キラーツヴァイと呼ばれた機械が僕達三人を相手取る。それだけならまだなんとかなっている。白の電撃魔法と僕の加速魔法、そして単騎でとても強い母さん...正直言って身構えていた僕達が馬鹿らしく思えてきた。
「やっぱりかー。50%で不利という見立ては正しかったわけだ。じゃあ80まで上げよう...」
途端に敵の動きが鋭くなった。なるほど小手調べってわけだったのか...
「馬鹿にして...!」
白がさっきから傍観しかしていないこの敵を連れてきた女性に魔法を打ち込む。
「ん、意外とまだ余裕あるんだね...」
が、それはバリアのようなもので防がれる。
「まぁいいか。君たちはツヴァイにやられるんだし。別に私が手を下さなくても、ね。」
「何を...!」
僕が肉薄する。女性は動かない。
──もらった...!
「はぁ...ツヴァイ、テールブレード。」
その一言で僕の背筋に寒気が走った。
母さんと白を相手取っていたキラーツヴァイの尾と思しき部分のブレードが真っ先に僕に向かってくる。今から回避行動を取っても避けられない。
「お兄ちゃん!」
白の悲痛な声が響く。
──あぁ、こんな簡単に終わるんだな...
目を瞑ってそれを受け入れる準備をしてしまう。そう、僕はここで終わるんだ...
でも、終わりなんてしなかった。
「全く...危なっかしいわね...冷静かと思ったら、やっぱり父親譲りの無茶体質なんだから...」
その声の主は僕に迫り来る金属の塊を切り落とし、僕を少し安全な場所まで移動させてくれた。
「ノワールさん...?」
「そうよ。他に誰だと思うのよ。」
この受け答えは間違いなくノワールさんだ。
「ですよね...でも、どうしてここに...!?」
次の瞬間には、別の方向から雪が跳ね上がった。
「ふふふ...やはり急造の3vs1では連携に穴があるな...だが、ここまで私を誘導できたのは賞賛に値しよう、女神達よ。」
跳ね上がった方向の地面を見ると、そこにはネプテューヌさんとベールさんがいて、空中で茜さんが父さんに攻撃を仕掛けていた。
「私は女神じゃないけどね...!これで決めるよえー君!準備してよね!」
「来るか茜...なれば来い...!」
「《緋十文字・紅桜》!」
茜さんの深い二回の斬撃が父さんを捉えた。確実な攻撃だった。けど、黒剣を破壊しただけに過ぎなかった。
「めちゃくちゃね...黒、細かいことは後にして。とりあえずまずはキラーマシンを潰すわよ!」
「あ、はい!」
「そうは行かないなぁ...」
僕とノワールさんの前に立ちはだかる女性。鎌を携え、キラーマシンを従えている。それだけでなく、僕の全感覚が告げている。この人は危険だと。
「数も質も揃えられるのは本意ではないよ...それに君たちが加勢するまでもなくキラーツヴァイはやられるさ。だから...私が出るんだよ。」
鎌を構え、僕達に向かってくる。
「下がりなさい黒!冗談抜きで、天界救世の時に感じた悪意と同じ物を感じる...!」
「え...!?」
半ば強引にノワールさんは僕を離脱させ、二刀流をもって鎌の女性と鍔迫り合いをしている。
あのノワールさんをしてそう思わせるのはとても怖いと思った。それほどの悪意。
「ククク...愉しませてよ、姉さんに勝ったその実力をもってねぇ!」
──裁きはまだ、終わりそうにない。
次回、第33話「裁き(後編)」
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