カルネ連邦共和国   作:夕叢霧香

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第30話

B 終末の行方

 

 

 のしっ!

「いいぃぃ~やぁぁぁぁ~!!」

 あわあわあわ………。

「レイナース~。」

「母様!!」

 レイナースの声だ。続いて玄関を蹴破った音。

「お前はっ!少しは成長しろ!」

 声と同時に私にのしかかっていた重みがなくなった。

「母様!大丈夫よ。クレマンティーヌが乗っかっていただけだから。」

「クレマンティーヌ?母様?」

 この娘は私を怖がらせるのが趣味なの?

 って……、皆、何でここに…?

 

 レイナースが優しく私がかぶっている毛布を鼻の上まで下げてくる。

 目と目が会った。

「母様。良かった!!」

 レイナースは滂沱の涙を流し、毛布の上から抱き着いてきた。

「え?レイナース?母様って……。」

「死んでしまうって言われて、………私達、必死に探して……。」

 続いてアルシェとクレマンティーヌが私の上に乗って抱き着いてきた。

「皆、ごめんね……。」

 と、三人を抱きしめようとしたとき、毛布で隠されていた、鳥の翼となった私の手が見えた。

 

 …………………。

「えーと、なんですけど……。私はビンカさんじゃありませんよー………。なんて…。」

 その言葉を聞いた三人の目から光がなくなった。

 こわっ…。

 

 バサッと毛布が引っぺがされた。

 そこに居たのは今までの人間然とした私ではない、1匹のセイレーンの姿。

「今の言葉の真意を聞きたいわ。」

 私についぞ向けられたことのない怖い声のレイナース。

「えっと、あの、私は単なるしがないモンスターですよー……。」

 カプッ!

「のわっ!」

 クレマンティーヌが私の首筋に噛みついてきた。

 しかしそれは痛みよりくすぐったい感じの甘噛みだった。クレマンティーヌの目じりに涙が浮かんでる……。

 

「お母さんが何でそんな事を…、と言うのは分かるつもりよ。」

 言ってアルシェは私の鳥の足を触ってきた。羽毛を逆撫でしないように丁寧に梳いてくれる。

「これがお母さんの真の姿という事でしょう?」

「………うん。」

 真の姿というのとはまた違うのだけど……。

「私達、皆知ってたよ。母様が普通の人間ではないこと……。時々何かを言いたそうにしてたのも気付いてた。」

 レイナースが拳を震わせて言う。

「………。」

「私達が怒ってるのはね、母様が、この世で最も大好きな人が、自分の事を卑下するからよ!私達の愛を疑うからよ!!この姿を見たら私達が母様を嫌うとでも?!」

 

「ママはさ、私等にとっては神様なんだよ。」

 首にしがみついたまま言うクレマンティーヌ。

 怒鳴られた私が哀れに思ったのだろうか、クレマンティーヌの声から聞かれたことのない、優しい声で言う。

「救われた。皆に忌み嫌われたこんな私でさえも、救ってくれた。そんな慈愛に満ちた人に、外見がどうの、人間がどうのなんてもう関係ないよ。」

「……クレマンティーヌ。」

「神様なんてさ、人間の姿してたって人間離れしてるモンでしょ?ママみたいに、鳥みたいな姿をした、でも人間臭い神様の方が私は好きだよ。」

 

「もう、自分の事、モンスターなんて、言わないよね?」

 アルシェ……。

 うん、……うん。

 言葉が出ない。

 今の涙は真珠にはならないんだね……。

 

「良かった。母様も無事。私達も転生した。これから皆で一緒に暮らしましょう。」

 そうだった。今までさらりと流してきたけど一つ問題が……。

「…あのー。」

「何?」

「その、母様って……。」

「ええ母様。それが何か?」

 またこれ言うとレイナース怒っちゃうかな~?

「えっと、私………。」

「……………。」

 ……………。

 言い辛いんだよ!察してよ!

 いや、三人ともわかってて黙ってる!

 

 私はつかさの方を見る。いつの間にか人形みたいになってるし!!

 つーか、何今まで黙って聞いてんだよ!フォロー位入れてくれよ!

「母様はちょっと違うかな~………とか、言ってみたり……。」

 あ、怒られる!!

