「くそっ!また来やがる!」
「十時の方向からまた!」
アイナ・クルセイドが放った光から現れたのは見た事がある軍勢であった。
ティターンズやネオジオン、木星帝国のMSから始まり、インベーダーやミケーネの連中など今まで倒してきた連中である。
「こいつら倒しても倒しても湧いてきやがる……!」
「よそ見をするな!とにかく倒すんだよ!」
厄介なのはその数。
今までの旅路の中で倒してきた敵が全て同時に現れたと言わんばかりの量に地球艦隊・天駆とは言え悲鳴を上げたくもなる。
後方に待機していた戦艦や待機していたメンバー全てが出撃し、その火力を集中させている状況だ。
だが厄介なのはそれだけではない。
「北辰……!」
「ドゥガチ!」
「Dr.ヘルにハーデスまで……!」
「ブラックノワールもいるなんて……!」
敵組織の親玉というべき存在まで蘇っている始末。
そこに意識や意志があるかは不明だが、その力は間違いなく本物と同等だ。
「だけど!」
「再生怪人は倒されるのがお約束だ!」
勿論、そう簡単に負けない力を持っている。
彼等の力はその程度では負けやしない。
しかしそれ以上に懸念すべき点は一つ。
「エネルギーが……!」
「弾薬も残り少ない、補給が必要だ!」
さすがにエネルギーや弾薬がなければ歴戦の戦士達も戦闘継続は困難だ。
各艦の整備士達もフル回転で補給準備を進めているが、残された物資にも限りがある。
このままではいずれ兵站切れによる敗北は免れないだろう。
だからこそ打開策がいる。
この終わりのない敵の出現を止める必要があるのだ。
そしてその鍵を握るのはただ一人。
この現象を起こした犯人であるアイナ・クルセイド、ただ一人。
「止めさせてもらう!」
光の檻がなくなった事により自由行動が可能になったショウのゲシュペンストを始め、数機の機体がアイナ・クルセイドの元へと飛び出していく。
先程の会話に動揺しなかった訳ではない。
しかしこの状況をどうにかしなければならないと思っているのはこの場にいる全員が抱いた共通認識だ。
だからこそ、各メンバーはすぐにショウと共に元凶へ駆け出したのだ。
『おや、さすがに態勢を立て直すが早い』
「お前を倒せば止まるだろう!」
『その考えは正しい。まぁ、問題は』
放たれたのはスラッシュ・リッパー。
三つ刃のカッターが生身であろうアイナ・クルセイドに放たれる。
それを非難する声はない。
さっきまでの光景を見れば誰もがただの人間ではない事は理解できている。
『こんな玩具でどうにかできると思っているのかい?』
そして現実はその通りになった。
スラッシュ・リッパーはアイナ・クルセイドが放った拳一つで砕け散ったのだから。
「あんたは……一体なんなんだ!」
残像すら見せる高速機動で接近するデスティニーの中でシンが叫び声をあげる。
人間ではない。
ならばその存在は一体?
『おや、気づいていないのかい?』
「何?」
『ショウ。君ならとっくに気づいていると思っていたんだがね』
「なんだと……?」
ショウが呻く。
だがアイナ・クルセイドの言葉に反して、その正体は掴めていなかった。
ショウの正体を知っており、マジンガーZEROの事も知っている。そしてこんな無茶苦茶な事ができる存在。
『ヒントが足りなかったかな。じゃあ一つは私の名前だ』
名前。
アイナ・クルセイド。
『そしてもう一つ。実は私はかつてこれに似た現象を目にしている』
「これに似た現象……?」
『もっとも【僕】が体験したのは無数の可能性の世界からやってきた鬼械神達だけどね』
アレは凄かった、と言うアイナ・クルセイド。
それを聞いてようやく繋がった。
この女の正体が!
