スパロボVで頑張る   作:白い人

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繋がる想い

 時空融合。

 エンブリヲ達によって行われた世界の崩壊。

 それを食い止めたのは竜の民の始祖にして、次元制御も可能な存在アウラ。

 だがそれは一時の凌ぎでしかない事は誰の目から見ても明白であった。

 アウラが力尽きた時、宇宙世紀と西暦世界を飲み込んでしまうだろう。

 しかし希望がない訳ではなかった。

 竜の巫女であるサラマンディーネがアウラと交信した時、アウラから一つの道が提案される事になる。

 

『イスカンダルへ行け』

 

 ヤマトの乗員を始め、誰もが驚きを隠せないでいた。

 別次元の事を知っていたアウラに対してもだが、この世界崩壊を止める術をあのイスカンダルが持っている事に対してもである。

 ならば、次元の壁を越えて新正暦世界へと戻るしかあるまい。

 その為の道も示され始めているのだから。

 だが、その前に。

 今は戻ってきたあいつの話を聞かなければならなかった。

 そう、高坂翔の話を……。

 

「って事でキリキリ話なさい」

「アンジュリーゼ様、そんな尋問みたいな事は……」

 

 ヤマトの一室、そこに高坂翔を始めとするメンバーが集まっていた。

 時空融合に加えて、復活怪人の使徒のゴタゴタで中々聞けなかったが最大の疑問が残っているのだ。

 それ即ち。

 

「あの状況で生き残るとか、どんな魔法を使ったか気になるでしょうが!」

 

 アンジュのそれが全員の疑問であった。

 ゲシュペンスト・タイプSのコックピットに寸分なくサーベルを刺されたのだ。

 誰もが翔の死を確信していた筈だ。

 だと言うのに生きていたのだから驚きである。

 

「生きていたのは嬉しいけど、確かにどうやって生きていたのかは気になるな」

「だよね。絶対助からないと思ってたもん」

「ああ、うん。ちゃんと説明するよ。その前にチトセは?」

 

 全員からの圧力混じりの質問に苦笑しながら頷く翔。

 しかしそれよりも助け出した千歳の事が気になっていた。

 あれから彼女は意識を失ったままの状態であった。

 

「大丈夫ですショウさん。診察結果で異常は見られませんでした。後は目覚めるだけだと思います」

「そっか。ありがとなナイン」

 

 そんな疑問にすぐに答えてくれたナインに礼を言うと、翔は息を吐き出した。

 今度こそ彼等の質問に答える為だ。

 

「それじゃあ説明するよ。あの時、何があったかを」

「……」

「まぁ、ぶっちゃけて言うとアレだ。コックピットが潰される直前、転移したんだよ」

「え?」

 

 あっさりと言う翔に全員が呆然となる。

 転移したと簡単に言うが、そんな事が簡単に起こるのかと疑問も出てくる。

 だが生きていた当人がそう言うのだから、そうなのだろう。

 

「一応聞いておくが自分の意思で?」

「いや、さすがにそれは無理。あっちで教授と話したんだけど、俺は転移しやすい特異体質の持ち主、って考えるのがいいかもしれないってね」

 

 ああ、と一部の人間は感づいた。

 よくよく考えれば翔が転移したのは一度ではない。

 そう、そもそも新正暦世界に転移してやってきた人間なのだから。

 

「しかし教授って事は」

「ええ。ソウジさん。俺が転移した先は新正暦世界のニコラ・ヴィルヘルム研究所日本支部。ようするに一番最初に転移した先に飛んだんですよ」

 

 話はあの戦いが起こった直後へと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

「貴方がここに転移してやってきたとは驚きよ」

 

 ベッドに寝かされていた翔が目を覚まして、とある人物と会っていた。

 

「お久しぶりです教授」

「ええ。でもヤマト帰還前に会えるとは思ってなかったわ」

 

 アイナ・クルセイド。

 それはかつて自分を拾ってくれた相手、ニコラ研究所の職員の一人である。

 

「しかし色々と貴方も波乱万丈な生活を送ってるわね」

「まぁ、今更ですね」

「それもそうね。で一応、報告として聞いてるけれど」

「ヤマトの事ですよね」

「ええ」

 

 目が覚めてから、ヤマトの旅路の事は大体報告してある。

 並行世界への転移は勿論、そこで起こった出来事なども全部。

 