「私達がお母さんの胎内で聞いた話は全部ウソって、そう言いたいの!!?」

「いや、ちょっと、誤解、誤解!」

 とりあえず噛みついたのが迫力の無いアルシェで助かった。

 

「はい、誤解でしょうとも。それで?」

 レイナースのあの笑顔の後は物凄く怖い。

「あの、あれは、スキルって言って、魔法みたいなもので………。緊急退避的に、皆を安全に………。」

 汗が噴き出る。

 ね、ちょっとつかちゃん?……つかちゃんてば!

「望んでもないのに、という事?」

 や、だからその目は怖いよレイナース。ヤンデレ入ってるよ。

「いやいやいやいや、だって私達友達でしょ!?」

「友達同士で養子縁組をした例は珍しいことでは無いわ。私の知っている貴族達でも3人はいる。皆、父様、母様と呼んでいるわ。」

 それは家名を残したり、遺産の相続等での養子縁組で……。

「でもそれに、アルシェは実際、両親だって居るのに…。」

「私、勘当されて以来、妹達以外身内はいなくなっちゃった……。だから今の私の母はお母さんだけなの。」

「アルシェ……。」

「それに、家名とか、遺産とか、そんな養子縁組なんて私はお断り。けれどこれはそんなレベルを超越しているわ。私はお母さんの娘になれて、だからとても嬉しかった。それを無かったことにしたいなんて言われたら………。」

 イタタ……。

 痛いほどに抱きしめてくるアルシェ。

 

「それにさ、私、感じちゃうんだよねー。」

「ひゃっ!」

 クレマンティーヌが私の首筋のニオイを嗅ぐ。

「私達、匂いとか、汗とか、血とか、まるで……。フフ、多分私達は完全無欠な血縁になってる。」

 動物的勘の強い子だから分かるのだろうか?

「普通の養子縁組とかだと、どうしたって違和感とか遠慮とかあるもんだけどね~……。そういうの私、全然感じない。」

 遺伝子レベルと言うこと……?

 そしてそれは他の二人も同じらしい。

 それは私だって………。

 

「さて、そんなことより!」

 そんな事って、レイナース……。

「何で直ぐ帰ってきてくれなかったの?」

「いや、無理でしょ。私今目覚めたばかりだったのに……。」

「でもさ~、私が入っていかなかったら居留守使うつもりだったよね~。」

 クレマンティーヌ!余計な事を……。

「だからほら、私、こんな姿だから皆に会うの怖かったって、分かってくれたんでしょ?」

 これはまずい、話の流れを変えねば!!

「むしろ私の方が聞きたいよ!どうしてこんな素早くここを突き止めることが出来たの?」

「お母さんの部屋にあったスクロール、それとコーラルチャームの助けを借りて、第6位階魔法、物体発見(ロケートオブジェクト)を使ったの。」

 自慢げに言ってアルシェは私の枕に残っていた髪を数本取り出した。

「でもビックリしたわ。突然手のモンスターが飛び出してきて…。」

「モンスター……、怪我は無かったの?!」

 多分アインズさんの情報阻害系魔法だよね?身内に危害が及ばないよう気を付けてくれたのかな?

「怪我は無かったけど……。」

 言いにくそうにするアルシェ。

 何故かレイナースも真っ赤になってる。クレマンティーヌはニヤニヤしているが…。

 ………??

「って、スクロールって、そういえば……。」

 私は自分の無限の背負い袋(インフィニティハヴァザック)の中を見る。

「あー……ものの見事にもぬけの空だ…。」

 私の溜め込んでいた全てのアイテムが空になっていた。

「まあ、そうだよね。でも、黒曜石とかヒヒイロカネとか痛いなー。この世界で錬成できるかな?」

「どうしたの?」

「ああ、何でもない。」

 

「ところで、こちらの方は……。」

 レイナースが部屋の片隅で人形になっていた女を見る。

「かの有名なつかちゃんだよ。」

「貴女が……。はじめまして。私、レイナース・ロックブルズと申します。」

「アルシェ・イーブ・リイル・フルトと申します。」

 貴族らしく挨拶するレイナースとアルシェ。

「クレマンティーヌだよ~。」

「これは御丁寧にどうも。つかさと申します。」

「母がひとかたならぬお世話になりました。」

 レイナースとアルシェが深々と頭を下げた。

「ご覧の通り、わがままな母ですので直ぐに連れて帰ります。お礼はいずれ。」

「へ?あ、それはちょっと、困る、というか……。」

 三人娘の目つきが変わった。ビビッてるビビッてる。つかちゃんビビッてる。

 いい気味だ。今まで他人事ですよー、みたいな顔して……。

「いや、あの、ちがっ…。ビンカさんには協力していただきたい事があって……。」

 少し殺気が和らいだ。

 

