幸せになる番(ごちうさ×Charlotte)   作:森永文太郎

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第22話、ラビットハウスをプロデュース(前編)

「よし、全員集まったな」

 

午後、店のカウンターの前にココア、チノ、リゼのいつもの三人が集まっていた。

有宇はキッチン側に立っており、最後に来たリゼを待っていた。

 

「有宇、今日お前シフト入ってたっけか?」

 

リゼがそんな疑問を投げかける。

 

「いや、シフトはもう終わりだが、折角三人が揃ってる時に話しておこうと思ってな」

 

「それなら仕事終わりでもいいんじゃないか?何も今でなくても……」

 

「別に仕事に戻ってもらって構わないが、今やる仕事があるのか?」

 

有宇にそう言われて三人は店を見回すと、客はほぼなくガラガラである。

 

「で、でも青山さんがいるよ」

 

ココアの言う通り、確かにテーブル席に青山さんが一人いるが……。

 

「身内なら別にいいだろ。別にいいですよね青山さん」

 

「はい、私は構いませんよ」

 

「ということでお前らもいいな」

 

有宇にそう言われて返す言葉もなく、素直に三人は応じる。

 

「それでお兄さん、お話とは?」

 

「店の今後の方針についてちょっとな」

 

「方針って?」

 

「まず一つ聞きたいのが、お前ら……この店の状況を見て何も思わないのか?」

 

有宇に言われ、チノはギクッとする。

 

「それは……その……」

 

痛いところを突かれて動揺するチノを庇うようにココアが言う。

 

「で、でも私が来たときからこんな感じだったし、お客さんだって今日はあんまり来てないけど、それなりに来る日だって……」

 

「それじゃダメだろ。勿論日によってはあまり客が来ない日はあるだろうけど、それにしたって全く客がいないような日があるのは流石にやばい。そうだな……今うちの一日の来客数の平均が20人ちょっとだから……例えば日に20人来るとして全員が店で一番売れてるオリジナルブレンドしか頼まなかったとする。そうすると月いくら稼げる?」

 

因みにオリジナルブレンドは400円だ。

 

「えっと、大体24万円ぐらいかな?」

 

ココアが即答する。

流石に数学を得意とするだけあって計算が早い。

 

「そうだ」

 

「おお、24万円ってすごいね〜」

 

「すごいものか、あくまで売上にすぎない。そこから経費が差し引かれ、残りの額からオーナー、つまりマスターやチノの給料が出て、更にその残りが運転資金となるんだぞ」

 

「でも24万もあったら……」

 

「経費は家賃や人件費とかも含まれる。時給800円で、ココアとリゼのバイト代がそれぞれ大体月5万だとして、僕が生活費3万を差し引いて大体月8万円。勿論これらの数字も前後するから、合計して人件費だけでも月約20万円かかる」

 

「そ、そんなに……!?ていうか有宇くん結構貰ってるんだね」

 

「週休1日で毎日ほぼ5時間は働いてるしそれなりにな。だが家の家事手伝いとかもやってるし、それでこの値段は寧ろ安いぐらいだ。でだ、あくまで24万はかなり低く見積った数値ではあるが、それでも実際の今店の売上も月30万から40万いかないぐらいだろう。それでもう一度聞くが本当に今のままで大丈夫か?」

 

一同は皆有宇に言われた現実に苦い顔を示していた。

今まで彼女達も客が少ないと思うことはあっても、それに対してそれ程危機感を感じたことはなかったからだ。

 

「で、でもでもチノちゃんのお父さんのバータイムは繁盛してるし……」

 

「まぁな、でもバーの稼ぎだけでカフェの運転資金とかもやりくりする気か?無理じゃないだろうが厳しいところではあるぞ。なんにせよ手遅れになってからじゃ遅い。それにこの調子で今までうまくやってこれたというわけでもないぞ」

 

「「え!?」」

 

ココアとチノが驚きを見せる。

 

「どういうことだ?」

 

一人冷静なリゼが聞く。

 

「マスターにその辺気になったから聞いてみたけど、赤字が出た月の生活費……売上に占める原価はマスターが軍人時代に稼いだりした貯金でカバーされてるらしいぞ。まぁそれだけってわけでもないらしいが。おかしいと思ったんだよ、こんなに客が来てないのにやっていけてるのかって」

 

それを聴くと、リゼは納得したようだ。

ガーディアンってやつは結構稼げるようで、その時の貯金が結構あるらしい。

そして有宇から聞かされた店の運営事情を聞いたチノは少し青ざめた顔をしていた。

流石にちょっと脅かしすぎたか?

