幸せになる番(ごちうさ×Charlotte)   作:森永文太郎

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番外編
番外編、ココアの誕生日


 今日はなんか二人ともよそよそしい。

 ココアは街を一人歩きながら、先程まで働いていたバイト先───ラビットハウスでの出来事について考えていた。

 リゼちゃんもチノちゃんも何かこそこそしてて、私が話しかけても二人とも仕事に戻っちゃうの。

 さっきだって仕事が終わるのにまだ時間があるのに────

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

「ココアさん、今日はもう先にあがっていいですよ」

 

 私のホームステイ先兼バイト先、ラビットハウス。ここで一緒に暮らすわたしの妹のチノちゃんが突然私に向けてそう言った。

 でも時計を見ると、まだ店を閉める時間には早かった。

 

「えっ?大丈夫だよ。最後までちゃんとがんばれるよ」

 

 まだ働けるよとチノちゃんに言うものの、私と同じくこの店のアルバイトのリゼちゃんもチノちゃんと同じようなことを私に言う。

 

「ココア、いいからあがれよ。後は私たちでやっておくからさ」

 

「えっでも……」

 

 そうは言われても、私一人先に上がるのはなんか悪いし……。

 しかしチノちゃんは私に有無も言わせず続け様に言う。

 

「あとココアさん、着替えたら少し外に出ていただけますか」

 

「えっなんで?」

 

「なんでもです。いいですね」

 

「うっうん……」

 

 いつもは見ないチノちゃんの謎の強気な態度に気圧され、私は渋々お仕事を途中にして、お店を後にした。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ───といった感じで、結局私は二人に言われるがまま店から追い出されちゃって今に至るわけです。

 にしても、なんで二人は私を店から追い出すようなことしたんだろ?

 しかしココアがいくら考えても、二人がそんなことをした理由はわからなかった。

 まぁいっか、追い出されちゃったものは仕方ないもんね。折角早くあがれたんだから他のみんなの所に遊びに行ってみよう。

 そう考えたココアはまず初めに、親友の千夜のところに行くことにした。

 

 

 

「いらっしゃいココアちゃん」

 

 千夜ちゃんの家に着くと、いつもの和服の制服に身を包んだ千夜ちゃんが出迎えてくれる。

 千夜ちゃんの家は甘味処で、千夜ちゃんは看板娘なんだ。

 

「千夜ちゃん、今日も制服決まってるね♪」

 

「ココアちゃん、今日はどうしたの?今日はまだお仕事じゃなかったかしら?」

 

「えっと……ちょっと色々あって……」

 

 私が言葉を詰まらせていると、千夜ちゃんが微笑みながら言う。

 

「取り敢えず座って。今お客さんもそんなにいないから話聞くわ」

 

 そして千夜ちゃんに言われるがまま、私はカウンターの席に座り、千夜ちゃんに店での事を話した。

 

「そう、チノちゃんとリゼちゃんが……」

 

「うん、なんか二人がよそよそしいの。私なんかしちゃったかな~」

 

「何か思い当たることがあるのかしら?」

 

「ううん、ここ最近と言えばお姉ちゃんが泊まりに来たことぐらいしか…ハッ!もしかして二人とも私じゃなくてお姉ちゃんに居て欲しかったとかなのかな!?」

 

「そんなことないと思うけど……。でもそうね、きっとそのうちわかるかもしれないわ」

 

「そうかな……。あ、ところで千夜ちゃん今日はいつまでなの?」

 

「ごめんなさい、今日は閉店までずっとなの」

 

「そっか……。うーん、まだお店には戻れないだろうしな~」

 

 まだお店を出てから一時間も経ってないしどうしようかな……。

 するとどうしようか迷う私に千夜ちゃんがこう提案する。

 

「シャロちゃんのところに行ってみたらどうかしら?何かいいアドバイスを貰えると思うわ」

 

「そっか、じゃあシャロちゃんの所に行ってこようかな。ありがとね千夜ちゃん」

 

 そうして私は千夜ちゃんとお別れして甘兎庵を後にした。そして千夜ちゃんに言われた通りシャロちゃんに会いに行くことにした。

 

 

 

 甘兎庵を出てしばらくして、シャロちゃんの働くフルール・ド・ラパンに来たんだけど……。

 

「あれ?シャロちゃんいないな……外でチラシ配りかな?」

 

 いざフルールに着いて中に入っても、そこにシャロちゃんの姿はなかった。

 今日休みだったっけ?でもシャロちゃんお家の方にはいなかったよね?まぁ、せっかく来たから少しお茶でもしてこうかな?

