カナズミシティ、公共バトルフィールド。
公園に隣接するそこに俺とダイゴさんはいた。
「――さて、ルールはどうする?」
「シングル3v3でお願いします」
「了解。おいでメタング」
ダイゴさんはボールからメタングを繰り出す。
彼の最終進化系のメタグロスにはお世話になったものだ。
たしかルビーで最後技PPが切れて悪あがきで倒したなぁ……。
いやいや、今はバトル。古い思い出に浸ってる場合じゃない。
集中集中。
「まぁ、此処は妥当に……」
ロコン辺りか。
……行ける?
『良いですよマスター。ガーディが行ってひんしになるくらいならわたしが出ます』
『あるじぃ、嫁が酷い……』
知らんがな。惚気んな。
というか嫁呼び止めろ。
『……そんな、嫁だなんて……』
ほらぁ、ロコンの奴照れて使い物にならなくなるじゃん。
おーい、ロコーン。
『な、なんですかマスター。あ、そうですね! 私行きます!』
一応復活したロコンを外に出す。
特性日照りのせいで少し気温が高くなる。
「へー……それが君の。ちょっとロコン顔が赤くないかい?」
「気のせいじゃないですか?」
『……嫁呼びだなんて……恥ずかしい』
訂正。まだ復活しきれて無いみたいだ。
「じゃ、始めようか……メタング! 影分身!」
「な……!」
『に、二体になった……』
まさかの初っ端で変化わざ。
それも「当たらなければどうと言う事は無い」でお馴染みの影分身。
ロコンも驚いたようで正気に戻った。
いやはや流石チャンピオン。一筋縄ではいかないな。
現在、メタングの姿は二つ。
ゲームと違い、当たる確率も本来の二分の一になってそうだ。
ただ、それも
――熱風だ、ロコン。
『熱風!』
メタングの居た場所を中心に熱い風が起こる。
「指示がない!? メタング、高速移動で逃げろ!」
影分身は消えるが、本体は高速移動で安全圏へと逃げる。
が、それも一歩及ばず。
範囲から逃げる前に墜落し、戦闘不能になった。
うん? んん?
そんなに火力が高かったか、今の。
『マスター? それなりに威力高いんですよ、熱風って』
いや、うん……ダブル用になったら威力落ちるというか……
『え、ピカチュウさんが教えてくれたのがこれなんですけど』
……ピカチュウの仕業か。
「……戻れメタング。……それにしても……良く育てられてるし、信頼関係も固い様だ」
「いや、まぁ程ほどに」
「少し本気出さないと負けるかも、ね。――行って来い、ボスゴドラ」
「は?」
思わず声を上げてしまった。
目の前には彼、ダイゴを覆い隠すように立つ怪獣。
「え……」
ロコンとは一回りどころか十回りくらい違うボスゴドラが居た。
「驚いたかい? コイツはボスゴドラと言ってね。僕がトウカ君よりも小さい時にココドラ……進化する前に捕まえたお気に入りなんだけどね」
「……はぁ」
「さっきのメタングも僕の好きなポケモンさ。……だからこれからちょっと敵討ちみたくなるから、先に謝っとく……地震だボスゴドラ」
「はぁ?!」
いやいや驚いてる暇ない!
ロコン、何とかして避けて!
『え、えぇっ?! そんな無茶ぶり……』
返事がある間もなくロコンは揺らされて転び、土ぼこりで身体を汚す。
地震が収まった頃には、既にロコンは目を回し気絶していた。
……ちょっと待ってよ。
ダイゴさん容赦ないな!?
あぁうん。分からないでも無いけども。
「えっと……もしかしなくともダイゴさん怒ってます?」
「……ちょっぴりね。まさか進化して無いポケモンにやられるなんて思っても無かったから」
あはは……どうしよう。
多分あれだ。自分の見誤りでやつあたりされてる。
理不尽だけど……ちょっと気持ちが分かるからこっちも怒れない。
『私が行こうか?』
いや、うん。一番良いのはピカチュウだろう。
でも……ロコンの仇はガーディに頼むか。
「……ガーディよろしく」
『よくもロコンをォ!』
出して早々威嚇を始めるガーディ。
いや、だからお前“せいぎのこころ”だろうが。
なんで威嚇してんの?
『私は知らないからな。これはホントだぞ?』
……あ、そうなんだ。
「それがカントーのポケモンか。確か鋼タイプはそっちには居なかったと思うんだけど……なんで炎が弱点って知ってるのかな?」
ガーディの姿を見たダイゴさんが不思議そうに尋ねてくる。
あーどうしたものか。
ゲームやってて知ってました、なんて言えないし。
此処は無難に子供名探偵の常套句を使わせて貰おう。
「いや、雑誌で見ただけですよ」
「そうかい? いや、気にしても仕方ないか」
さて、こんな事してる場合じゃない。
早くガーディに指示を出すべきだ。
「……いけ、ガーディ!」
ただちゃんと聞いてくれそうになさそうだし。
うーん……ニトロチャージしつつもらいび発動させて、特殊系炎技で!