いや、チノはこの店の跡を次ぐわけだし、早いうちに現実を知ってもらっておいても損はないはずだ。

 

「なんにせよ、このままずっとこんな調子で店を続いていけるとは僕には思えない。そこで、少しでも店を良くするために話し合いをと思ってな。と言う訳で何か案出せ」

 

「と言われてもな……」

 

「はい……いきなりそんな……」

 

リゼとチノが返答に窮すると、

 

「はい!」

 

ココアが元気よく手を上げる。

 

「よしココア、言ってみろ」

 

「はい、メニューを増やすのはどうでしょう!有宇くん大佐!」

 

「誰が大佐だ。新メニューを増やすのは悪くないが、増やせばいいってもんじゃないしな……。まぁ、その辺は夏のメニューのこともあるし順次考えていこう。他!」

 

「じゃあ、はい」

 

今度はリゼが手を上げる。

 

「よしリゼ」

 

「ミリタリー喫茶なんてどうだ?」

 

「ニッチ過ぎる!却下だ、他!」

 

するとチノが自信なさげに手を上げる。

 

「あの……その、内装を変えるとか……?」

 

『なぬ!チノ、どういうつもりじゃ!?』

 

「いえ、このお店ちょっと地味なのかなと思って……。フルールや甘兎庵とかはちょっと変わった作りですし」

 

なんで腹話術で自問自答しているんだ?

まぁそれは置いといて、この街は元々洋装の作りが多いから、派手なフルールや、この街には珍しい甘味処の甘兎と比べると内装は確かに地味かもな。

だが……。

 

「確かにそうだが、内装を変えるにしたってどんな風にするつもりだ。少し飾り付ける程度ならまだしも、色々変えるとなると金もかかるし、それで客が増えるかとなるとちょっとな……」

 

「すみません、その……この前シャロさんと『世界のカフェ』という本を読んで、その中に内装が魅力的なお店があったのでつい……」

 

まぁ確かに内装を変えることで得られる利点もあるのだろうが……。

 

「内装が人気の店とかも確かにある。が、そういうのは大抵店主がそういう内装に拘りがあるから出来る事であって、漠然とこんなのがいいって程度でやっても意味がない。さっきも言ったが金もかかるし、内装の良さで客寄せしてもすぐに飽きられる。そう言うのはチノがこの先店を繁盛させた後で、余裕ができた時にやってみたらいいんじゃないか?」

 

「はい……」

 

そう言ってチノの提案を退けた。

チノも必死で案を出してくれたので尊重してやりたいが、そんな甘いことも言ってられないしな……。

すると再びココアが手を上げる。

 

「はい、じゃあ去年みたいにコスプレはどうかな?」

 

「コスプレ?」

 

ココアの提案に疑問を浮かべる。

 

「去年チノちゃんの誕生日に、お店にお客さんいっぱい呼ぶためにコスプレしてチラシ配りしたんだ。結構良かったよ」

 

「効果あったのか?」

 

「うん。ね、チノちゃん、リゼちゃん」

 

「はい、確かにいっぱいお客さん来てくれました」

 

「あぁ。……まぁ、恥ずかしかったけどな」

 

どうやらそれなりに効果があったみたいだな。

まぁこいつらビジュアルは悪くないし、効果があったのも納得だ。

 

「で、具体的には?」

 

「えっとね、ハロウィンに、サンタに、あとラパンとか……」

 

「待て、勝手にラパンの衣装使って大丈夫なのか?」

 

個人でコスプレするのであればともかく、ラパンって小説のキャラだし、店の売上目的なのにそんなことして原作者とか出版社に訴えられたらまずくないか?

 

「大丈夫!原作者様の許可はおりてます!」

 

と、どうぞと言わんばかりに青山さんの方へ手を向ける。

 

「あぁ、そういやそうだったな……」

 

原作者直々に許可がおりてんならまぁ、そりゃ大丈夫か……。

 

「あと、リゼちゃんに(あやか)って軍服とか、千夜ちゃんとシャロちゃんに協力してもらって甘兎とフルールの制服も着たりしたな〜。あ、あとバニーにもなったり!」

 

「ほうほう………え、今なんつった?」

 

「え、バニーだけど……もしかして有宇くん見たいとか?」

 

「アホ!そういう事じゃない!本当にバニーになったのか!?」

 

「うん。……あれ、ダメだった?」

 

「普通に風営法違反だバカ!下手すりゃ営業停止もんだぞ!」

 

