが……。オーケストラが呼び出せる。
ホールは収容千人以内を予定していたが、既に3千を数えている。
何度言ったか忘れたけど、
さいっこーう!!
舞台最高!走っても跳んでも床がびくともしない。
照明が、スポットライトが、ミラーボールが、光を共演させる。
防音壁が音を吸収して変な音が返ってこない。
まさに歌うための神殿!!
「ねえ皆!今何曲目ーーー!?」
全員が指折り数える。
「32曲ーーーー!」
「33曲だーー!!」
「30曲ーー!」
「はっはぁ!皆!そんな事忘れさせてあげる!!」
既に疲れ果ててつぶれたアトランティック・オーケストラを舞台から煙幕を上げさせてサウスポール・オーケストラと交代させる。
幕間
「ああ、輝いておられる。やはりビンカ様は歌が身体の一部……。」
何十曲歌ってもまったく疲れる気配を見せない。観客の方が疲れては何度も前列を交代している程だ。
「しかし、目立つことはやめてほしいのだが、歌うのを止めるのは息を止めさせるようなものだ。」
改めて階下の会場を見る。
「しかし、街の半分近くが来場するとはな…。」
本来はビンカだけのためのコンサートホールであったが、市民にとっては街で初めてのコンサートホール、というか娯楽。入場無料であれば少々遠くても来ないはずはない。
そしてどこから聞きつけたのかハイエナのような貴族と、鵜の目鷹の目の外国公使達。
レイナースは青紫色のイブニングドレスに身を包み、貴賓席で色々な貴族や外国公使の対応をしていた。
「いやはやすごい歌姫を手に入れましたな。ロックブルズ閣下。」
三人程公使がレイナースを取り囲みワイン片手に談義する。
「私のではない。みんなの女神様だ。」
「このコンサートホールもすごい。外装は単純なのですが内装が超近代的で今まで誰も見たことも無い設備です。」
「アイデアは全部女神様のものだ。」
「帝国始まって以来の、いえ、世界初の複合型コンサートホールですからな。我が国でも参考にさせて頂きたい。」
「竜王国はそんな余裕があるのかな?」
「はは、ロックブルズ閣下は相変わらず手厳しい。」
「いや、皮肉でなくな。我が領はそちらと隣接しているので他人事ではない。」
「避難民の受け入れ、ご再考いただけましたか?」
「ああ。さすがに全員は無理だが千人位なら何とかなるだろう。今この街は大きくなりつつあるから食料も仕事口も何とかなるだろう。」
ここで竜王国公使は“え?”という顔になる。今までなしのつぶてで、今回もあまり期待はしていなかったから。
「おお、誠でございますか?さすがはロックブルズ閣下。しかし、皇帝陛下にご相談されずによろしいので?」
「皇帝?ああ、忘れていた。しかし、この程度ならば大丈夫だ。」
今後、もっと大きな懸案が控えているのだから。
「ロックブルズ閣下。」
レイナースの腹心が耳打ちする。
「スパイが3人紛れ込んでいます。」
「チッ……。」
「王国から一人、法国から一人、そして皇帝から。」
「おのれ、なんて連中だ。もう嗅ぎ付けたか。早すぎる!こちらの計画も急がねばならんか。しかし、皇帝相手に私の知略でどこまで対抗できるか……。」
「皆様、私はこれにて失礼させていただく。少々急ぎの用ができた。」
「ちょ、お待ちを……。」
今日はレイナースの機嫌が良い。今なら色々な商談やら交渉ごとがスムースに進むと思っていた矢先である。何とか引きとめようとする公使達を尻目に、レイナースは足早に貴賓席を後にした。
「あの笑顔を守らねば……。」
そう心に固く誓って。
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ロックブルズホールが出来てから3日目。
レイナースがみすぼらしい女の子を一人連れてきた。
楽屋でバーデンのさんま定食を食べていた私は入ってくるなり気絶した女の子を呆然と見つめる。
「………なに?」
「おい、アルシェ!会うなり気絶とは失礼過ぎるだろう。」
レイナースが少女アルシェの肩をがくがく揺さぶる。
「あ、……あー、あー。」
「ねえ、レイナース、何か私のせい?」
私を指さしてあーあー言ってればそう思ってしまう。
「おい、アルシェ!!」
「ゲホッ、ゲホッ!」
過呼吸のような症状だな。
鎮静効果もある歌を私は口ずさむ。
どうやら落ち着いたようだ。
「はあ、はあ……。し、失礼しました。」
「どうだ、アルシェ?」
「はい。神か魔王かというすさまじさです。」
………何が?