「上層部は焦ってるわ。頼みの綱として送り出したヤマトがイスカンダルに着いていない所か別世界に飛ばされるなんてね」

「でしょうね」

 

 無事である事は分かったが、まさかの別世界である。

 地球滅亡のカウントダウンが始まっている今、彼等の焦りは翔にも理解できた。

 

「地球はどうなんです?」

「ガミラスの攻撃はあれから一切ない事から、地球圏から手を引いたと判断。ヤマトが間に合わなかった事を考えて、コロニーへの脱出活動が行われているわ」

 

 ガミラスの攻撃で傷ついたコロニーの修復活動が始まったらしい。

 万が一、間に合わなかった事を考えると妥当な考えである。

 

「で、もう一つは今の私達の研究ね」

「研究?」

「並行世界への転移よ」

「!」

 

 並行世界の証明がされた以上、研究されている可能性があると話には聞いてはいたが実際にその研究がされている事を聞くと驚きを隠せない。

 つまりガミラスの脅威がない世界へ逃げる事も考えているという事か。

 

「その通りよ。ただ研究は停滞していた……のだけど運がいいのか悪いのか、進歩がありそうなの」

「……俺ですか?」

「ええ」

 

 停滞していたが、それも終わりそうだと。

 それはつまり何か切欠があったという事だが、その原因はすぐに思いついた。

 隠す事もない、翔自身である。

 

「貴方が転移した時、私達は実験をしていたの。つまり転移してきた時の観測データが手に入った」

「それを解析すれば」

「ええ。遠くない未来、並行世界への転移が可能になるでしょう」

 

 まさか自分の転移がきっかけとは更に驚きを隠せない。

 並行世界転移。

 これがこの世界に何を齎すのか。それを思えば確立されて良かったのかと考えてしまう。

 だが、今はそれが翔にとってありがたい事であった。

 

「……教授」

「行くの?」

「はい」

 

 翔が何を言いたいのかすぐに理解した。

 行くつもりなのだ。並行世界へ転移したヤマトの所に。

 

「機体は適当なのを貸してくれれば……」

「一ついいかしら」

「なんです?」

「ここで休んでもいいのではないかしら?」

 

 わざわざ苦しい戦いの舞台へと戻らなくてもいい。

 教授はそう言っているのだ。

 

「貴方は確かに自分の意思でゲシュペンストに乗ったけれど、その後は奇妙な命令でヤマトに乗っただけ。ここで休んでも問題ないと思うわ」

「似たような事、前にも言われましたよ」

 

 かつて千歳と総司に話した時にも同じよう事を言われた事を思い出す翔。

 だけどあの時、返した言葉は今も覚えている。

 そして今もそれは変わらない。

 

「すいません。それでも俺は行きます」

「……決意は変わらないのね」

「はい」

「分かったわ」

 

 教授が頷く。

 誰の目から見ても明らかだ。

 翔は何を言われようが、自分の道を進むのだと。

 

「なら大人しく休んでいなさい。準備はこっちでやっておくわ」

「準備?」

「これよ」

「それって……」

 

 教授が取り出したのは一枚のデータディスク。

 それには見覚えがあった。

 

「俺の……?」

「ええ。面白い物が沢山あったわ。夢物語から実用できそうな物までね。ちょっと借りてくわ」

 

 それだけ言うと出て行く教授。

 それを見送ると、翔はベッドに倒れこんだ。

 準備をする、という事はきっと機体やら転移やらの準備なのだろう。

 もし用意してくれるのだとしたらありがたい。

 それならば自分に今できるのはその時に備えて休息を取る事だろう。

 翔は何か違和感を覚えながらも、大人しく休む事にした。

 一方、部屋を出た教授はすぐに格納庫へと向かった。

 現状、少しでも時間が惜しい。

 格納庫に入ると、近くにいた整備班班長を捕まえる。

 

「班長」

「どうしたんです教授?」

「タイプSは?」

「タイプSなら今、ばらし終えた所ですよ」

 

 目先を追えばそこには、装甲を全て外された機体、ゲシュペンストMkⅡ・タイプSの姿が見える。

 それを確認すると好都合だと呟く。

 

「それをベースに改修するわ」

「改修ですか?」

「ええ。プランは大体出来てるの。後は作業するだけ」

「はぁ」

 

