前回から一年と一日。……マジか。
マジですみませんでした。
幽鬼のようにゆらりとした足取りで。
かつ、それなりのスピードで迫ってくる、首の角度がシャフ度だとかイナバウワーとかそんなちゃちなもんじゃないくらいに斜めになった異形なモノから絶賛逃走中ではあるけれど……。
……ねぇ、ピカチュウ……ちょっといいかな。
『どうした、ご主人……と言いたいところだが、何が言いたいか大体わかるから言わなくても良いぞ。全部自業自得だ』
「トウカくぅぅうううんンンン……?」
デスヨネー!
捕まったら色々な意味で喰われるビジョンしか見えない件について。
これは死んだかもしれん。
――堪え切れない涙を目じりから流しながら、俺はキッサキシティ近くの雪道を駆け抜けていた。
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ユクシーと打ち解け、談笑していた。……そして現れた金髪の美女。
言わんともしれた変態さんこと、シロナさんである。
一体何が彼女をあんな風にさせたのかは知らないが、
『いや、ご主人のせいだからな?』
……だ、誰がシロナさんを狂乱させたのかは俺にはわからねーが、「尋常ではない」という一言に尽きた。
約一ヶ月程してからの再会ではあったが……まぁ、体感時間で言えばそれほど経ってないが、そこまで喜ぶことか、と。
別に高々、一ヶ月音沙汰がないってだけじゃないか、と。
『……ははあ。つまりマスターは想い人が突如として消え、音信不通に』
うぐっ……。
『一応、知られていない事ですが、一時的に別の世界に行っていたとして心配にならないと? しかも一応、マスターはまだ青年にもなってない11歳ほどの少年であるというのに?』
僕が悪かったです! さーせんしたキュウコンさん!
……まぁ、森の洋館からの出奔から始まった今回の一人旅は、問題を未解決のまま先送りにした結果、さらに悪化してしまった……その良い例だろう。
「何時までそうやってるの、トウカ君。早く降りてこないとイッシュ行の船がもう出てしまうわ」
「じゃあ早く本業に戻ってください。リーグ本部から要請掛かったんでしょうに」
「でもその前にトウカ君とちゅっちゅしたいじゃない!」
「喧しいわ! というか直接的すぎる!」
「じゃあ××××で良いわ! ○○○シたい!」
「もっと駄目だろうがぁああ……!」
嗚呼……。
――今、シロナさんとの関係云々はさておき。
現在、自分はそれなりに背の高い木の上に避難している。
ユクシーに被害が向かないよう、テレポートして此処まで来た。しかし、それにしてもエスパーであることがバレないよう、テレポートを繰り返しながら逃げるのも中々骨が折れた。
というのも、何処かの創造神あたりのおかげで時間やら空間やら、反物質やらが扱えるようになったのだが……。
既知外の能力だけでなく、どうやら超能力全般が強化されたのか、テレポートにしろ空間把握にしろ制御が難しくなったのである。
……正直疲れた。
シロナさんの壊れ具合にも疲れた。
いや、主にそっちで疲れた。
「…………いいわ」
「……何がです?」
何が良いのか。何をしかけてくるというのか。
「――貴方を殺して私も死ぬ!」
「やめろ、バカたれ!」
咄嗟に波導弾を作り出し、シロナさんの額にごっつんこ。……しかし、額が赤くなって涙目になっただけだった。
アイエエエ!? キゼツシナイ! ナンデ!?