「ちなみに今の歌も魔法です。第2位階、
「ああ。それで?」
「第7位階を超えます。それ以上奥を見ようとすると飲み込まれそうで怖いので………すみません。」
「では第8位階をも……??やはり………。」
それきり二人は固まってしまった。
「あのー、ねえ、レイナース、そろそろ種明かししてほしいんだけど。」
「あ、はい、ごめんなさい。彼女の名はアルシェ・イーブ・リイル・フルトと言います。彼女のタレントは相手を見るだけでどの程度の
タレントの事は私は生まれついてのパッシブスキルとして理解している。
スカートをちょんとつまんで挨拶をしてくるアルシェ。
「失礼しました、カ・ラ・ビンカ様。アルシェと申します。」
「様はやめてよー。」
「順を追って説明します。実はもう皇帝の耳にビンカの話が届いてしまったようなのです。」
レイナースにはもう私の名前を呼び捨てるように言ってある。マブダチなんだから敬称つけるの禁止!て駄々コネてたら今朝辺りからようやく自然に言ってくれるようになった。
「へえ、私有名人?」
「冗談を言っている場合ではありません!」
冗談じゃないのに。
「それで皇帝の傍らには常にフールーダ・パラダインという爺が居るのですが……。」
「私の元、師匠です。」
と、アルシェ。
「そのフールーダ、アルシェと同じタレントを持っているのです。」
「へえ、じゃあその子もすごいんだ。」
「第8位階を自在に操るだろう人にすごいと言われても自信を喪失するだけです。」
難しい年ごろなのね。
「それで恐らく近日中に皇帝から呼び出しがかかる事は100%間違いありません。」
「ふーん。」
「やっぱり事態の恐ろしさを分かってません!」
怒られた。何で?
「アルシェ、この方が第8位階を操る。フールーダの爺はどう反応する?」
「………たぶん抱き着いてきます。」
…………抱き着いてくる?おじいちゃんが?孫じゃないんだから。
「絶対逃がさないって、その日から付きまとわれるでしょう。トイレも自由にいけなくなると思います。」
どこの変態だ?
アルシェの言葉を引き継ぐレイナース。
「そして帝国の為に独楽鼠のように働かされる事になるでしょう。歌も皇帝の前だけとか、良くて戦場に出る兵士の前とか位になるでしょう。」
「はあ?何でよ?!」
「この国は皇帝のためのものだからです。」
……………………。
「やばいよやばいよ!!どうしたら良いのレイナース?」
ようやく理解したかとばかりに肩をすくめるレイナース。
「ですから、ちょっと魔法が得意な
「偽装?でもその娘と同じタレントをそのお爺ちゃんは持っているのでしょう?もしかしてその奥まで覗かれるなんて事は……。」
「どうなんだ?アルシェ?お前は途中で見るのを止めてしまった様だが。」
「は、はい、私にはあまりに強烈すぎて…でもパラダイン様はおそらく平気で覗き込んで来るでしょう。」
やばいよ。第8位階どこじゃないよ。超位階を操るなんてこと知られたら……。
「あ、分かった。だからこのアルシェって子を私の影武者にするんだね?」
「違います!」
「傷つくわー。」
3xです。と答えた後、それを言われるとものすごく傷つく感じで言われた。
「そもそもアルシェはフールーダの元弟子と言ってるではないですか!一発で見破られるに決まってるじゃないですか!何聞いてんですか?!」
怒られた。昨日まで私、女神様だったのに……。
「何かマジックアイテムを作れないんですか?先日、私に作ってくれたマジックアイテムのように…。」
「おお、なるほど!気配隠蔽系のマジックアイテムを作ればいいんだね?」
「そう!!!それです!!」
ビシッと私に指を突きつけてくるレイナース。
「それをつけてフールーダに会えば、唯の歌の上手い
「軍人?私が?何で?はっきり言って私、弱いよ。」
「第8位階を使える
アルシェにまで怒られた。でも今まで弱い弱い言い続けられてきたからちょっとうれしいかも。
「やだなー。そんなに褒めないでよ。」
「「褒めてません!!!」」
怒られた…。デュエットで…。
「第8位階を使える、歌で
「ああ、相手はなだれを打って壊走するね。」
