チートでポケモンのトレーナーらしい   作:楯樰

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夜逃げらしい

ずんずんと森の中、歩を進める。

木の枝を踏みしめて音が鳴った。

 

――今ハクタイの森を抜け、ハクタイシティへと向かっていた。

 

「……はぁ。やっと抜け出せた。息が詰まる」

『なぁ、ご主人。……ホントにいいのか?』

「いや、だって仕方ないじゃん……身の危険を感じてきたんだから」

『……まぁわかるが』

 

はぁ、と一つため息。

本来ならこんなことはしたくないんだけど……仕方ないし。

――一ヶ月後に戻るとメモ書き自室に残し、俺は森の洋館から出た。

 

 

シンオウに来て一ヶ月。

そう、シロナさんと出会って一ヶ月経った。

様々な事があったが一様に言えるのは……シロナさんとの関係が厄介なものになって来た、ということだ。

確かに色々と自重はしてくれているのだろう……それはわかる。

彼女の好意もはっきりとしているし、少なからずシロナさんの事も好ましく思う。

スキンシップは激しいがそれ以上の事はしてこない。

 

だけど、だからと言って俺が、自分自身が耐えられそうになかった。

いや、正確には「堪えられそうにない」。

 

俺も男だ。

まだ幼い餓鬼だけど……それでも自意識がはっきりした五歳から約六年の間、それなりに溜まっているのだ。

何がとは言わないけど、それはもう色々と。

 

正直自分の胆力といか我慢強さには自分自身呆れるくらいだ。

……ナツメちゃんと一緒に寝たときは正直危なかったけども。

それが成熟した肢体のシロナさんに抱きつかれたら……精神が擦り切れる音がするのだ。

ブチブチと繊維一本一本が少しずつ切れていく音が。

 

これで一緒に寝ようものならきっと(たが)が外れるだろう。

間違いない。

 

それに、だ。

 

「……最近のシロナさん、恐いくらい目がギラついてるんだ……第六感が逃げろって言ってるんだ……」

『……あぁ』

「こわいよぉ……喰われるよぉ……」

『わかったから……ご主人落ち着け、な? 周りからピカチュウに話しかけてる可哀相な男の子って見られてるから』

「……うん」

 

……確かに衆人観衆の前で泣きを入れるのはまずい。

ボールから出してるピカチュウに感謝だ。

 

とにかく俺のためシロナさんのため……何よりもカントーで頑張って待ってくれてるナツメちゃんのためにも俺は抑えなければいけなかった。

……だから夜逃げに近い、まだ朝方のこの時間に洋館をこっそり抜け出してハクタイシティへ向かっているのだ。

いや、最終目的地はもっと別の場所だけども。

なんだってこんな事になったかなぁ……・。

 

『……元気出してください、ナツメさん一筋なマスターのことも私にはわかりますから』

 

……ありがとう、キュウコン。

 

よし! ちょっと元気でた。

さ、落ち込んでる場合じゃない……早く目的の物を貰いに行かねば。

 

 

「すみませーん! 探検セット貰いたいんですけどー!」

 

-------------------------

 

朝。

昨日まとめていた続きのレポートをファイルに仕舞う。

……あ、そういえば。

 

「室長見ました?」

「いや見てない……まだ寝てるのかな?」

「……は!? もしかして……」

 

二人に聞けば、雌狐に喰われてるんじゃ、と一人が言った。

嫌な予感がして急いで室長の部屋に向かう。

 

……向かって、あの変態の皮を被った雌狐が部屋の中で泣いているのをみた。

手にメモと一通の手紙を持って。

 

「はぁ……はぁ……室長は、どうした」

「……トウカ君は出て行ったみたい……理由はこれに。……あとコレ、貴方たちへの指示みたい……」

「っ……! 見せてっ!」

 

女研究員が渡された手紙をひったくるようにして読む。

 

「メモには『探さないでください』って。で、手紙には『一ヵ月後に戻る。それまで各々が研究を進めておくこと。……それから探したりなんかするんじゃ無いぞ! 有事の際はシロナさんを頼れ』……って。それから『単独行動をする理由は俺の理性を守るため。一ヵ月後に各々研究したレポートの提出な。出来なかったら……』で終わってる……」

「なんだ、それ? とりあえず言われた通りにやったほうがいいんだろうけど――理性を守るためって……」

 