「ええ!?」

 

バニー姿が風営法違反とかは法律知らないが、明らかに風俗的にアウトだろ。

確か前に新宿かなんかの店がバニー姿で接客させて営業停止くらったとかいうニュース見たことあるし、絶対やばいって。

てかよく訴えられなかったよな……。

コスプレというのは、まぁ趣旨はあれにしろありかなと思ったが、この調子じゃこの店がいくつあっても足らねぇよ……。

 

「コスプレは無しだ!……まぁ売れるようだしやってみてもいいが、やるならコスプレ内容を僕に許可取ってからにしろ」

 

「は〜い……」

 

ココアは少し残念そうだ。

そんなにしたかったのか?

 

「他!他にないのか!」

 

「あの〜、私もいいでしょうか?」

 

席で座る青山さんが静かに手を上げていた。

本来なら部外者を話に混ぜるわけにはいかないが、ココア達に聞いた話だと、たまにここのバータイムとかに働いてるみたいだし部外者とも言い切れないので話を聞いてみることにする。

 

「えっと、それじゃあどうぞ」

 

「私が学生の頃、マスターはよくお客さんのお話を聞いていました。今のラビットハウスにそれがないとは言いませんが、お客さんが悩みを打ち明けられたりできたらいいと思います。私も昔マスターに小説の相談をよくしたものです」

 

悩み相談……?

まぁ、悪くはないと思うが……いや、いいとは思うんだが……。

 

「とは言ってもお客さんの殆どが大人の方ですし、僕達みたいな若者じゃ人生経験的にそれは難しいかと……」

 

「あらら、そうですか。成る程、私には難しかったですね」

 

「いえ、案としては悪くなかったと思います。要はお客さんとの距離を縮めろってことですよね。ならもっとお客さんとの距離を縮められるよう努力します」

 

「そうですか、参考になってよかったです〜」

 

まぁ悩み相談は出来なくても、客との距離感を保つことは大切だ。

と言っても僕も普段からそれなりにやってるし、ココア達も普段からやってることは言わずと知れているだろう。

ただココア達の場合、一人でいるのが好きな客とかにも話しかけたりしてないか心配だが……。

するとジーと三人が有宇に疑念を抱くように視線を向ける。

 

「なんだよ」

 

「有宇(くん、お兄さん)、青山さんに優しくない?」

 

「別に贔屓(ひいき)などしていない。純然にいいと思った意見を採用しているだけだ」

 

有宇がそう言っても三人は疑念を拭いきれていない様子であったが、有宇は平然と無視した。

 

「他ないのか、他」

 

有宇がそう言うと、リゼが物申す。

 

「有宇、私達ばっかに意見を求めてるけどお前はなんかないのか」

 

リゼの言う通りである。

さっきから有宇は意見を求めるばかりで、自分の意見を言っていない。

だが有宇もちゃんと自分の意見を用意していた。

 

「勿論ある。僕がまず最初に考えたのは値引きだ」

 

「値引き?」

 

「あぁ、駅前のチェーン店とかと比べるとやっぱりコーヒー一杯の値段が高いし、人間やっぱり安いものに釣られるからな。だから値下げがいいと思った」

 

有宇がそう言うと、チノは怪訝な顔をする。

 

「お兄さん、確かに値段を下げればお客さんも増えるかもしれませんが、でも私は反対です。お客さんが少ないとはいえ、私も、そしておじいちゃんもうちのコーヒーには自信があります。その価値を下げるなんてことは……」

 

「知らん。そんなつまらんプライドは捨てろ」

 

有宇はバッサリとチノの意見を退けた。

それに対しココアが反論しようとする。

 

「有宇くん、その言い方は……」

 

「だがチノの意見ももっともだ。一度値段を下げてしまうと、もう値段を上げるわけにはいかなくなるからな。しかもそれで客の数が変わらなければ、結局損することになる。だからこそ工夫すべきなのだ」

 

「工夫って?」

 

「ココア、お前なんでこの街に来たんだ」

 

「え、なに急に?」

 

「いいから答えろ」

 

有宇にそう言われ、ココアは必死に自分がこの街に来たわけを考える。

 

「なんでここに来たって……えっと……チノちゃんに会いに……じゃなくて、この街の学校に通うため……?」

 

「そうだ、それでわからないか?」

 

有宇の言葉の意味がわからず、三人は頭を悩ませる。

すると外野の青山さんが答える。

 

「あの〜もしかして有宇くんさんは、ホームステイ制度のことを言いたいのでしょうか?」

 

