IS《インフィニット・ストラトス》ザ・ウォーカー 作:普通の魔法使い
——どうしてボクはこうなるの?
その問いに答える者はいなかった。
少年の傍には人型をした黒く焦げた物体しかない。
——誰か助けて……
屋根が無くなった建物の中に雨が降りこむ。
その雨は所々燃えている炎を消すかのように物凄い勢いで降り込む。
——もうどうにでもなれ……
少年の傍らに出来た水たまりに紫電が走る。
——こんな事が起こるならもう……死にたい……
少年はこの世に絶望した。もうどうなっても良い。そんな思いが少年の胸を駆けた。
その時、少年を打ち付けていた雨が突然消えた。
そして頭上から若い女性の声が聞こえる。
「こんな所にいたのね。その恰好じゃ風邪を引いちゃうよ。さぁ、立てる?」
少年はその言葉を聞くと安心したのかその女性の胸に倒れるようにし意識を失う。
「ちょっ!? ……って気絶しただけか」
よっ、と掛け声とともに少年を持ち上げる。
そして、ぼそぼそとその少年の耳元で囁く。
その顔はまるで聖母の様だった。
「……またあの夢か」
少年は起き上がると、まだ覚醒仕切っていない頭を働かせ時計を見る。時刻は朝の五時半を指していた。
それを確認した後、少年はシャワーを浴び頭を覚醒させる。
この時、少年の身体には無数の火傷跡があったが、それを気にすることもなく黙々と準備をしていく。
「あら? 今日も早いのね」
「……勝手に入って来るなと言ったはずだ、クリスタ」
「良いじゃない別に」
入り口にクリスタと呼ばれた赤い髪の少女が腕を組みながら壁に寄り掛かり立っていた。
「それにあの人からの伝言があるし」
「……分かった。すぐに行く」
「じゃあ何時もの所にね」
じゃまた後でと言いながら去っていくクリスタの後ろ姿を見ながら、またあの人に会えるという事に喜びを覚えていた。
●
「……小室計、只今到着しました」
薄暗い会議室のような所に計の声が響く。
しかし、そこには誰も居ないかのように静まり返っていた。
計は気にしないかのように部屋に入っていく。
ふと、後から人が近づく気配がし振り向く。
その瞬間、何者かが計に抱き付く。
「いやー、久し振り! 元気にしてたかな?」
「……久し振り。元気にしてたよ、姉さん」
計と同じぐらいの身長の黒い艶やかな髪を腰までのばした女性は久しぶりに会った計に嬉しそうに頬擦りをする。
そんな時間がしばらくたち、ようやく落ち着いたのか、頬擦りを止め計の正面に立つ。
「すかっかり大きくなっちゃって……また格好良くなったね」
その言葉に計は顔を赤らめながら「……そんな事はない」と答える。
「……ところで今回の任務は?」
「あら、恥ずかしいからって話題を変えようとするとは可愛いところがあるねぇ」
少し計をいじった後、先程と同じ女性とは思えない、鋭い顔つきになる。
「今回のミッションは要人護衛よ」
手に持っていたリモコンを操り、空中投影ディスプレイに今回の作戦の詳細が映し出される。
「護衛対象は現アメリカ合衆国大統領、トーマス・テスタロッサ。内容は今週行われる大統領演説の際、IS過激派による大統領暗殺の阻止よ」
トーマス・テスタロッサ
現アメリカ合衆国大統領である彼は現在、世界中で現存する兵器を越える兵器──ISを唯一使用することの出来る女性が優位な社会を認めておらず、世界でも数少ない男女平等を守っているが、それを由としない過激派に先月だけでも20回は襲撃されている。
幸いISは有事の時以外は使用不可となっているため、これまでの襲撃ではそこまで大事にはなっていないが、次に行われる演説ではISは3機だけだが護衛に付くことになる。
人選は慎重に行うが、それでも過激派の息のかかった奴がISに乗る事になるかもしれない。
そのもしもの事の為に、今回の任務が依頼されたのだ。
「……最大3機のISを相手にするのか」
「無論、そうならないように人選はかなり綿密に行われるらしいわ。ただ、もしもそうなった時は『能力』の使用と
それを聞いた計は普段無表情な彼からは考えられないような獰猛な笑みを浮かべるが、すぐに‘姉さん’によって頬を引っ張られる。
「こ〜ら、そんな顔したら折角美男子なのに勿体ないぞ」
「……別に美男子ではない」
むすっとする計を見た‘姉さん’は、にゃはははと笑いながら頬を引っ張っていった手を離す。
「それでは貴官の健闘を祈る」
「ハッ!」
●
計が部屋を出た後しばらくするとクリスタが入ってきた。
「貴女もなかなか食えない方ですね、彩夏」
彩夏と呼ばれた女性は先程とは違い、鞘の抜けた刀の様に鋭い雰囲気を纏っていた。
「計は戦いと言う運命からは逃れられない。ならば為るべく場数を踏ませ少しでもこの先生存率を高める為にはこうするしかなかった」
「ほぅ、それはそれは……あなたに考えがあるのならば私は何も口出ししませんよ」
暫しの沈黙。その後クリスタは静かに彩夏に聞く。
「貴女はこの事件で計が何かしらの『能力』が目覚めると思っているのですか?」
「……
「それもそうですね。ならば私はあなたの届かない場所を補いましょう」