 突然の話に、うまくついていけない班長。

 だが気にする事なく話を進めて行く教授。

 

「シズキはいるかしら?」

「ええ。今はヒュッケバインの所だと思いますが……」

「呼んできて。ドイツ支部とアメリカ支部にも協力を要請するわ」

「へ?」

 

 どうやら思っていた以上に大きな話になっている事に驚きを隠せない班長。

 だが話はそれだけではなかった。

 

「それとトロニウムも使うわ」

「……はい?」

「パイロットから例の念が検出されたわ。T-LINKシステムも組み込むわよ」

「ちょ、ちょっと待ってください教授!」

 

 教授から出た言葉に驚きながらも悲鳴じみた声を上げる班長。

 その声に周囲の人間も驚いて二人を見る。

 

「トロニウムエンジンは確かに完成してますし、T-LINKシステムとのリンク制御も問題ありません」

「ならいいじゃない」

「ですがトロニウムは地球じゃ手に入らない貴重な物質な上に6つしかないと聞いています!それをゲシュペンストに組み込むなんて……」

「うるさいわね。MkⅢと参式に組み込むらしいけど、まだMkⅡも弐式も出来てないんでしょ。それなら今使ってもいいじゃない」

「で、ですが……!」

 

 色々と文句をつけてくる班長。

 だがそれを聞くのも飽きてきたのか、無視して話を進める事にした。

 

「後、あの機関から提供があった資材も使うわ」

「はぁ!?あれも使うんですか!確かゾル・オリハルなんとかっていう金属ですよね!ど、どれだけ貴重な物を使うんですか!?」

 

 今度こそ悲鳴を上げる班長。

 先程から教授が言う物は本当に貴重な物であり、旧式のカスタム機に使うような代物ではない。

 だが教授は本気でそれを使うらしい。

 

「……冗談じゃないんですよね」

「勿論よ」

 

 そこまで言われて、大きな息を吐き出した班長。

 もうこうなった以上、彼女の考えを覆すのは不可能だ。

 

「……分かりましたよ。もうどーにでもしてください」

「ならさっさと作業を開始して。データはこれに纏めておいたわ」

「了解です」

 

 ディスクを受け取って作業場に戻って行く班長。

 それを見送ると、一人の女性が教授の下にやってくる。

 

「あのアイナ教授。呼ばれたみたいですが……」

 

 シズキ・シズカワ。

 ドイツ支部所属の人間で、とある理由で日本支部に出向してきたパイロットである。

 

「ええ。ドイツ支部に協力を要請したいの。連絡を取ってくれるかしら?」

「は、はい。それは分かりましたが何を……?」

「地球を救う為の手伝いよ」

 

 それだけ言うと、一枚のデータディスクをシズキに放り投げる。

 

「至急、それを作ってこっちに運んできて欲しいって事を伝えてくれるかしら。完成は早ければ早い程いいわ」

「わ、分かりました!」

 

 ディスクを受け取ったシズキは連絡を取るべく慌てて通信施設へと足を向ける。

 それを見送ると教授は次の作業を進める事にした。

 時間は貴重なもの。

 それを無駄にする訳にはいかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 翔がヴィルヘルム研究所日本支部に転移してきてから二週間が経った。

 その僅か二週間でゲシュペンストの改修は順調に進んでいた。

 新装甲の取り付けは勿論、動力部の強化にT-LINKシステムの搭載。

 ヒュッケバインを開発したドイツ支部からは、MkⅡ用の武器を調整しなおした武器を。

 グルンガストを開発したアメリカ支部からは、新装備搭載の右腕を提供されていた。

 他にも多数の新金属を使ったクローを始め、様々な新装備を搭載されていく。

 翔自身も暇ではない。

 新機体を乗りこなす為にヒュッケバインのパイロットであるシズキと共にシミュレーションを行い、T-LINKシステムを使いこなす訓練も行っていた。

 そして更に一週間後。

 怒涛とも言える短期間で新型のゲシュペンストが完成していた。

 

『どうかしら』

「いいですね。こんなに動かしやすいとは思いませんでした」

 

 ゲシュペンスト改を実際に乗り回す翔は感嘆の声を出すしかなかった。

 その操縦性は素晴らしいものだし、専用機として開発されただけ自分との親和性も非常に高い。

 自分の思う通りに動いてくれる機体。

 それをこの短期間でくみ上げてくれたスタッフ達には頭が下がる一方である。

 

