カける少女の生きる道   作:星村空理

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#06.初契約とシスターとの出会い

 

 

イッセーの説明会が終わってから、数日が経過した。

毎日放課後にイッセーはオカルト研究部に向かい、下積みとしてチラシ配りを行なっている。

毎日忙しそうにしているイッセーを見て、青春だねぇと呟いたり、そんな私を見て藍華ちゃんがなんかおばさんみたいだよ?と言ってきたり(失礼しちゃう。否定できないけど)、松田と元浜が美少女なオカルト研究部の女性陣と親しくしているイッセーを見て血の涙を流しながら悔しがったりと言った日々を私たちは過ごしていた。

オカルト研究部の方には、まだ数度しか行ったことがない。まぁ、何度も訪ねてお仕事の邪魔してもアレだしね。

来た時には、クッキーとかお菓子を差し入れに持って行ってて、お菓子好きからか小猫ちゃんとよく話すようになっていた。

木場君とは男性だからあまり積極的に話すことはないけど、挨拶から軽く世間話をしたりはあったりする。

リアス先輩は主に私の魔力の利用とかについて話してたりする。やっぱり、人間が魔力を持つという事象について興味があるらしい。私としても魔力についてリアス先輩たちに知られるのは特に問題ないからいろいろと実験するのに協力してたり。

姫島先輩なんだけど……最初にあった頃もちょっと怖がっていたから、部の中では一番話すことが少ない。でも、挨拶をしたり軽く世間話も出来たりするから、大きな問題ではない。本人にちょっと頑張ってもらって、私は多少配慮するだけに留めてたりする。

イッセーは……いつも通りに話してたりだね。バカやってるのたしなめたり、ちょっと勉強見たり。うん、いつも通りだ。

んで、放課後が終われば私は帰宅。イッセーは下積みのチラシ配り開始だ。

悪魔は朝……光に弱く、夜……闇の中で力を発揮する。そのため、夜にお仕事をすることが多いそうな。

その光と闇の影響はイッセーに顕著に現れていて、最近はだいぶ慣れてきたようだけど、それまでは登校に苦労してたりして大変だった。

ちなみに、夜にイッセーが部活をすることに関しては、説明会の翌日放課後にイッセーの家で、夜の部活動に関する説明ということで両親を説得し、許可を貰っている。まぁいろいろと問題あるし若干の思考誘導は行ったそうだけど、催眠のような強力な術までは行わなかったそうな。

さて、そんな感じで、イッセーの下積み時代が終わったらしい。イッセー自身は知らないそうだけど。

と言うのも、お昼休みに小猫ちゃんが私を訪ねて教えてくれたのだ。教室を離れて外でお散歩しながらそんな話をして、ついでにチラシをくれた。よかったらこれでイッセーのことを呼んで欲しい、という言伝を部長に頼まれたそうな。お疲れ様です。

しかし、さて、どうしたものか?

たしか契約初日、イッセーは被った小猫ちゃんの予約契約が二本あって、その片方の人……たしか、森沢さんに出会うはずだ。

その機会を潰すのは……まぁ、別にいいか。

後日また出会う可能性だってあるし。

そんなわけで、放課後、私は家に帰って夜になるのを待ち、悪魔の活動時間になってからチラシを使用した。

さて、あとは待つだけ。

チラシには、これと言った反応はない。当然だ。イッセーは子供の悪魔より魔力が少なく、転移の魔法陣の発動すらできないのだから。

そのため、自転車を全力を漕いで、玄関からやって来るだろう。

 

ピンポーン

 

そんなことを考えているうちに、来たようだ。

 

「ん、いらっしゃいイッセー。どうしたの?」

 

「おう、今日ついに俺の下積みが終わってな。契約取るようになったんだけど……呼ばれたところに向かったら、ここだったんだ」

 

「あ、うん。それは知ってるよ。呼んだの私だし」

 

「やっぱお前だったか……」

 

「そうじゃなくて、なんで玄関からってこと。普通、チラシの魔法陣から出てくるんでしょう?」

 

「あー、それなんだがな、どうやら俺、魔法陣が使えないくらい、魔力が少ないそうなんだ……」

 

「そっか。まぁなんというか、御愁傷様?」

 

