カける少女の生きる道   作:星村空理

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次回から不定期更新となります。ご了承ください。


#03.彼女の生きる世界

 

 

「よし、今回もお疲れさん。結果は後日両親と一緒にな」

 

「今日もありがとうございました。先生」

 

「よせやい先生なんて。毎度言うが、病院でもいつものように呼んでもらっていいんだぞ?」

 

「一応、病院でのお仕事中ですから」

 

「俺は気にしないんだがなぁ……」

 

検査を終え、私と先生は雑談に興じる。

 

「そう言えば、今日も午後はこっちで遊ぶのか?」

 

「はい。今日はイッセー達3人が来ますね」

 

藍華ちゃんは予定が入ってしまってて来れなかった。残念だけど、来れないものは仕方がないので、代わりに何かお土産でも買って行ってあげようと思う。

 

「ふむ、そうか……ってか、その堅っ苦しい話し方も勘弁してくれないか?たしかに俺はお前の主治医だが、もうここの仕事は終わってるんだ。いつも通りにしてくれ」

 

「……はいはい、わかったよ先生」

 

そう言えば、かなーり特殊な立ち位置だったっけなこの先生。

 

「でもちゃんと仕事はしないとダメだよー?」

 

「仕事はちゃんとやってるわ。知っててワザと言うな」

 

「バレたか」

 

「しっかし先生呼びはやめないのな……」

 

「病院だからねー、一応だよ一応」

 

とりあえずまぁ、先生はいつもこんな感じだ。付き合いも長いし、病院外では友人として接してるのだから仕方ないだろう。

患者の中で先生がこんな風に接するのは私くらいで、あとは真面目に対応している……と、信じたい。けどこの人結構女好きだから綺麗な女性なら口説きそ……いや、奥さん達に怒られるか。私の時にいろいろやったからなぁ……

 

「そうかい……まぁとりあえず遊ぶのは結構だが、あまり遅くならんうちに帰るんだぞ」

 

「わかってますよーっと」

 

「あと、そろそろ家に遊びに来い。あいつがまたしばらく会ってないって愚痴ってたぞ」

 

あー、そう言えば先生の家に全然行ってなかったっけね……

 

「んー、行ってもいいんだけど……近いうちに来るんだしもう少し待っててって伝えてもらってもいい?」

 

「近いうちに来るって……あいつがか?」

 

「うん、あと先生も」

 

「あー、いつもの予言みたいなやつか」

 

「まあ、そんな感じ。まだ当てたことないから信用はないかもだけど」

 

「ま、一応頭の片隅に入れておく。けど、それが遊びに来ない理由にはならないし、余裕があればでいいから、遊びに来い」

 

「ん、了解……っと、予言と言えば、そっち大丈夫?まだなにもない?」

 

「まぁ、とりあえずは大丈夫そうだな」

 

「なら、いいけど。実害はないと思うけど、言った内容は不本意だろうし、先生も避けたいでしょう?」

 

「まぁな。たしかにあり得そうな内容だったし、これからも気をつけるさ」

 

「ん、ならいいや。っと、そろそろいい時間ね。お昼は何にしようかな?」

 

「俺は弁当だが……なんだったらここで食うか?俺が一緒にいれば大丈夫だと思うぞ?」

 

「あー、食堂かぁ。今から移動して食べるのもあれだし、お願いしようかなぁ」

 

「よーし、なら昼は奢ってやろう。そう気にするほど金もかからんしな」

 

「お、ごちになりまーす」

 

そんなわけで、私は先生と一緒に病院の食堂でお昼を食べながら、待ち合わせの時間まで暇を潰しているのでした。

 

 

+++

 

 

「おまたせー」

 

「おう、お疲れー」

 

「お疲れさん。飯はちゃんと食ってきたか?」

 

「オツカーレ」

 

昼食も食べ終えてイッセー達と合流した私。休日なので服装はもちろん私服。友人と遊びに行くだけだしみんな手抜きのファッションだ。デートじゃないからね。しかたないね。

 

「ちゃんと食べてきたよー。3人は……またファストフードかな?」

 

「まぁ、それが楽だしな」

 

「とりま全員揃ったしどこか行こーぜ」

 

「りょうかーい」

 

「まずどこ行くかー」

 

「ふつーにゲーセンでいいんじゃないか?本屋とか荷物増えそうなのは後ででいいだろ」

 

「だな。よっしリベンジするぜ!」

 