「しかし武器の開発はまだなんですね」

「まぁ、機体の組み上げが終わっただけ凄いと思うよ」

 

 大地を駆けるゲシュペンスト改に並行する形でついてくるシズキのヒュッケバイン。

 彼女の言葉に返事をする。

 実際、幾つかの武器案がありそちらの開発も行われる予定であったが一先ず機体本体の開発が最優先と言う事で、そちらの方は手付かずである。

 おかげでゲシュペンスト改に搭載されている武器は右腕の大型槍ガングニールに尻尾とも言えるテイルブレード。更に両腕のクローに元からあったメガ・ブラスター・キャノンぐらいなものである。

 

「これでも十分戦えるさ。こいつの本領は近接戦闘だからな」

「ゲシュペンストサイズの特機。小型化したグルンガストみたいなものですからね、その機体は」

 

 そう、トロニウムエンジンを搭載した事により出力も大幅に向上。

 そのパワーは特機にも引けを取らないレベルになっていた。

 

「そろそろいいかしら」

「ええ。付き合ってくれてありがとうございました」

 

 テスト機動を終えて、研究所近くへと戻って行く二機。

 するとそこには大型の機材が並べられていた。

 

『ショウ君。追加のテストだけどいいかしら?」

「教授、これは?」

『並行世界転移のテスト装置よ。貴方のT-LINKシステムと連動させてみたいのよ』

「了解です」

 

 例の転移システムと聞いて頷く。

 ヤマトに戻るにはこちらのテストも行わなければならない。

 翔は機体を転移装置の近くに止めると、ケーブルを繋ぎ始める。

 シズキは近くで警備を行ってくれるようだ。

 

『準備完了。こちらの装置を起動すると同時に、ショウ君もT-LINKシステムを起動してみて』

「はい」

 

 遂に行われるテスト。

 転移装置の起動を確認すると同時にショウもまたT-LINKシステムの起動を行う。

 翔としてはT-LINKシステムのもう一つの問題に気づいてはいたが、転移の為には仕方ないと割り切る。

 教授やシズキに伝えるには情報ソースが足りないのもあるが。

 

「……」

 

 装置を起動して数分。

 何も感じられず、若干だが焦りが生まれてくる。

 このまま何も手応えを感じられる事なく終わってしまうのかと思い始めてきた。

 更に数分待つが何も反応がない。

 今日はここまでかと教授が実験終了の指示を出そうとしたその時。

 

「……声が」

『えっ?』

「声が聞こえる……」

 

 翔の耳に誰かの声が聞こえてきた。

 だが教授やシズキ達には何も聞こえてこない。

 空耳か何かかと思ったが、翔にははっきりと聞こえてきた。

 

「この声は……バナージ!」

 

 今度こそはっきりと聞こえた。

 耳からではない、脳に直接伝わるような声。

 間違いない。あの声はバナージ。バナージ・リンクスの声だ。

 

「感じる……みんなの声が……気配が……!」

『転移装置に異常!?いえ……正常に起動!?』

『まさか……転移するのショウ君!?』

「ええっ!?」

 

 スタッフ達の話し声の内容を聞いて驚きの声を上げるシズキ。

 まさか並行世界へ転移するつもりなのか。

 

「すいません教授、シズキ!俺は行きます!」

「ショウ、本気!?」

『行けるの?』

 

 シズキは本気でこのまま転移できるのかと心配の声をあげ、教授は本当に転移できるのか問いかける。

 翔は両方に頷きで返事を行った。

 逆に今でなければ飛べないだろうという確信もあった為だ。

 

『……なら行きなさい。今度はしっかりとね』

「ああ、もう!ショウ、気をつけて。イスカンダルへ必ず辿り着いて」

「任せろ!」

 

 巻き込まれないようにとスタッフ達が装置近くから退去する。

 

『ああ、そうだ。最後に一ついい?』

「どうしたんです教授?」

『その機体名はどうする?一応、ゲシュペンストMKⅡ・タイプS改ってつけてあるけど』

「……」

 

 そういえば何も決めていなかった事を思い出す。

 だがどうせならしっかりとした名前を登録していきたい。

 少しだけ思考の海に潜ると、自然に浮かび上がった名前を口にした。

 

