こっからペース上がります!本当です!
では、どうぞ!
時は流れて翌日の夕方、僕達四人は再びリーンボックスの教会前にいた。
茜さんはなんか黒い袋を持っている。茜さんに中身を聞いたら、どうやら
ここの女神様に頼まれたものらしい。具体的には教えてくれなかった。
「まぁ、行こうか。」
少し茜さんの表情は重めだった。
何かを警戒しているように、神経を張りつめさせていた。
「これはこれは、よく来ましたな。」
「女神様直々の招待です、来ないわけにはいかないですよ。」
茜さんと職員のお爺さんが会話している中、僕達の前には料理が出された。
ご丁寧に「黒様」と書かれた札が料理の上に乗ってたり...僕ら結構丁重に扱われてないかな?ちょっと、かゆい...
「わー、おいしそうだね黒君!いっただっきまーす!」
「ネプテューヌさん、あかねぇを待ってからにしましょうよ...」
白が呆れて物も言えないみたいな表情をしているけど、
僕はその直後の茜さんの叫びと目の前で起きた出来事に絶句した。
「しまった、ねぷちゃん食べちゃだめ!」
「やだなー、いくら私でも流石に人の分は取らないって...うっ!?」
ネプテューヌさんが倒れたのだ。どうして?睡眠薬?いや違う、
ネプテューヌさんはいきなり倒れた。つまり...睡眠薬じゃない...?
だったら...だったら...
「それが答えなんだね、イヴォワールさん。」
「当然ですじゃ。悪魔信仰者は絶版にせねばなるまい。」
「残念だよ、美味しそうな料理だっただけに!」
茜さんは変身したけど、僕と白はそれに続けなかった。
目の前で起きた出来事を飲み込めず、ただただ恐れてた。
考えることも動くこともできず、何もできずに突っ立っていた。
そして僕は、首筋に強い電流を感じて、倒れたようだった。
ーーーーーーーーーー
「まさか、料理に混入させてくるとはね...」
警戒はしていたけど防ぎようもない方法を取ってくるとは思ってもみなかった。けど、服毒させるにはやはり食材に混入させるのが効率的なのは明白だった。それなのに、私はその可能性をあの料理を見てしばらくたっても思いつきさえしなかった。私の領域把握は視界内にあるものの情報を理解することができる能力。けど、必要な情報は私が意識しないと抽出できないし、情報量は対象を見てる時間に比例してくる。だから、毒の発見に気づいたのはねぷちゃんが倒れた後。完全に私のミスだ。黒君も白ちゃんもきっとあの光景はトラウマになってしまうだろう。嫌われるかもしれない。そしたらどうなるだろうか。旅は続けられるのだろうか。えー君の守った世界を、私が守ることはできなくなるのかもしれない。だったら...私はこれからどう生きていけばいいんだろう。えー君がいたから、私は今戦えている。戦う...何とだろうか。悪魔だろうか。違う、だって今えー君はここにいない。まだ帰って来ていない。だったら私は...今えー君がそばにいない私は...戦えているのだろうか。答えは出ないけど、きっと戦えてない。だって結果がこれだ。張りつめて警戒していたというのにこのざまだ。これでは笑われる。えー君に会う前の私の方が強かったのではないだろうか、とも思う。いっそ会わなかった方が......
「違う...」
えー君と会わなかったら、それはそのまま世界再編が起こることになる。どの道酷い世界じゃないか。だったら、えー君を知っている今の自分の方がいい。えー君を愛している自分のままでいい。絶対に届かないと知っていても、やっぱり断ち切れないのはもはや依存ともとれそうだけど、そばにいない状態を7年耐えていたら依存ではないと思う。けど、病気かな。いや、でもやっぱり依存だ。私の行動は、えー君ありきだ。この子達、黒君と白ちゃんと私の関係は教師と教え子だけではない。親友の、大事な友達の子供という関係だってある。本当は教えたい。君達はあの英雄の遺伝子を継いでいるんだよ。と。けど、それはブランちゃんが伝えるべきことだ。ブランちゃんの子だとわかったら、きっとえー君は迫害される。当然、それはその子供たちにも影響する。だから隠しているのだ。それを、理解できる年齢になるまでは。今伝えたらきっと二人とも怒る。真実を隠していたのだから当然だ。でも、知らない方がいい真実だってある。多分これはその分類に入るんじゃないかな。
「...辛いよ、えー君...」
きっとえー君なら、弱音なんて珍しいな。なんて言うだろうけど、私にとっては珍しくも何ともない。だってこっちが素の私。《深紅の閃光》とは程遠い、ただの女の子。
「もう嫌だよ、紅奈も、明も、えー君も、ねぷちゃんも...4人も私の知ってる人がいなくなっちゃうと、辛いよ...私は...一人で...どうすればいいの...?」
答える者は誰もいない。当然だ。ここは教会の地下の独房。私が見る限りでは、この檻は変身してもぶち破ることはできそうになかった。だから脱出は諦めてる。それ以外の方法なんて考える余裕なんてない。だって、どうすべきなのか、私はわからないのだから。けど、何か無いかとポケットの中を調べる。結果、ねぷちゃんに盛ったと思われる毒の瓶しか見つかんなかった。こんなの...自分で飲むしか用途が無いじゃん...
「...いけない、どうしてそんなこと考えたんだろ...」
冷静になってよ仙道茜。ここで毒を飲んだとしても死ねるわけではないし、死んだとしたらそれでえー君に会えるとも限らない。それに、そもそもえー君は死んだと決まったわけじゃない...そう、決まったわけではないのだ。だが、そんなことは誰も信じなどしない。えー君が生きてる事なんて、希望的観測だ。一番えー君が嫌った事じゃないか。だったら、現実に目を向けて、辛い世界に生きるか。それも嫌だ。えー君のいない世界はもう私には想像できない。結局、私に残された選択肢は、この毒を一杯ひっかけることくらいだった。
「は、はは...まさか、二回目は自殺か...けど、もういいよね...いい加減、会いたいよ...ごめんね黒君白ちゃん、私は、もう、限界かな...」
蓋を開ける。無臭だった。瓶を持つ手が震える。当然だ。死ぬのは怖い。
けど、ここでやめても何も変わらない。変わらないのだ。そう信じ込んでないと、これは飲めない。だけど...
「何をしていますの、茜ちゃん。」
私は、独房の外から聞こえたこの声を聞いた時、ある種の救いを得たのだった。
毒の瓶は床に落ち、割れて床を毒が濡らした。黒君白ちゃんにはかかってない。
そのことを確認したとき、私は私になった。
「ベール...私、私は...!」
泣いた。もう、何年かぶりに泣いた。支離滅裂な言葉で、子供のように泣きじゃくりながらベールにことのあらましを説明して、ひと通り話したあと、また泣き喚いた。よく黒君も白ちゃんも起きなかったな、とも思ったけど、けど...この瞬間に、私は少し、楽になれた。
「そうでしたの...大変でしたわね...さぁ、わたくしの部屋へどうぞ。」
だって、私の抱えた辛さを共有してくれる人がいたのだから。
次回、第25話「解毒のために」
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