「ほほう、私のダムが火を噴くぜ!」

 

「ダムなのに火を噴くとはこれいかに」

 

「細かいことは気にしなーい」

 

そんな訳でゲーセンに直行して格ゲーしたり……

 

「ウベウリャ」

 

「おいバカやめろ!台パンじゃ済まないぞ!」

 

「キャンセルするからへーきへーき」

 

「セカイガオワルマデハー」

 

「オモイーガー」

 

「それ別ゲーだから」

 

「よっしゃダガキャン決まった」

 

「げっ」

 

「そこから温存していた血粧嘴!」

 

「あ"あ"っ!」

 

ちょっと運動したり……

 

「友達はボール!」

 

「言葉の位置を変えるだけで虐めの現場になってるよなぁ」

 

「コトバッテフシギダナー」

 

「そもそもその台詞テニスのじゃないし」

 

「そしたら燕返しとかスネイクでもやってみる?」

 

「いや無理だから。というかクゥは気をつけろよ。明日絶対筋肉痛で泣く羽目になるからな?」

 

「体力はあるのに不思議だよなー」

 

「本当にねー」

 

本屋とかで買い物したり……

 

「何かいいものはありました?」

 

「んにゃ、欲しいものはなかったな。変なチラシは貰ったけど」

 

「ん?あー、それか。イッセーが持っといたほうがいいかもね」

 

「?……わからんが、まぁそうするわ」

 

「そっちはどうだ?」

 

「いつも集めてるのはなかったけど、まぁ収穫はあったかな」

 

「……結構買ったな」

 

「まぁ、ルルブですから」

 

「る◯ぶ?」

 

「違う、そうじゃない。まぁ時間があったらみんなでこれで遊ぼうね」

 

「なんかよくわからんがりょーかい」

 

楽しい時間を過ごし、隣町を後にして、駒王町まで戻ってきた。

 

「ほい、じゃあ今日もおつかれさん」

 

「今日は来てくれてありがとね。楽しかったよ」

 

「おう、また誘ってくれよな」

 

「次は絶対に勝ってみせる……!」

 

「次は別キャラで行ってみるのもいいかもねー」

 

「俺もそうするかな。さて、じゃあ俺らこっちだから、じゃあな、イッセー、久遠」

 

「おう、じゃあな、松田、元浜」

 

「じゃあねー!」

 

「……さて、俺たちも帰るか」

 

駅から少し歩いたところで、松田と元浜と別れた私たち。イッセーは帰ろうとするけれど……

ごめんね、もう少し付き合ってね。

 

「……ちょっと待って」

 

「どうした?」

 

「最後に一箇所、寄らせてもらってもいいかな?」

 

「いいけど、どこいくんだ?」

 

「……公園、だよ」

 

 

+++

 

 

side:イッセー

 

 

町外れにある公園に、俺とクゥは来ている。

なんとなく、行きたいところがあると聞いて予感はしていたが、やっぱりここだったか。

いつからだったか、頻繁に遊びに来ることがなくなった場所ではあるが、一年に一度ほど、俺とクゥはある目的のためにここに来て……正確に言うなら、クゥに連れてこられる。

それは、一種のイベントと化したもの。

ただ現状確認となってしまっていること。

俺たちは噴水の前(いつものばしょ)で向かい合って立つ。

 

「さて、久しぶりにここに来たわけだけど……用件は、わかるよね?」

 

「……ああ、わかってる」

 

「……ん、その様子じゃ、答えは変わってないみたいね……」

 

残念そうに、クゥは小さくため息をつく。

クゥが訊いて、俺が答える。ただそれだけのこと。

ただそれだけのことだけど、クゥはソレを何度もしている。

答えはわかってるのに。俺の考えが変わらないと薄々気が付いているのに。それを知った上で、訊いてくる。

 

「……なんで、こんなことを繰り返すんだ?」

 

「もしかしたら、イッセーの考えが変わるかもって、そんな希望があるから、かなぁ……あと、確認の意味と、焦ってる、って言うのもあるかも」

 

「……?」

 

クゥは苦笑しながら答えるけど、俺にはよくわからなかった。いや、前2つのことはなんとなくわかる。けど、最後の焦るってところがわからない。いったいなにに焦ってるんだ……?