 

「あら、ココアさん。奇遇ですね」

 

 すると突然、誰かが私にに声を掛けてきた。

 声のする方を向くと、知り合い小説家さん、青山さんの姿があった。

 

「青山さん、こんにちは」

 

「こんにちは。今日はどうされたんですか?」

 

「シャロちゃんに会いに来たんですけどいないみたいで。あ、席ご一緒してもいいですか?」

 

「ええ、どうぞ」

 

 そして私は青山さんの向かいの席に座り、それから青山さんと、お茶とケーキを囲みながらおしゃべりを楽しんだ。

 そのついでに、今日の店での二人のことも相談に乗ってもらった。

 

「なるほど、チノさんとリゼさんがですか」

 

「そうなの。やっぱり私、嫌われるようなことしたのかな……」

 

「そんなことないと思いますよ、お二人がココアさんを嫌いになるとは思えませんし、ちゃんと話し合えば分かり合えると思いますよ」

 

「青山さん……!」

 

 青山さんにそう言われて、なんだか自信が湧いてきた。

 もしかして私が何かしたせいで二人を怒らせちゃったのかもとか思ったけど、きっと何かのすれ違いだよね。

 

「そっか、そうだよね、あとでちゃんと二人と話してみるよ。ありがとう青山さん」

 

「いえ、どういたしまして」

 

 

 

 それからフルールを出た私は、青山さんのアドバイスを受け、二人とちゃんと話し合おうと早速ラビットハウスに向かった。

 でもその途中、いつもシャロがチラシを配っている公園の側を通ると……。

 

「キャー来ないでー!」

 

 突然公園の広場の方から悲鳴が上がった。

 その何処か聞き覚えのある悲鳴が上がった方へ行ってみると、うさぎに追いかけられてるシャロちゃんの姿があった。

 それを見た私はうさぎの側まで寄り、そのうさぎをひょいと抱き抱えた。

 

「相変わらずうさぎが苦手なんだねシャロちゃん」

 

「う~ココアありがとう」

 

 シャロは涙目でココアに謝辞を述べる。

 

「ううん、いいよ。ところでシャロちゃんはバイトかな?」

 

「ええそうよ、あんたは何してるの?」

 

「ちょっとの間店から出てってリゼちゃんとチノちゃんに言われたからちょっと散歩に。でももう戻ろうかなって」

 

「えっ!あんたまたなんかやったの?」

 

「何もやってないよ!もう!しかもまたってどういうこと!?」

 

 シャロの反応に、ココアは頬を膨らませる。

 それからココアは事情をシャロに説明する。

 

「なるほどね。そっか、今日だったわね」

 

「えっ何が?」

 

「別に、なんでもないわ。どうせいつものようにあんたがきっとなんかしでかしたんでしょ」

 

「えっ!?やっぱそうなのかな……」

 

「ええ、だからほとぼりが冷めるまで外にいたほうがいいんじゃない?」

 

「……うん」

 

 そう言われると、やっぱり私が何かしちゃったんじゃないかとまた思い始めてくる。

 青山さんはすれ違いって言ってたけど、思えば二人が理由もなく私をお店から追い出したりしないだろうしな……。

 

 

 

 シャロちゃんと別れた後、店に戻ろうと思っていたけど、シャロの話を聞いて、まだもう少し外にいたほうがいい気がして、そのまま広場の公園のベンチに座って時間を待つことにした。

 ベンチに座ってからしばらくすると、もう太陽が沈みかけて、空も暗くなり始めてきた。

 

「う~ん、青山さんはああ言ってたけど、シャロちゃんが言った通りなのかな……」

 

 空は暗くなってきたものの、二人と顔を合わせるのがなんだか怖くなってきた私は、一人公園のベンチで黄昏れていた。

 すると突然私に声が掛かる。

 

「あれっココアじゃん、どうしたのこんなとこで?」

 

「ココアさんこんにちは~」

 

 いつのまにか目の前に、チノちゃんの親友にして、私の妹たち──マヤちゃんとメグちゃんが立っていた。

 

「マヤちゃん、メグちゃん……」

 

 二人の妹を前に、普段ならテンションを上げるココアだが、しかし今はそんな気分にはなれなかった。

 

「どうしたのこんなところで?こんなとこに座ってないで一緒にラビットハウスに行こうぜ」

 

「でもまだ私……」

 

「いいからいいから~」

 

 するとマヤちゃんは強引に私の手を取った。

 

「ココアさん、早く早く」

 

 そして普段大人しいメグちゃんも私のもう片方手を強引に取って、二人で私をベンチから引っぱり上げ、そのまま二人に引っ張ったられるがままに公園を後にした。

 

 

 

 それから二人の妹に引っ張られるがまましばらくして、チノちゃんとリゼちゃんの待つラビットハウスに着いた。

 う〜ん、二人になんとなく流されて戻って来ちゃったけど、いいのかな……。でも帰らないわけにもいかないし、ここまで来たからには覚悟を決めなくちゃね!