「ありがとう。でも、最初がクゥでよかった。あんま緊張しないですみそうだからな」

 

そうだね。リアス先輩がそう仕組んだ感じだからね。

 

「それはよかった。さて、じゃあ契約内容なんだけど……とりあえず、外出よっか」

 

今回の内容、家でやるものじゃないからね。と言って私はそのままお母さんに外にでることを伝えて、イッセーと一緒に散歩を始める。

 

「で、外に出たのはいいけど、クゥの願いってなんなんだ?」

 

「とりあえず、このまま散歩かなぁ?」

 

「?」

 

「そだね。ちゃんと説明しとこっか。イッセーは、私がたまに一人で散歩に出かけるの知ってるよね?」

 

「まぁな」

 

そう、私は週に一度ほどの頻度で、ふらふらと散歩に出かけている。趣味でもあるし、なにか面白いイベントでもないか期待してるのもあるし、探し物をしてたりもする。理由はいろいろだが、ともかく散歩をしていることがあるのだ。

 

「でも、最近あんなことがあったから、外に出かけるのってちょっと危ないでしょう?」

 

「あ、ああ……」

 

私の言葉に、イッセーは表情を暗くする。まぁ、自分が死んだ事件なのだ。そんな反応でも仕方がない。

 

「そんなわけで、私のお願い事は散歩中の護衛です。まぁ出かけてもこれと言った危険はなかったから、何もないと思うけどね」

 

「ってこれより前にもう散歩してたのかよ!」

 

「うん。まぁ調べたいこともあったからねぇ」

 

「……あんなことがあったあとなんだから、危ないだろ……」

 

そう言ったイッセーの顔は、悔しそうな、怒ってるような、そんな顔だった。

 

「あー、うん。心配させちゃったね。ごめんね。でも大丈夫。危ないと思ったら、すぐオカ研の人を召喚するから」

 

そのためにチラシ、貰っといたんだ、と私は小猫ちゃんから念のため貰っていた2枚目のチラシを見せる。

それを確認したイッセーは、渋々ながら、無茶はしないでくれよ。と注意するに留めるのだった。

 

「わかってるよ。で、報酬の方はどうなってるかな?」

 

「ん、ちょっと待ってろ……ペットボトル飲料一本+α、だってさ」

 

「あら、意外と安い。って、+αって?」

 

「働いた分の気持ち……か、戦った時の追加料金ってところか?明日リアス先輩に聞いてみるわ」

 

「お願いね。あ、ちなみにこの契約定期的に呼んでお願いするつもりだからその時に注意することがあるか先輩に聞いておいてもらえる?」

 

「わかった」

 

と言うわけで、イッセーに機械を使ってもらって契約内容を確定させて、散歩を再開。

さて、とりあえず本題、いってみよー。

 

「ところで、イッセーは聖書関係の三大陣営のこと、覚えてる?」

 

「おう、覚えてるぞ。悪魔、天使、堕天使の3つだよな?」

 

「そう。三大陣営はお互いに敵対していて、昔に大戦も起こったってところは、説明されてたよね?」

 

「そうだな。その大戦の影響で、悪魔の数がすげぇ減ったんだっけか?」

 

「その通り。ちなみに、悪魔だけじゃなくて、天使や堕天使も相当な数亡くなってるよ」

 

「まぁ、そうだろうな。よほどじゃない限り、戦争は勝負がつくまで終わらないだろうし」

 

「そうそう。まぁそんな戦争の話なんだけど、実はその三大陣営にとても大きな被害を出した第四の勢力がいたのです。実質、その勢力のお陰で戦争が一旦止まったって言っていいんじゃないかな?」

 

「マジか。その勢力って?」

 

「第四の勢力、それは……ドラゴンだよ」

 

「ドラゴンって、あの?」

 

「そう。日本語では龍って呼ばれるあれ。火を吹いたり飛んだりするやつ。まぁ、勢力って言っても、実質二人……二匹?だったし、その二匹も協力してたわけじゃないんだけどね」

 

「どういうことだ?」

 

「まぁ、三大陣営からしたらアレな話なんだけどね……なんというか、大戦の時に、二天龍の喧嘩に巻き込まれちゃったんだよ」

 

「……二天龍って、なんだ?」

 