『了解だ主ィ! ロコンの仇ぃッ!』
ガーディは炎を身に纏い、口の中で青白い炎を燃やして走り出す。
さながらその速さは、かつての高速移動並みに早い。
そして地を蹴る力は、以前よりも力強かった。
そんなガーディの接近を堂々たる様子で構えるボスゴドラ。
「ボスゴドラ……カウンターでドラゴンクローだ…!」
ガーディが当たると思われた瞬間、ボスゴドラは腕に力を溜めて前方でクロスさせる。
炎タイプの赤い炎とは違い、蒼紅の炎がボスゴドラの爪から舞い上がった。
『突っ込まずに大文字だァ!』
しかし、ガーディはその一寸先で止まり、ゼロ距離からの大文字。
威力120の約3.34倍。
単純計算でも威力360を優に超える。
ボスゴドラは隙だらけの状態でまともにくらい、大の字の青い炎で火傷の痕を残して前に倒れた。
ガーディのレベル、ボスゴドラの特殊防御力の低さも相まってなんとか倒せたようだ。
にしてもステータス低く無いだろうか。……気のせいかな。
『うぐぅ……もう限界。ごめん主、もう無理だ。仇はとれたけど……』
ただ本当になんとかしてガーディは倒したらしく、ガーディもその場に伏せた。
「……まさか僕のボスゴドラがやられるなんて……」
「謝りませんよ。こっちも仇討ちなんですから」
ダイゴさんはボスゴドラがやられた事に驚愕している。
俺もしてるから仕方ないけど。
指示出したのは俺だけど、もらいび発動と他の技の発動を同時にするのは少し無理があったみたいだ。
それを無理やり成功させるのは才能とロコンへの愛ゆえだな。
「戻れボスゴドラ。……それにしてもこんなに強いトレーナーは久しぶりだ」
「戻れガーディ。……そうですかね?」
なんだかダイゴさんの怒りも一周して沈静化したようだ。
「いや、確かに君は強い。謙遜するのはいいけど余りしすぎると失礼になるぞ?」
「まぁ、素直に受け取っときます。……にしてもギャラリーが増えてきましたね」
見渡せば人が結構集まってきている。
「あぁホントだ。……ちょっとやり辛いな」
「確かに……」
なんか辛いな、これ。
見世物にされてる気分だ。
「はー……なんだかちょっと気分が乗らないな……どうする、続ける?」
「ちょっと辛いですけど……やると言うならやりますよ?」
「ははは……でも次、さっきのより強い子が来るんだろう?」
「まぁ――……バグが少々」
ホントにステータス狂ってる子が一人。
『誰がバグだ! 私は私だぞご主人!』
はいはい、分かっております。
『生返事! 絶対分かって無い!』
よし、ピカチュウは無視。
ダイゴさんと話が進まん。
まだカタカタ言ってるけど気にしない!
「……で、どうします? 丁度引き分けてますし次回に持ち越しと言うのは」
「なるほど、それも一つか。……正直な所今のままだと勝てる気がしないんだよ」
「え……」
チャンピオンが……?
いや、ちょっと待て待て。
「……もしかしてダイゴさんってチャンピオンじゃないんですか?」
「え? そんな訳無いじゃないか! ……というかどうしたらそんな話が飛躍するんだ!?」
「あ、聞かなかった事にして下さい……」
「えー……」
チャンピオンじゃなかったのか。
うわぁ…………俺、勘違いしてた。
なにさ、負けるって思いながらやってたのに……。
「トウカ君って結構あれだよね。自分勝手と言うか、奔放というか」
「あ、あはは…………初めて言われました」
「へぇ、そうなんだ……」
なんかグサッときた。
ちょっと自覚してるから尚痛い。
「……とりあえず今日はお開きにしよう。……皆さん終わりです! またの機会に!」
ダイゴさんが観客皆に見えるように手を振って人を散らす。
「終わりか……凄かったな、あの少年」
「あぁ、あのダイゴ君と対等にやりあえるだなんて……」
「こりゃあ、あのツツジちゃんよりも強いかもしれん」
「あのポケモン何処で捕まえたのかしらね…………ゲットしたら私もダイゴ君に勝てるかも!」
「――……」
「……」
色々と話しながら皆去って行く。
ちょっと恥ずかしいな、噂されるのって。
博士君って噂されるのとはちょっと違う恥ずかしさだ。
ギャラリーが消えて少しした後。
「ふぅー……楽しかったよ。今度するときは決着付けようじゃないか、トウカ君」
ダイゴさんが近づいて来て手をす。
「あー、はい。……今度は白黒つけましょう。ダイゴさん」
手を握り、握り返され、未来のチャンピオンとのバトルはお流れとなった。
今回もツッコミどころ満載、第二回バトル回。
ダイゴさんの口調が変わったり、色々。
無理やりな気が……いや、現実故に根性論が通じると言う事にして下さい。
作者は持ち前の貧乏性が発揮して、全シリーズ共通してPP回復系が勿体無くて使えない。
あるある……え、ない?
P.S.
ダイゴさん手持ち、
メタングLv42
ボスゴドラLv44
エアームドLv43(出番無し)
でした。
エメラルド共闘基準です。
ただ技については一部変えてます。