「お前はまさか……!」
『そう!私は
意味不明の音が地球艦隊・天駆の耳に届く。
だがショウにだけははっきりと聞こえていたのか、驚愕の表情を浮かべている。
「くそっ!まさか名前がそのままだったなんて!ファミリーネームはシスターから取ったのかよ!」
『その通り!少しは勘づくとは思ってたんだけどねぇ!』
アイナ・クルセイドの顔が変わる。
顔が漆黒に染まり、三つの燃え上がるような目、嗤っているような形の亀裂のような口が浮かび上がる。
断言する。
アイナ・クルセイドは人ではない。もっと悍ましい化け物だ。
『さぁ、私も少しは働くとしましょうか』
アイナ・クルセイドの後ろから巨大なロボットが現れる。
機械仕掛けの悪夢と別世界で呼ばれた存在によく似た鬼械神。
ショウのゲシュペンストが速攻で襲い掛かる。
乗り込まれる前に、と思ったがすぐに迎撃行動を取られる。
なるほど。アレは厳密にいえば鬼械神ではなく化身の一つなのだ。本来は乗り込むという工程すら必要ないのだろう。
「これも全部、お前のシナリオなのか!この世界にあの二人がいるのか!?」
超大型メイスを振るい、叩き潰さんとするゲシュペンスト。
それを受け止める機械仕掛けの悪夢。
他の仲間達は新たに表れたインベーダー達に阻まれ援護行動すらできないでいた。
『最初の問いにはイエスだがノーでもある。私は用意されていた舞台に少しエッセンスを足しただけさ!』
「何っ!?」
テイルブレードが頭部を引き裂かんと動き回るが、無数の機械部品により動きを阻害されてしまう。
パワーもゲシュペンスト・タイプSB以上なのかメイスごと弾き飛ばされてしまった。
『二つ目の問いは残念ながらノーだ。私は厳密には【僕】ではないからね。あの二人に必要以上に拘る必要がないのよ』
「ハッ!どこまで本当なのやら!」
右腕のガングニールで殴り掛かるがやはりパワーが足りない。
一人で戦うのは無理だ。
しかしここで引いて態勢を整えるには状況があまりにも厳しすぎる。
「ショウ!無茶をするな!」
ソウジのグランヴァングから放たれた攻撃が機械仕掛けの悪夢に直撃していく。
足止めされていた仲間がようやく追いつてきたのだ。
『へぇ、やるじゃないか』
戦場を見渡せば、現れる増援達と戦闘を繰り広げているものの主力級であるネームドユニットの殆どは討伐済みであるようだった。
「所詮は意志なき存在だ。本物の連中に比べればどうという事はない!」
「覚悟しなさいよ!」
「貴様を倒し、地球を救うんだ!」
逆にこちらの主戦力であるメンバーの大半が集結に成功。
切り札を切り、こちらに王手をかけたつもりのアイナ・クルセイドに対して逆王手を仕掛けた事になる。
……本当に?
『おや、もう勝ったつもりなのかな?』
「貴様の戦力の底は知れた。切り札らしい連中も大体は倒した以上、後はお前だけだ」
まだ完全な力は分からない機械仕掛けの悪夢はともかく他の敵に関してはもはや問題はない。
勿論、それだからと言って彼等に油断や慢心の気配はない。
「いや、まだだ!」
だがショウだけははっきりとアイナ・クルセイドの戦力が残っている事を察していた。
先程まで戦ってきた相手は地球艦隊・天駆が戦ってきた相手しかいなかったからだ。
そうでなければ態々、ショウの記憶を使ったりなどしない。
「そう、あいつの狙いは!」
『そう、私の狙いは!』
次の瞬間、再び光が弾ける。
「このフラスコの中に存在しない!」
『世界からの召喚!』
光から新しく表れたのは地球艦隊・天駆が見覚えのない相手であった。
モビルスーツがあった。アームスレイブがあった。
それ以外にも無数の人型兵器が存在した。