「……感謝する」
頭を下げる彩夏にクリスタはカラカラ笑いながら「頭を下げなくてもいいです」と言う。
「……それで、私の任務は?」
クリスタの雰囲気が切り替わる。
「貴官の任務は──」
その言葉にクリスタは目を見開く。
「いやはや……ある程度予想は付いていたんですがねぇ……」
「貴女には迷惑を掛ける……でもこれは──」
「──これは計の為、ですよね? 分かっています。この世界の情勢からして心の準備はしていたので……では私は任務の準備でもしましょうか」
部屋を出る前に彩夏に敬礼をする。
そして残された彩夏は暗い顔をしながらこれからの行く末を案じるのであった。
●
数日後、アメリカ某州にて現大統領トーマス・テスタロッサが民衆に向かい演説を行なっていた。
前日までテレビ演説にするよう大統領の周りの者は進言したが、大統領であるトーマスは「私が国民の前でこれからの合衆国の行く末を言わなければならない。外は危険? 危険度で言ったら中だって同じ位危険だ。故に私は国民の前で演説をする」と言い、さらには護衛として内密に数人に依頼をしていたが、それは演説が終わるまで誰一人と知らされては無かった。
●
(凄い人だな)
計は黒い口元まで襟があるロングコートを着こみ演説会場の一番前に来ていた。
季節は冬。あまりの寒さの為このような格好をしていてもそれ程怪しまれると言う事はない。
(それにしても……)
ふと顔を上げると、そこには3機のISが空を飛び警戒していた。
計は仕事柄ISと
(しかし……)
今回の任務は大統領の暗殺の阻止。必要ならば一般人の犠牲は厭わない。そう言う心構えをしていると、護衛のIS3機の様子がおかしいことに気が付いた。
(……妙にそわそわしてるな……嫌な予感がする)
自身の体に仕込んである武装をさり気なく確認し、警戒体制にはいる。
それからしばらくし、大統領が姿を現す。
その時、上空に居たISが突然銃を展開。そのまま大統領に向かって撃つ。
気が付いたものはごく少数。それも珍しいISを見ようと少し離れたところにいる者ばかりであった。
弾は空気を切り裂きながら大統領の頭に吸い込まれる様に進む。
後少しで大統領の頭は木っ端微塵になるだろう。IS操縦者は頭の中でそう考えていた。
しかし、その目論みは一人の少年によって砕かれる。
「……」
計は驚異的な速さで壇上に上ると腕を機械で覆い銃弾に握り止める。
「……大丈夫か?」
「あ、ああ。助かった」
「「「キャアァァァァ!!」」」
会場は混乱し、我先に逃げていく人であふれ返っている。何人かは転び他人に踏まれ命を落としていた。
「……これより作戦行動に移る。貴方は避難して下さい」
計は大統領にそう言うと、全身に機械を纏わせる。
「あ、IS!?」
「違う、これは
その言葉と共に大統領の周りに小さな機械が回り始める。
「その状態で安全な場所まで行け。攻撃はその機械が防御してくれる」
そう言い終わると計はとある武器を展開する。
全長約15メートル、幅約5メートルもある巨大な黒い砲。
対IS戦用大型固定ビーム砲台──
展開と同時にアンカーを射出。機体を地面に固定させる。そしてエネルギーを溜める。
IS操縦者は、その膨大なエネルギーが自分達に向けられたら、ISの要であるシールドエネルギーどころか、絶対防御すら抜けて自分達を肉片一つ残さず消し去ることが本能で理解した。だからこそ彼女等は今もっとも生き残ることが出来る選択をする。
「あれは不味いぞ! 全機即時撤退!」
隊長と思わしき人物からの命令と共に各機散開する。
しかし、この時彼女達はミスをした。通常ならある程度離れていれば1機のみ撃破され残りは生き残ることが出来たかもしれない。しかし、
「何ッ!? こんなに離れていても全機を飲み込むだと!?」
それが彼女の発した最後の言葉となった。
今回は圧倒的火力のモードを使用したが、未だ未完成品の為今の一撃で砲身が焼け爛れ、もう使い物にならなくなっていた。
地面に固定させていたアンカーを回収し、計は機械を纏ったまま灰色の粒子を撒き散らしながらその場から姿を消した。
●
「……小室計、ただ今帰還しました」
「任務お疲れさまです計」
クリスタが計を労う。
「それと悪いんだけどまた任務が有るんだけど……良いかな?」
彩夏が少し申し訳なさそうに言うか、計は即「問題ない」と言う。
「では、次の任務は──」
そう言い分厚い本と、ビニールに包まれた服を計に渡す。
「──IS学園に入学することよ」
役3ヶ月かけてなのはが書けない時に書いていた物です。その為試験的な三人称表現がたくさんあります。
一応終わりは考えているのですが、キャラの名前が全く決まらないと言う謎。一体どうしたら良いのかね。
と言う訳で今回は記念すべき第一話ですが、正直言ってあんまり内容が理解できていないのではないでしょうか。
計がISに乗れる理由やらはまた今度載せますので、今暫くお待ちください。
そして今回は戦闘らしい戦闘は無いけど内容的にしょうがないと思ってください。
また次回お会いしましょう。