「……ふーん。なるほどね。ディアルガと同じ気配を感じたから飛び出てきたってわけね」
〈――人間のくせに生意気な! ディアルガ様を呼び捨てとは! 様をつけろよデコ助野郎ッ!〉
「…………口が悪いな、お前。ディアルガの巫女とか巫子的な存在だろうに」
〈ボクに君を敬う義務なんてないから。当たり前じゃないか〉
「……開き直りやがったコイツ」
アルセウスに聞いた話によると、このアグノム含む三湖は色に対応するように三竜の使いとして生み出したらしい。
『……なぁ、ご主人。こいつ殺――間違えた。ブチ殺していいか?』
ピカチュウさん。
言い直した意味有りましたか、それ。
というか殺すのは駄目。というかなんでそんなに短気なわけさ。
『…………だってご主人の事馬鹿にしてるし』
代わりに怒ってくれるのは嬉しいけど。
短気は損気ですことよ。
初対面相手にこんなに辛辣に当たってくる向こうも問題だけど。
〈それよりも、なんでお前から、お隠れになったディアルガ様とパルキア様、それからギラティナ様の気配がするのさ〉
うーん。あー、なんていうのかな。
「お前の生みの親に三体の能力を限定的にとはいえ植え付けられたから、かな」
〈はぁ?〉
〈……つまりトウカはお前たちと同じような存在になったわけ。わかったかド低能〉
「ちょっと違う気がするけど、まぁ、アルセウスとは知り合い以上友達未満の関係で、別の頼み事をしたらなんか時間空間、反物質を少しだけ操れるようになったわけさ」
というかミュウの奴も口が悪いなぁ、おい!
……いや、念話だけど。
うーん、慕われてるってことなのかな。
喜べばいいのか、それとも諌めればいいのか……悩みどころだ。
〈じゃ、じゃあ貴方は
「あ、別に畏まらなくてもいいから」
〈……畏まるわけねーだろバーカ!〉
何という態度の変わり様。
「もう、一周回ってもう許しちゃおうかなって思うよね」
この後、滅茶苦茶電撃浴びせた。
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ピカチュウからの出力押さえられた「でんげきは」を食らって黒こげになったアグノム。
一応トキワの能力で回復させて湖の底の洞窟に返しておいたけど、大丈夫だよな。
『大丈夫だ、問題ない』
やめてロトム。それフラグだから。
「で。なんの御用ですか、アカギさん」
「いや、近くにかの有名な、最年少博士殿がいらっしゃると部下の方から電話がありましてね。それで我が社に一度お招きしようかと。いやぁ、色々と研究をなさっているようで」
ソファーに座らされた俺の目の前には、ギンガ団のボス、アカギが座っていた。
日用品を買いにトバリの百貨店に寄ったところでボスの彼、直々に声を掛けられたのだ。
是非お話が聞きたい、わが社に来てお茶でも一つ飲んで行かれては、と野望に満ちた目つきで頼まれたのだから無理やり断るわけにもいかない。
……はぁ。
頼む、ロトムにピカチュウ。
『任せとけ』
『僕は何もしないんですけどねー』
手持ちの二匹に頼み事を一つ。
……少々保険を掛けさせてもらおう。
「ええっと……ギンガ団は宇宙エネルギーを研究していらっしゃると耳にしますが、ポケットモンスターの研究を主にする僕からはお話できるようなことは何もございませんよ?」
「えぇ、それはわかっておりますとも。……いえ、ね。実は私は個人的な趣味としてシンオウ地方に伝わる神話についても研究しているのですよ。ポケモンの研究をなさっているというので、個人的にお話が聞きたいと思いましてね」
……いや、銀河エネルギー云々は全て爆弾造るためだろうが、と言いたくなったが抑えた。
ゲームでは明言されていなかったが、一体どれほどのポケモンが死んだと思うんだ。
現実になって尚のこと、ポケモンもまた生きていると思い知らされたからこそ思う。
「……本当に何もないですよ。僕としても此方に来て神話の存在を知りディアルガ、パルキアの二体について調べたりもしてみましたが、……これがさっぱり。知れたのはディアルガが時間、パルキアが空間を司っているということぐらいでしょうか。ああ、一度シンオウ地方チャンピオンのシロナさんにお話を聞いてみるといいでしょう。きっといいお話が聞けると思いますので」
