早朝、起きてすぐ胡坐を組む。
日課である瞑想だ。
頭の中を空っぽにして、意識を内側に。
そして無を考え、無を知り、無に近づけ、無に身を任せる。
早速訳の分からない事をしているが、コレでも何かしらの効果がある。
何故なら己が努力は実を結ぶから。
そう、神さまの手によって与えられた特殊な能力によって。
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本来俺には超能力と言うものは備わって居ない。……いや、正確には違う。超能力と言う才能が眠っていた。
それを開花させるために行ったのがスプーン曲げという努力。
本来ならば曲がるはずの無いそれを、三日で拙いながらも可能にした。
0の状態からと考えればこの神さまに与えられた能力と言うのは凄まじいものなのだろう。
なんせ無から有を生み出してるのだから。
だがそんな事は神でも無い限り無理な話。
では本当の所はどうなのかと言われたら、だ。
努力すれば実を結ぶ。
成功した人間が良く言う言葉だが実際、それを言うのが才能を持った人間。
才能と言っても様々だが、俺については人間が出来る可能性の全てが自分に宿っていると言う事だった。
だから俺は創造の中の人間と同じ。
この身は主人公であり脇役である。
俺に出来ない事は人間と言う可能性の限界。
だから作ろうと思えば女性しか乗れない小型ロボット宇宙スーツだとか、不老不死の薬を作る事も出来るというわけだ。
もっと例を挙げるならば、休載期間の長い漫画に出てくる能力『念』。
あれもやろうと思えば出来るし、人間讃歌で有名な波紋、幽波紋、黄金の回転も出来ない事は無い。
……こんな事言ってる自分キショイとか思ってるけど、今は気にしない方向で。
ともかくだ。
有限ながら無限に近い可能性があるこの身でも出来ない事がいくつか。
それは……
「もうお願いします、ホント勘弁して下さい……」
「いやいや、まだ見てもらわんとアカンで! なんせ他地方の可愛いポケモンの雑誌なんてそうそう手に入らんからな!」
コイツ、ポケモンマニア……ならぬポケモンオタクのマサキ。
コイツだけは全人類の可能性を持ってしても止めれなかった。
優秀なはずなのに残念っ!
……確かに可愛いのは認めよう。
だがそれは、俺が今生と前世含めて十五年くらい前に通り過ぎたのだと言ってやりたい。……ゲーム的な意味で。
「ほれ、このグレイシアなんて見てみ? めっちゃ可愛いやろ!?」
「いや、もう……お前マジでぇええええ」
「まぁまぁそんなケチ臭いこと言わんでも! ……これ! コレなんか可愛いと思わんかっ!」
「だからぁあああああ!」
そろそろ俺のライフはゼロになりそうだ。
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「ふぅ……いやぁ、スマン。つい興奮してもうた」
「あ、もう、はい……。――気づいてんなら止めろよコンチクショウ…」
「……ん? 何か言うたか?」
「いや、何にも……」
俺を着せ替え人形にしようとする輩(研究室の大馬鹿共、主に女研究員!)から、適当な理由を付けて逃げるのに丁度良かったのがコイツの所である。
コイツが俺を呼び出したのは数日前。
『いいから来い!』
という電話が大学の方に掛かり、研究室のアイツ等が伝言で伝えてくれたわけだ。
コレ幸いと、ソレを思い出し向かったのがハナダの郊外。
玄関の扉を開け、するとそこにはゴミの山。
俺の第一声は、お前は掃除をしないのか。
年上だとか関係ない。
ゴミ収集所まで行くのが面倒くさい、とのたまうコイツを駆りだし、ゴミを家の外に出した。
ゴミの処理は、ピカチュウと熱々カップル二人に任せて俺は家の中に。
ただしそこからが地獄だった。
見せてくれるポケモンの雑誌。
有名なカメラマンが撮ったイーブイだとかの可愛いポケモンの写真。
確かに可愛い。
抱きしめてもふもふしたくなる。
特にあのイーブイの尻尾だとか首のふさふさだとか。
いや、ミュウのあどけないあの表情に比べたら……劣りもしないか。
んんっ……言いたい事は、まぁ確かに可愛いポケモンは可愛いという事だ。
ただし、その閲覧会が五時間超と続いたら話は別。
一時間目ではまだ大丈夫。
二時間目ではコップで水を一杯。
三時面目で既に目は虚ろ。
四時間目、思考の放棄。
そして五時間目では一瞬、人間の知り合いには秘密にしていた超能力使って黙らせようかと、強行手段を講じようとしていた。
……そして、ついにはポケモン預かりシステムの第一人者のソネザキ・マサキを「お前」呼び。
コイツに年長者としての尊敬の念は無い。
「……はぁ…。で、何の用なのさマサキ君」
「エライ態度変わったな。……じゃ、本題に入ろうか。コレを運んでもらいたいんや」
「なんで俺なの?」
「いや、おもしろそ……ってやめぇ! 腕振りかぶるな!」
ミュウの寝顔を思い出しもちつく。
「……で?」
「いや、恐いわ……うん、お兄さんトウカ君が怖い!」
――このヤロウ。
「……わかった。ごめん、もうしないから。だからお願いや、その手をゆっくり降ろしてぇ!?」
再び二匹のミュウの寝顔(ry。
「ふぅ……で、マサキ君。懇切丁寧、簡単明瞭に説明貰える?」
「顔笑ってるけど目が笑ってない……なんちゅう器用な」
しつこいな、コイツ。
「あ、うー悪い! えー……お前さん、他の地方に行きたくないか?」
「――詳しく」
腰に捻りを加えて、引いていた拳を元に戻す。
「う、うん。こないな化け物プログラムを通信で飛ばすわけにもイカンから、手渡しで渡してきて貰おう思うて。一応行く手段は有んねんけど……でもワシよりお前さんのような、トレーナーとしても将来優秀な奴が行った方がために為るかと思ーてな? それでコレ。……このポケモン預かりシステムの根本であるプログラムを渡して着て貰おうと……どうや?」
「……それは何処と何処を巡る予定?」
「ホウエン、シンオウと行って海外のイッシュ。……何処も、此処カントーでは会えないポケモンばかりやで?」
フフン、と鼻を鳴らすマサキは非常に悪い顔。
しかしながら……非常に魅力的な話だ。
ナツメちゃんと再会は出来て無いけど……もうちょっと我慢しよう。
帰ってくる頃には旅は終わってるだろうし。
……行こうか。
「よし、研究室の奴らは置いt「あー、スマン。お前さんとこの全員分のチケット取ってしもうた」……嘘」
かぶせるように言ってきたマサキに少し俺は殺意が湧いた。
……チクショウめ。コイツ始めから俺の研究室の奴らもろともつれて行こうという魂胆か。
「はぁ……わかった。何時から?」
「一週間後。ほい、頼むで」
渡してきた大容量メモリースティックを三つ受け取る。
「言わんでも分かると思うけど気を付けて持って行ってな。じゃ、話も終わった事やし……さっきの続きを」
「結構です。それではさようならマサキ君」
「うわ、ちょ、待ちー!」
ポケットに無骨な形をした三つのソレを突っ込んで、マサキの叫び声をBGMにしてさっさと外に出る。
既に夕暮れ。
遊んでいた……というか修行していたピカチュウ、ロコンガーディの三匹と、メタモン姿のミュウ二匹をボールに戻す。
そしてハナダの中心街に向かうショートカットを通って人目の着かない所へ行き、最近出来るようになったのテレポートでヤマブキシティの自宅前へと消え去った。
※注・主人公もチートです。
関西の方ごめんなさい。
コガネ弁と言う事で許してください。