 

「ま、イッセーはもう気にする必要はないよ。今回で最後だから。今が最期のチャンスだから」

 

「……そっか」

 

理由はわからないけど、そう返す。

身勝手なことだけど、少し残念に思った。

他の女の子からしてもらえたら、飛び上がるくらいには嬉しいことを、クゥはしてくれている。

 

「さて、じゃあ、始めよっか」

 

でも、俺はそれに応えられない。

 

「兵藤一誠君。頭は良くないし、性欲に全力投球で周りからも変態扱いされてて……」

 

違うんだよ、クゥ。

 

「誰よりもまっすぐで、なによりも明るくて、必要な時はちゃんと真剣に、真摯に接してくれる、そんな君」

 

俺にとってクゥは……

 

「ねぇイッセー、私はイッセーのこと……」

 

 

 

 

 

「すまない」

 

 

 

 

突然、そんな声が聞こえて来た。

 

「っ!イッセー!」

 

慌てるように、クゥが俺の肩を掴んで思い切り引っ張る。クゥの突然の行動に俺は反応できず、前へつんのめってしまう。そしてそんな俺と入れ替わるように、クゥは俺の立っていた位置に移動した。

いったいどうしたんだよ!そう言おうとクゥの方へ振り向く、ちょうどその時だった。

 

ドンッ、という音と共に、顔に()()()()()()()()がついた。

何だと思い手で顔についたそれを拭う。

 

「カフッ、ケホッ……」

 

生暖かい何かを拭い終えると、クゥの咳き込むような声が聞こえた。

どうした?と声を掛けようと今度こそクゥのいる方振り向いた。

 

そこには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()クゥの姿があった。

光で出来た槍のようなそれに貫かれたクゥの体は、真っ赤な何かに染まっていて、それとは真逆にその肌は真っ青に色が抜けていっていた。

不意に、手についた何かを見る。そこについていたのは、クゥの体を染めているものと同じ、赤い何か。

 

「クゥ……?」

 

無意識に名前を呼ぶと、クゥは咳き込んで血を吐きながらも、俺の方を向いた。

俺が無事なのがわかったからか、よかった、と小さく呟く。しかし、俺のことを見るその瞳に宿る光はとても弱く、彼女の命が風前の灯であることを理解させられた。

 

「逃げ、て……イッセー……」

 

今にもその命を失いそうな状態にも関わらず、いや、だからこそなのか、クゥは俺に逃げろという。

だけど、俺は動けない。目の前の現実を受け入れられない。頭が真っ白になる。

さっきまで普通の、平和な日常だったんだ。

さっきまで、友達と一緒に遊びに行ってたんだ。

おかしいだろ?

なんだよこれ。

なんなんだよ、これ……?

 

「なん、だよ……これ……」

 

混乱した思考が、口から漏れ出た。

クゥを刺した男が、俺を一瞥する。

俺が動かないことを確認したからか、そいつは槍をどうやってか消し去り、クゥを抱えて近くにあったベンチへと寝かせた。そして、彼女の耳元で何かを呟く。

いったい、何をやってるんだ?

動かない体で、そんなことを考えていると、男がこちらを向く。

 

「……彼女には、悪いことをした。必要ない殺生をするつもりはなかったんだけど……でも、しかたない。計画のためには、これは必要なことなんだから……」

 

そう、自分に言い聞かせるように、男は言った。

聞いて、やっと自覚する。

クゥは、こいつに殺された。

 

「なん、で……」

 

「僕に彼女を殺すつもりはなかった。ただ、彼女は君を庇って代わりに死んだだけだ」

 

俺を、庇って……

つまり、本来殺されていたのは、俺……?

 

「なんで、俺なんかを狙って……」

 

「……」

 

俺の質問に、男は目を瞑って黙り込んでしまう。

数秒の沈黙の後、男は目を開き、冷たい目線で俺のことを見て、ブゥンという音と共に光の槍を再びその手に持った。

 

「すまないが、少年……未来のために、一度死んでくれ」

 

槍を構えた男を見て、俺に逃げてと言ったクゥの、青褪めた顔が頭によぎり……

 

「あああ……ア"アアアァ!」

 

瞬間、頭が真っ白になった。

拳を振り上げ、男に向かって走り出す。

頭の片隅に、本能が鳴らす警鐘とクゥの言葉が響く。

それでも俺は、男に殴りかかるのをやめない。

こいつだけは、一発でも殴らなければならない。

それだけ考えて前に進んでいると左腕に熱が篭っていく。

 

『Boost‼︎』

 