MSやASと同じような量産を前提とされた機体から、ワンオフと思わしき機体まで。
見ればロボットには見えず、生物のような相手もいた。
「くそっ!囲まれた!」
「数もさっきの倍……いや、もっといるぞ!」
「無尽蔵だっていうのかよ!」
機械仕掛けの悪夢に仕掛けようとするメンバーの迎撃行動を取り始める見知らぬ敵。
戦闘力で言えば先程まで倒してきた相手とそう変わりはしない。
だが情報が一切ない相手との戦闘は先程まで戦ってきた相手よりも遥かに労力使う。
「くそっ!こいつら、間違いない木星のMSだ!」
トビアのX1に襲い掛かってきたMSは他と比べて異様な図体をした機体達である。
手がドリルだったり、巨大な腕を持っていたり、ボールの上に乗っていたり、古代の土偶、バレリーナなどまるでサーカスのようなMS群である。
「トビア!」
「こちらに合わせろ!」
「はい!キンケドゥさん、ハリソン大尉!」
クロスボーンガンダムを目の敵とばかりにX1とX0に攻撃を仕掛けてくるサーカスMS。
ハリソンのF91とあわせて迎撃していくが、機体の独特の性能も厄介だが、まるでこちらの手の内を知っていると言わんばかりの動きに翻弄されていく。
「間違いない!知っている!知っているんだ、こいつらは!俺達、クロスボーンガンダムの事を!」
「だが木星戦役で見た事はない!」
ならばこいつらはトビア達も知らない時代、もしくは世界でクロスボーンガンダムと戦った事がある連中という事か。
「ぐぅっ!?」
「ハリソン大尉!?」
突如、襲い掛かってきたビームがハリソンのF91に襲い掛かる。
なんとか回避したものの、ハリソンの表情はさえない。
「大丈夫だ。……しかし我々を目の敵にする敵が追加されたようだぞ」
「えっ?」
ハリソンの視線の先を向ければそこには新たな敵の姿があった。
その姿を捕らえた時、トビアとキンケドゥをもって知っても唖然とするしかなかった。
「木星はなんでもありだな。巨大な手が二つとはな!」
トビア達が苦戦する頃、宗介達、ミスリルの部隊もまた苦境に追い込まれていた。
「新手のASだが見た事がない!」
「ガーンズバックもいるみたいだけど見た事がない仕様ね!」
「一つ目の機体もある、あれがリーダー機だろうが……!」
見た事もない大量のAS部隊に加えて、ベヘモスに酷使した大型機も複数展開している。
後方に控えている一つ目がリーダー機なのは間違いないだろうがアレを打ち取るには無数の敵を屠る必要がある。
そして問題なのは。
「ラムダ・ドライバ搭載機も多い……!」
見た事がないAS達の大半はラムダ・ドライバを搭載していないようだが、ファウラーやザビーナ達が乗っていたエリゴールタイプも無数に展開しているのだ。
性能的に見れば決して高いものではない。
だが実弾が多いAS機の消耗は他よりも一層激しい状態である。
宗介のレーバテインは既に追加装備は使い切ってパージしているし、ファルケもライフルは撃ち切ったのかナイフとランスのみで戦っている。
ガーンズバック二機も手持ち武器の大半を失っている。
「だが泣き言は言っている場合ではないな!」
別のエリアでは黄金のような珪素でできたELSのような敵を相手にしているソレスタルビーイングのMS達がいる。
虫のような小型機達に群がられているスーパーロボット達が。
更に人の顔が付いた掌や足の姿の存在までも確認できる。
光を見れば次々と新手が沸いて出てきている。
なんとかして押し返したいが、この物量差ではいつか押しつぶされてしまうだろう。
(状況は不利……何か起死回生の一手を打たなければ……)
(宗介……みんな……!)