二天龍

ウェールズ……イギリス地方に伝わる伝説に出てくる二匹の龍、赤い龍と白い龍を指す言葉で、この二匹の龍は覇を競っていた。

この世界において一二を争うほどの力を持った二匹の龍の戦いは災害に近しく、その災害が戦争中の三大陣営を襲ったのだ。

 

「で、その二匹の戦いに巻き込まれた三大陣営は多大な被害を被り、結果戦争は中断されましたとさ」

 

「なるほどなぁ……なんというか、災難だったっていうべきかな?」

 

「まぁ戦争が止まったんだし、見方によってはよかったんじゃないかな?」

 

「ちなみに、その二天龍ってのはそのあとどうなったんだ?」

 

「ん、その戦争中に三大陣営が龍の力を危険視して、珍しく協力体制で討伐したよ。魂は神器に封印されて、今では神をも殺す力を持った神器……神滅具(ロンギヌス)と呼ばれるものになったそうだよ」

 

「そうなのか……」

 

「ま、一回協力して戦って戦争が終わったのに、冷戦になってるあたり知性を持つ生物の業の深さが伺えるよね」

 

「……嫌なことを言うなぁ……」

 

「事実ですから。ま、とりあえずイッセーは悪魔になったし、願い事をするなら、悪魔の王様……魔王様か、あるいは、ドラゴンに願えばいいんじゃない?」

 

「……なんでドラゴン?」

 

「ほら、イッセーの神器って、龍の手って名前だからさ。何かしら龍に縁がありそうじゃない?だから、まぁ選択肢の一つにどうよって話」

 

「……まぁ、そうだな」

 

「……さて、そろそろいい感じの時間だし、遅くなってもあれだから帰ろっか」

 

「おう」

 

とりあえず、話が一区切りしたので家路につくことにする。

さて、これで二天龍の知識を与えたし、多少力が出やすくなったりして欲しいね。

あとは……

 

「あ、そうだ。イッセー、魔力に関してなんだけど、基礎能力……体力作りと魔力の操作技術の向上をやってけば、基礎魔力の量が上がると思うから、部のみんなと相談してやってみたら?」

 

「ん?そうなのか?よっしゃ、なら早速部長たちに相談してみる!」

 

「暇な時は私も様子を見に行くと思うからその時はよろしくね」

 

「おう!」

 

頑張って魔法陣使えるようになれば楽になるし、これからのことを考えれば早めに鍛えておいて損はないからねー。

あとは普通に世間話をしている内に、私たちは家の前に到着する。

 

「はい、じゃあ今回はここまでで大丈夫です。今日中にアンケート書いておくから、明日の放課後には内容教えてもらえるんじゃない?」

 

「あー、そう言えばそんなのあったっけなぁ……」

 

「私の評価はその時にってことで、あ、報酬渡してなかったね。ちょっと待ってて」

 

そう言って私は家の中に入って冷蔵庫を漁り、ペットボトル飲料持っていく。

 

「はいこれ。今日はありがとうございました。またそのうちよろしくね」

 

「おう、サンキューな」

 

じゃあ、また明日、と私たちは解散してそれぞれの家に戻る。

とりあえず、今日は()を撒き終えたからノルマ達成、と言うことにしておきましょう。やっときたかった探し物は、イッセーに心配をかけちゃったのでまた明日、ということで。

でもなぁ……そろそろ急がないと、期限になっちゃうしなぁ……

ま、明日頑張ればいっか。

 

 

+++

 

 

side:イッセー

 

 

クゥの契約を取った日から、2日が経った。

アンケートでは『最初の契約ですし、戦闘もなかったのでこれと言って問題はありませんでした。また3日後辺りに契約したいと思うのでその時にはよろしくお願いします』と言った、無難だけどそれなりにいい評価だった。