「え?私に頼み?何々?」

「実は、これからナザリックが法国に総攻撃を仕掛ける状況になってて…。」

「はー、スレイン法国終わったかー。まぁ、そうなるよねー。」

 いや、アンタの母国でしょうがクレマンティーヌ。

「その、法国の民衆を助けるのに、ビンカさんの助けが必要なんだ。」

「私が法国の民衆の為に命乞いするの?」

 それ位なら別に良いけど………。

「いや。ナザリック勢と戦って欲しいんだ。」

 ………。

「えー?無理だよ。」

「かつての所属ギルドと戦うのに心が痛むのは分かる……。」

「いや、そうじゃなくて、…まあ、確かにそういうのも嫌なんだけど、でも無辜の民が殺されるのを黙ってみてることはしないよ。」

 その言葉に娘達の表情が和らぐ。

「でもそうじゃなくて、根本的に私弱いんだよ。しかも今LV1だし。助けるどころじゃないよ。助けられちゃうよ。」

「ならば私達がきっちりガードします。」

 頼もしい娘達だわ。

 でも今の彼女等じゃ逆立ちしても無理だ。この子等は戦場に出しちゃいけない。

 

「って、そうだ!ナザリックって今何人居るの?!」

「プレイヤーは貴女を含めて二人。」

「………えー。」

「だからこそ、アインズさんは貴女をとても大切に思ってる。」

 ………。

 ちょっと、うわ、なんか、超嬉しいんですけど……。

 

「でも、あれ?そう言えば、あの時アルベドとか、コキュートスとか居たみたいだけど……。」

「それは、NPCは意思を持って動いてるから。」

 …………………。

「ふーん。」

「え?それだけ?」

 ちょっとポカンとするつかさ。

「ああ、うん。…何か、そんな事もあるかなー、……的な?」

 

「ま、まあ話が早くて助かるかな。ではちょっと話は長くなるけど、聞いてもらえるかな?」

 つかさが居間に案内し、お茶を用意しながら全ての経緯を話し始める。

 …………………。

 …………………………。

 

「…あー、じゃあ、支配が解けた後も色々すれ違いで?」

 全部理解したとは言えないけど、まあ、私が邪魔になって排除、というわけではなかったのか……。良かった良かった。

「そうだね。もちろん仕組まれた物もあるけど、7~8ぐらいの事象が全て勘違いさせたいかの様に働いて…。特に大きかったのは2年のタイムラグだね。」

「そうかー。……あれから2年ねー。」

 

「それに、あの指輪。あれも大きかった。ずっとビンカさんの気配と誰かの気配が入れ替わっていたようで……。」

「指輪?もしかしてこれですか?」

 言ってアルシェが透明化された指輪をテーブルに置いた。

「これは?」

「持ち主のステータスを入れ替える指輪。」

「何でそんな事を…。単純に気配を消すだけであればこんな間違いは起こらなかったかもしれないのに……。あいた!」

「まあ私達にも色々あったのよ。」

「え?何?僕、何で殴られたの?」

「娘達の顔を見れば何で殴られたか、分かるでしょ?」

 …………。

 割と察しはいい子の様だ。ちょっとばつ悪そうに額を叩くつかさ。

「すみません。…あの、…話を続けますね……。」

 ……………。

 

 ………。

「はー……。なるほどねー。」

 それで私がナザリック勢と戦うと……。私を大切に思って、か……。

「ビンカさん!」

 おおう……つかさの急な大声…。

「何?」

「今回の作戦の為には貴女に何としても、遺恨を収めて欲しいんだ!この通り……。」

 頭を上げて、と言おうとした私を制して、レイナースがつかさの胸倉を掴んだ。

「貴女はいったいどちら側の人間だ?」

「そうだねー。勘違いとはいえママを何度殺したんだ?それを許せ?」

 クレマンティーヌがスティレットの先を弾きながら言う。

「そうね。私達を殺したのはまあ、良いとして……。お母さんを泣かせたのは許せない!」

 アルシェ達は私の状況を虫の知らせのように感じていたようだ……。

「君達の怒りは分かる!でも勘違いと、すれ違い、そして仕組まれた事だったんだ!」

「それは分かった。だったら何故本人が現れて謝罪しないのか!?」

「いや、本人は直接会って謝りたいと言っていたんだ!僕がそれを止めた!」

「何故!!?」

 レイナースがつかさの首を締め上げる。

「アインズさんがビンカさんを本当に大切に思っているからだよ!」

 意味が分からない。首を傾げて締め上げる手を緩めるレイナース。

「大切に思うが故、ビンカさんの拒絶をあの人は非常に恐れている。実際、全ての疑惑が晴れた後、ビンカさんに差し出した手をビンカさんは無意識に拒絶した。」

 あー、何か、ボーっとだけど………覚えがある…。

「事態は前後するけれど、アインズさんは絶望のオーラを止める事が出来なかった。今度また、そんなことが発生しないとも限らない。最悪の状態は極力避けなければならないんだ!」

