チートでポケモンのトレーナーらしい   作:楯樰

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拙い。


淑女らしい

 

日差しがあるが涼しい風が吹く。

 

そんなお日柄が続く海上の船の中。

 

その一室ではお亡くなりになった一眼レフのカメラに嘆く者が居る。

他の一室ではゴミと化したビデオカメラを前に目を瞑り、黙祷を奉げる者も居た。

またある一室では…………いや、もう何も言うまい。

 

そんな状態にした原因たる四人の一人である自分が言うのは彼等に失礼だ。

 

私は淑女。

 

かつては彼等同様、()わった()度をとる人間の一人だった。

 

もしくは、尊敬すべき彼――僅か六歳にして大学へ入学し数々の功績を叩き挙げた若すぎる天才、トウカ室長。その彼を尊敬するが故に、愛してしまった愚かな人間たちだ。

 

私達はショタコン、と世間に呼ばれる人種であったと自覚している。

 

だが、それもこれも彼が悪い。

 

その悪い事とは実際の所、彼が明確な悪意を持って行った事では無い。

彼と初めて会った時。その時、彼の小さい身なりに同年代を相手にしているかのような印象を受けた。

それ程までに彼は私達に大人を感じさせたのだ。

 

今こそ彼も態度を崩して我々研究員の頭を(はた)いたりしているが、今思えば恐ろしくもあるその雰囲気。

本来であればポケモンスクールに通っている年齢のはずなのに……。

 

子供であり大人。

 

そんな歪な所に私たちは惚れたのだ、と今ならば思う。

 

 

さて、ショタコンなどと言う危ない思考を持っていた、淑女四人の一人たる私が何故そんな事を思う訳だが。

 

まぁ一概に失恋したから。

正気に戻ったとも言う。

 

詳細は省くが、彼にはガールフレンドが出来たのだ。

女の私たちから見てもその彼女は可愛らしかった。

その上、室長に会いたい一心でカントーからホウエンまでやってくるのだ。

それもまたいじらしく思う。

 

研究員の中には惚れた、と言う大馬鹿者が居たのだが室長により制裁が下されていた。

しかし、それに悦を浸り、そいつはまた室長へと乗り換えたのが室長にとっての災難か。

……かく言う私たちも人の事が言えないので、これ以上は省く。

 

 

そんな室長が大事に思っている彼女――エスパーであるらしいナツメちゃんから、かつての私達であれば室長を奪う事もできた。

しかし、それは室長の笑顔を見て止めた。

色々とおかしい彼のポケモンの世話をしている時以外は笑わない……私達に笑顔など向けない彼が笑うのだ。……彼女と居ると。

いや、私達に笑みを向けるとどうなるか分かっているからだろうが、彼女と居る室長は本当に嬉しそうであった。

それを子供に戻るというのだろうか。大人っぽい子供の彼が自分を出せているようにも思えた。

 

そう、私達の完敗である。

 

故に私は、この尊敬を。愛を。室長の平穏のために使おう。

あぁ室長、どうかお幸せに……。

 

あぁ、最後に――

 

 

――……室長hshs! prpr!!

 

-------------------------

 

過ごしやすい天候の本日。

トウカこと俺は彼奴等めが持つカメラやビデオの破壊工作のため、彼等の部屋に訪れた。

しかし、目的の物は既に壊された様子で。

一人が「アイツらめ……」と呟いていたのを考えると、大体誰の仕業かは予想はついた。

 

恐らく、まともなようで実はまともでは無かった女研究員達が壊したのだろう。

 

出来れば本当にまともであって欲しかった所だ。

 

……そんな訳で誤魔化されそうだった女研究員たちのブツを壊し終わってしばらく。

現在は船のデッキの上、船に休憩のためとまるキャモメを観察しつつ、今頃絶望に染まる女研究員の表情を想像。

そして他の理由でもってダウナーになっていた。

 

さて、憂鬱になってる理由だが……純粋に寂しくなった。ナツメちゃんに会いたい。

詰まる所、ナツメちゃんを想起させるあの部屋に篭って居られなくなったのだ。

そのため外に出ているわけだけども。

隣にナツメちゃんが居ない。

こんな風に思うって事は俺は彼女に心の底から惚れているのだろう。

 

「ふっ……居なくなってその大切さに気づく、か……」

『何言ってんですかマスター。ナツメさんは家に帰っただけでしょうに。……それとカッコつけても誰も見てませんよ』

 

キュウコンの言う通りだ。

それにしても痛いセリフを言ったな、自分。

誰かに聞かれてたら悶死するレベルだった。

見られてなくて良かった。

 

……寂しい。

 

『はぁ……。ウインディと私の境遇程じゃ無いでしょう? 信じて待ってあげるのも男の務めです』

『……俺も?』

『ウインディは迎えに来てくれたら嬉しい……かな?』

『わかったよ……キュウコン』

『ウインディ……!』

 

ナツメちゃんと再会してこいつ等にイチャつきを許したのが間違いだったか。

傷心気味の俺の前でイチャつきやがって……!

 

〈トウカーご飯ー〉

〈……私もお腹減った〉

『父さん……僕も』

 

あぁ、そうだった。

こいつらの朝食がまだだった。

 

……ところで気を紛らわすためにも一つ。

メタングは最近になって言葉が使えはじめた。

念話はまだのようだがその内だろう。

現在、例の本で確認した所40Lv近くになっていたため進化ももうじきだ。

 

流石、ピカチュウ先生によるレベリングはハンパ無い。

 

『思いつめるのは良いが私達の世話をしないのは良く無いぞ、ご主人。……ピカチュウ先生言うな』

 

「……うん、色々ごめん。……元気出す」

 

はぁ……部屋に帰ろう。

ナツメちゃんの残り香のするあの部屋に。

 

……うぅ……寂しいよぉ……。

 

うみねこ(キャモメ)はキャーと鳴いた。

 

 




変態は結局変態。

それでは、お粗末さまでした。
次回からシンオウ。
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