部長も、最初ならこんな感じでしょうね、と納得したみたいだ。

そして、次も頑張ろう、とその日の夜に行った依頼者の人は、なんと言うか……凄かった。

圧倒的巨体

圧倒的存在感

ゴスロリ衣装を着込み、ネコミミをつけた……筋骨隆々な男

名前はミルたん。

そしてその願いは、『魔法少女にして欲しい』

無理だった。実現不可能だった。

異世界にでも転移してくださいと投げたら返ってきたのはもう行ったという答え。

わけがわからない。

とりあえず、泣きながらお願いしてきてたので相談だけ乗って、そのあと一緒にアニメを見て終わった。

魔法少女ものだとバカにしてたけど、面白かったです。

結局、契約は破談になってしまったが、翌日知らされたアンケート結果では最大級の賛辞を頂くという前代未聞の出来事に。部のみんなは困惑していたが、最終的には意外性ナンバー1の面白い子、という評価をリアス先輩に頂いたので嬉しかったりする。まぁその後にきちんと契約を取って対価を貰うように釘を刺されたけど。

ちなみに木場は美人のお姉さんに呼ばれることが多いそうな。畜生め。イケメンか、やっぱイケメンだから美人に選ばれるのか!?

 

「あー、まぁイッセーも素材は悪くないんだけどねぇ……」

 

「下手な慰めはいらないやい……!」

 

と、昨日のことを話しながら、俺はクゥと一緒に帰っていた。

今日は珍しく部室に遊びに来なかったのに一緒に帰宅となったのだが、なんでも学校でいろいろと用事を済ませてたらしい。

 

「……お」

 

愚痴を吐きながら帰っていると、クゥが何かに気がついたようだ。

 

「どうかしたか?」

 

「あ、うん。あの子なんだけど、シスターさんなんて珍しいなって。ただ、ちょっと困ってるっぽい。迷子かな?」

 

そう言って指差した先には、ヴェールを被ったシスター服の女性がいた。背丈からして、俺たちと同じか、少し下くらいか?

 

「はうわっ!」

 

あ、コケた。

ビタン!と手を大きく広げてハエ叩きで叩き落とされた虫のような、典型的で綺麗な転び方。あまりにも綺麗な転び方にクゥはおお、と感心したようにパチパチと小さく拍手をしていた。

動く気配がないので代わりに俺が声をかける。

 

「大丈夫っすか?」

 

「痛ぃ……ああ、すみません。ありがとうございますぅ」

 

手を差し出し、シスターさんを引き起こす。

起き上がって、再度お礼を言うシスターさんだけど、不意に吹いた風のせいで、被っていたヴェールが飛んでいってしまう。あっ、と一拍おいてシスターさんが頭を抑えるが、残念ながら間に合わない。

ヴェールの中に束ねていただろう金の長髪が溢れ、夕日に照らされたそれはキラキラと輝いていた。

そして、彼女の素顔を見た俺は、声を失う。

理想の女の子が、そこにはいた。

クゥと同じ可愛らしい系統の顔立ちに、深い緑色の瞳、服に上からなにとなしにわかる華奢な体つきは、庇護欲感じさせる。

 

「あ、あの……どうしたんですか?」

 

「あ、ご、ごめん、えっと……」

 

見惚れてた俺を訝しげな表情でシスターさんが覗き込んできたので、どうにか話を続けようと言葉を探す。

悪魔に転生してすぐにこんな出会いを起こすなんて、もしかしてフラグかも!?なんてないと思いつつも身勝手な想像を膨らませながら話をとっかかりを探していると、不意に肩にかけられた旅行鞄に眼に映る。

 

「りょ、旅行?」

 

「あ、いえ違うんです。実はこの町の教会に赴任することとなりまして……あなたもこの町の方なのですね。これからよろしくお願いします」

 

教会に赴任かぁ……もしかしたらまた何回か出会うこともあるかもなぁ……

ぺこりと頭を下げる彼女を見て、俺はそんなことを思った。

と、そう言えば、さっき飛んでったヴェールは……

 

「はい、シスターさん。これ、今度は飛ばされないようにね」

 

「あ、これ私のです!ありがとうございます!」

 

探そうと思ったところで、クゥがシスターさんに渡した。

シスターさんはお礼を言ってるけど、クゥはそんなシスターさんを見て困り顔。なんでだ?