「
「なるほどー。頭良いね、レイナース。さすが私のマブダチ!!」
抱きつくと少しまんざらでもない表情になるレイナース。
こういう表情になるとかわいいのにねー。
最近レイナースは冷血な女騎士から民思いの名君という評判に変わりつつあるらしい。
「こほん。ですから、そうならないためにも気配隠蔽のマジックアイテムを作ってください。」
「うん、分かったよ。んー、第7位階使うからちょっと我慢しててね。」
「は、はい!!」
「クリエイト・グレーターアイテム・ジャミングインディケイション。」
「う、す、すごい。伝説級レベルをこの目で見れるなんて。しかも触媒も儀式もなしで……。」
「えーそう?そう思う?」
「それはもう……。」
「後にしてください。」
レイナースは私が作ったマジックアイテムをとって私の指にはめる。
「アルシェ、見てくれ。」
「はい。」
一回深呼吸してアルシェは私に手のひらを向ける。
「ダメです。何も見えません。」
「これじゃダメだな。」
「ええーーー?!何でぇ!?」
「あからさまに『お前らに私の使用位階は分からせんよ!』と言う態度でこられたらビンカならどうします?」
「意地でも見たくなる。……ああ、なるほど。だったらこれはダメだねーー。」
私は作ったばかりの指輪をポイッとゴミ箱に………。
「わああぁぁぁ、もったいない!!要らないなら私にください!!」
びっくりした。突然アルシェがゴミ箱に頭ごと突っ込んで行った。
「いや、あげるけども、なにもゴミ箱に特攻……。」
「ダメだ!!すまんがそれはやるわけにはいかん。」
「ちょっと、レイナース、そんな意地悪しなくても。欲しいなら……。」
「ビンカ、貴女がそういう風にポイポイ作り出すマジックアイテムの価値は今アルシェが態度で見せたでしょう。」
私とアルシェの視線が合う。少しきまりが悪そうにアルシェは目をそらした。
「アルシェ、お前には後で金貨70枚を渡す。今回はそれであきらめてくれ。」
「……はい。」
名残惜しそうにだが、はっきり返事をするアルシェ。
「せめて第3位階が使えますよ、的な反応を示すマジックアイテムを作ってください。」
「えぇー。それって面倒だな……。あ、そうだアルシェちゃん。」
「はい?」
「貴女の使える魔法位階はどれだけ?」
「第3位階ですけど。」
「じゃあ、クリエイト・グレーターアイテム・トランスインディケイション!」
私の手のひらにペアリングが現れた。
「一つをアルシェちゃんにはめてもらって、一つを私に…。ちょっと見てみて。」
不思議そうに自分の指にはめられたリングを見て再度測定するアルシェ。
「あ、これは…、第3位階の魔力しか感じられません。」
「ああ、なんと言うかこれは、アルシェの気配とビンカの気配が入れ替わったようだ。」
「これなら……。」
「ダメです。」
今度言ったのはアルシェだった。
「……何で?」
「こんな高価そうなマジックアイテムを私がしているのを知れば…、家のものが売り払ってしまうでしょう。」
……………。
「世知辛いね。んじゃ、
「す、すごい。第5位階魔法をしかも二つ同時に、そんな簡単に…。」
「よし、これで何とかなりそうだ。」
レイナースはようやくホッとしたか、私の向かいにあるソファーに腰掛け大きく息を吐く。
「アルシェ。今日はわざわざ遠くまで足を運んでもらって悪かったな。これは今日の報酬だ。少し色を付けておいてやるぞ。」
言ってレイナースは皮袋をアルシェに渡した。
「金貨100枚…。」
少し驚いているようだ。
「口止め料も含まれている。お前のワーカー仲間も一緒に来ているだろうが、彼らにも詳細は言ってはならん。分かっているな?」
「はい。あの…。」
「何だ?」
「少し、カ・ラ・ビンカ様とお話させていただいてかまいませんか?」
レイナースは私に視線でたずねる。
「何を聞きたいんだ?」
「魔法のお話を。第8位階の魔法の話、とか……。」
「うん、良いよ。実際見せてあげよう。そうだなー。
あ、アルシェ倒れた。
召喚されたウリエルが心配そうにアルシェをつつくのであった。
続く