「いたたた……流石に、これは駄目だったわね。私は選択を早まった。ただそれだけの事……」
「当たり前だろうが! ファッ○ン痴女め!!」
「それはつまり……ヤるということでいいの?! そんな、初めてがこんな雪山の木の下でなんて……! キャっ!!」
「ちげぇよ!?」
『流石に畜生の私でも引くわ……』
ピカチュウさんもびっくりである。
なんか良い手はないの? ピカチュウさん。
『無いな。……と言いたいところだが、ご主人がこんなところで凍死されては困る。いいか、私の後に続けて言うんだぞ?』
「あーあー残念だなー! 初対面の時の大人なお姉さんのシロナさんが好きだったのになぁああ!!」
ぴくぴくっと反応を示す変態さん。
「ショタコンやら痴女なとこやら、色々治ったら付き合ってあげてもいいとおもったのになぁあああああ!!!!」
段々とプルプルし始めた。
「本当にざんねんだわああ!! おれがポケモンにしか――」
おいこら、ピカチュウ。何言わせようとしちゃってんの?
『チッ……』
まぁいいや。
一応心の中で「ナツメちゃんの事嫌いになったらという前提だけど」と付け加えておく。
これで本当に大丈夫なの……もう、変態は消えるの?
『ぐっと!』
やった、勝った! 第三部完!
動かなくなったシロナさんの様子を伺いつつ、注意しながら木から降りた。
「……私、リーグに行くわ。トウカ君がああ言ってくれたのだもの。自分に正直になり過ぎていたのかもしれない。我が儘なだけ。そんなのでは、貴方は振り向いてくれない。貞淑な妻を目指すのよ、シロナ」
「お、おう……」
いや、付き合っても良いと言っただけで、妻になれとは言ってないんですが……。
吹っ切れたような顔をして、美人強度が元に戻った様子のシロナさんに余計な事を言って、自分に正直な方に戻られても困る。
後々困りそうな気がする、と思うがその時はその時で頑張ろう。
「それじゃあね、トウカ君。貴方と過ごす一秒一秒が楽しかった。……それじゃ、また会える日まで」
そう言ってシロナさんはガブリアスを出して、その上に乗った。
「さよなら、シロナさん。お元気で」
一応、最後くらいは締めておこう。
空を飛んで去っていくガブリアスの姿を見送って、キッサキシティに戻る。
シロナさんがちゃんと仕事に戻ったことを、変態達に伝えておかないといけないなと思いつつ、この地での事に俺は思いをはせるのだった。
『――――end』
終わらすなよ、ピカチュウさんや。
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汽笛が鳴り響き、船が出てから。
もう、シンオウの土地はゴマぐらいのサイズにしか見えない。
高々二ヵ月が長かったような短かったような、そんな気分になる。
『どちらでもあるんじゃないですか? マスターには時間の概念がないでしょう?』
「まぁね。……一体、何になれと言うのかな」
誰にも聞かせてもいなし、誰に言うでもない。
神の暇つぶし。
……いや、違うか。管理者様の身勝手で、こうして二度目の人生を送っているのだ。
あのおじいさんから、目的とかいろいろ持たされてそうではあるけど……いや、考えすぎかもしれない。
本当に、あの言葉の通り。
認知するのも面倒で、大義名分と誤魔化しの為に、ただただ、神様転生的なことを俺はさせられているんじゃないかな。
こうして血も通っているし、考えたりもできる。
今ここにこうして自分は生きているのだ。
「色々人並み外れたことが出来ても、生きてるってことなんだろうな……」
『なぁ、ご主人急にどうしたんだ? 爺くさく黄昏て』
『ほっときましょう。そういうお年頃なのでしょうから』
「……まぁ、運がいいってだけなのかもしれない、か」
というかお前ら聞こえてんだからな? 随分と失礼なこと考えてくれやがってからに。
遠く、イッシュへの旅路を思う。
その間にも船は前へ前へと進んでいた。
月並みではありますが……。
すみません! 許してください! 明日も更新しますから!
次回、時間軸ぶっ飛びます。てへぺろ!
……イッシュの話書くのしんどくなったんよ。
いつか気が向いたら書きます。
――追記――
と思ったらやっぱり書く模様。
一部の方にはネタバレしたかもしれませんが、………アレはまた別の世界線ということにしたのであんまり関係ないです(作者の御都合)