 

「よかったぁ……この町に来てから困ってたんです。私、日本語があまり上手じゃなくて……道に迷ってしまったんですが、言葉が通じず道を聞くこともできなかったんです」

 

シスターさんの言葉で、ようやく合点がいった。

この人が日本語を喋れないということは、クゥが困っていた表情の原因は……

クゥを見てみると、俺の考えていることがわかったのか、うん、頷いて

 

「通訳お願いしていいかな?」

 

と頼んで来た。

俺よりクゥの方が学校の成績はいいのだけれど、こと会話に関しては、今の俺の方が得意だったりする。

と、言うのも、悪魔の特典のおかげだ。

リアス先輩の話では、悪魔になった特典として、『言語』があり、悪魔の言葉はどの言語であっても全世界で通じ、全世界の言葉はその悪魔が最も聞き慣れた言語に変換され聞こえるらしい。俺の場合は日本語だな。

そのお陰で、話す、聞くことに関して俺の成績は急に良くなった。突然のことに、英語の時間にクラスのみんなと先生を驚かせたのは記憶に新しい。

最も、変換されるのは音声言語だけで筆記のテストの成績なんかはあんまり改善されてないんだけど。

とりあえず、俺はクゥに頼まれた通り通訳をしながらシスターさんとの話を続ける。

 

「迷子になった、ねぇ……シスターってことは、行き先は教会かな?」

 

「この町の教会って言ったら、もしかしてあそこかな?」

 

「知ってるんですか?」

 

「あー、たぶんイッセーの思ってる通りだと思う。私最近あのあたり行ったし、案内できると思うよ」

 

「そうか。だったら、シスターさん、俺とクゥ……こっちの人が教会の場所を知ってるから、よかったら案内しようか?」

 

「ほ、本当ですか!?あ、ありがとうございますぅ!これも主のお導きのお陰ですね!」

 

そう言って、シスターさんは涙を浮かべて微笑む。本当に可愛いな、この子は。

だけど、彼女の胸元に下がっているロザリオが目に入ると、最大級の拒否反応を覚える。

俺は悪魔、彼女はシスター。俺たちは本来喋っちゃいけない関係だ。

とは言ったものの、困った人を放っていくことはできない。クゥがいるけど、俺がいなければ会話ができないし、女の子二人を置いてじゃあ俺はこれで、とか出来るわけがない。

こうして、俺たちはシスターさんと一緒に教会に向かうのだった。

 

 

sideout

 

 

+++

 

 

教会へ向かっている道中、基本的にシスターさんと話していたのは、イッセーだった。

まぁ無理もない。今の私はシスター……アーシア・アルジェントの言葉はわからないし、会話しようとしてもイッセーを挟まないと会話が成り立たないからイマイチ会話が弾まなくなるだろうからね。

私が話すのはイッセーが話を振った時くらいのものだ。

しかし、少し参った。もしかしたら私はこのシーンにいない方がよかったかもしれない。

イッセーは気づいていないかもしれないが、結構悪魔バレの危機が迫っていたりする。

なぜなら、イッセーの言葉は全て、私もアルジェントさんも理解することができるからだ。

今はまだアルジェントさんが気づいてなさそうだからいいものの、バレたらどうなるか、ちょっと怖い。

いい言い訳を思いついておかないと。

と、そんなことを考えている間に公園付近に到達。ついでに子供の泣き声も聞こえる。

公園の方を見てみれば案の定、男の子が泣いていて、そばにお母さんがいた。

私とイッセーは特に問題ないだろうと見ているだけだったが、アルジェントさんは公園へ歩を進め、男の子の頭を撫で、何かをする。まぁ、私は彼女が神器で治療しているのを知っているけど、知らないふり。

イッセーはアルジェントさんの後を追ってその光景を目にするけど、私は公園の入り口で適当な場所に腰掛け、二人を待つ。あんまりイッセーの悪魔バレのリスクをあげても得はないし、アルジェントさんはイッセーの理想の女の子らしいし、二人の邪魔をしないのが吉だろう。多少悔しくはあるが、仕方ない。

少し待っていれば、二人は戻ってきた。

アルジェントさんに変わりはないが、後ろについているイッセーは難しい顔だ。たぶん、神器について考えてるんだろうな。

アルジェントさんが何か言っている。おそらく、お待たせしました、とかそういうことを言っているんだろうなぁと状況からわかったので、頷いてから私たちは再び教会に向かう。