 さっきまでウジウジと考えていたココアであったが、ここに来て二人と話し合う覚悟を決めた。

 そしていざ、ドアノブを掴み思いっきりドアを開ける。

 

「チノちゃんリゼちゃんあのね!」

 

 パンパンパン!!

 

「…え?」

 

「「ココア(さん)(ちゃん)、誕生日おめでとう(ございます)!」」

 

 ドアを開けるや否や、いつものみんなが勢揃いしており、そしてみんなが一斉に鳴らしたクラッカーが店中に鳴り響き、私の頭に紙テープや紙吹雪が降りかかる。

 

「えっ、ええ!?どういうこと!?」

 

  突然の事に混乱すると、リゼちゃんが事情を説明してくれる。

 

「どういうことって今日は4月10日、お前の誕生日じゃないか」

 

「えっ……あっ!そういえばそうだったね」

 

「お前、人の誕生日はよく覚えてるのに、自分の誕生日は覚えてないのかよ……」

 

「えへへ……。えっと、それじゃあつまり……」

 

「はい、これはココアのサプライズ誕生日パーティーです。私の誕生日の時はサプライズに失敗してたのでお手本をみせようと思ったので」

 

 つまり二人して私をお店から追い出したのは、私の誕生日パーティーの準備をするためだったんだ。

 因みにチノちゃんの言った私の誕生日というのは、去年の冬、チノちゃんの誕生日を知って、私がチノちゃんの誕生日を祝う為に、お店を盛り上げたり、チノちゃんにサプライズを仕掛けたりした事だよ。

 

「じゃあ嫌われたわけじゃなかったんだ~」

 

 取り敢えず昼間つっけんどんな態度を取られていたのは、嫌われたからでないと知りほっと安堵する。

 

「全く、そんなわけないだろう」

 

「でもシャロちゃんが~」

 

「あっ、あれはあのままだとあんたラビットハウスに戻ってたでしょうが!」

 

 あぁ、だからシャロちゃんはわざと私が家に帰らないようにあんなこと言ったんだ。

 

「そういうことか~。いや〜すっかり騙されちゃったよ。でも本当に嫌われたんじゃなくてよかった~」

 

 これで、ひとまず昼間の件については無事誤解と知ることができ、解決できた。

 そして、解決したところで千夜ちゃんがみんなに声を掛ける。

 

「みんな、料理も冷めちゃうし、取り敢えずいただきましょ♪」

 

 千夜ちゃんがそういうとみんなそれぞれ自分の席の前に立つ。

 

「それじゃあ乾杯しましょう」

 

 チノちゃんの合図でみんな自分の席の前においてあるグラスを手に持つ。

 

「ココアさんの誕生日を祝って……」

 

「「「かんぱ~い!」」」

 

 乾杯の音頭が終わると、ココアはつい顔を緩ませ、ニヤけた表情を浮かべる。

 去年は私が木組みの街で暮らすことも含めたお祝いパーティーを家族で祝ってもらったけど、今はこうして家族じゃなくて、この街で出会った友達に祝われてるなんて、なんか新鮮だな〜。

 

「えへへ」

 

「どうしたんですか?」

 

「ううん、なんか嬉しくて」

 

「そういや今回のサプライズもチノが企画したんだぞ」

 

「リッリゼさん!」

 

「そうなの!ありがとうチノちゃん!」

 

 そう言うとココアはチノに思い切り抱きついた。

 

「ま、前の私の誕生日の時のココアさんのサプライズがあまりに下手だったので、お手本をみせようとしただけです」

 

「ダメだしされてるぞココア」

 

「えへへ、今度はちゃんとサプライズしてみせるよ」

 

 そんな会話を続けてると、

 

「そういえばそろそろ新学期ね」

 

 とシャロちゃんが言う。

 

「この前は千夜がクラス分けで騒いで大変だったな」

 

 この前というのは、千夜ちゃんが私と一緒のクラスになれないといって落ち込んでいて、それでリゼちゃんたちに迷惑をかけてしまったことだ。

 

「うふふ、ごめんなさい」

 

「ま、あんたにはいつも迷惑かけられてるけどね」

 

「ということはココアさんが来て1年になりますね」

 

「私が来て1年か~」

 

 そっか、そういうことになるんだね~。

 

「色々ありましたね」

 

「うん、そうだね~」

 

 本当いろんなことがあったな~。

 チノちゃんやリゼちゃん、千夜ちゃんにシャロちゃん、他にもマヤちゃんメグちゃんに青山さん、いろんな人に出会えたな。

 今年もみんなと一緒に楽しく過ごせたらいいな。

 それにもしかしたら、今年は新しい友達に出会えるかもしれない。

 私は立ち上がってみんなに向き合って言う。

 

「みんな、これからもよろしくね」




今日はココアちゃんの誕生日ですね。
今回の話はまだ有宇が来る少し前のお話です。
さて、そんなことはさておき、皆さん今日は盛大にお祝いしましょう。
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