ちょっと理解出来なかった。

 

「……はぁ……ちょっとベタベタしすぎちゃったかな」

 

なるほど把握。

つまりあのナツメちゃんへ不誠実になるから室長逃げたのか。

 

「「「……お前のせいかぁああ!」」」

 

そして思わず他二人とはもった。

 

「わぁああん! ごめんなさーい!! 謝るから帰ってきてぇ!」

 

……でもマジ泣きしてるのを見たらなんだか怒る気が失せたので、泣き伏せているのを尻目に朝食を取りに降りる。

メイドで大人びてるヨミちゃんは知ってたらしくて鼻で笑ってた。

――背伸び幼女可愛いhshs。

 

 

 

 

『前略シロナさん。……貴方のスキンシップは俺の忍耐をガリガリ削ります。つい襲ってしまいそうなくらい限界が近いので俺は出て行くことにしました。それから最近貴女からの視線が恐いです。食べられるんじゃ無いかと思ってしまうくらいです。……お互いにそれでは良く無いと思います。……次会うときは一ヶ月後。それまでに反省してください。それでは。――PS.追いかけてくんな』

 

「ごめんねトウカくーんっ!」

 

-------------------------

 

――さて、この貰ったばかりの探検セット。

 

ゲームだった頃の記憶では、良い意味でも悪い意味でも非常にお世話になった覚えがある。

 

……四天王の部屋、なぞの場所、探検セット、ダークライとシェイミ。

思い出すだけでも忌まわしい。

しかし同時に教訓にもなった……正規の方法で入手できるまで待て、と言うことだ。

 

よし、追想終わり。

 

先ほどハクタイシティにて、まだおっさんという若さの男の人から探検セットを貰った。

何故貰ったのかと聞かれたら……まぁ、それはアレだ。

一ヶ月くらい引き篭もろうかと。

地下通路でピッケルとハンマー振り回そうかと。

 

いや、本来はいけないんだ。

遠征調査の名目でシンオウに来てるんだから。

仕事の放棄はやっちゃいけない。

 

でもこうでもしないとあの人から逃げられない気がするんだもの。

……多分修羅と化してるシロナさんから。

探すな、とは書き残したけど絶対あの人は探すから。

 

『大変だな、ご主人』

 

あぁ、大変だ。

 

……さて、問題は何処から地下に入るかだ。

確か記憶に残ってる地下通路のマップは大体6つに分かれてたはず。

どの位置から入るかによってそれぞれ入れる場所が変わってくる。

 

一番捜索される可能性が低いのは満月・新月島辺りから入れる場所だろう。

あんな何もない酔狂なところに行く人間は少ない。

 

まぁ、逆に考えて一番広い場所の何処かに陣取ってもいいだろう。

木を隠すなら森の中という言葉通り、ゲームと違ってこの世界には沢山人が居るだろうし。

幾らシロナさんが波導に関して熟達してると言ってもゲン師匠並みには索敵出来ないだろうし。

 

前者の人目を避けるか、後者の敢えて人の中に紛れるか……悩みどころだ。

 

前者だと、珠だとかとグッズを交換してくれる登山家風のおっさん達はあのマップには少なかったはず。

ただ、出土品と珠に換えてくれるおっさんは居たはずだ。

逆に後者だとグッズを交換してくれるおっさんは多く、出土品を換金ならぬ換珠してくれる人は少ない、というよりも居なかったはず。

 

……どうしたものだろうか。

 

それか、敢えてもう地下には潜らず、どこか地上でひっそりと一ヶ月間過ごすというのも有りだ。

 

――もしくはこのまま此処で過ごすというのも。

 

『急に来たと思ったら……トウカ。匿って、とはどういうことなのだ、まったく』

「いや、スマンて。……ちょっとシロナさんに追われてんだ。見つかったら色々と奪われる未来が見えるんだよ……」

『……はぁ。なんとなくわかっていたが罪作りな奴だ』

 

俺だって好きでこんな事になってんじゃないんだよぉ…!

 

――現在俺は菓子折りを持って匿って貰っていた。

創造神(笑)さんの所で――いってッ!

 

礫が飛んできた……いたい……。

 

 




HSDDの方も書きたいけど手が伸びない……。
あと諸々の事情で書きづらい。

よって更新速度も今以上に落ちます。ごめんなさい。

それではまた次回。
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