とは言ったものの、公園から教会まで歩いて数分の距離しかなく、特に会話がないまま私たちは教会に到着した。

古ぼけた施設で、あまり人が使っている印象はない。建物の明かりも付いておらず、そこに人が住んでいる様子も見られない。

まぁ、そう見えるだけで、実際には人とか人じゃない者とかが住んでいるのだけれど。

ともかく、その教会を見て、アルジェントさんは安堵の息を吐く。次いでイッセーの方を見てみれば、若干顔色が悪い。無理もない。教会は悪魔の敵地。イッセーは教会のそばにいるだけで悪寒が止まらないのだろう。

そろそろ退散だろうか、と思ったところで、イッセーは、見つかってよかった。じゃあ、俺たちはここで、と言って去ろうとする。

しかしアルジェントさんはイッセーを呼び止め、何かを言っている。

さて、助け舟を寄越すとしますか。

 

「どうしたの、イッセー?」

 

「あー、いや、シスターさんが教会でお礼をって言ってるんだけど……」

 

「……でも、そろそろイッセーはバイトだし、早く帰らないとでしょ。時間も時間だし、ついでに私も途中まで送ってもらっていい?」

 

私がそういうと、イッセーはハッとした表情になり、そ、そうだな。とアルジェントさんに説明する。そして、イッセーの自己紹介。アルジェントさんも何か言っていて、おそらく自己紹介をしているのだろう。

そして最後に、二人は私の方を見る。

 

「あ、クゥ、名前はアーシア・アルジェントって言うらしいんだ」

 

「ああ、自己紹介ね?私は白縫 久遠。よろしくね、シスター・アルジェント」

 

「こいつの名前は白縫 久遠。よろしくだってさ。……クゥ、アーシアでいいって」

 

「わかった」

 

そう言って手を出すと、アルジェントさんは手を握り返して握手をする。ついでにイッセーが通訳を行う。

そして、私たちはお別れを言う。

 

「じゃあ、シスター・アーシア、また会えたらいいね」

 

「さようなら、また会いましょう?」

 

アーシアは頷いて答え、去っていく私たちを見えなくなるまでずっと見守っていた。

 

「……で、なんか難しい顔してたけど、何かあったの?」

 

帰路につく途中、私はイッセーにそう聞いておく。

 

「あー、まぁ、な。アーシア、神器所有者だったんだけど……」

 

「うん、知ってた」

 

「マジか……って、お前木場の時も気づいてたし、おかしくはないか。まぁそれでアーシア、力のこと話す時に寂しげな顔してたから、どうしたんだろうなって」

 

「まぁ、あの子はいろいろあったらしいからねぇ、そんな顔するのも仕方ないよ」

 

「知ってるのか?」

 

「天使の陣営……教会ではそこそこ有名な話だからね。私も話を聞いたことはあるんだ。あの子がアーシア・アルジェントだって名前を聞くまで気づかなかったけど」

 

アーシア・アルジェント

教会に所属していたシスターで、回復系神器『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』の所有者。

彼女は、その能力を使って様々な人を癒したことから、聖女と呼ばれていた。

 

「まぁ、あんまり詳しい話は聞かないほうがいいさ。ただ言えるのは……彼女は、教会と、悪魔と、堕天使の被害者だってことだけ」

 

「……そう、か」

 

「とりあえず、今日の夜は一緒にオカ研にいくよ。さっきのこと、報告しないとでしょ?出来ればだけどフォローしてみるよ」

 

「……わかった」

 

会話を終えても、イッセーは難しい顔。

結局、会話のないまま、私たちは家路につくのだった。




いかがでしたか?
楽しんでいただけたら幸いです。
今回は一誠の契約の話とアーシアとの出会いを描きました。
本来は最初の契約は別の人でしたが、今後のシーンのために初契約は久遠となり、また契約もしっかりされました。
本来の相手であった彼は、その後再び小猫ちゃんの契約がブッキングした時にであったそうな。
アーシアとの一幕、久遠は言語の部分に関してはよく指摘されてる『全ての言語を一つの言語として処理している』ことに関する違和感とそれによる悪魔バレを恐れてましたが、今回は悪魔バレは起きないことにしました。
ともかく、次回ははぐれ悪魔討伐戦ですね。
早めにあげられるよう頑張りたいです。
気が向きましたら感想を送ってくださると嬉しいです。
誤字脱字報告、アドバイスなどがあちましたらお気軽にどうぞ。
次回も読んでいただけたら光栄です。
では。
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