そんな言葉が聞こえると、体中に力が入った気がした。

力が入ると共に、俺は男に手の届く位置に来ており、力一杯に拳を振るう。

拳は正確に男の顔面を捉えている。

そのまま、俺と男の距離は縮まり、そして……

 

ドンッ

 

衝撃と共に、俺の腹に何かが触れた。同時に、腹の辺りに生暖かい感触が広がっていく。ああ、これは……と、半ば確信に近い予感を持って腹を見てみれば……予想通り、光の槍が俺の槍を貫いていた。

光の槍は、まるで待っていたかのように、俺がその存在を確認するとフッと消えてしまった。そして、槍が消えて現れたのは、俺に腹に空いた大きな穴。そこから、クゥと同じように赤が溢れ出してきている。

頭がクラクラしてきた。

視界もぼやけてくる。

足に力が入らない。

前のめりに体が倒れる。

だんだん、視界が暗くなってきた。

 

「恨んでくれていい。憎んでくれていい。君にはその資格がある」

 

声が聞こえるが、見ることは叶わない。

痛みはない。代わりに、徐々に意識が遠のいていくのが分かる。

 

「復讐したければすればいい。忘れたければ忘れればいい。どんな選択をするかは、君次第だ」

 

声を聞きながら、だんだんと自分が死に近づいていくのがわかる。

復讐したくても死ねばできないだろう!忘れるもなにもないだろう!

言いたくても、言うだけの力がない。指先1つとて動かなくなってきた。

マジかよ……高校2年生で死ぬのか?まだ人生の半分も生きてないぞ!?これからって時期なんだぞ!?

まだやりたいことはいっぱいあるんだ!彼女もできてない!エッチなこともしてない!親孝行だってまだできてないんだ!

心の中で叫んでも、意識が薄れていくのは止められない。やがて思考は、とりとめのないものになっていった。

明日のこと、友人のこと、家族のこと、自室に隠したエロ本のこと……

考えていると、不意に男の声が聞こえる。

 

「さようなら、良い夢を」

 

今までなにか言っていたのだろうか?それとも、走馬灯のように今までの思考は一瞬の出来事だったのだろうか?

しかし、今の自分にその答えを知る余裕はない。

ああ、どうせ死ぬなら、美少女の腕の中で死にたい。思い浮かべるのは、紅い髪をしたあの美人。学校で見かける度にあの紅い髪が俺の目には鮮烈に映った。まぁ、その度にあの雪のような髪の幼馴染に、『やっぱりイッセーは胸が大きい人が好きなんだねぇ』と半眼で睨まれたりするのだが。

もうすぐ、意識を失うのが。人生を終えてしまうのが、わかった。

やっぱり、今際の際に思い浮かべるのは、クゥのことだ。

雪のような白い髪を持つ小さな少女。俺とは長い付き合いで、ずっと俺に好意を寄せてくれた幼馴染。彼女は、俺にとって大切な……

しかし、彼女は死んだ。俺を庇って、槍に貫かれた。

そして俺も同じように死んでゆく。

クゥを殺したあの男を、一発も殴ることが出来ずに、死んでゆくのだ。

あの男が悔しくて、恨めしくて、しかし、許せないのは自分自身だった。

親孝行もろくに出来ず、幼馴染に叱られ続け、幼馴染に庇われて、仇を取ろうとしたのは良かったけれど、返り討ちで殺されて……ああ、なんて薄っぺらな人生だったのだろうか。

もし、もしもだ。もしも生まれ変わるのだとしたら、俺は……

 

「あなたね、私を呼んだのは」

 

声が聞こえた。誰のものなのかはわからない。ただ、女性のものであることだけがわかった。

近づいてくる音が聞こえる。助けてくれるのだろうか?何かを言っているような気がするが、声が遠くに聞こえて何を言っているかわからない。

ああ、助けに来てても、もう遅い。意識も、もう……

 

 

ああ……

 

 

だめだ……

 

 

……おやすみなさい

 

 

sideout




いかがでしたか?
ネタをちょくちょく挟んでいるのは作者の趣味です。
しかも全部を詳しく知ってるわけではないというタチの悪い仕様です。
次回からようやく原作本編が開始しますね。
早めに書ければ良いのですが……

気が向きましたら感想を書いていただけると嬉しいです。
誤字脱字報告、アドバイスなどがありましたらお気軽にどうぞ。
次回も読んでいただけたら幸いです。
それでは。
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