「ゲシュペンスト・タイプSBでお願いします」

『分かったわ。でもB?何の略?』

「ああ、それは……」

 

 新しい愛機の姿は見知ったゲシュテルベン改に近しいが、その全体的な姿は悪魔的と言っていい。

 ここではない何処かの世界。

 いつかどこかで咲くかもしれない鉄血の花。

 その系譜を受け継いだと言うべき機体につけるならば……。

 

「……それは内緒という事で」

 

 それだけ答えると、再び意識を集中させる。

 行くべき場所。そこにいる光を目指して。

 

「……行け!」

 

 飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「と、言う訳だ」

 

 ヤマトの一室で話終えた翔が一息つく。

 

「なるほど。あのゲシュペンストはヴィルヘルム研究所で作られたという事か」

「ああ」

 

 助かった理由。

 そして新しく乗ってきた機体の謎が解けた。

 

「しかし助かったよバナージ。お前の声がなければきっとここに辿り着けなかった」

 

 あの光がなかったらきっとここにはこれなかったショウは言う。

 

「それはこっちもだよ。ショウの声が聞こえたから、繋げたんだ」

 

 バナージもショウの声が聞こえたから、と答える。

 あの時、あの瞬間、お互いに声を出し合ったからこそ届いたとも言える。 

 

「……」

 

 ナインはそれを聞きながら思考を走らせる。

 幾つかの謎は解けた。だが転移体質を始め色々と疑問に残る点も多い。

 それは翔自身も感じている事だし、実際は偶然が続いただけの可能性、それに加えて本当にそういう体質なのかもしれない。

 そこは考えても仕方のないと思うしかない。

 翔は無事に助かった。それだけで良かったのだから。

 他のみんなも同じような考えなのだろう。

 もう疑問は口に出さずに翔の帰還を祝っていると同時に彼がいない間に起こった事を話している。

 そうなると懸念事項は後一つ。

 

「……医務室から連絡があった。チトセ君が目を覚ましたようだ」

「!」

 

 聞くと同時に飛び出す翔。

 そう、後は彼女の問題だけである。

 僅か数分で医務室へ辿り着くと、出迎えてくれたのは佐渡医師と原田衛生士であった。

 話によれば意識は戻って、落ち着いてもいるそうだが大分落ち込んでいるとの事。

 当然と言えば当然である。

 敵に拉致され洗脳されていたとは言え、敵対し大切な人を殺したと思っていたのだ。受けた心の傷がどれ程、大きいものか。

 

「チトセ」

「……ショウ」

「ああ」

 

 ベッドに横になっているチトセに近づくショウ。

 チトセの瞳には怯え、失望、そんな負の感情が写っている。

 念動力者となった影響かは分からないが、表面に浮かんでいる以外の感情もなんとなく分かるようになっていた。

 

「無事で良かったよ」

「……」

「本当に君が無事で良かった」

「わ、私……」

 

 何かを言いたいのだろう。

 だが震える体や心のせいか、中々千歳から声が出てこない。

 翔は静かに声が出るのを待っていた。

 

「あ、貴方の事を……」

「ピンピンしてるから気にするな」

「敵として戦って……」

「誰も気にしてないし、悪いのはガーディムの連中だから」

 

 そうだ。

 千歳の落ち度なんて何処にもない。

 しかし。

 

(割り切れないものもある……か)

 

 それでも、と千歳は自分を責めているのだろう。

 だけど、と翔も思う。

 

「なぁ、チトセ」

「……」

「俺は君が好きだ」

「!」

 

 告白。

 あの日、別れ際にした言葉をもう一度口にした。

 

「今でも変わらない俺の想いだ」

「ショウ……」

 

 千歳が感じている重責も、何もかも一緒に背負おう。

 

「だから、なんだ。大丈夫だ。これから一緒に取り戻していこう」

「……うん」

 

 君/貴方が傍にいてくれるだけで頑張れる。

 

「ショウ……ありがとう」

「ああ」

「私も貴方が好きです」




後継機となったオリジナル機体、ゲシュペンスト・タイプSBの見た目。
ゲシュペンストMk2・Sをゲシュテルベン改二号機のようにして、ガンダムバルバトス・ルプルスレクスを足して、右腕にガングニールを搭載すれば完成!

次回から日記形式に戻ります。

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