「ホームステイ制度……あ!!」

 

ココア達も気づいたようだ。

 

「そうだ、この街はココアのような外から来た学生が、この街の学校に通うために街のあちこちで住み込みでバイトしながら下宿している。つまり今この街には学生……ひときわその中でも高校生が多いというわけだ」

 

有宇もこの街に来る際、この街の学校の制度をネットで調べる際に目にした。

この田舎町に外から若者を呼ぶために街の学校の協力のもと行われている地域活性化制度のようなものだ。

実際ココアのような学生が外の街から集められているため、この街には今、高校生が多いのだ。

 

「つまり、この街の学生を対象としたサービスを展開できれば客を効率よく増やすことができる。そこで僕が提案するのは学割サービスだ」

 

「学割?」

 

「学割……ですか?」

 

「具体的には?」

 

「高校生を対象として、学生証提示で全会計100円引きにする」

 

そう言うと、リゼが尋ねる。

 

「利益に支障は出ないのか?」

 

「問題ない。ブレンドコーヒーをまた例えで出すと、一杯分の豆の原価がおおよそ40円、角砂糖が一つ2円、ミルクが一つ5円から6円程度。つまり一杯の原価は、およそ48円。そこから売価400円で割ってから100かけると12。つまりうちのブレンドコーヒーの原価率は12%というわけだ」

 

「原価率?」

 

ココアが頭にはてなを浮かべる。

リゼがココアに説明する。

 

「原価率っていうのは売価に対する原価の割合のことだ。原材料費÷売価×100で算出できる。そして残りが粗利率、つまり利益になる」

 

リゼがココアに説明したところで話を戻す。

 

「そうだ、一般的にコーヒーのようなドリンク類の原価率は10から20%と言われている。要は原価率がこの間なら大概は問題ないということだ。そして学割をした時の原価率だが、売値を100円引いた300円で計算したところ原価率は16%。つまり利益には支障の出ない範囲だということだ」

 

それを聞くと一同は「おおっ!」と感嘆の声を上げた。

 

「さらに言えば、悪魔で全会計からの100引きだ。これでサンドイッチとかの食べ物もセットで頼んでもらえれば、+αで頼まれた分は今までどおり利益が出る。しかも元々この店は学生の客は少ないし、これまでの利益に支障はそれほど出ないはずだ」

 

もはや有宇のこの力説を聞いて反対意見を出す奴はいなかった。

有宇もそれなりの自信があったからこそ提案したので、特に意外とも思わなかった。

 

「有宇くんすごいね〜。思わず聞き入っちゃったよ」

 

「はい、すごかったです」

 

「あぁ、悪くない意見だ。で、他にはなんかないのか?」

 

「他か……あるにはあるが、まぁそれは後で聞かしてやる。仕事終わったら全員僕の部屋に来い。取り敢えずもう仕事に戻っていいぞ」

 

そう言うと有宇は自分の部屋に戻っていってしまった。

 

「まだなんかあるみたいだね。何だろう」

 

「さぁな。でもあいつのことだ、大丈夫だろう。金に対するがめつさでは信用あるしな」

 

「そうですね」

 

普段から金や自分の損得勘定に関しては色々とうるさい有宇のことだ。

それに、今も皆の納得のいく意見をしっかりとしていたところも見ると、きっといい考えがあるのだろうと三人とも信用しきっていた。

 

 

 

 

 

その日の仕事が終わり、三人は後片付けや着替えが終わった後、言われた通り有宇の部屋の前に来た。

 

「来たか。よし、入れ」

 

そう言われ三人は有宇の部屋の中に入る。

ココア達の部屋と比べると狭い一室である。

そして三人は有宇の机に置いてあるパソコンに注目した。

 

「それってパン祭りのときの……」

 

「あぁ、マスターに貰ったノーパソだ。それで見てもらいたいのがこれだ」

 

有宇がカチッとクリックすると、画面にそれが出てくる。

 

「これって……!」

 

「もしかしてホームページですか?」

 

画面にはRabbit Houseの文字とともに、おしゃれな感じに写っているコーヒーの入ったカップとサイフォンの写真が映し出されている。

初心者が作ったホームページの割にはそれなりの出来であった。

 

「そうだ。至らないところもあるだろうけど、まぁ勘弁してくれ。僕も本読んだりネットで調べたりして色々やってみたんだが、こいつが中々難しくてな。最近ネットで知り合った『ちゃっきーさん』って人にアドバイスを請いながらなんとか昨日完成したんだ」