「それだとしても……。」

 

「ビンカさん。」

 突然、室内に低い男の声が反響した。

「すまない。」

 この声、忘れもしないモモンガ…、アインズさん。

「この通りだ、と言ってもこちらの姿は見えんか…。」

「………。」

「それに、レイナース、アルシェ。許して欲しい。私はビンカさんが穢されたと思って、その怒りに衝き動かされていた。」

 この声はメッセージドールが出しているのか?何処に…。

「………。」

 …!!!

 サイドボードの中にそれはあった。

 ………………。

「「「「ぶははははは………!!!」」」」

 ず、ずるいぞつかちゃん!!

 こんな小ネタ仕掛けてくるなんて!!!

「な、……何で?」

 突然の爆笑にうろたえるだけのアインズさん。

 アインズさん、まさか、自分の今使ってるメッセージドール見えてないの?

 は、お腹が……よじれる……!

「お、おい、つかさ、これは一体どういうことだ?」

 少し怒気をはらんで言うアインズさん。

「ごめんなさい。」

 つかさがサイドボードに入っていたメッセージドールを取り出す。

 でっかい福助人形だった。

「ぶはははは!」

 アインズさんは5秒程笑った後、

「つかさ、後でぶっ飛ばす!」

 少し憮然としたアインズさんの声。

「まあ、分かったよ。私が誤解を招いた責任もあるし、皆にも謝ってくれたし、私はもう許す。遺恨も残さない。」

「本当に許してくれるんですか?」

「そ、その顔、止めて!ぶはは…、つかさ!近づけんな!!ぶっ飛ばすぞ!!ただ、殺されるのは何度死ぬ思いしても慣れるもんじゃないからトラウマってるかもしれない。会ってビクつく事があっても許してね?」

「ああ、もちろんだ!」

 

「ま、まあ、何と言うか、シリアスな雰囲気もぶっ飛ばされちゃったしねー。皆はどう?」

「母様が許されるなら、私に…くくく…。」

 割と笑い上戸のレイナース。

「反則!そのステキに渋い声にその人形は反則!!……あははは……。」

 アルシェもコチョコチョには弱いタイプだ。

「あのさー、そう言えばさー、何か、私だけ謝ってもらってないんだよね……。」

「……………。」

 ………………。

 いや、色々な意味で勇者だな、クレマンティーヌ。あの福助人形と睨み合ってるよ。

「さて…。」

「さてじゃねーよ!」

「いや、お前の事は殺してないだろ?」

「ひとおもいに殺されるよりひどい目にあわせてるだろうが!」

「そうだったか?」

「忘れてんじゃねーよ!」

「そう言えばビンカさん、エ・ランテルで死者の軍勢(アンデスアーミー)を展開したのは貴女の差し金だったんですか?」

「ん?何のこと?」

 ?となっている私にレイナースがこそっと耳打ちしてくれた。

「ああ、アレね。逆、逆。あれってクレマンティーヌがボコボコにされて逃げてきた後、私達と出会ったんだ。」

「そうだったんですね。ビンカさんはああいう事はする人ではないと…、彼女が付いていた事も私が勘違いする一因で……。」

「つまりまたお前のせいか!クレマンティーヌ!!」

 クレマンティーヌに殴りかかるレイナース。

「いや、私悪くないだろ!」

 応戦するクレマンティーヌ。

「悪いことするから、わざわいを招くんだ!」

「二人ともこんな所で喧嘩は止めて!」

 姉妹喧嘩が始まった。

 