ウィスパード二人もその知識をフル稼働させるも、その一手が見えてこない。
誰もがその心の奥底には絶望の感情が生まれ始めていた。
『ああ、見えるよ。君達の絶望に浮かぶ様子が』
「くそっ!」
それを眺めていたアイナ・クルセイドの言葉を否定するようにショウのゲシュペンストが殴り掛かる。
だがその機体は決して無傷ではなかった。
手に持っていたメイスとランスは失われ、徒手空拳の状態で戦闘を行っている。
テイルブレードはフル稼働。
近づく敵を蹴散らしていくが、ゾル・オリハルコニウムの刃は少しずつ消耗していく状況だ。
『無駄だよ』
「ちぃっ!」
機械仕掛けの悪夢に再アタックを仕掛けようとするも、邪魔するように現れた新手の機体がその道を塞いでくる。
そして下手に足を止めてしまえば。
「ぐぅっ!?」
まるで無限にいるのではないかと勘違いする程にいる敵からの集中砲火が襲い掛かってくる。
ギリギリの所で回避運動を取るが、全てを回避できず肩や足の装甲が吹き飛んでいく。
「ショウ!ロッティ、ショウのフォローをするぞ!」
「任せて!」
近くにいたヴェルトのヒュッケバインEXとロッティのグルンガスト改がフォローに入り、窮地を脱する。
しかし二人の機体もダメージが確実に蓄積されており、戦闘の継続が厳しくなってきている。
『ふふ、状況は絶望的だね』
「抜かせ。俺達はまだ負けてなどいない」
『ああ、まだ負けていないだけだね』
「……」
そう、このまま行けば負けるのは地球艦隊・天駆の方だ。
だけどだからと言って諦める気になどならない。
『だけどショウ。君は本質的にこの世界の人間ではない』
「……」
『ならばこの世界の最期に付き合う必要はないんじゃないかな』
――私ならば元の世界に帰せる。
そう言っているのだ。
地球艦隊・天駆の元から去り、アイナ・クルセイドに従えば助けてやると言っているのだ。
しかしショウの心は決まっている。
「はっ、お断りだ。そもそもお前との取引なんて間違いなく、確実にこっちが騙されるに決まってるだろう。阿呆め」
相手は人間などではない。
間違いなく人間を弄び、騙し犯す邪神なのだから。
『まぁ、そうなるよね。ならこれはもういらないね』
まるで使い終わったティッシュを捨てるがみたいな気楽さの音色が響き渡る。
「ぐっ!?」
と同時にショウのゲシュペンストの動きが一気に鈍くなる。
まるで鉛でも仕込まれたように操縦桿が重くなったのだ。
一体何が、と思うショウだがすぐにその理由を察した。いや、察してしまったのだった。
「……くっ!」
「ショウ、どうしたんだ!?」
慌ててソウジがゲシュペンストを抱えて飛び回る。
この乱戦の戦場で足を止めるのは自殺行為に近い。
「……怖いんですよ」
「えっ?」
「……機体を動かすのが、戦うのが……怖い」
「ショウさん、何を……!?」
ショウの告白に絶句するソウジとナイン。
ヤマトが地球を飛び立ってからずっとゲシュペンストで戦っていたのに今頃になって恐怖を感じている。
「……そうだ。今考えればおかしい事だらけだ。俺はあの時からどうして当たり前のように戦えているんだ?」
高坂翔という人間は決して戦いを生業にしてきた人間ではない。
現代日本で暮らしてきた一般人に過ぎないのだ。
戦いの中に身を置いた記憶などは一切ない。
だと言うのに戦ってきた。
ゲシュペンストに乗り、命が危険な戦場を渡り歩いてきた。
一般人とは思えない技量をもって。
「そうか……俺が感じた違和感は……!」
ソウジが感じていたショウへの疑念が全て繋がった。
ヤマトが飛び立った時に見せた熟練者のような技量。
火星の時に見えた命を捨てかねない行動。
どれも考えてみれば何もかもが可笑しかったのだ。
「お前の……せい、なのか?」
『ああ、その通り。君に色々と植え付けてね。君がここまで生き残れるように手助けしてあげたのさ』
「植え付け……?」
『パイロットとしての技術、度胸とかさ。簡単に言えば神勝平君の睡眠学習のようなものさ』
さっき解除したけどね、と言うアイナ・クルセイド。
「そうか!それを解除されたから……!」
「ショウさんの動きが……!」
『でも感謝して欲しいな。君が生き残れたのは私の助けがあったからだよ。何せずっと見ていたんだから』
見ていた、と疑問を抱くショウであったが、何人かのメンバーにはその心当たりがあった。
「そうか、俺が感じていた違和感の正体!」
「ショウを覆っていた悪寒がする霧は!」
「時折、ショウが二人いたような感じは!」
『そう、私だ』
刹那が感じた違和感。
