何時ものこと故、許して下され。
わいわい、がやがやと過ごした慰安旅行も終わり。
そして残りの一ヶ月、各々の満足がいくように研究調査は再開された。
一ヶ月間の成果で言えば、拠点周辺のポケモンについてと、流星の滝のポケモンについて。
流石にソルロックやルナトーンについての発生元は判らなかったが、弱点や個体技能についてはそこそこに判り、我々研究員の探求欲はひとまず満たされた。
だが、流星の滝奥地。滝の上に生息するポケモンについてはレベルが総じて高く、残念ながら研究員のポケモンのレベルが低いがために、捕まえる事は出来なかった。そのために生息するポケモンは現在不明なままだ。
そのため個人的に捕まえたかったポケモン。あそこの奥地の最奥に生息するタツベイは、研究員の「危険です!」という声によって断念させられ、研究室の端っこでズーンとなっていたのは一昨日の事。
そして「ドラゴンポケモン捕まえたかったのに」と、落ち込む俺を慰めてくれたのは一つ目のダンバル。
生まれたばかりで言葉は使わなかったが、トキワの能力は意思の疎通のため、「元気出して」的な思念は伝わってきた。ちょっぴり和んだ。
さて、俺達研究室の一員でない同居人であるマユミさんについても一つ。
彼女は一ヶ月間で預かりシステムの調整も終了したらしく、偶に行き詰った研究員に間食を用意してくれるようになった。
おかげで男たちからでなく、女性陣からも『良いお嫁さんになるよ』認定を頂いていた。
……本人は、出会いが無いんですけど、と男性陣のいない所で愚痴っていたが。
実はこっそり聞いていた変態さん達(男)の変態性が、その日からなりを潜め出したのは圧倒的余談だ。
そしてマユミさんがボソッと「これで少しはマシになった?」と俺に囁いていた事も素晴らしく余談である。
それから現在に移る。
照れ照れとしている女の子一人。
ベットで寝ている俺の上に落ちてきて、腹の上に跨っている。
「えっと……久しぶり、トウカ君……」
……恥ずかしいながらも俺の好きな人。
エスパー少女ことナツメがそこに居た。
――どういうことなの。
-------------------------
思考が色々とフリーズしているのを一旦動かし、お腹の上から退けてもらう。
ベットの上で不安定ながらも、顔を合わせて座る。
正直な所、跨られたままは辛かった。
彼女の体重だとかそんな話じゃなくて、その――男性独特の生理現象で。
いつの間にかこの身に備わっていた精神統一と心頭滅却スキルを使い、意識しないようにしながら話を聞く。
「……どうやってやって来たの?」
大体どういった方法かは分かる。
でも俄かには信じ難いのだ。
「トウカ君のこと考えながらテレポートしたの。その、ダメ……だったかな?」
まさか本当に出来るとは。
距離的には相当な距離があると思うんだけども。
エスパーのエキスパートはやはり違うと言ったところか。
「いや、うん…………ダメじゃないよ」
ダメって言おうとしたけど無理だった。
自覚し始めてから思ってたけど凄く可愛い。
上目づかいで聞いてくる所なんか悶え殺す気じゃないだろうか。
いかん、滅却滅却。
「
「うん。旅は終わったよ。でも……」
言いよどむナツメちゃん。
あぁ、守れてないのか。
「……わかった。約束の半年経ってないし、守れなかった事には怒りたいけど」
「うぅ……」
なんて言ってるけどそんな権利俺に無いし。むしろ、
「――会えて嬉しいし、寧ろこっちが謝らないといけないくらい。待たせてごめん。それからありがとう、来てくれて」
ちょっと下を向いて落ち込んだ様子だったナツメちゃんは、顔を上げて明るくさせる。
「――うん! 会いたかった!」
笑った彼女は、小さくも可愛らしいナツメの花のようだった。
「室長ー、入りますよー」
「あ」
「うん?」
「あ……失礼しましたー」
――用事があり俺の部屋を訪れた研究員は、何も見なかったと呟き、部屋を出て行く。
室長が女の子連れこんでる! と叫び声が聞こえたのはその数秒後のことだった。
-------------------------
じっと見つめる視線が10。
全て俺に向かっており、背後にいるナツメちゃんはちょっと顔を出しながら様子を伺っていた。
「……室長。その可愛らしい子は?」
一人が場を包む沈黙を破り言う。
「何故部屋から二人で出てきたのですか?」
「というかその子って室長の想い人じゃないですか。何で居るんですか」
「え、そうなのトウカ君!?」
一人目が質問したのを皮切りに、各々が思っていたであろう事を口に出す。
なんでこいつら怖いくらい敬語使ってんの…?
マユミさんも前二人の言葉に驚き、声を上げている。
「……ベットの上で二人して座っていたと言う話ですがどういう事ですか」
「なんだか甘甘な空間を作っていたという事は……」
「卒業…だと…!」
「あァァァんまりだァァアァ!」
馬鹿どもが騒ぎ出す。
いつもなら笑って返してやるとこだが、駄目だ。
「もう、お前らうるさいわ! そ、卒業もして無いし! そもそも連れ込んでも無いし! 大体お前等研究はどうしたよ!?」
「「「「「「「「「そんな事今はどうでもいい!」」」」」」」」」
「おまえら仕事しろよぉ……」
なんだか涙が出てきそう。
でもナツメちゃんにかっこ悪い所は見せられない。
涙を堪える。
堪えたい。
「……トウカ君、涙」
堪えたかったぁ……。
目の端から流れ出る塩水は、研究員の言葉を聞いて顔を真っ赤にさせているナツメちゃんによって拭き取られた。
その後2時間に渡って、そんな事はしていないと話し、誤解は解けた。
しかしながら、茶化されるのは間違い無しな上に変態の魔の手からナツメちゃんを守らねばならぬのか、と思い至り、神経が磨り減る音が聞こえている。
昼食時。
何でこんな事になったのかな、と考えながらナツメちゃんが笑いながら自称紳士達と話すのをみて、自分が情けなくなった。
そろそろナツメに出番をあげたかった。
後数話くらいイチャイチャして貰います。
アンケートについては、多数決というわけでもないので、色々と意見が反映された結果になりますかね。
……色々思案中。
それでは。