「そう言えば、つかちゃん、良くこの場面で福助人形使おうと思ったね。ヘタしたら私等へそまげて最悪のパターンになるとか考えなかった?」

「そうだ。私も今落ち着いて考えるとかなりの冒険だったと思うぞ。」

 と、アインズさん。既にメッセージドールにはテーブルクロスをかぶせてある。 

「一応人形は3体用意してありました。」

 言ってつかさはアインズさんのミニチュア__良く出来てる。後で貰おう。__と、単なるスピーカーを差し出した。

「僕はネムから貴女の話を聞いていたので、状況が整えばこの人形が最も効果を発揮すると思ったんです。」

「ん?私をてことはあの子、私をプレイヤーと見抜いていたの?」

 ただ者じゃないとは思ってたけど…。

「まさか。でも、ビンカさんがキーマンである事は見抜いていたよ。貴女を落とせば万事上手くいくだろうと言ってた。」

「こわっ!あんな無垢な笑顔でそんな事考えてたの?」

 私、あんまり仕事の話とか口を挟んでなかったのに……。

「僕も何度も驚かされたんだけどね…。で、ネムの話を思い出して、レイナースさんやアルシェさんを見て、話して、ベストなタイミングでアインズさんに振ったんだ。」

「そうか。でも、お前をぶっ飛ばす事は決定事項だからな。」

 いい声で言うアインズさん。

「……え?」

「え?じゃねーよ!俺の一世一代の謝罪が爆笑って!俺の繊細なハートが砕けそうだったぞ!!」

心臓掌握(グラスプハート)を掛けられる。いつもと逆の立場と言うことですね?」

「上手いこと言ってんじゃねーよ!てか俺、心臓ねーし!」

「初めに言ったのはアインズさんなのに……。」

 あはは…。

 なんだか、笑えて来た。やっぱ笑うって人の荒んだ心も溶かすよね…。

 二人も笑っている私を見て笑顔だ。アインズさんはここには居ないし、骸骨だから判んないだろうけど…。

 でも、そういう意味ではつかちゃんの判断は最高だったのかな。

「あー、何か、この感じ、懐かしいね、モモ…アインズさん。」

「ああ。そうですね。私もそれ、思ってました。」

 

 と、アインズさんが何やらもごもご言い始めた。

 問い詰めると……。

「あの、ビンカさんの部屋のレターケースの上から二番目……。」

 さーーーーーーーーー………。

 うっわ、血の気が引いた。

「何?まさか、見た……?」

「はい。」

「ふっざけんな!何見てんだよ!!」

「え?あれ?だって見ろって……。」

「いやいやいやいや!普通、私が死んでからでしょ!!」

「いやだって、俺、ビンカさんの葬式出てますし…。」

「……は?」

 ………意味分からない…。

「2年前に。有志の皆のお香典を持って。行きましたよ。」

 そうだね、そう言えばリアルで私、死んでるんだったね……。

「……遺影は?」

「はい。笑顔が可愛かったですよ。」

 素直に嬉しい。けど…。

「棺の中とかは?」

「………。」

「うっわ、見たんだ!!だから来ないでって言ったのにーー!!」

「大丈夫!包帯とかで分からなくなってましたから。」

「……ホント?」

「……………。」

「うわーん!あほーー!!」

「ちょっと、アインズさん!上手くいきそうだったのに、何ちゃぶ台ひっくり返してくれちゃってるんですか!!」

 つかさが私の背中を撫でる。3人娘も意味は分からないが私を泣かせたことでアインズさんを威嚇してる。

「いや、すまない。だってあんなこと書かれてたら普通に気になって……。」

「ゆうなーー!!もうその話は棺桶の中まで持って行って!!」

 いろいろな物がメッセージドールにボコボコぶつかる。

「えー…。」

「もうその話したら、あれだかんねっ!!ひどいからねっ!!!」

 あれか?私は遺言とかしちゃいけない人なのか?

 全ての遺言が私を責めさいなんでくるなんて………。

 

 まあ、そんなこんなはあったんだけど、……まあ、ちょっと再会時に顔を会わせ辛くなった程度だ。

 たいした事は無いはずだ。

 多分……。

 こんなことも、以前も良くあったし、まあ3日もすれば元通りになるだろう。

 それにその3日も、はたして安穏と過ごせるかどうか……。

 

 とにかく今はそんな事でアインズさんといがみ合ってる場合じゃないし。いや、私が一方的にいがんでるだけなんだけども…。

 本当なら全て忘れて楽しく歌って暮らしたいけど、知ってしまったらそうもいかないよね……。

 

 だったら、せめて、私の今後の寝覚めが悪くならないよう、頑張りましょうかね。

 新旧、仲間達と共に!

 

 

続く

 

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