「……」
ジッと、視線を逸らさずこちらを見つめてくるギンガ団のボス。
大の男がそんな顔で子供を嚇すなと言いたい。
出されたお茶を口に含み、貰いたくもない熱い視線から逃げる。
「ごちそうさまでした、と。あの、そろそろ帰らせてもらっても? これでも忙しいんですが」
「あ、あぁ……」
「どうしたんですか? そんな有りえないものを見たなんて顔をして。……あぁ、成るほど。象でも30分は眠る即効性の睡眠薬が効いてないことに驚いているんですね?」
「……そのようなことはありませんが……」
確かにコップは空っぽで、薬入りのお茶は存在しない。
口に手を突っ込んで、飲んだお茶の入った袋を取り出した。
「まぁ、飲んでないから当たり前なんですけれども。……これは持って帰って解析させてもらいますね。あ、あと会話は録音させてもらってますので」
「……」
「……あーあ。幾ら神話に残るポケモンの力を手に入れたいからといって、睡眠薬を飲ませて眠った俺を監禁。そして組織内で研究させよういうのは、あまり誉められたものでは無いでしょーに」
「戯言をいうのは止めていただきたいですな! ……そんな事実は何処にもない!」
ポケットに入れたレコーダーの録音を切った。
「心が読めるっていったら分かってもらえますか? ま、でも自分の命に関わってくるので詳しくは言えませんが。じゃ、知られたら不味い社内情報も盗ませて貰いましたし、俺は退散させてもらいますよ。置き土産に一つ忠告。――余り悪さをしていると首がとんじゃいますよ?」
ポケットから出したレコーダーを握り、首を掻っ切る真似をする。
ピカチュウに頼んで、盗んだ情報はロトムの体に仕組んだ大容量メモリデバイスに全部入ってる。
これで無闇矢鱈に俺への詮索、ギンガ爆弾なんていうド派手な活動はしないだろう。
青ざめる顔と彼のボールから飛び出してきたドンカラスを眺め、テレポートで次の目的地に跳ぶ。
……あ。
「……あそこの素敵ファッション、写真に収めるの忘れてた」
『ご主人。それ、悪の組織の頭を手玉にとって言うセリフではないだろ』
シンジ湖の畔で俺は膝をつく。
アグノムと同じように飛び出てきたポケモンはポカンとした表情を晒していた。
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〈アグノムから話は聞いたけれど。……ごめんなさい〉
「やぁ、まぁ仕返しもしたし……むしろ謝らないかなと。一応、負わせた怪我は治しておいたんですけど……元気でしたか?」
〈はい、元気にしてました。――生意気なガキめ、今度会ったらマジコロばす……とかなんとか〉
まーそういう反応だよな。
「まぁ、元気にしているならいいです。……ちょっと聞きたいんですけど、記憶消したり感情を失ったりってのはお三方出来るんですかね?」
〈……えぇ。ですが、危害を加えるようなことさえなければしませんし。それにその力を持ってるのならやっても無駄ですし。……というかそれはどこで知りました?〉
「ミオシティの図書館に乗ってました。うへぇ怖ぇな、とか思いながら尋ねてみたんですけど。……まぁ、それなら良かった」
〈……あの頃は私も若かったんです〉
若気の至りというやつらしい。
しょんぼりとした姿は中々可愛らしい。
過去、「エムリットは俺の嫁」とか言う方々をネットで見かけたが、成るほどと思ってしまう。
『ごーしゅーじーん?』
……別に可愛いなって思う事に罪はないだろうが。
『胸を当てて考えてみろ。……それが行き過ぎて今の状況なんじゃないのか?』
シロナさんね。……うん。そうだった。
「それじゃ、あとのユクシーさんに会って帰ります。突然で訪ねてきてしまって申し訳ない」
〈気にしないでください……良い暇つぶしになりましたから。良かったらまたいらしてください〉
頷き、返事をして今度はキッサキシティの近くにある湖へ跳んだ。
首がとんじゃいますよ(ゲス顔)
毎日更新できていた頃の自分が羨ましい。