チートでポケモンのトレーナーらしい   作:楯樰

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ナツメちゃんのターン!


閑話・エスパー少女の欣快(きんかい)

「よ、ようやく着いたぁ……」

「よ、良かったぁ……もう死ぬ」

 

目の前の暗闇の中、暖かい光を発している看板を見つけ、ほっと一息する。

 

そう、私とエリカは少ない道のりながら一緒に旅に出ていた。

私たちは今年で13歳になる。

そのため、同期のスクールの子達とは違い、少々遅れた旅。

 

「早く、……宿を取って寝ましょう?」

「……うん」

 

ヤマブキシティの東ゲートから出発し、シオンタウンを通り過ぎ。海の上に掛かる木板の道をずーっと歩いて。

時たま襲い掛かってくるポケモンを追い払い、勝負を仕掛けてくるイチャイチャとしているカップル(イラッとくる)や、鳥使いのお兄さん達を倒して。

集会を開いていた暴走族に気をつけながら、ようやくセキチクシティにたどり着いた時間は既に日の暮れた夜中。

おかげで連戦に連戦を重ねたケーシィだったあの子はユンゲラーに進化。更に進化させる方法を知っていた私は、エリカと一時的にユンゲラーを交換し、ユンゲラーはフーディンに進化。

お父さんから旅の餞別に、と受け取ったバリヤードもかなり育った。

 

此処最近嫌な予感がしていたのが、ぱたりと旅に出た途端に無くなり、少し安心している。

 

「あ、そうだ。お父さんとお母さんに連絡しないと……」

「あ、そうでした。あの父うるさいですから……早くしないと旅を止めさせられる!」

 

エリカは急いで無料電話ボックスの所に向かった。

 

私も夜勤のジョーイさんに今日の宿泊をお願いし、電話を家に掛ける。

 

コールの四回目で繋がった。

 

「もしもし、ナツメです」

『あ、ナツメ! その様子だとセキチクには着いたの?』

「うん。ちょっと遅くなっちゃったけど。お父さんは?」

『うーん……ちょっと、ね? 今日、困った事があって…』

 

お母さんが電話越しで言い淀むのがわかる。

 

『んん……詳しくはお父さんから聞いた方がいいかも。ちょっとその前にお母さんから一言。……良かったわね、ナツメ』

「う、うん……?」

 

よく分からなかった。

優しくお母さんは笑って言った。

なんでこんな事言われたんだろ?

 

電話からお母さんが離れて、お父さんが、うんうんと唸りながら出た。

『ナツメ』

「……お父さん。お母さんが、良かったねって言ってたのってどういう事なの?」

『……ユンゲラーが交換進化で進化する事を教えたよな』

「う、うん……」

 

話の内容は全然脈絡が無い。でも関係する事なのだろう。そう思ってちゃんと耳を傾ける。

『ユンゲラーのような交換進化の中でも……何か特別な道具を持たせてやる事で進化するポケモンが居るって言うのは、いつか一緒に雑誌で見たよな?』

「うん……」

何故かお父さんの声を聞いてドキリとする。

 

『その事を発表したのがまだ十歳にもなって居なかった子供だって言う事も……』

「……うん」

『今日、その子が来た。妙に子供っぽくなく、でも子供らしさの残る子が』

「……」

『なんでも……ナツメ、お前との約束を守りに来たらしくてな。……私も思い返せばあんな子が一度家に来た記憶がある』

 

……。

 

『彼の名前は――トウカ、というそうだ』

 

……しばらく頭の中は真っ白になっていた。

でも、夢じゃないって事に気がついた。

 

『……お前が本来ニ年掛かるはずの超能力が一年で制御出来るようになったのは、遊びに来たあの子のおかげ、とお母さんに言っていたそうだが……』

 

でも、それでも。

彼の事を話すお父さんの話は聞こえてなかった。

 

ただ嬉しくて。

ただ会いたくて。

そんな風に嬉しい気持ちと切ない気持ちで胸は一杯になっていた。

 

「あは……はは、よかった。良かったよぉ……」

 

人目も憚らず、私は受話器を持ったまま床に座りこんで泣いた。

 

-------------------------

 

あの後、周りの状況に気がついた私は、エリカに慰められながら、借りた部屋で俯いていた。

幾ら嬉しかったからって、私……。

「うぅ……はずかし…」

「はいはい。でも良かったじゃないですか。……思い人がちゃ~んと約束覚えてくれてて」

「もうっ!」

エリカに向かって手元にあった枕を投げるが、難なくかわされる

うぅ……顔真っ赤だ。

でも嬉しいのか恥ずかしいのか分かんない。

……どっちもだろうけど!

「エリカ酷い…」

「酷くて結構。私なんてお嬢様ってだけで好きな人なんて簡単に作れないのに……」

「ぅぁ……ご、ごめん。いや、ごめんなさい……」

ついカッとなって言っちゃったけどエリカは、私とは立場が違う。

お嬢様で、もしかすると将来好きな相手と結婚なんて、出来ない可能性の方が大きい。

コレは、私が悪い……。

「ふふふ……傷ついたぁー! ナツメのバーカ! ナツメの乙女ー!」

「なっ…!」

人が悪いかな、って思ってると、こ奴は笑って枕を投げ返してくる。

 

咄嗟の事で避けられず私の顔面にジャストミート。

「……ぃたたた。やったなエリカぁ!」

「キャー!」

今度は私の番、念力で枕二つを変速軌道で足にぶつけてやる。

 

そんな二人の枕投げは、隣の部屋から苦情が来るまで続いた。

そして疲れた私たちは、明日のサファリゾーンがどんなものか期待しながら眠りに着いた。

 

-------------------------

 

――少し、違う夢を見た。

 

再会の夢。

 

私は笑って抱きついている。

 

彼は嬉しそうに笑っていた。

 

寂しさはない。

 

あるのは再会への期待。

 

願わくばこの夢が醒めませんように。

 

願わくばこの夢は現実になりますように。

 

会いたいです――トウカ君。




やばい、泣いていいですか。
こんな内容書いてる俺は鬼なのかと。
書いてる途中でどんだけ泣きたくなってきたか……。
早く会わせたい。
でもまだ会わせられない。
……死にたい。
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