アンジュが感じた悪寒、
バナージが感じた異変。
その全ての黒幕だと思わせるセリフを吐くアイナ・クルセイド。
『気づいたと思うけど、ショウを研究所に転移させたのも私。あそこで死ぬと困るからね」
「そういう事か……!」
あんなに都合よく転移現象が起きる筈はないと思っていたが、全てアイナ・クルセイドのせいだったとは……。
『さぁ、どうする?君に与えられた借り物の力は失われた。どうやって足掻く?私に教えてくれないかしら?』
「ちっ、くしょう……!」
分かってはいるが、手に力が入らない。
体を動かそうとするも、その前に恐怖がショウを支配していく。
ここで動かなければ死ぬ。そう分かっていても体を動かす事が叶わないでいた。
『君はもう用済み。ここで死んでくれ』
「……っ!」
「ショウ!」
身動きが叶わないショウへ襲い掛かる凶刃。
チトセが悲鳴を上げながら助けに入るが、もう遅い。
(……ここまでか)
今までよく生き残ってこれたもんだと思いながらショウは諦める。
もうこの凶刃から逃れる術はない。
「諦めるなショウの兄ちゃん!」
だが諦めてない者はここにいる。
「……ザンボット3?」
ザンボット3の槍がゲシュペンストを破壊しようとした騎士の鎧のような機体を貫いていた。
「諦めるなよショウの兄ちゃん!」
「勝平……」
ゲシュペンストを庇ったザンボット3が次々とやってくる敵機をザンボット・ブローで破壊していく。
しかし同時に敵の攻撃が被弾していき、装甲の所々は欠け、ひび割れている。
「その怖さは俺にだって分かる!だからこそ諦めちゃ駄目なんだ!」
「それは……」
神勝平もまたショウと同じように睡眠学習でザンボット3の戦い方を学び、そして失った者だ。
ショウが今抱いている恐怖を一番理解しているのは彼なのだろう。
「ショウの兄ちゃんが何者なのかはわからない!でも俺達は知っているんだ!兄ちゃんが頑張っていた事を!」
困っている仲間を助ける為に奔走した事も。
少しでも強くなりたいと特訓していた事も。
大切な人を守る為に戦場に帰ってきた事も。
「だから負けるな!あんな訳の分からない奴に負けるんじゃないよ!」
「!」
その叫び声と共にザンボット・ブローを持っていたザンボット3の左腕が吹き飛んだ。
ゲシュペンストを庇う為に受け続けたダメージが噴き出てきたのだ。
「勝平!」
「ぐっ!負けるなザンボット3!!」
それでも勝平は前に出た。
恐怖に支配された仲間を守る為に。
だけど一機では限界がある。
全てを捌ききれなくなり、ザンボット3もまた今まで倒してきた敵と同じように砕け散る末路を迎えようとした時。
音が響いた。
「っ!」
『へぇ……』
先程とは逆にゲシュペンストのテイルブレードがザンボット3を攻撃していた敵を貫いていく。
「ショウの兄ちゃん!」
「うおぉぉぉぉ!」
テイルブレードだけではなく両腕から放たれる爪撃が敵を破壊していく。
「……助かった、勝平。ありがとう」
「へへっ、いいって事よ!」
ショウの中に恐怖はまだある。
だけど同時に前に進もうとする勇気も花が咲くようにこの胸に宿っていたのだ。
だからこそ動いていた。
その事に気づかせてくれた大切な仲間を守る為に。
「ショウ!お前の力は誰かに与えられたものだけじゃない!」
始まりはアイナ・クルセイドに与えられた物だったのかもしれない。
だけどヤマトが飛び立ったあの日から手に入れた経験は間違いなくショウだけの物なのだから。
「だから負けられない!黒幕気取りのお前に負けてやれない!」
そんなショウの雄叫びに反応するように地球艦隊・天駆の動きもまた活発になっていく。
「ああ!もう少しで地球を救えるんだ!」
「こんな所で止まれない!止まる訳にはいかない!」
先程まで押されていたのが嘘のように、敵を押し返していく。
「だがこのままではジリ貧だぞ!」
「根本的な解決をしなければ!」
解決方法は現状二つ。
敵を召喚し続けている光をどうにかするか、アイナ・クルセイドを倒すかだ。
だが光をどうにかする方法に検討はつかず、機械仕掛けの悪夢を破壊するには敵が多すぎる。
連戦が続いている地球艦隊・天駆も限界が近づいてきている。
『士気は戻ったみたいね。だけどここからどうするのかしら?』
アイナ・クルセイドの言う通り。
未だに打開の手はなく、ジリジリと力が削がれていくだけだ。
だが。
「ならばやるべき事は一つ!」
「ショウ?」
ショウの声が地球艦隊・天駆、全体へと届く。
「俺にいい考えがある」
????「私にいい考えがある」CV:玄田〇章