 

「ネットで知り合ったって……それ大丈夫なのか?」

 

「なに、それなりに信用できる人間だと思って力を借りた。問題ない。ともかく、これで色々と情報を発信できるようになったわけだ」

 

そう言うと三人は再び感心したようだ。

……実はサーバー代が年間5000円かかるのだが、まぁ必要経費だろう。マスターにはちゃんと言ったしな。

 

「おお、すごいね有宇くん!有宇くんならきっとネットに強い弁護士とかにもなれそうだね!」

 

「あーココア、褒めるのは構わんが、その不穏な呼び名だけはやめてくれ……」

 

何故かわからないが、その呼び名は不名誉な気がしてならない……。

 

「そう?いいと思うのに……。有宇くんが使わないなら私が将来名乗ることにするよ。ネットに強い街の国際バリスタ弁護士……うん、かっこいい!!」

 

「勝手にしてくれ……」

 

ココアを放っておいて話を進める。

 

「あーじゃあ次はこれを見てくれ」

 

有宇はホームページのURLをクリックする。

すると白い鳥と青い背景が目印のサイトに飛んだ。

そこにもRabbit Houseの文字がある。

 

「これは?」

 

「Gtitter(グチッター)───巷で有名なSNSだ。某米大統領も政治的発言をするのに利用するなど、情報の発信力の点でいえば一番力があるSNSだ。アカウント作ったからこれで情報を発信していこうと思う。お前達にも後でIDとパスワードを教えておくから何かあれば呟いてくれ。仮にも店のアカウントだから変なことは呟くなよ」

 

チノとリゼはわかったと言って、早速携帯でグチッターをインストールし始めた。

するとココアが有宇に聞く。

 

「これどうやって使うの?」

 

「なに、簡単だ。普通にアプリストアにアプリがあるからそこでダウンロードしてくれれば……」

 

そこで有宇は気づいた。

 

「……そういえばココアはガラケーだったな」

 

「えへへ、ごめんね」

 

チノとリゼはちゃんとスマホを持っているのだが、ココアは時代錯誤のガラケーなのだ。

今時の若者だというのにガラケーなんて、ある意味稀少な存在ではあるが、色々と不便だから買い替えて欲しいものだ。

 

「……ココアにはパソコンのパスワードも渡しておくから、何かあればパソコンからやってくれ。でも変なこと呟いたりすんなよ。この中で一番炎上しそうなこと呟きそうだし」

 

「そんなことしないよ〜!」

 

どうだかな。

念の為こいつがパソコン持ち出す時は色々と確認しておこう……。

 

「それで、ホームページとSNSで店の情報を発信するのがお前の作戦ってわけか」

 

「あぁ、ネット広告の強さは計り知れないからな。勿論炎上などの危険も伴うから扱いは慎重にだけどな。それにグチッターを使ったフォロワーを対象としたサービス展開とかもやろうと思えば出来るし、サービスの幅が広がるという意味でもやる意味は十分あると思う」

 

それを聞くと三人とも有宇に感心して、口々に賛辞の言葉を言う。

 

「お兄さん……そこまでお店のことを!」

 

「中々やるじゃないか有宇」

 

「すごいね有宇くん、お姉ちゃん感動しちゃったよ」

 

三人に褒め称えられると、有宇は微笑を浮かべる。

 

「ありがとう。でだ、実はまだ他にも案があってだな……お前達に協力して欲しいんだが……」

 

((な、なんか嫌な予感がする(します)……))

 

有宇の微笑から漂う怪しげな雰囲気に危機感を感じ、リゼとチノは警戒する。

だが疑うことを知らないココアはそんなことを気にもせず有宇にこう言ってしまう。

 

「なになに?いいよ!お姉ちゃん達に出来る事があれば何でも言って!」

 

あっバカ……。

リゼとチノがそう思った時にはもう遅い。

有宇はニンマリと怪しげな笑みを浮かべた。

 

「そうかそうか、何でもね……。それじゃあ頼もうか……」

 

有宇は三人に紙を手渡す。

 

「これは……歌の歌詞?」

 

「「おい有宇(お兄さん)、これはなんだ(なんですか)?」」

 

「さっき作ったホームページにラビットハウスのPVを乗せる。そこでお前達には歌って踊って貰うぞ」

 

「「「ええぇぇぇぇぇ!?」」」




本当はもう少し早く投稿する予定だったのですが、ヘルシェイク矢野のことを考えていて遅れました。
次話に続きます。
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